事務代行・外注

バックオフィスを全部外注できる?|費用5万〜15万円の依頼先3選【2026年版】

著者:野原琉海(業務効率化に特化したエンジニア)

「経理も、総務も、人事の事務作業も、全部まとめて誰かに任せたい」

こう思っている経営者は多い。実際、顧問先の経営者から「バックオフィスを丸投げしたい」という相談を受けることはよくある。しかし「どこまで外注できるか」「何を社内に残すべきか」「費用はどの程度か」が分からないまま動けずにいるケースが多い。

この記事では、バックオフィスをまとめて外注したい中小企業向けに、以下を整理する。

  • 外注できる業務の範囲と社内に残す業務の線引き
  • 従業員規模別の費用目安
  • 依頼先3パターンの比較と選び方
  • 丸投げで失敗しやすいパターンと防ぎ方
  • 最初にどの業務から始めるか

バックオフィスで「外注できる業務」と「外注すべきでない業務」

バックオフィスをまとめて外注する前に、まず業務の仕分けをしておく必要がある。外注できる業務とそうでない業務を混同したまま進めると、後から「これは対応できない」と言われてやり直しになる。

外注できる業務の一覧

バックオフィス代行サービスが通常対応できる業務は以下のとおりだ。

経理・財務

  • 日次の記帳・仕訳入力
  • 請求書の発行・受取・管理・保存
  • 給与計算・明細発行
  • 年末調整の補助作業
  • 月次試算表の作成
  • 決算補助・資料整理

労務

  • 入社・退社時の手続き(雇用保険・社会保険の加入・喪失手続き)
  • 勤怠データの集計・管理
  • 年次有給休暇の管理
  • 社会保険料の計算確認

総務・一般事務

  • データ入力・ファイリング
  • 書類の作成・送付
  • 問い合わせ対応の受付・振り分け
  • 発注・納品管理補助

採用事務

  • 求人票の作成・更新
  • 応募者の受付・選考日程の調整
  • 選考書類の準備・管理

これらを一社にまとめて依頼するのが「バックオフィスの丸投げ」に近い状態だ。

社内に残した方がいい業務

重要なのは「全部が外注できるわけではない」という理解だ。以下の業務は、仕組み的・法律的な理由で社内に残した方がいい。

業務 社内残しの理由
銀行振込の最終承認 不正・誤送金のリスク管理。振込データの作成は外注可能だが最終確認は内部で行う
経営判断を伴う意思決定 採用の最終決定、取引先との価格交渉、役員報酬の決定など
法人印・実印の管理 印鑑を外部に預けると契約リスクが発生する
機密情報の最終判断 競合他社との関係、M&A情報など戦略的な情報の取り扱い

業務の「作業部分」は外注できても、「判断部分」は外注できない。ここを混同すると、後から困る。

業務効率化に特化したエンジニアとして顧問先をサポートしてきた経験から言うと、「全部まかせる」という依頼をした会社で、1ヶ月後に「経営判断が必要な部分は対応できない」と言われて混乱するケースを何度も見てきた。業務の仕分けを最初にやっておくと、こういう齟齬を防げる。

従業員規模別の費用目安

バックオフィスをまとめて外注した場合の月額費用は、従業員数と依頼業務の範囲によって変わる。以下は規模別の目安だ。

従業員規模 外注する主な業務 月額目安
5〜10人 記帳+給与計算+入退社手続き 5万〜15万円
10〜20人 経理全般+労務+採用事務 10万〜25万円
20〜30人 経理+労務+総務+採用事務(フル対応) 20万〜40万円

この数字は、オンラインアシスタント型やバックオフィス代行会社の相場をベースにしている。税理士と社労士に分けて依頼するパターンだと、同じ業務範囲でも月3万〜8万円から対応できるケースがある。

よく「外注は高い」と言う経営者がいる。しかし正社員1人を採用した場合の総コスト(給与+社会保険料+採用コストを月換算すると月35〜50万円)と比較すれば、月5〜15万円の外注費は割安だ。採用して定着させるまでのリスクも含めると、外注の方がコストコントロールしやすい。

