事務代行・外注

経理代行の費用を実例で公開|従業員規模別の月額料金まとめ

著者:野原琉海(業務効率化に特化したエンジニア)

「経理を外注したいが、いくらかかるか分からない」

この一言で外注の検討が止まっている経営者に、何十人も会ってきた。相場が分からないと動けない気持ちは分かる。ただ、調べれば30分で分かることが、検討開始を3ヶ月以上遅らせている現場を何度も見てきた。

この記事では、経理代行の費用を従業員規模別の実例でそのまま公開する。「5人規模だとこのくらい」「15人規模だとこのくらい」という数字を具体的に整理した。正社員を採用した場合との費用比較と、業者選びで押さえておくべきポイントも合わせて書く。

経理代行の費用は「業務の積み上げ」で決まる

経理代行の料金は、委託する業務ごとに積み上がる構造になっている。パッケージ一括ではなく、必要な業務を選んで組み合わせる仕組みだ。

業務 料金の基準 月額目安
記帳代行(入力・仕訳) 仕訳件数 1万〜4万円
給与計算 従業員数 8,000〜3万円
請求書の発行・管理 件数 3,000〜1万円
支払い処理(振込代行) 件数・金額 5,000〜2万円
月次試算表の作成 固定 1万〜3万円
決算書の作成 年1回 5万〜20万円
社会保険手続き 手続きごと 5,000〜1万円/件

この表を見ると、「記帳代行だけ」と「全部まとめて」では費用が大きく変わることが分かる。全ての業務を一気に外注しようとすると初期費用と調整コストが増える。業務効率化の支援をしていて顧問先の経営者によく伝えるのは「まず記帳代行だけ試す」という段階的なアプローチだ。全部決めてから始めようとすると動けなくなる。

一つ注意点がある。記帳代行の料金は「仕訳件数」で決まることが多い。月50仕訳以下なら月5,000〜1万円程度、月200仕訳を超えると2万〜4万円程度になる。自社の取引件数を把握してから見積もりを取ると、想定外のコストを防げる。

従業員規模別の費用実例

従業員5人以下の会社:月1〜2万円が目安

月間の取引件数が少なく、給与計算も小規模なケース。記帳代行と給与計算だけ外注するなら、月1〜2万円に収まることが多い。

委託業務の想定

  • 記帳代行(月50〜80仕訳)
  • 給与計算(5名分)
業務 月額費用
記帳代行 5,000〜1万円
給与計算(5名) 5,000〜1万円
合計 1万〜2万円

決算書の作成は税理士に年1回依頼する形が一般的で、別途5〜15万円がかかる。月額2万円の外注費 + 年1回の決算対応(10万円)で、年間34万円程度が目安になる。

この規模で「外注が高い」と感じる経営者に多いのは、決算費用と月額外注費を混同しているケースだ。月次の記帳代行費用と、年1回の税務申告・決算書作成費用は別物だ。この2つを分けて考えるだけで、費用感がかなり整理される。

従業員10〜15人の会社:月3〜6万円が目安

仕訳件数が月100〜200件程度に増え、給与計算の手間も増える。社会保険の手続きや有給管理が加わることも多い。

委託業務の想定

  • 記帳代行(月100〜150仕訳)
  • 給与計算(12名分)
  • 月次試算表の作成
業務 月額費用
記帳代行 1万〜2万円
給与計算(12名) 1.2万〜2.5万円
月次試算表 1万〜2万円
合計 3万〜6万円

この規模が中小企業で最も多いパターンだ。月3〜6万円で専門家に任せられる。

実際に支援してきた会社の例を出すと、従業員12人の建設業の会社で、経理担当が退職して空席になったタイミングで外注に切り替えたケースがある。月4万円で記帳・給与計算・試算表を外注して、採用コスト(人材紹介手数料で年収の30〜35%が相場)と採用後の人件費を丸ごと節約できた。採用に踏み切る前に「まず3ヶ月外注で回してみる」という判断が機能した。試算表の数字で毎月の経営状況を把握できるようになり、「採用より外注の方が本業に集中できる」という判断に至った。

