社員が立て替えて、月末にまとめて精算する。この流れが当たり前になっている会社では、いくつかの問題が静かに積み重なっていく。
領収書の管理が個人任せになる。Excelへの転記ミスが起きる。月次の締め作業が翌月第2週にずれ込む。「今月、経費いくら使ったっけ」と経営者がすぐに把握できない状態が続く。
法人カードはこれを解決するための道具だ。ただし、カードを作るだけでは経費管理は改善しない。会計ソフトとの連携や運用ルールをセットで整えて初めて効果が出る。
この記事では、従業員5〜50人規模の中小企業がカードを選ぶときの判断基準と、主要カードの比較を整理する。
ビジネスカードとコーポレートカードの違い
法人向けカードには大きく2種類ある。
ビジネスカードは、個人事業主や小規模法人向けのカードだ。審査は個人の信用情報をベースに行われる。三井住友カード ビジネスオーナーズ、JCB Biz ONE、セゾンコバルト・ビジネスなどがここに分類される。
コーポレートカードは、法人格をベースに審査し、利用限度額を大きく設定できる。ただし、決算書の提出が必要なケースが多く、創業年数が浅い会社や小規模の会社は審査が通りにくいことがある。
従業員50人以下の中小企業では、ビジネスカードが現実的な選択肢になる。コーポレートカードを狙いたい場合でも、まずビジネスカードで実績を作ってから切り替える会社が多い。
中小企業が法人カードを選ぶ5つの基準
1. 年会費(本カード+追加カード)
「本カード無料」と書いてあっても、従業員に配布する追加カードに年会費がかかるケースがある。
追加カードの年会費が3,300円(税込)で10枚発行すると、それだけで年間33,000円のコストになる。本カードと追加カードの両方が無料のものを第一候補にするのが無難だ。
従業員全員が持つことを前提に計算してから比較することが重要だ。
2. 使っている会計ソフトとの連携
カードを作っても、明細を会計ソフトに手入力しているなら経費管理は大して楽にならない。
freeeとマネーフォワードは、主要な法人カードとのAPI連携に対応しており、明細が自動取得される。マネーフォワードはAPI連携が主流で情報の遅延が少ない。一方、freeeでは一部のカードで親子カード(追加カード)の明細が取り込めないケースがある。
使っている会計ソフトに対応しているカードを選ぶことが、連携効果を最大にする前提条件だ。
3. 利用限度額とキャッシュフロー
法人カードの引き落としは月1回。仕入れや外注費をカードで支払う場合、引き落としまでの期間に資金が必要になる。
利用限度額は毎月の経費の2〜3倍を目安にするとよい。月50万円の経費なら、100〜150万円の枠があれば余裕が持てる。
ビジネスカードはコーポレートカードより限度額が低めに設定されることが多い。申込み前に、必要な枠が確保できるかを確認する。
4. 追加カードの枚数と管理機能
部門ごとや担当者ごとに追加カードを発行する場合、各カードの利用明細がリアルタイムで確認できるかどうかが重要になる。
従来型のクレジットカードは、月1回の明細確定まで利用状況が分からないものが多い。UPSIDERカードやバクラクビジネスカードはリアルタイムで各担当者の利用状況を把握でき、必要に応じて即座に上限を設定することもできる。
利用状況のリアルタイム把握を優先する場合は、クレジットカード型だけでなくデビット型やプリペイド型も候補に入れる価値がある。
5. インボイス制度への対応
2023年10月のインボイス制度施行で、法人カードの運用に変化が起きている。以前は3万円未満の経費はカードの利用明細だけで仕入税額控除が認められていたが、今は金額に関わらず適格請求書(インボイス)の保管が必要になった。
コンビニや駐車場など少額の支払いでもレシートを保管しなければならず、この証憑管理に課題を感じている会社は多い。インボイスに対応した経費精算システムと法人カードをセットで導入することで、電子保存の仕組みを整えやすくなる。
主要カード比較
従業員5〜50人規模の中小企業が実際に検討対象になるカードを整理した。
三井住友カード ビジネスオーナーズ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年会費(本カード) | 永年無料 |
| 年会費(追加カード) | 永年無料 |
| ポイント還元率 | 0.5%(200円で1ポイント) |
| 申込み条件 | 決算書・登記簿謄本不要 |
