事務代行サービスの費用は「月1万〜30万円」と書いている記事が多い。あの幅では何も判断できない。
実際の費用は、どの業務を・何時間・どんな体制で依頼するかによって変わる。月10時間の定型業務か、月50時間の複合業務かでは、金額も選ぶべきサービスの種類も違う。
業務効率化に特化したエンジニアとして中小企業の外注・ツール導入に関わる中で、「事務代行を検討しているが費用感がつかめない」という声をよく聞く。この記事では従業員5〜50人規模の中小企業が事務代行を使う場面を想定して、業務別の費用相場、パート採用との費用比較、選ぶときの確認ポイントを整理する。
事務代行で依頼できる業務の範囲
「事務代行」「オンラインアシスタント」「バックオフィス代行」など似た名前のサービスが複数あるが、対応できる業務の範囲はほぼ重なっている。
依頼できる主な業務:
- 一般事務: データ入力、書類作成、資料整理、メール対応、電話対応
- 経理補助: 請求書処理、仕訳入力、経費精算、入出金管理の補助
- 営業事務: 見積書作成、顧客管理システムへの入力、受発注処理
- 秘書・総務: スケジュール調整、会議準備、備品管理、郵便物対応
依頼できない業務:
- 税務申告(税理士の独占業務)
- 登記・許認可申請(司法書士・行政書士の業務)
- 対面が必須な業務(来客応対、現物確認を伴う作業)
「何でも対応します」と言うサービスほど、依頼後に「その業務は対応範囲外でした」となるリスクがある。依頼前に具体的な業務名を出して確認しておく。
オンライン型と常駐型の違い
費用に大きく影響するのがこの区分だ。
オンライン型(リモート): パソコン上で完結できる業務に対応する。データ入力・書類作成・メール対応・クラウド上の経理処理など。業務のデジタル化が進んでいる会社であれば、多くの事務作業はオンライン型で対応できる。費用は常駐型より安い傾向がある。
常駐型: 担当者が会社に来て対応する形式。来客応対・郵便物の仕分け・電話受付など、現地でないと対応できない業務向け。費用はオンライン型より高くなる。
まずオンライン型で対応できる業務から始めて、どうしても現地対応が必要な業務だけ別の手段を検討するのが費用を抑えやすい順序だ。
事務代行の費用相場
時間単価の目安(業務カテゴリ別)
| 業務カテゴリ | 時間単価の目安 |
|---|---|
| データ入力・書類作成などの一般事務 | 1,000〜2,500円 |
| 請求書処理・経費精算などの経理補助 | 2,000〜4,000円 |
| 秘書業務・スケジュール管理など | 3,000〜5,000円 |
| 給与計算・社会保険手続きなどの人事労務 | 3,000〜5,000円 |
専門知識が不要な一般事務は単価が低く、経理・人事・秘書業務になるほど高くなる。この単価に依頼時間数をかけた金額が月額の目安になる。
月額の目安(月間利用時間別)
| 月間利用時間 | 月額の目安 | どのくらいの業務量か |
|---|---|---|
| 月10〜20時間 | 2〜5万円 | 週2〜5時間。請求書処理・データ入力など定型業務のみ |
| 月30〜50時間 | 5〜15万円 | 週7〜12時間。経理補助と一般事務を並行 |
| 月80時間以上 | 15〜30万円 | ほぼ専任に近い依頼量。複数業務を一括 |
多くの中小企業が最初に選ぶのは月20〜30時間のプランだ。「毎週5〜7時間ほどの定型業務を外に出したい」という規模感に相当する。
コース制と従量制の違い
事務代行の料金体系は主に2種類ある。
コース制(時間数プラン): 月20時間コース・月50時間コースなど、時間数をまとめて購入する。使い切らなかった時間が翌月に繰り越せるかどうかはサービスによって異なる。繰り越せないサービスでは、使わなかった時間分が無駄になる。
従量制(時間単価型): 使った時間だけ支払う。業務量が月によって変動する場合に向いているが、単価はコース制より高めになることが多い。
パート採用との費用比較
「事務代行に月5万円払うなら、パートを雇った方が安くないか」という疑問は自然だ。しかし時給だけで比較すると判断を誤る。採用側のコスト全体を含めて比べる必要がある。
トータルコストの比較
| 比較軸 | 事務パート(週10時間程度) | 事務代行(同等の時間数) |
|---|---|---|
| 時給・単価 | 1,000〜1,300円(地域差あり) | 1,500〜3,000円(業務による) |
| 社会保険料(会社負担) | 条件による(勤務時間・月収により加入義務が変わる) | なし |
| 採用コスト | 求人掲載費・面接・選考の手間 | なし(初期費用のみ) |