従業員20〜30人の会社:月7〜14万円が目安

月の仕訳件数が200〜400件以上になり、請求書の管理や支払い処理の量も増える。経理業務をほぼフルアウトソーシングするケースも出てくる。

委託業務の想定

  • 記帳代行(月200〜400仕訳)
  • 給与計算(25名分)
  • 請求書の発行・管理
  • 支払い処理(振込代行)
  • 月次試算表の作成
業務 月額費用
記帳代行 2万〜4万円
給与計算(25名) 2.5万〜5万円
請求書管理 5,000〜1万円
支払い処理 1万〜2万円
月次試算表 1万〜2万円
合計 7万〜14万円

業務をフルアウトソーシングしても月10〜15万円程度に収まることが多い。この規模になると「専任の経理担当者を入れた方がいいのか」という判断が出てくるが、後述の正社員採用との比較を見てから判断してほしい。

正社員採用との費用比較

「外注より採用の方が安い」と思っている経営者に、何十人も会ってきた。経営者の感覚からすると「人を1人雇って月20万円払えば足りる」というイメージがあるが、実際には正社員採用は月40万円を超えることが多い。

経理担当者を正社員で採用した場合のコスト(年収350万円の場合)

費用項目 月額目安
給与(月額) 29万円
社会保険料(会社負担分・約15%) 4〜5万円
賞与(年2回・計2ヶ月分を月割り) 4.8万円
採用費用の月割り換算※ 2〜4万円
合計 40〜43万円/月

※求人サイト掲載費または人材紹介手数料(年収の30〜35%が相場)を24ヶ月で割った場合

これを外注費用と比較すると、従業員15人規模の会社では月3〜6万円の外注費に対し、正社員採用では月40〜43万円かかる。差額は月35〜40万円、年間420〜480万円になる。

従業員規模 外注費用(月額) 正社員採用(月額)
5人以下 1万〜2万円 40〜43万円
10〜15人 3万〜6万円 40〜43万円
20〜30人 7万〜14万円 40〜50万円

ただし、正社員採用が合理的になるタイミングもある。月の経理業務量が増えて「代行費用が正社員の給与に近づいてくる」段階(目安として従業員50人以上・仕訳件数月500件超)になると、費用差が縮まる。従業員30人以下であれば、コスト面では外注が有利になりやすい。

「外注か採用か」の判断は、費用だけでなく業務の中身でも変わる。経理の判断業務(月次で数字を見て経営報告するなど)まで社内でやりたいなら、専任担当者が必要になることもある。一方、入力・仕訳・給与計算のような定型業務は外注で十分回せる。この選択肢の整理については経理が採用できない中小企業の選択肢|採用コストvs外注コスト比較でも詳しく書いているので参照してほしい。

段階的に外注する手順:最初は記帳だけでいい

全ての業務を一気に外注しようとすると、初期の費用と調整コストが増える。最初は記帳代行だけを外注し、慣れてきたら給与計算、次に請求書管理と段階的に拡大する方法が失敗が少ない。

3ステップで進める外注の拡張手順

Step 1:まず記帳代行のみ依頼(月1〜2万円)

仕訳入力・帳簿管理を外注する。社内の担当者の手間が大幅に減り、税理士との打ち合わせも効率化される。最初の1ヶ月は「業務の受け渡し方法」を確認しながら進める。

Step 2:記帳が安定したら給与計算を追加(月+1〜2万円)

記帳の流れが安定したら給与計算を追加する。給与計算は法律が変わるたびに対応が必要なため、専門家に任せる方が精度とスピードが上がる。

Step 3:月次試算表・決算書まで委託(外注フル活用)

ここまで来ると、専任の経理担当者がほぼ不要な状態になる。月次試算表が毎月10日以内に届く体制ができれば、経営判断のサイクルが大幅に変わる。

この順序で進めると、委託先との連携方法を確認しながら進められる。一気に全部委託すると、最初から業務の流れが複雑になりやすい。

「まず記帳だけ外注して様子を見る」という判断は、外注を検討している経営者に対して毎回伝えることだ。月1〜2万円の費用で試してみて「こういう連携になるんだ」という感覚を掴んでから、外注範囲を広げるかどうかを判断する方が現実的だ。記帳代行を外注した後、月次試算表の数字をどう経営判断に使うかの整理については中小企業の経理を外注する手順|準備から導入まで完全ガイドにまとめているので参照してほしい。