向いている会社: 審査に不安がある、手軽に始めたい、追加カードを複数枚発行したい
審査のハードルが低く、創業直後でも申し込みやすい点が特徴だ。個人名義の三井住友カードと2枚持ちにすることで、特定加盟店でのポイント還元が上がる仕組みもある。
JCB Biz ONE
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年会費(本カード) | 永年無料 |
| ポイント還元率 | 1%(200円で2ポイント) |
| 優待店 | Amazon・スターバックス等で最大21倍 |
向いている会社: 経営者・事業主が1人で使う、還元率を重視したい
年会費無料の法人カードの中では還元率が高い。ただし、JCB Biz ONEは従業員向けの追加カードを発行できない仕様になっている。1人で使う経営者向けのカードとして理解しておく必要がある。
セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年会費(本カード) | 永年無料 |
| 年会費(追加カード) | 永年無料 |
| ポイント還元率 | 1,000円で1ポイント(ビジネス加盟店は4ポイント) |
向いている会社: 従業員への配布枚数が多い、追加カードのコストをゼロにしたい
追加カードも年会費無料のため、従業員が増えても年会費のコストが膨らまない。アメックスブランドのため、接待や出張での使用時に一定のステータスが出る。
マネーフォワードビジネスカード
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年会費 | 無料(一部機能は有料プランが必要) |
| 特徴 | マネーフォワードクラウド会計との即時連携 |
向いている会社: マネーフォワードで会計管理をしている
マネーフォワードのエコシステムの中に収まるカードのため、明細が会計ソフトにリアルタイムで反映される。別途連携設定をする必要がなく、導入後すぐに会計連携が機能する点が強みだ。
UPSIDERカード
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年会費 | 無料 |
| ポイント還元率 | 1% |
| 追加カード | バーチャルカードで無制限発行可能 |
| 利用明細 | リアルタイム確認・Slack通知対応 |
向いている会社: 従業員数が多い、部門別に支出を管理したい、利用状況をリアルタイムで把握したい
各担当者の利用明細がリアルタイムで確認でき、Slackに通知を飛ばす設定もできる。バーチャルカードは発行枚数無制限で、プロジェクトや部門ごとに用途を分けて管理しやすい。
カードを入れた後にやること
カードを作ったら終わりではない。経費管理の仕組みとして機能させるには3つのステップが必要だ。
「どのカードを選ぶかより、導入後にどう運用するかが重要」という声はよく聞く。自社のバックオフィスの状況を整理してから選びたい場合は、お問い合わせから相談してほしい。
ステップ1: 会社の経費を法人カードに一本化する
個人カードや現金での支払いをなくすことを目指す。「このカードで払えないものだけ現金」というルールを社内で徹底する。一本化するまでは、経費の全貌が把握できない状態が続く。
ステップ2: 会計ソフトと連携して自動仕訳を設定する
カードを会計ソフトに登録し、仕入先ごとの勘定科目を設定する。一度設定すれば翌月以降は明細が自動で取り込まれ、仕訳の確認作業だけで済む状態になる。
ステップ3: 月次で明細をレビューする習慣を作る
毎月の締め日に全員分の明細を確認する。使途不明の支出や想定外の高額支出があれば、すぐに確認できる。この習慣があるだけで、経費の無駄や使い込みのリスクを大幅に下げられる。
まとめ
法人カードを選ぶ基準は「ポイント還元率が高いカードを選ぶ」だけでは不十分だ。
- 追加カードのコスト: 本カード+追加カードの年会費を従業員数で掛け算して確認する
- 会計ソフトとの連携: 使っているソフトに対応しているかを申込み前に確認する
- インボイス制度への対応: 証憑管理の仕組みを経費精算システムとセットで整える
この3点を軸に選べば、導入後に「思ったより効果がなかった」という結果を避けられる。
経費管理の仕組み化を検討している場合は、以下の記事も参考にしてほしい。
バックオフィス全体の効率化に課題があれば、お問い合わせから相談してほしい。業種・規模に応じて、適切な対応方法を整理する。