実用

中小企業の経理を外注する手順|準備から導入まで完全ガイド

「経理を外注したいが、何から始めればいいかわからない」

従業員10〜20人規模の会社でこの状況は多い。経理担当者が退職した、採用できない、経営者が自分でやっていて限界になった——どのケースでも、外注の手順は共通している。

この記事では、経理外注の準備から導入完了までを5つのステップで解説する。費用の目安と、外注後によくある失敗パターンも合わせて紹介する。

外注できる経理業務の範囲を把握する

まず、「経理のどこまでを外注できるか」を理解しておく。

外注できる業務

業務 内容
記帳・仕訳 領収書・通帳明細をもとに帳簿に入力する
請求書の発行・送付 売上請求書の作成と取引先への送付
請求書の受取・管理 仕入れ先からの請求書を受け取り、支払い期日を管理する
支払い代行 取引先への振込処理(銀行代理・ネットバンキング)
給与計算 月次給与の計算・明細作成・振込データ作成
年末調整 年末調整の計算・書類作成
月次試算表の作成 収支状況をまとめたレポートの作成

外注できない業務(税理士の独占業務)

税務申告・税務代理・税務書類の作成は、税理士法により税理士にしか行えない。経理代行業者に依頼できるのは「帳簿作成まで」であり、申告書類の作成は税理士が担う。

よくある体制の組み合わせ

  • 記帳代行業者 + 顧問税理士
  • 経理代行サービス(BPO)+ 顧問税理士(申告のみ)
  • 税理士事務所に記帳から申告まで一括依頼

外注前に決めておく3つのこと

業者に問い合わせる前に、以下を明確にしておく。これが曖昧なままだと、見積もりがバラバラになり比較できなくなる。

1. どの業務を外注するか

全部外注しようとすると費用が高くなる。以下の基準で切り分けると整理しやすい。

外注すべき業務(優先度が高い)

  • 経営者や社長自身がやっている業務(機会コストが高い)
  • 専門知識が必要で社内に知見がない業務(給与計算・税務周り)
  • ミスの影響が大きい業務(支払い漏れ・源泉税の計算誤り)

社内で対応できる業務

  • 経費精算(申請ルールを整備すれば担当者不要)
  • 日常的な領収書の整理(ファイリングまで社内でやって月末に渡す)

2. 月の取引件数を把握する

見積もりの基準になるのは、主に「月の仕訳件数(取引件数)」だ。

おおよその目安として、従業員10〜15人の会社では月100〜200件程度になることが多い。これを把握していないと、費用の比較ができない。

会計ソフトがある場合は、過去の月次レポートから取引件数を確認できる。ない場合は、通帳明細の行数をひと月分だけ数えるのが最も早い。

3. 現在使用している会計ソフトを確認する

業者によって対応ソフトが異なる。以下を事前に確認する。

  • freee / マネーフォワード クラウド会計 / 弥生会計 のどれか
  • そもそもクラウド会計ソフトを使っていない場合(Excelや紙)

クラウド会計ソフトを使っていない場合、多くの業者がソフト導入を前提条件にしている。導入コストと月額料金(freee:月額2,380〜、マネーフォワード:月額2,980〜)も予算に含める。

外注先の種類と特徴

外注先は主に3種類ある。依頼したい業務範囲と予算に応じて選ぶ。

記帳代行業者

記帳(仕訳入力・帳簿作成)に特化したサービス。費用を最小限に抑えたい場合に向いている。

  • 対応業務:記帳・試算表作成のみ
  • 費用:月5,000〜2万円(月100仕訳程度まで)
  • 注意点:税務申告は別途税理士に依頼が必要

税理士事務所(記帳から申告まで一括)

記帳代行と顧問(税務申告・相談)をまとめて依頼できる。窓口を一本化したい場合に向いている。

  • 対応業務:記帳・申告・税務相談
  • 費用:月2万〜5万円(申告料別途)
  • 注意点:給与計算・支払い代行は対応していない事務所が多い

経理代行サービス(BPO)

記帳だけでなく、給与計算・請求書管理・支払い代行までをまとめて依頼できる。経理業務をまるごと外注したい場合に向いている。

  • 対応業務:記帳 / 給与計算 / 請求書管理 / 支払い代行(範囲は業者による)
  • 費用:月3万〜15万円(業務範囲・件数による)
  • 注意点:コストは高いが、社内の工数をほぼゼロにできる

外注の手順:5ステップ

ステップ1:依頼内容と予算の目安を決める(1日)

上記「外注前に決めておく3つのこと」を整理する。

まとめておく情報:

  • 外注したい業務のリスト
  • 月の取引件数(概算で可)
  • 現在の会計ソフト名
  • 予算の上限(月額)

この情報があれば、問い合わせ時にすぐ見積もりをもらえる。

ステップ2:業者に問い合わせて見積もりを取る(1〜2週間)

