中小企業でクラウドストレージを選ぶ場面は、だいたいこういう状況だと思う。
- ファイルサーバーが老朽化してきた
- リモートワークを始めたが、社内フォルダにアクセスできない
- USBやメールでファイルを共有していて限界を感じてきた
「Google Drive・OneDrive・Boxのどれを選べばいいか」という問いに対して、多くの比較記事は「使い方によって違います」「セキュリティを確認してください」と書いている。だが、それは答えになっていない。
この記事では、従業員5〜50人の中小企業がクラウドストレージを選ぶ際の判断軸を整理する。迷わず選べるシンプルな結論を出す。
まず知っておくこと:9割はグループウェアで決まる
クラウドストレージを単体で選ぼうとすると、比較軸が増えすぎて迷う。実際には、既に使っているグループウェア(メール・スケジュール管理ツール)で選択肢が絞れる。
- Google Workspaceを使っている → Google Drive一択
- Microsoft 365(旧Office 365)を使っている → OneDrive一択
- どちらも使っていない → この記事で選ぶ
理由はシンプルで、クラウドストレージは単体で機能するのではなく、メール・チャット・ドキュメント作成ツールと一体で使うとはじめて価値が出る。バラバラなツールを組み合わせると、ログインが増え、連携の手間が増え、コストも高くなる。
既存のグループウェアがあるなら、迷わず同一エコシステムのストレージを選ぶのが正解だ。
主要3サービスの費用と特徴
グループウェアが決まっていない、またはこれから選ぶという会社向けに、中小企業が実際に検討するサービスを3つに絞って整理する。
Google Drive(Google Workspace)
月額料金(1ユーザーあたり、2026年4月時点)
| プラン | 月額 | 容量 |
|---|---|---|
| Business Starter | 816円 | 30GB/ユーザー |
| Business Standard | 1,632円 | 2TB/ユーザー |
従業員規模別の月額目安
| 従業員数 | Business Starter | Business Standard |
|---|---|---|
| 10人 | 8,160円 | 16,320円 |
| 30人 | 24,480円 | 48,960円 |
向いている会社
- Googleドキュメント・スプレッドシートで社内文書を作りたい
- Gmailをメインの業務メールとして使っている(または移行予定)
- Mac・スマートフォン・Chromebookなど端末が混在している
注意点
Business Starterの30GB/ユーザーは、写真や図面など大きなファイルを扱う業種ではすぐ埋まる。書類中心の会社なら十分だが、不安があればBusiness Standardから始める方が無難だ。
OneDrive for Business(Microsoft 365)
月額料金(1ユーザーあたり、2026年4月時点)
| プラン | 月額 | 容量 | 備考 |
|---|---|---|---|
| Microsoft 365 Business Basic | 899円 | 1TB/ユーザー | Officeはブラウザ版のみ |
| Microsoft 365 Business Standard | 1,874円 | 1TB/ユーザー | Officeデスクトップアプリ込み |
2026年7月の価格改定について
Microsoftは2026年7月から日本を含む商用ライセンスの価格改定を予定している。導入タイミングによっては現行価格と変わる可能性があるため、公式サイトの最新情報を確認してほしい。
従業員規模別の月額目安(Business Basic)
| 従業員数 | 月額 |
|---|---|
| 10人 | 8,990円 |
| 30人 | 26,970円 |
向いている会社
- Word・Excel・PowerPointを日常的に使っている
- Teams(テレビ会議・チャット)も合わせて導入したい
- Windows端末が中心の会社
注意点
Business BasicはOfficeのブラウザ版のみで、WordやExcelのインストール版が必要な場合はBusiness Standard以上が必要になる。「Excelを普段どおり使いたい」という場合は、プランを間違えやすいので注意が必要だ。
Box
月額料金(1ユーザーあたり、目安)
| プラン | 月額(税込目安) | 容量 |
|---|---|---|
| Business | 約1,800〜1,980円 | 無制限 |
| Business Plus | 約3,000〜3,300円 | 無制限 |
