「コンテンツマーケティングを始めたい」という相談を受けることがある。ただ、話を聞いていると、ブログをやるかSNSをやるかYouTubeをやるかという段階で詰まっていて、結局何も動いていないということが多い。
この記事では「月0円で始める」という観点に絞って話をする。コンテンツマーケティングには様々な形があるが、中小企業が最初に取り組むなら、SEO目的のブログ記事一択だと考えている。その理由と、具体的な始め方を解説する。
最初に正直な話をする
コンテンツマーケティングを始める前に、期待値を整理しておく必要がある。
検索経由の流入が増えてくるのは、早くて半年、現実的には1年後だ。Googleが公式に示している目安は「4ヶ月〜1年」だが、新規サイトや競合が強いキーワードでは1年以上かかることもある。
これが続かない最大の理由だ。「3ヶ月やったのに問い合わせが来ない」と感じて止めてしまう。止めてしまえば、それまで積み上げたコンテンツの価値もゼロになる。
コンテンツマーケティングを始めるなら、「最低1年は続ける」という前提で始めるべきだ。月2本の記事でも1年で24本になる。24本のコンテンツがあれば、検索結果に顔を出す機会が少しずつ生まれてくる。
中小企業がコンテンツマーケティングに向いている理由
大手メディアと戦うのは難しいが、コンテンツマーケティングに限れば中小企業には明確な強みがある。
業界の専門知識がある
自分の業界について、大手メディアには書けないレベルの具体的な知識を持っている。「飲食店の仕入れ交渉で実際にやっていること」「建設業の現場でよくある法的トラブル」「経理代行を依頼した際に最初に整理すべき書類の種類」といった内容は、現場を知らない外部ライターには書けない。
大手のSEOメディアは、専門知識のないライターが表面的な情報をまとめた記事を量産している。読んでいると分かる。「どこかで見た内容の組み合わせ」になっている。
実際に現場にいる人間が書いた記事は、それだけで差別化になる。
読み手に信頼されやすい
実名・顔出しの記事は、「誰が書いたか分からない記事」と比べて信頼されやすい。業界での実績が見えること、顔が見えることがコンテンツの説得力を高める。
問い合わせフォームから来た問い合わせに返信するのではなく、記事を読んだ人から「あなたに相談したい」という連絡が来る状態を作れる。これがコンテンツマーケティングの本来の価値だ。
意思決定が速い
「記事の方向性を決める会議」が不要だ。経営者本人が判断して動ける。大企業がコンテンツマーケティングに苦労するのは、承認プロセスに時間がかかって鮮度のある記事が書けないからでもある。
なぜブログ一択なのか
SNS、メルマガ、YouTube、ポッドキャストと、コンテンツの形は多い。それでもまず始めるならブログ記事だ。理由は2つある。
一度公開した記事が資産として蓄積される
SNSの投稿はタイムラインに流れていく消耗品だ。1時間後には誰にも見られなくなる。一方でブログ記事は、公開してから1年後も検索からアクセスされ続ける。積み上げるほど価値が増える。
検索意図に合わせて書ける
「経理代行 費用」と検索している人は、すでに外注を検討している。「勤怠管理 アプリ 比較」と検索している人は、ツールを探している。検索キーワードから「今どんな状態にいる人か」が分かる。その人に向けた記事を書けば、読まれる確率が上がる。
SNSで情報を発信しても、その内容を必要としている人に届くかどうかはアルゴリズム次第だ。SEO記事は「必要な人が自分で探して来てくれる」という構造になっている。
月0円で始める手順
1. ブログを立ち上げる
既に自社サイトがある場合は、そこにブログ機能を追加するだけでいい。WordPressで作られているサイトなら、投稿ページを追加すれば済む。
ゼロから立ち上げる場合の構成:
| 項目 | ツール | 費用 |
|---|---|---|
| ドメイン取得 | Xserverドメイン等 | 年間1,000〜1,500円 |
| サーバー | Xserverスタンダード等 | 月1,000円前後 |
| WordPress本体 | WordPress.org | 無料 |
| テーマ | Cocoon、Lightning等 | 無料 |
初期費用はドメイン代のみ、月次費用はサーバー代だけだ。「月0円」と書いたが、正確にはサーバー代はかかる。それでも広告費と比べれば圧倒的に低コストだ。
2. 書くテーマを決める
「何を書けばいいか分からない」が最初の詰まりポイントだ。シンプルな解決策がある。
顧客からよく聞かれる質問を書き出す
- この業界に詳しくない人が最初に疑問に思うことは何か
- 新規のお客さんからよく聞かれる質問は何か
- 同業他社との違いをどう説明するか
この質問に対する答えが、そのまま記事のネタになる。
経理代行を提供している会社の例:
- 「経理代行と税理士は何が違うのか?」
- 「月いくらかかるか?従業員20人なら?」
- 「経理担当が急に辞めたらどうすればいいか?」
これらは顧客が実際に検索するキーワードだ。10個書き出せば、10本の記事のネタになる。
3. キーワードを選ぶ
書くテーマが決まったら、ラッコキーワード(無料)で検索量の傾向を確認する。ラッコキーワードは登録不要で使えて、関連キーワードも一覧で確認できる。より正確な数値が欲しい場合は、Googleキーワードプランナー(Google広告アカウントが必要)を使う。
最初に狙うキーワードの選び方:
- 月間検索量が100〜1,000程度のロングテールキーワードを選ぶ
- 競合記事を検索して、大手SEOメディアでなく個人ブログや中小企業のサイトが上位に出るものを選ぶ
- 自社の強みを生かせる内容のもの
「コンテンツマーケティング とは」「業務効率化」のような汎用的なキーワードは、大手メディアが上位を独占している。最初はニッチなキーワードに絞る方が現実的だ。
4. 記事を書く
記事の基本構成:
- 冒頭で読者の状況を言語化する(「こういう状況の人に読んでほしい」)
- 結論を先に書く(何が分かるか、何ができるようになるか)
- 理由・根拠を示す(なぜそうなのか)
- 具体的な手順を書く(何をどの順番でやるか)
- まとめと次のアクション
文字数は2,000〜3,000字が目安だ。薄い内容を長く書いても評価されない。「この記事を読めば疑問が解決する」という状態にすることが先決で、文字数はその結果として決まる。
ツールはGoogleドキュメント(無料)で十分だ。書いた内容をWordPressに貼り付けて公開する。
5. Googleサーチコンソールを設定する
Googleサーチコンソール(無料)を設定して、公開した記事がどのキーワードで検索結果に表示されているかを確認できるようにする。
設定の手順:
- Google Search Console にアクセス
- 「プロパティを追加」から自社サイトのURLを入力
- 所有権の確認(HTMLファイルをサーバーに置く方法が分かりやすい)
- 記事を公開してからURLを「URL検査」で登録する
記事公開後、1〜2週間でGoogleのインデックスに登録され始める。確認すべき数字は「表示回数」と「クリック数」だ。最初は表示回数が少しずつ増えていればOKで、クリック率は後から改善できる。
最初の3ヶ月でやること
| 月 | やること | ゴール |
|---|---|---|
| 1ヶ月目 | WordPress設置・サーチコンソール登録・記事2本公開 | まず動き出す |
| 2ヶ月目 | 記事2本追加・インデックス確認 | 継続する |
| 3ヶ月目 | 記事2本追加・表示回数の変化を確認 | 動いていることを確認する |
3ヶ月で合計6本の記事があれば、ロングテールキーワードでの表示が少しずつ始まる。まだ問い合わせにはつながらないが「動いている」という手応えが出てくる段階だ。
やってはいけないこと
最初から複数チャネルに手を出す
ブログ・SNS・YouTubeを同時に始めようとして、全部中途半端になるパターンが最も多い。まず1チャネルで成果を出してから横展開する順序が正しい。
全部外注しようとする
コンテンツ制作会社に全部お願いするという選択肢がある。ただし、業界の知識がない外部ライターが書いた記事は、専門家が書いた記事に比べて薄くなりやすい。最初は自分(または社内の人間)が書き、慣れてから構成案だけ作って文章を外注する順序がいい。
完璧な記事を目指す
最初の記事に2週間かけてしまう人がいる。70点の記事を5日で公開する方が正しい。公開してからサーチコンソールのデータを見て改善する方が、公開前に完璧にしようとするよりも速く成果につながる。
まとめ
中小企業がコンテンツマーケティングを始める手順は以下の通りだ。
- WordPressでブログを立ち上げる(月1,000円台)
- 顧客によく聞かれる質問を10個書き出す
- ロングテールキーワードを選んで記事を書く
- サーチコンソールで表示回数を確認する
- 月2本のペースで1年続ける
広告と違ってすぐには効果が出ない。ただし、積み上げれば積み上げるほど資産になる。広告費がゼロでも検索から問い合わせが入る状態を作れる、というのがコンテンツマーケティングの本質だ。
業務効率化に特化したエンジニアとして、僕自身もこの方法で運営している。月数千円のサーバー代で運営しているメディアから問い合わせが来るようになるまでに時間はかかったが、その分積み上げた資産は広告のように止まらない。
まず自社サイトにブログ機能を追加するところから始めると、一番手が動きやすい。
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