詳細な業務別の費用内訳はバックオフィス代行の費用相場|業務別の料金目安と選び方にまとめているので、あわせて参照してほしい。

依頼先3パターンの比較と選び方

バックオフィスの外注先は大きく3つのパターンに分かれる。それぞれの特徴を比較する。

依頼先 対応業務 費用目安(月額) 向いている会社
オンラインアシスタント(フジ子さん・HELP YOU・CASTER BIZなど) 一般事務・データ入力・書類作成・問い合わせ対応 3万〜10万円 事務作業量を減らしたい・専門性より手軽さ重視
バックオフィス代行会社(バックオフィスフォースなど) 経理・労務・総務をまとめて引き受け 10万〜40万円 業務量が多く一社にまとめて任せたい
税理士+社労士の組み合わせ 経理・決算(税理士)+給与計算・社保手続き(社労士) 3万〜8万円 専門業務を確実に対応してほしい・コスト抑えたい

オンラインアシスタント

フジ子さん・HELP YOU・CASTER BIZなどが代表的だ。幅広い事務作業に対応できるオールラウンダー型で、記帳・データ入力・書類作成・問い合わせ対応などをまとめて依頼できる。

ただし、高度な会計処理(決算など)や社会保険の専門手続きは対応範囲外のことが多い。社会保険の加入・喪失手続きや年末調整の最終処理は、社労士や税理士の資格が必要なため、オンラインアシスタントでは対応できない。

担当者が固定されているかどうかはサービスによって異なる。担当者が変わるたびに業務の説明をやり直すことになると、結果的に経営者の工数が増える。契約前に「担当者固定制か」を必ず確認することを勧める。

バックオフィス代行会社

経理・労務・総務をまとめて引き受けることを専門にする会社だ。freee・マネーフォワードなどのクラウド会計ソフトへの対応、電子帳簿保存法対応まで含めてサポートされるケースが多い。

コストはオンラインアシスタントより高いが、業務範囲が広く、専門性の高い処理も対応できる。「経理と労務を別々に発注管理したくない」「窓口を1社に絞りたい」という経営者に向いている。

税理士+社労士の組み合わせ

経理・決算を税理士に、給与計算・社会保険手続きを社労士に依頼するパターンだ。資格が必要な専門業務を確実にカバーでき、法的な判断が必要な場面でも対応してもらえる。

費用は3種の中では最安値帯になりやすい。ただし、日常の事務作業(書類整理・データ入力など)は対応外になることが多い。「専門業務は外注したいが一般事務は社内でやれる」という場合はこのパターンが一番コスパがいい。

丸投げで失敗するパターンと防ぎ方

バックオフィスをまとめて外注しようとして失敗するケースには、共通のパターンがある。

失敗パターン1:最初から全業務を一度に引き渡す

「全部まとめて」と動こうとすると、引き継ぎの準備だけで2〜4ヶ月かかることがある。業務の量が多いほど、現状把握・ルール整備・ツール設定に時間がかかる。

経理担当が退職しているなど緊急の場合を除き、最初は記帳や給与計算など定型作業から始め、安定してから範囲を広げる方が現実的だ。

失敗パターン2:社内の窓口担当者を決めていない

外注先との連絡を経営者自身が担当し続けると、結局「経営者の手間が増えた」という状態になる。外注をしても、確認・判断・連絡の工数が経営者に集中してしまうパターンだ。

外注先との窓口は社内の1人に任せる。経営者が直接対応するのは「意思決定が必要な場面」だけにする。

僕が顧問先で見てきたケースで多いのは、外注開始直後に「経営者しか判断できない事項」が次々と出てきて、結局経営者が毎日対応しているというパターンだ。「何を外注先が判断していいか」「何を必ず社内判断するか」をルール化しておくと、これを防げる。

失敗パターン3:セキュリティ確認を省略する

財務データや従業員の個人情報を外部に渡すことになるため、委託先のセキュリティ体制の確認は必須だ。

最低限確認すること:

  • プライバシーマークまたはISO27001の取得有無
  • 秘密保持契約(NDA)の締結
  • データの保管・廃棄方法
  • 担当者変更時の情報引き継ぎルール

外注先の選定を急ぎすぎて、セキュリティ確認を省略してしまうケースを複数見てきた。後から情報漏洩が発覚したときのダメージは、外注コストの削減効果を大きく上回る。外注で失敗する中小企業の共通パターンと防ぎ方も参考にしてほしい。

最初の一歩:どの業務から始めるか

「全部まとめて」と考えると動けなくなる。最初の一歩として始めやすい業務は2つある。

記帳・給与計算(経理の基本)

毎月必ず発生する定型作業で、外注の効果が出やすい。費用も月3〜5万円と手が届きやすく、引き継ぎの準備も比較的シンプルだ。

会計ソフト(freee・マネーフォワード)がすでに使われている会社なら、ソフトへの招待権限を付与するだけで引き継ぎが始められる。引き継ぎ期間の目安は2〜4週間だ。

入退社手続き(労務)

採用・退職のたびに発生し、手続きのミスが法律違反に直結するため、専門家に任せると安心感がある。費用も月1〜3万円が相場だ。

特に「一人担当者が労務を全部抱えている」という会社は要注意だ。その人が退職すると、社会保険の手続きが止まって法的なトラブルになる。一人経理・一人総務の属人化リスクについては一人経理が退職する前に会社がやるべきリスク対策で詳しく解説している。

「最初から全業務を外注する」と決めなくていい。まず1つ試して、委託先との関係が安定してから範囲を広げる。

業務効率化のツールと外注を組み合わせる考え方

バックオフィスの問題を「外注だけ」で解決しようとすると、費用が必要以上に膨らむケースがある。外注に向いている業務とツールで解決できる業務を分けて考えると、コストを抑えられる。

業務の種類 適切な解決策 コスト目安
繰り返し発生する定型作業(記帳・データ入力) ツール(クラウド会計)で自動化 月1万〜3万円
判断が必要な業務(給与計算・手続き) 専門家(税理士・社労士)への外注 月3万〜8万円
雑多な事務作業(書類作成・問い合わせ対応) オンラインアシスタントへの外注 月3万〜10万円
リスクが高い専門業務(決算・社会保険) 専門家(税理士・社労士)への外注 月2万〜5万円

自社では月3.5万円のツール代で、記帳・請求書管理・コンテンツ制作・顧客管理の大半を回している。ツールで自動化できる部分を外注してしまうと、費用が3〜5倍になる。外注の前にツールで対応できないか検討することを勧める。

業務効率化の考え方として「まず一番しんどい業務を1つ特定して、外注かツールか採用かを判断する」というアプローチを業務効率化は何から始める?最初の一歩を具体的に解説でまとめているので、全体の優先順位を考えたい方はこちらも参照してほしい。

まとめ

バックオフィスの丸投げは現実的に可能だが、業務の線引きと依頼先の選択を間違えると費用と手間が増える。

外注できる業務:記帳、給与計算、請求書管理、労務手続き、一般事務

社内に残す業務:振込の最終承認、経営判断が絡む意思決定、法人印の管理

費用の目安(月額)

  • 5〜10人規模:5万〜15万円
  • 10〜20人規模:10万〜25万円
  • 20〜30人規模:20万〜40万円

依頼先の選び方

  • 事務作業量を減らしたい → オンラインアシスタント(月3万〜10万円)
  • 経理と労務をまとめて一社に → バックオフィス代行会社(月10万〜40万円)
  • 専門業務を確実に、コストも抑えたい → 税理士+社労士(月3万〜8万円)

最初から全業務を丸投げするより、まず記帳か入退社手続きの1つから始めて、外注先との関係が安定してから範囲を広げる方が失敗が少ない。

外注先の選定については中小企業の経理を外注する手順|準備から導入まで完全ガイドでも具体的な手順をまとめているので、あわせて参照してほしい。

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