※最低契約数は5ユーザーから。詳細な料金は公式サイトへの問い合わせが必要。
従業員規模別の月額目安(Business)
| 従業員数 | 月額 |
|---|---|
| 10人 | 約18,000〜19,800円 |
| 30人 | 約54,000〜59,400円 |
向いている会社
- 金融・医療・士業・建設業など、情報管理の基準が厳しい業種
- 大企業との取引でセキュリティ要件が指定されている
- 外部のパートナーや取引先とファイルを頻繁に共有する必要がある
- 50人以上でアクセス権限を細かく管理したい
中小企業への正直な評価
従業員5〜30人の中小企業で、情報管理に特殊な要件がないなら、BoxはGoogle DriveやOneDriveの2倍以上のコストになる割に、実務での利便性は変わらないケースが多い。セキュリティ要件がなければ選ぶ必要はほとんどない。
3サービスの比較まとめ
| Google Drive (Business Starter) | OneDrive (Business Basic) | Box (Business) | |
|---|---|---|---|
| 月額(1人) | 816円 | 899円 | 約1,980円 |
| 容量 | 30GB | 1TB | 無制限 |
| Officeアプリ連携 | Google系 | Microsoft系 | 両対応 |
| 向いている会社 | Mac・スマホ混在 | Windows中心 | 情報管理が厳格な業種 |
選び方:3つの判断ステップ
Step 1:既存のグループウェアを確認する
Google WorkspaceがあればGoogle Drive、Microsoft 365があればOneDriveで決定。この段階で迷う必要はなくなる。
Step 2:業種・取引先の情報管理基準を確認する
医療・金融・士業など、情報の取り扱いに法的・契約上の制約がある業種や、大企業との取引でセキュリティ要件が指定されている場合は、Boxを検討する。それ以外の大半の中小企業はGoogle DriveかOneDriveで十分だ。
Step 3:グループウェアを新規で選ぶ場合は「端末」で決める
- Windows PCが中心 → Microsoft 365 Business Basic(899円/人)+ OneDrive
- Mac・スマートフォン・異なるOS混在 → Google Workspace Business Starter(816円/人)+ Google Drive
グループウェア選びは「どのOSを主に使っているか」で8割決まる。価格差はほぼないため、使い勝手の良い方を選んでいい。
ファイルサーバーから移行する際の注意点
クラウドストレージを選んだら、次は移行作業になる。ここで実際に起きやすい失敗を3つ挙げる。
既存のフォルダ構成をそのままコピーしない
ファイルサーバーのフォルダ構成は、何年もかけて積み重なった結果、複雑になっていることが多い。そのままクラウドに移すと「検索しても見つからない」「どのフォルダに入れればいいか分からない」状態が続く。
移行前に「本当に必要なフォルダ」を整理し直してからデータを移す方が、後々の混乱を防げる。
アクセス権限の設計を先にやる
クラウドストレージで最も多いトラブルが、権限設計の不足だ。移行後に「全社員が全フォルダを見られる状態」か「担当者しかアクセスできない」のどちらかに極端になりやすい。
「誰がどのフォルダを見られるか」を部署・案件ごとに先に決めてから移行しないと、後から修正する手間が大きくなる。
移行期間は最低1ヶ月確保する
ファイル数が多い場合、データ転送だけで数日かかることがある。また、現場スタッフが新しいツールの操作に慣れるまでサポートが必要になる。「週末に移行して月曜日から使う」という計画は、10人以上の組織ではまず無理だと思った方がいい。
まとめ
クラウドストレージ選びは、判断軸を1つに絞ると迷わなくなる。
- Google Workspace使い → Google Drive
- Microsoft 365使い → OneDrive
- どちらでもなく、Windows中心 → Microsoft 365 Business Basic + OneDrive
- どちらでもなく、Mac・スマホ混在 → Google Workspace Business Starter + Google Drive
- 医療・金融・士業など情報管理の基準が厳しい業種 → Boxを検討
費用面では、Google DriveとOneDriveはほぼ同水準で月額800〜900円/ユーザー程度から始められる。Boxはその2倍以上のコストになるため、必要な業種以外は対象外で構わない。