AI顧問・AI導入支援

「AI顧問って怪しい?」中小企業が騙されないための見分け方

AI顧問というサービスが急増している。

「月額○万円でAIを活用した業務改善をサポートします」という営業が来たり、SNSやLinkedInで案内を見かけたりすることが増えた。

この流れに対して、中小企業の経営者から聞こえてくるのが「AI顧問って怪しくないですか?」という声だ。

結論から言うと、その感覚は半分正しい。怪しいサービスが混じっているのは事実だ。ただ、全てが怪しいわけでもない。僕自身もAI顧問として動いているので、業界の実態をある程度は把握している。問題は「明らかな詐欺」と「詐欺ではないが低品質なサービス」と「信頼できるサービス」が入り混じっているところにある。

この記事では、それぞれをどう見分けるかを具体的に書いていく。

なぜ「怪しい」AI顧問が増えているのか

2023年以降のAIブームで、AI関連サービスへの参入が急増した。ChatGPTが登場してから、「AIで経営支援します」「AI導入をサポートします」という名目で動くプレイヤーが一気に増えた。

問題は参入障壁が低いことだ。

AIを使えば誰でも「それっぽい提案書」が作れる。「御社のDX推進ロードマップ」を生成AIで30分で作って、月額20万円で売るビジネスが成立するように見える。

実際、ChatGPTを半年使った経験があり、「AIに詳しい人」として経営コンサルを始めたという人がいる。AIツールの知識はあっても、実際のビジネス業務を改善した経験はほぼゼロ、というケースだ。

市場が急拡大した局面でよくある現象で、AI顧問に限った話ではない。ただ、費用が月額数十万円という規模になると、中小企業にとってのダメージは小さくない。

だから慎重に選ぶことは正しい。ただし、警戒しすぎて適切なサービスまで避けてしまうのも損だ。

AI顧問の「怪しさ」は3段階ある

第1段階:明らかな詐欺

即座に切っていい。以下のいずれかに当てはまれば、それ以上話を進める必要はない。

確認できた時点で終わりにすべき特徴:

  • 「月利○%」「売上が確実に○倍になる」など根拠のない成果を約束する
  • 個人の銀行口座への振込を求める
  • 会社の登記情報が確認できない
  • SNSのDMや広告からの勧誘で、運営会社の実態が不明瞭
  • 契約前に「マニュアル代」「初期ライセンス料」などの名目で高額を請求する
  • 「今だけ限定価格」「このタイミングで始めないと損」という心理的な圧力をかける

これらは投資詐欺・副業詐欺と同じ手口で、AI顧問を名乗っているだけだ。

国税庁の法人番号公表サイト(https://www.houjin-bangou.nta.go.jp/)で法人登録が確認できない場合も、話を進める必要はない。

第2段階:詐欺ではないが価値が出にくいサービス(グレーゾーン)

ここが一番厄介だ。悪意はないが、契約してもほとんど業務が変わらない、というサービスが存在する。

グレーゾーンサービスの特徴:

  • ChatGPTやClaudeの使い方を「教える」ことが中心で、実際に業務に組み込む作業はしない
  • 毎月の打ち合わせで「AIでできること」の最新情報を共有するが、業務フローは変わらない
  • 過去の支援事例を聞くと「研修を実施しました」「AIリテラシー向上に取り組みました」レベルの話しか出てこない
  • 契約内容が「月○時間のコンサルティング」という時間課金で、成果に対する責任の所在が曖昧
  • 提案書は立派だが、実装(実際に動くものを作る)は別途見積もりになる

このタイプのサービスは契約する本人もそうでない可能性が高い。ただ、成果が出にくい構造になっている。

特に「研修・教育型」と「戦略立案型」の顧問は、実際に業務の仕組みを作るという作業が含まれていないことが多い。「知識は増えたが何も変わっていない」という状況が続く。

第3段階:信頼できるサービス

AIの技術的な知識に加えて、実際のビジネス業務を変えた実践経験があり、現場に入って仕組みを作れるサービスだ。後述する確認方法で区別できる。

怪しいかどうかを見分ける4つのステップ

ステップ1:会社・人物の実在を確認する

基本確認から始める。

  • 法人名でGoogle検索して、公式サイトが確認できるか
  • 国税庁の法人番号公表サイトで法人登録が確認できるか
  • 担当者のフルネームとLinkedInや実名でのSNSが確認できるか
  • 会社の住所が実在するオフィスか(ストリートビューで確認するのも有効)

バーチャルオフィス専用住所が必ずしも問題というわけではないが、他の情報と合わせて判断する材料にはなる。

ステップ2:過去の支援事例を具体的に聞く

これが最も重要な確認だ。

「過去にどんな業種の、どんな規模の会社を、どんな課題で支援して、どんな成果が出ましたか?」

と直接聞いてみる。

信頼できる回答の例:

  • 「○○業の会社で、受発注業務の手入力作業をAIで自動化して、担当者の作業時間を週○時間削減した」
  • 「経理担当1人の会社で、請求書のPDFを自動で読み取って会計ソフトに入力する仕組みを作った。月○時間かかっていた作業がほぼゼロになった」
  • 「○名規模の建設業で、見積書の作成をAIで補助する仕組みを導入した。見積もりにかかる時間が半分になり、受注できる件数が増えた」

怪しいサービスの典型的な回答:

  • 「様々な業種の企業のDX推進をご支援してきました」
  • 「AIリテラシー向上研修を複数社で実施しています」
  • 「ChatGPT活用の社内展開をサポートした実績があります」