| 教育・引き継ぎ | 最初の数ヶ月は発生する | 最小限 |
| 欠員リスク | 退職・病欠で業務が止まる | 代替スタッフが対応 |
時給換算では事務代行の方が高くなるケースが多い。しかし採用コスト・社会保険・教育コストを加算すると、月30〜40時間以下の業務量であれば事務代行の方がトータルで安くなる場合がある。
採用コストの影響は特に大きい。求人を出して面接し採用に至るまでには時間とコストがかかる。採用後に辞められれば、また同じプロセスが発生する。業務量が少なく、業務の変動もある場合には、採用の固定コストを避けられる事務代行の方が合理的なケースが多い。
どちらを選ぶか判断する基準
- 月30時間以下の業務量: 事務代行の方が費用合理性が高いことが多い
- 月50時間以上で業務内容が固定している: パート採用を検討する余地がある
- 業務量に繁閑の波がある: 時間数を柔軟に増減できる事務代行が向いている
- 機密性が高い・現地対応が多い業務: 常駐型か採用の方が適している
依頼前に整理しておくこと
事務代行を入れて「思ったより使えなかった」という結果になる会社に共通するのは、渡せる状態になっていない業務を外注しようとすることだ。
口頭でしか説明できない手順、担当者だけが知っている業務フロー、特定のExcelファイルにしか情報がない状態では、代行サービスに渡せない。渡しても品質が安定しない。
依頼前の業務棚卸し
最低限、以下を整理してから問い合わせる。
- 依頼したい業務の名前と月間作業時間の実績
- 作業手順が文書化されているか(口頭ルールが残っていないか)
- 使用しているツール・システムの種類(freee・マネーフォワード・kintoneなど)
- デジタル化されていない書類があるか(紙・FAX・手書き)
この4点を整理するだけで、「どのサービスが自社に合うか」の判断がしやすくなる。見積もりを取る際も、依頼内容が具体的であるほど金額のブレが少なくなる。
ツールで代替できる業務を先に仕分ける
事務代行の費用を抑えるために有効なのが、ツールで自動化できる業務を先に仕分けることだ。
例えば請求書の発行・送付はクラウド会計ソフトや請求書管理ツールで自動化できることが多い。その業務を事務代行に出すと月5〜10時間分の費用が発生するが、ツールで解決すれば固定費だけで済む。
「人に頼むべき業務」と「ツールで解決できる業務」を分けた上で、残った業務を事務代行に依頼する順序を取ると、依頼量を絞ってコストを抑えやすい。
選ぶときの確認ポイント
対応できる業務とツールの確認
自社が依頼したい業務に具体的な実績があるかを確認する。「経理補助に対応しています」だけでなく、「freeeを使った仕訳入力の実績はあるか」「月何件程度の処理経験があるか」まで聞いた方がいい。
自社で使っているツールへの対応可否も必ず確認する。ツールが違えば使い方の学習から始まり、最初の数ヶ月は品質が安定しない場合がある。
契約条件を書面で確認する
口頭説明だけで契約を進めて後から気づくことが多いのが以下の条件だ。
- 最低契約期間: 3〜6ヶ月の縛りがあるサービスが多い。試してみて合わなくてもすぐ解約できない
- 解約の通知タイミング: 「解約の1ヶ月前までに通知が必要」など締切がある場合がある
- 時間の繰り越し: 月の利用時間を使い切らなかった場合に翌月へ繰り越せるか
- 担当者の交代体制: 担当者が変わった場合の引き継ぎはどう行われるか
特に最低契約期間は要確認だ。「試しに使ってみて合わなければやめよう」と思って契約したのに、3〜6ヶ月の縛りがあって解約できないという状況は実際に起きている。
情報管理体制の確認
事務作業には請求書・経費・取引先情報など機密性の高い情報が含まれる。プライバシーマーク(Pマーク)やISMS認証を取得しているかを確認する。認証がない場合は、情報管理のルールや体制を具体的に聞いて判断する。
まとめ
事務代行の費用相場と選び方を整理した。
- 時間単価は業務カテゴリによって1,000〜5,000円の幅がある
- 月10〜20時間のプランで2〜5万円が目安
- 月30時間以下の業務量なら、採用コスト込みで比較すると事務代行が有利になるケースが多い
- 最低契約期間・解約条件・担当者体制は必ず書面で確認する
- 外注前に業務の棚卸しとデジタル化を進めておくと、スムーズに始めやすい
次のアクションは、まず自社の月間事務作業時間を計測することだ。「だいたい20時間くらい」という感覚ではなく、1週間でいいので実際に記録してみる。その数字があれば、複数社に相見積もりを取った時に比較しやすくなる。