複数の業者から見積もりを取る。最低でも2〜3社から比較する。

問い合わせ時に伝える情報

  • 会社の従業員数と業種
  • 月の取引件数(概算)
  • 依頼したい業務の範囲
  • 使用中の会計ソフト
  • 希望する開始時期

比較時に確認するポイント

  • 月額費用と含まれる業務の範囲
  • 試算表の提出タイミング(翌月15日以内が望ましい)
  • 担当者の固定制(変わるたびに引き継ぎが必要になる)
  • 証憑の提出方法(郵送 / スキャン・クラウドアップロード)
  • 追加料金が発生するケース(件数超過時の単価など)

ステップ3:業者を選定して契約する(1〜2週間)

見積もりが出たら内容を比較して業者を選ぶ。

費用だけで選ばない。「試算表の提出が遅い」「担当者がすぐ変わる」「対応が遅い」という不満が、経理代行での典型的な失敗パターンだ。

契約書の確認ポイント:

  • 契約期間と解約条件(最低3ヶ月〜1年の縛りがある場合がある)
  • 情報の取り扱い(機密保持条項があるか)
  • 費用の変更ルール(取引件数が増えた場合の単価)

ステップ4:引き継ぎ資料を準備する(1〜2週間)

業者が決まったら、業務移行のための資料を準備する。

引き継ぎ時に渡す情報・データ

  • 会計ソフトのアクセス権限の付与
  • 取引先リスト(請求書の送付先・締め日・支払い方法)
  • 過去の仕訳データ(最低でも直近1年分)
  • 毎月の業務フロー(何日に何をするか)
  • 既存のルール・仕訳の慣習(勘定科目の使い方など)

引き継ぎ資料が整っているほど、初月からの業務品質が上がる。「資料が何もない状態」でも受けてくれる業者はあるが、最初の1〜2ヶ月は精度が低くなることを想定しておく。

ステップ5:初月の確認と定常化(1〜2ヶ月)

最初の1〜2ヶ月は、業者から上がってくる試算表や請求書の内容を経営者自身で確認する。

確認すべきポイント

  • 仕訳の勘定科目が適切か(特に経費の分類)
  • 試算表の数字が実態と合っているか
  • 提出期限が守られているか

気になる点があれば、この段階でフィードバックする。担当者との認識をすり合わせる期間だと考える。

2ヶ月目以降に問題がなければ、確認作業を税理士に任せて経営者はほぼノータッチにできる。

費用の目安(従業員規模別)

従業員数 月の取引件数目安 外注費用の目安(記帳のみ) BPO(記帳+給与+支払い)
5〜10人 50〜100件 5,000〜1万5,000円 3万〜6万円
10〜20人 100〜200件 1万〜2万5,000円 5万〜10万円
20〜30人 200〜400件 2万〜4万円 8万〜15万円

※業種・業務内容・クラウド対応の有無によって変動する。上記は概算。

外注前後のコスト比較(従業員10人の例)

対応方法 月額コスト リスク
経営者が自分でやる(月5時間) 約1万5,000円(時給3,000円換算の機会コスト) 精度・抜け漏れのリスクあり
パートを1名採用 8万〜12万円(交通費・保険料含む) 採用コスト30〜50万円が別途必要
記帳代行に外注 1万〜2万円 担当者変更・試算表遅延のリスク
BPO(経理フルアウトソース) 5万〜10万円 初期設定・引き継ぎに時間がかかる

従業員20人以下の規模では、採用よりも外注の方がコストを抑えやすい。採用が必要になるのは、月の業務量が専任社員のフルタイムを必要とする段階(おおむね月200時間以上)になってからだ。

外注後に失敗しないための3つのポイント

1. 試算表の提出タイミングを契約前に確認する

多くの経理代行業者は翌月15〜25日に試算表を提出する。月末締め・翌月末提出という業者は、数字の確認が1ヶ月以上遅れることを意味する。経営判断に使えない。「翌月15日以内」を基準にして業者を選ぶ。

2. 担当者が変わったら最初から確認し直す

担当者の交代は、仕訳ミスや対応遅延の最大の原因になる。担当者が変わった時点で、主要な取引先と仕訳ルールを口頭で確認し直す手間を惜しまない。

3. 丸投げにしない:月に1回は数字を確認する

「外注したから何もしなくていい」ではない。月次試算表を受け取ったら、売上・経費・利益の3つだけでも毎月確認する習慣を持つ。数字への関与をゼロにすると、異常があっても気づかなくなる。

まとめ:外注の手順は5ステップ

経理を外注する手順を整理すると以下になる。

  • 依頼業務と取引件数・予算を整理する
  • 2〜3社から見積もりを取る
  • 費用だけでなく対応品質で業者を選ぶ
  • 引き継ぎ資料を準備して渡す
  • 初月〜2ヶ月はフィードバックして品質を固める

最初の準備を丁寧にするほど、定着後の手間が少なくなる。「何を外注するか」さえ決めれば、あとは業者が進めてくれる。

経理の外注費用について詳しく知りたい方は、経理代行の費用を実例で公開|従業員規模別の月額料金まとめもあわせてご覧ください。

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