本音コラム

社内チャットボットを作ると、会社の「あの人に聞かないと分からない」が消える

著者: 野原琉海(株式会社ラズリ代表)

どの会社にも「あの人に聞かないと分からない」がある。

「この取引先の請求ルール、佐藤さんしか知らない」「この業務のやり方、田中さんに聞かないと分からない」「前にこういうトラブルがあった時どう対処したか、覚えてるの鈴木さんだけ」

これ、その人が休んだら止まるし、辞めたら消える。

エース社員の頭の中に情報が閉じ込められている

仕事ができる人ほど、頭の中にたくさんの情報を持っている。過去の対応履歴、取引先ごとのルール、トラブル時の対処法、業務のコツ。

これらは本来、会社の資産だ。でも実際には、その人の頭の中にしかない。共有されていない。

結果、他の社員は毎回その人に聞きに行く。エース社員は自分の仕事をしながら、他の社員の質問にも答え続ける。エース社員の負担が増える。他の社員は聞かないと動けない。

社内チャットボットで何が変わるか

社内チャットボットというのは、社内の情報を読み込ませたAIに、社員が質問できる仕組みだ。

例えばこういう使い方ができる。

「この取引先の請求書、どのフォーマットで送ればいい?」

→ チャットボットが過去の取引履歴やマニュアルから回答する。佐藤さんに聞きに行かなくていい。

「前に同じようなクレームがあった時、どう対応した?」

→ チャットボットが過去の対応記録から類似ケースを見つけて回答する。鈴木さんが休みでも対応できる。

「有給の申請方法を教えて」

→ チャットボットが社内規定から回答する。総務に聞きに行かなくていい。

つまり、エース社員の頭の中にあった情報が、全員がアクセスできる場所に置かれる。情報の民主化だ。

エース社員が楽になる

一番変わるのはエース社員だと思う。

「ちょっと聞いていいですか?」が1日に何回来ているか。その対応に何分使っているか。数えたことはないかもしれないけど、けっこうな時間になっているはずだ。

チャットボットが代わりに答えてくれれば、エース社員は自分の仕事に集中できる。しかも、チャットボットは何回聞かれても嫌な顔をしない。同じ質問に何度でも同じ品質で答える。

新人の教育コストが下がる

新しい社員が入った時、一番大変なのは「この会社のやり方を覚えること」だ。

マニュアルがあればいいけど、マニュアルに書いていない暗黙のルールが山ほどある。それを先輩社員に1つずつ聞きながら覚えていく。先輩社員の時間も使う。

チャットボットに社内のルールや過去の対応事例が入っていれば、新人はまずチャットボットに聞ける。それでも分からなければ先輩に聞く。先輩の負担が減るし、新人も「こんなことを聞いていいのかな」と遠慮しなくていい。

何を読み込ませるか

チャットボットに読み込ませる情報は、特別なものでなくていい。

  • 社内マニュアル: 業務の手順書、ルール集。既にあるならそのまま読み込ませる
  • 過去のメールやチャットの履歴: 「前にどう対応したか」の記録
  • よくある質問とその回答: 社員から何度も聞かれることをまとめたもの
  • 取引先ごとのルール: 請求書のフォーマット、納品の方法など

最初から完璧に全部入れる必要はない。まず「よく聞かれること」だけ入れて、使いながら少しずつ追加していけばいい。

技術的にはそんなに難しくない

社内チャットボットと聞くと大がかりなシステムを想像するかもしれないけど、今はそこまで難しくない。

AIにドキュメントを読み込ませて質問に答えさせる仕組みは、既にいろいろなツールで提供されている。自社で一からシステムを作る必要はない。

コストも月額数千円〜数万円のサービスがある。エース社員が質問対応に使っている時間を考えれば、十分に元が取れる。

まとめ

  • 「あの人に聞かないと分からない」は、会社のリスクであり、その人の負担でもある
  • 社内チャットボットで情報を全員がアクセスできるようにすると、エース社員が楽になる
  • 新人の教育コストも下がる
  • 最初はよく聞かれることだけ入れて、小さく始めればいい

-本音コラム