後者は嘘をついているわけではないが、業務改善の具体的な成果を語れないということは、現場での実装経験が薄い可能性が高い。

ステップ3:何をするのかを具体的に確認する

「月額○万円のAI顧問サービス」と言っても、実態はピンキリだ。

契約前に確認すべき具体的な項目:

業務の実態について:

  • 月に何時間、どんな形式(訪問/オンライン)で関与するのか
  • 実際にシステムや仕組みを作る(実装する)のか、提案書を出すだけなのか
  • AIツールの設定・カスタマイズまで対応するのか、それとも「使い方を教える」だけか
  • 社内の特定の業務フローを変えるところまで関与するのか

成果の定義について:

  • 何ができた状態を「成功」とするのか、事前に合意できるか
  • 数字で測れるKPIを設定できるか(例:○○業務の作業時間を○時間削減)

出口戦略について:

  • 顧問契約が終わった後、自社で運用を続けられる状態になるのか
  • 「自社で回せるようになるまでのロードマップ」を示せるか
  • 内製化を前提とした支援か、それとも顧問依存が前提か

ここで答えが曖昧だったり、「まずは始めてから考えましょう」という言葉で先送りされる場合は注意が必要だ。

ステップ4:契約書の内容を必ず確認する

口頭での約束だけで契約しない。

契約書で確認するポイント:

  • 業務内容(スコープ)が具体的に書かれているか。「AI活用支援全般」のような曖昧な表現は要注意
  • 解約条件と最低契約期間が明記されているか
  • 機密保持(NDA相当)の条項が含まれているか
  • 「期待した成果が出なかった場合」の取り決めがあるか
  • 追加作業が発生した場合の対応(スコープ外の扱い)が明記されているか

「詳細は追って協議」「柔軟に対応します」という言葉だけで具体的な記載がない契約書はリスクが高い。

信頼できるAI顧問が持っているもの

業務効率化に特化したエンジニアとして、実際に中小企業の現場に入ってきた立場から言うと、成果を出せる顧問には以下の特徴がある。

AIスキルと業務改善の両方の実践経験がある

AIの知識と、実際の業務を変えた経験は別物だ。ツールを使える人は多いが、実際の業務フローに組み込んで動かした経験がある人は少ない。

どんなAIツールを使えるかより、「どんな業務をどう変えた実績があるか」を確認する方が重要だ。

最初に業務の現状を聞く

初回の面談で「弊社のサービスでできること」を一方的に説明するだけの顧問は、現場に入ったことが少ない可能性がある。信頼できる顧問は、まず「今どんな業務をどうやっているか」を時間をかけて聞く。課題を理解してから提案するという順序だ。

契約終了後の自走を前提にしている

顧問に依存し続ける構造は、発注側にとって不利だ。「この期間でこの状態になれば自社で回せます」という出口を示せる顧問の方が、長期的には信頼できる。

失敗したケースも話せる

成功事例だけを語る顧問よりも、「こういうケースでうまくいかなかった、理由はこうだった」と言える顧問の方が信頼度は高い。全ての案件で成功するはずがない。それを正直に話せるかどうかは、誠実さのバロメーターになる。

費用の根拠を説明できる

「月額○万円です」と言うだけでなく、「この金額でこれだけの時間・作業を提供します、だからこの価格です」と説明できる顧問を選ぶ方が安心だ。

判断に迷ったときの相談先

一人で判断が難しいときは、第三者の意見を聞くのが有効だ。

無料または低コストで使える相談窓口:

  • よろず支援拠点:国が設置している中小企業向けの相談機関。全国に拠点があり、IT・デジタル化についての相談を無料で受け付けている
  • 商工会議所・商工会:地域の中小企業支援窓口。DX・IT導入についての相談員がいる場合がある
  • 中小企業診断士:IT経営についての知識を持つ診断士であれば、AI顧問選定のアドバイスが得られることがある

また、候補のAI顧問が1社だけなら、最低でもあと1〜2社と話して比較するべきだ。比較することで「この会社は事例が具体的だがあちらは抽象的」という違いが見えてくる。

判断チェックリスト

最後に、AI顧問を選ぶ前の確認項目をまとめる。

即座に断っていい(これに当てはまれば終了):

  • [ ] 成果を数字で確約している
  • [ ] 個人口座への振込を求められた
  • [ ] 法人登録が確認できない
  • [ ] 契約前に高額な費用を請求してきた

要確認(グレーゾーン判定):

  • [ ] 過去事例を「研修実施」「リテラシー向上」のレベルでしか話せない
  • [ ] 何をするかを聞いたら「柔軟に対応します」と言葉を濁された
  • [ ] 実装(実際に動くものを作ること)は範囲外と言われた
  • [ ] 契約書の業務範囲が「AI活用支援全般」のように曖昧

信頼できる可能性が高い:

  • [ ] 具体的な業種・課題・成果の実績を話せた
  • [ ] 契約後の自社運用に向けたロードマップを示せた
  • [ ] 業務内容・スコープが契約書に明確に記載されている
  • [ ] 失敗した事例も正直に話せた

まとめ

AI顧問の「怪しさ」には段階がある。

明らかな詐欺は法人登録の確認や契約内容の確認で排除できる。より難しいのは「詐欺ではないが価値が出にくいグレーゾーン」で、ここを見抜くには過去事例の具体性・業務範囲の明確さ・実装対応の有無が鍵になる。

「AI顧問が怪しい」という感覚は多くの場合正しい。ただ、適切な確認をした上で選べば、実際に業務が変わるサービスを見つけることはできる。

費用をかける前に、この記事で挙げた確認ステップを一つずつ踏んでほしい。

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