本音コラム

「AIに仕事を奪われる職業ランキング」を見て、実際にAIで業務を回しているエンジニアが思うこと

著者: 野原琉海(株式会社ラズリ代表)

「AIに奪われる職業ランキング」みたいな記事、定期的にバズる。

1位 経理・会計、2位 データ入力、3位 ライター、4位 プログラマー...みたいなやつ。見たことがある人は多いと思う。

僕は実際にAIを使って自分の会社のバックオフィスをほぼ全部自動化している。経理の処理もAIに任せ始めている。

その立場からあのランキングを見ると、「ちょっと違うんだよな」と思うことが多い。今日はその違和感について書く。

「職業」が消えるんじゃない。「業務フロー」が変わる

ランキング記事を見ていていつも思うのは、「経理がなくなる」「ライターがなくなる」みたいに、職業単位で語っていることへの違和感だ。

実際に起きているのは、そんな大げさな話じゃない。

経理は消えない。経理の中の「請求書の金額を手入力する作業」が消える。「毎月同じフォーマットでレポートを作る作業」が消える。つまり、非効率な部分が消えるだけだ。

判断が必要な業務は残る。「この経費は計上していいのか」「この取引先の支払い条件はどうするか」。こういう判断は人間がやる。AIは判断基準が明確な定型作業は得意だけど、文脈を読んで判断することはまだ苦手だ。

ライターも同じだ。情報を整理してまとめるだけの記事はAIで書ける。でも、「僕はこう思う」「僕の経験ではこうだった」という一次情報を含む記事はAIには書けない。体験していないことは書けないから。

エンジニアがいらなくなる?逆だと思う

「AIがコードを書けるようになったからプログラマーは不要になる」という意見もよく見る。

これは半分正しくて半分間違っている。

確かに、AIはコードを書ける。簡単なプログラムなら人間より速く書ける。僕も日常的にAIにコードを書かせている。

でも、AIが作ったコードの中身を誰も理解していない状態は、めちゃくちゃ危険だ。

バグが出た時に直せない。セキュリティの問題があっても気づけない。仕様を変えたい時にどこを触ればいいか分からない。AIが書いたコードをブラックボックスのまま運用している会社があったとしたら、それは時限爆弾を抱えているのと同じだ。

だからエンジニアは必要だ。むしろ、AIが書いたコードをレビューできるエンジニア、AIを正しく使いこなせるエンジニアの価値は上がっている。

「エンジニアがいらなくなる」んじゃなくて、「AIを使えないエンジニアの価値が下がる」が正しい。

実際に起きているのは「1人が3人分の仕事をする」世界

職業が消えるとか、大量失業が起きるとか、そういう極端な未来は来ないと思っている。

実際に起きているのは、もっと地味で、でも確実な変化だ。

1人が3人分の仕事をこなせるようになる。

僕の会社がまさにそうだ。従業員ゼロで、AIを使ってバックオフィスを回し、コンテンツを作り、問い合わせに対応している。以前なら3〜4人必要だった業務を、僕1人+AIで回している。

これは「仕事が奪われた」のではない。「仕事のやり方が変わった」のだ。

中小企業で言えば、こういうことが起きる。

  • 経理担当が1人で、以前は月末に残業してやっていた処理が、AIのおかげで定時内に終わる
  • 営業事務が3人いたのが、AIで資料作成を自動化したら2人で回るようになる
  • 社長が雑務に追われていたのが、AIに任せて営業に集中できるようになる

人が減るんじゃなくて、同じ人数でもっと多くの仕事ができるようになる。あるいは、少ない人数で同じ成果を出せるようになる。

ランキング記事に感じる違和感の正体

「AIに仕事を奪われるランキング」を見てモヤモヤするのは、不安を煽るだけで、じゃあどうすればいいのかが書いていないからだと思う。

読んだ人は不安になる。「自分の仕事、なくなるのかな」と。でも記事には「だから○○しましょう」がない。

本当に必要な情報は、「あなたの業務のうち、AIに置き換えられる部分はどこか」「置き換えた時間で何をすべきか」だと思う。

経理なら、データ入力はAIに任せて、分析や経営判断のサポートに時間を使う。ライターなら、情報のまとめ記事はAIに任せて、取材や独自の切り口の記事に集中する。エンジニアなら、定型的なコーディングはAIに任せて、設計やレビューに時間を使う。

奪われるんじゃなくて、面倒な部分をAIに渡して、人間は人間にしかできないことに集中する。それだけの話だ。

まとめ

  • 職業単位で「なくなる」のではない。業務フローの中の非効率な部分が消える
  • エンジニアは不要にならない。AIが作ったものを理解できる人間はむしろ必要
  • 実際に起きているのは「1人が3人分の仕事をこなせる」世界
  • 不安になるより、自分の業務の何がAIに置き換えられるかを考える方が建設的

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