経理代行先を選ぶときの確認ポイント

費用だけを見て選ぶと、後から「こんなはずではなかった」という事態が起きる。実際に複数の失敗例を見てきた。

1. 対応している会計ソフト

freee・マネーフォワード・弥生会計など、自社で使っているソフトに対応しているか確認する。ソフトが異なると移行コストが発生する。「自社はfreeeを使っているが、代行会社は弥生会計専門だった」というケースで、データ移行に追加費用がかかった話を聞いたことがある。マネーフォワード対応の代行についてはマネーフォワード対応の経理代行3選|月3万〜10万円の費用比較【2026年版】でまとめているので参考にしてほしい。

2. 月次試算表の提出頻度と形式

月次試算表をいつ、どの形式で提出してもらえるかを事前に確認する。試算表が翌月15日以降になると経営判断に使えない。毎月5〜10日以内に提出できるかどうかを確認する。

実際に見た失敗例で最も多いのが「試算表の提出が遅くて経営判断に使えない」問題だ。月末の数字が翌月末に届くような業者を選ぶと、数字で経営判断するという目的が果たせない。「試算表の提出は毎月何日までか」は必ず確認してほしい。

3. 担当者の固定制か否か

担当者が頻繁に変わるサービスは、業務のたびに説明が必要になる。中小企業の場合、業種や自社固有の取引パターンが複雑なことが多く、担当者が変わるたびに「うちの業種はこういう特殊な取引がある」と説明し直す手間が発生する。

4. 引き継ぎ支援の有無

現在の経理担当者から引き継ぎが発生する場合、引き継ぎ支援をしてくれるかを事前に確認する。引き継ぎ期間中はダブルコスト(既存担当者の人件費 + 外注費用)が発生するため、引き継ぎサポートが無料か有料かも確認しておく。

5. 業務範囲と追加費用の基準

「仕訳件数が増えた場合の追加料金」「イレギュラーな処理が発生した場合の扱い」を事前に確認する。月額固定の契約でも、繁忙期に仕訳件数が増えたタイミングで追加費用が発生するケースがある。

費用感のリアル:顧問先で見てきたこと

業務効率化に特化したエンジニアとして中小企業の経理周りを支援した経験から言うと、経理代行の費用に関して「思ったより安かった」という反応が圧倒的に多い。

よくあるパターンは、経営者が「経理を外注すると月20〜30万円かかる」というイメージを持っていることだ。大手の経理アウトソーシング会社のフルパッケージ価格だけが印象に残っているためだ。実際には従業員15人規模であれば、記帳と給与計算だけで月3〜5万円に収まるケースがほとんどだ。

「外注した方が安かっただけでなく、精度が上がった」という話も複数聞いている。専任の経理担当者がいない会社では、会計知識のない総務担当が兼業で記帳をしていることが多い。入力ミスや仕訳の誤りが出やすい。外注に切り替えることで、仕訳の精度が上がり、月次決算が締まる速度も上がった、という変化だ。

逆に「外注にして失敗した」というパターンも見てきた。最も多いのは試算表の提出遅延の問題だが、もう一つ多いのが「担当者が変わりすぎる業者を選んだ」ケースだ。安い費用に釣られて選んだ結果、毎月担当者が異なり、説明コストが逆に増えてしまった。費用だけでなく「担当者の安定性」も業者選びの重要な指標だ。

「一人経理が抱える属人化リスク」と外注の関係については一人経理が退職する前に会社がやるべきリスク対策でも整理しているので参照してほしい。

まとめ:外注コストは思ったより安い

経理代行の費用感を改めて整理する。

従業員規模 外注費用(月額) 年額換算 正社員採用との差額(年間)
5人以下 1万〜2万円 12万〜24万円 約460万円の節約
10〜15人 3万〜6万円 36万〜72万円 約430万円の節約
20〜30人 7万〜14万円 84万〜168万円 約350万円の節約

正社員採用(年収350万円、採用コスト込みで年間500万円超)と比較すると、従業員30人以下では外注の方がコストを大幅に抑えられる。

動けないでいるなら、まず記帳代行だけ試してみることを勧める。月1〜2万円で始めて「外注でどう変わるか」を3ヶ月で確かめてみるのが現実的だ。全部決めてから動こうとすると、いつまでも始まらない。

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