著者: 野原琉海(株式会社ラズリ代表)
「うちにはデータなんてない」と思っている経営者は多いかもしれない。
でも、ちょっと待ってほしい。売上の記録はあるはずだ。顧客のリストもある。請求書の履歴も、問い合わせの記録も、勤怠のデータもある。
実はもう、データは溜まっている。ただ、使っていないだけだ。
中小企業に溜まっているデータ
意識していなくても、日々の業務の中でデータは蓄積されている。
- 売上データ: いつ、何が、いくら売れたか
- 顧客情報: 誰が、いつ、何を買ったか。問い合わせの履歴
- 在庫データ: 何がどれだけあるか。何が足りなくなりやすいか
- 仕入れデータ: いつ、どこから、いくらで仕入れたか
- 勤怠データ: 誰が、いつ、何時間働いたか
Excelやスプレッドシート、会計ソフト、販売管理ソフトの中に、これらのデータが眠っている。
データがあっても使えていない会社がほとんど
調査によると、中小企業のAI活用率は約20%。大企業の55%と比べると大きな差がある。
原因の多くは「専門人材がいない」ことと「データが部署ごとにバラバラに管理されている」こと。
売上データは営業が持っている。顧客情報は別のExcelにある。在庫は倉庫の担当者が管理している。それぞれがバラバラに存在していて、横断的に見られる人がいない。
AIに何ができるのか
データがあれば、AIにこういうことを聞ける。
売上の予測
過去の売上データと季節や天候の情報を組み合わせると、「来月の売上はこのくらいになりそう」という予測ができる。
伊勢の「ゑびや大食堂」という飲食店は、天候や近隣の宿泊データ、過去の売上を組み合わせて、時間帯ごとの来客数やメニューの注文数を予測している。精度は95%を超えているそうだ。これにより食材の廃棄が減り、人員配置も最適化された。
中小企業でも規模は違えど、同じ考え方は使える。
リピーターの分析
顧客の購買履歴を分析すると、「どういう顧客がリピートしやすいか」「どのタイミングでリピートが途切れるか」が見えてくる。
リピート率が下がるタイミングが分かれば、そこに合わせてフォローの連絡を入れることができる。
在庫の最適化
売上の推移と在庫データを合わせて見ると、「この商品は来月足りなくなる」「この商品は在庫を抱えすぎている」が分かる。
過剰在庫を減らして、欠品を防ぐ。これだけでキャッシュフローが改善する。
問い合わせの傾向分析
問い合わせの内容を分類すると、「同じ質問が何度も来ている」「この時期にこの問い合わせが増える」といった傾向が見える。
同じ質問が多いなら、FAQを作って対応を効率化できる。
始め方はシンプル
大がかりなことをする必要はない。
ステップ1: データを1箇所にまとめる
まず、バラバラに管理されているデータを1つのスプレッドシートにまとめる。全部じゃなくていい。売上データだけでもいい。
ステップ2: AIに聞いてみる
まとめたデータをChatGPTに貼り付けて、「このデータから何か傾向は見える?」と聞くだけでいい。完璧な分析じゃなくても、「あ、こういう傾向があったのか」という気づきが得られる。
ステップ3: 気づきを経営判断に使う
「夏にこの商品が売れる傾向がある」と分かったら、夏前に仕入れを増やす。「この顧客層のリピート率が高い」と分かったら、その層に集中して営業する。
データを見て、判断する。それだけだ。
まとめ
- 中小企業にもデータは溜まっている。使っていないだけ
- AIを使えば、売上予測、リピーター分析、在庫最適化ができる
- 大がかりな仕組みは不要。まずデータを1箇所にまとめて、AIに聞いてみる
- データに基づいた判断は、勘に基づいた判断より精度が高い