著者: 野原琉海(株式会社ラズリ代表)
先日、うちのおじいちゃんからこんな話を聞いた。おじいちゃんは70代で未だに現役の行政書士をやっている。
「知り合いの行政書士がさ、『うちもAI使ってるよ』って言うから、何に使ってるのか聞いたら、ChatGPTにいろいろ質問してるだけだったんだよ」
ちなみにおじいちゃん自身もChatGPTを使っていて、それはそれで驚いたんだけど、この話を聞いてちょっと考えてしまった。これ、たぶん多くの人が同じ状態だと思う。
別にdisりたいわけじゃない。ChatGPTに質問するのは立派なAI活用の第一歩だ。でも、それだけで「AI使ってます」と胸を張るのは、Excel開いただけで「データ分析してます」と言うのに近い。
今日は、本当に「俺AI使ってるんだぜ」と自慢できるレベルになるための話をする。
レベル1:ChatGPTに質問している(ほとんどの人がここ)
まずはここ。大半の人がこのレベルにいる。
- 「○○について教えて」
- 「このメールの返信を考えて」
- 「この文章を要約して」
使えていないわけではない。でも、これはGoogleの代わりにAIを使っているだけだ。便利ではあるけど、業務が劇的に変わるわけではない。
このレベルの特徴は、毎回ゼロから質問していること。同じような質問を何度もしている。AIに自分の状況を毎回説明し直している。
レベル2:プロンプト(AIへの指示文)を工夫している(ここから差がつく)
「AIの出力がいまいちだな」と思って、質問の仕方を工夫し始めたら、レベル2だ。
プロンプトというのは、AIに渡す指示文のこと。「○○について教えて」もプロンプトだし、「あなたは○○の専門家です。以下の条件で回答してください」もプロンプトだ。同じことを聞いていても、この指示文の書き方で出力の質が全然変わる。
- 「あなたは○○の専門家です。以下の条件で回答してください」
- 「出力は箇条書きで、具体的な数字を含めて」
- 「以下のテンプレートに従って出力してください」
つまり、AIに役割と条件を与えている状態。
ここまで来ると、周りの人より明らかにAIの出力が良くなる。「え、AIでそんなの作れるの?」と言われ始める。ちょっと自慢できる。
レベル3:繰り返し使うプロンプトをテンプレ化している
レベル2で「この指示の仕方、いい結果が出るな」と分かったら、それをテンプレートとして保存し始める。
- 議事録を作る時のプロンプト
- メールの下書きを作る時のプロンプト
- 報告書をまとめる時のプロンプト
毎回ゼロから考えるのではなく、自分専用のプロンプト集ができている状態。
ここまで来ると、同じ作業が毎回安定した品質で、短時間で終わるようになる。「AI使ってる」と言って恥ずかしくないレベルだ。
レベル4:AIを組み込んだワークフローを作っている
ここからが「本当にAIを使っている」と言えるレベルだと僕は思う。
レベル3までは「人間がAIに指示を出す」構造だ。レベル4は「AIが業務フローの中に組み込まれている」状態。
例えば:
- メールが届いたら、AIが自動で内容を分類して、担当者に振り分ける
- 毎朝、AIが昨日のデータをまとめてレポートを作成し、Slackに投稿する
- 問い合わせが来たら、AIが下書きを自動生成して、人間は確認して送るだけ
人間が毎回AIに指示を出さなくても、仕組みとしてAIが動いている状態だ。
僕の会社はこのレベルで運用している。朝起きたらAIが仕事を進めていて、僕は確認するだけ。これは確実に自慢できる。
レベル1から抜け出すのは簡単
「レベル4は無理だよ」と思ったかもしれない。確かにレベル4はエンジニアの力が必要になることもある。
でも、レベル1からレベル2に上がるのは今日からできる。
コツは、いい質問の仕方をAIに聞くことだ。
例えば、取引先へのお詫びメールを書きたいとする。「お詫びメールを書いて」といきなり頼むのではなく、まず「取引先にお詫びメールを書きたいんだけど、どういう質問の仕方をしたらいい回答が返ってくる?」とAIに聞く。するとAIが「こういう情報を含めて質問すると精度が上がりますよ」と教えてくれる。
いいプロンプトを自分で考える必要はない。いい質問の仕方をAIに聞く。これだけでレベル2だ。
レベル2からレベル3も簡単だ。AIが教えてくれた質問の仕方を「あ、これいいな」と思ったら、メモ帳にコピペしておく。次に同じ作業をする時にそれを使い回す。それだけでレベル3だ。
自慢できるかどうかの境目
正直に言うと、自分の業務の何かが楽になっていなければ、AIを使っているとは言えないと思う。
ChatGPTと雑談しているだけでは、業務は変わらない。面白いけど、それは趣味だ。
「AIを使って、毎月の報告書作成が30分で終わるようになった」
「AIを使って、メールの下書きを自動で作れるようになった」
こういう具体的な成果が1つでもあれば、それは堂々と自慢していい。
逆に言えば、そういう成果がまだないなら、まだ「AI使ってる」ではなく「AI触ってる」の段階だ。
まとめ
| レベル | 状態 | 自慢できる? |
|---|---|---|
| 1 | ChatGPTに質問している | まだ早い |
| 2 | プロンプトを工夫している | ちょっと自慢できる |
| 3 | プロンプトをテンプレ化している | 自慢していい |
| 4 | AIを業務フローに組み込んでいる | 大いに自慢していい |
まずはレベル2を目指す。今日の仕事で1回だけ、「この質問、どう聞いたらいい回答が返ってくる?」とAIに聞いてみてほしい。