本音コラム

「俺AI使ってるんだぜ」と知り合いに自慢できるレベルになる方法

著者:野原琉海(業務効率化に特化したエンジニア)

先日、うちのおじいちゃんからこんな話を聞いた。おじいちゃんは70代で未だに現役の行政書士をやっている。

「知り合いの行政書士がさ、『うちもAI使ってるよ』って言うから、何に使ってるのか聞いたら、ChatGPTにいろいろ質問してるだけだったんだよ」

ちなみにおじいちゃん自身もChatGPTを使っていて、それはそれで驚いた。でも、この話を聞いてちょっと考えてしまった。これ、たぶん多くの人が同じ状態だと思う。

別にdisりたいわけじゃない。ChatGPTに質問するのは立派なAI活用の第一歩だ。でも、それだけで「AI使ってます」と胸を張るのは、Excelを開いただけで「データ分析してます」と言うのに近い感覚がある。

今日は、本当に「俺AI使ってるんだぜ」と自慢できるレベルになるための話をする。4つの段階に分けて、それぞれで業務が何が変わるのか、今日からできる具体的な次のステップまで整理する。

レベル1:ChatGPTに質問している(ほとんどの人がここ)

まずはここ。大半の人がこのレベルにいる。

  • 「○○について教えて」
  • 「このメールの返信を考えて」
  • 「この文章を要約して」

使えていないわけではない。でも、これはGoogleの代わりにAIを使っているだけだ。調べる手間が少し減っただけで、月間の業務時間はほぼ変わらない。

このレベルの根本的な問題は毎回ゼロから質問していることだ。同じような作業をするたびに、AIに自分の状況を一から説明し直している。先週メールの返信を手伝ってもらっても、今週また最初から話す。それは習慣化されたAI活用とは呼べない。

僕が中小企業の業務改善を支援するとき、最初に必ず「普段AIをどう使っていますか?」と聞く。「使ってます」と答えるスタッフのほぼ全員が、このレベル1にいる。そして「業務が変わりましたか?」と聞くと、「少し便利になった気がします」という曖昧な答えが返ってくる。

「気がする」の段階では、AIを使っていると胸を張るのはまだ早い。

レベル1にいる間は、AIは「賢い検索エンジン」だ。知識を得るのに使えるが、自分の仕事の仕方自体は変わらない。この状態が長引くと、「AIって結局使えないな」と思い始める人が出てくる。問題はAIではなく、使い方の設計が変わっていないことだ。

レベル2:プロンプト(AIへの指示文)を工夫している(ここから差がつく)

「AIの出力がいまいちだな」と思って、質問の仕方を工夫し始めたら、レベル2だ。

プロンプトというのは、AIに渡す指示文のこと。「○○について教えて」もプロンプトだし、「あなたは○○の専門家です。以下の条件で回答してください」もプロンプトだ。同じことを聞いていても、この指示文の書き方で出力の質が全然変わる。

具体的にはこういう書き方だ。

  • 「あなたは中小企業向けの業務改善の専門家です。以下の状況に対して、実践的なアドバイスを箇条書きで3つ出してください。専門用語はなるべく使わないこと」
  • 「以下のメモをもとに、取引先への提案書の構成を作ってください。相手は製造業の中小企業の経営者で、IT知識は低めです」
  • 「以下のメールに対する返信案を2パターン出してください。1つ目は丁寧で距離感のあるもの、2つ目はやや親しみやすいもの」

つまり、AIに役割・対象・条件を与えている状態。

ここまで来ると、周りの人より明らかにAIの出力が良くなる。「え、AIでそんなの作れるの?」と言われ始める。

さらに差がつくのが「システムプロンプト」の活用だ。ChatGPT PlusやClaude Proでは、毎回説明しなくても「自分の仕事の文脈」をAIに記憶させておける機能がある。月額3,000円前後でどちらも使えるが、この機能を使うだけで質問の精度が大きく変わる。

例えば「私は製造業の10人規模の会社で総務を担当しています。回答は非IT系の経営者が理解できる言葉で、具体例を必ず含めてください」と一度設定しておくと、毎回の質問がスムーズになる。

ChatGPTを中小企業の業務で使う方法|部署別の実用例では、業務別のプロンプト例を整理しているので、どう質問すればいいかの参考にしてほしい。

レベル3:繰り返し使うプロンプトをテンプレ化している

レベル2で「この指示の仕方、いい結果が出るな」と分かったら、それをテンプレートとして保存し始める。

  • 議事録を作る時のプロンプト
  • メールの下書きを作る時のプロンプト
  • 月次の報告書をまとめる時のプロンプト
  • 求人票の下書きを作る時のプロンプト

毎回ゼロから考えるのではなく、自分専用のプロンプト集ができている状態だ。

僕の話をすると、今のプロンプトライブラリには30本以上のプロンプトが入っている。「新規クライアントへの提案書を作る」「競合のサービスを比較してまとめる」「議事録から次のアクションを抽出する」など、業務の種類ごとに整備している。

このレベルになると、具体的な時間短縮が数字で見えてくる。

議事録を例にすると、以前は打ち合わせの後に30分かけてまとめていたのが、録音を文字起こしサービスに通してプロンプトを当てるだけで5分で終わる。月8回打ち合わせがあるとすると、月200分(約3時間20分)の削減になる。

メールの返信も変わる。取引先への丁寧な返信文を考えるのに1通10〜15分かかっていたのが、状況をメモして専用プロンプトを当てると2〜3分で下書きが出てくる。1日5通書くなら、1日あたり40〜50分の削減だ。

「AI使ってる」と自慢できる段階を超えて、「使わないと損」の状態になってくる。

レベル4:AIを業務フローに組み込んでいる

ここからが「本当にAIを使っている」と言えるレベルだと思う。

レベル3までは「人間がAIに指示を出す」構造だ。レベル4は「AIが業務フローの中に組み込まれている」状態。

具体的にはこういう仕組みだ。

  • メールが届いたら、AIが自動で内容を分類して担当者に振り分ける
  • 毎朝、AIが昨日のデータをまとめてSlackに報告を投稿する
  • 問い合わせが来たら、AIが下書きを自動生成して、人間は確認して送るだけ

人間が毎回AIに指示を出さなくても、仕組みとしてAIが動いている状態だ。

実際に僕の会社がどうなっているかというと、月3.5万円のAIツール代で毎月30本のSEO記事を自動生成している。記事のキーワード選定から執筆・WordPressへの投稿まで、大部分が自動化されている。朝起きたらAIが夜中に仕事を進めていて、僕は品質チェックと最終承認だけをすれば終わる。

このレベルに達するには、MakeやZapierなどの自動化ツールとAI APIを組み合わせる設定が必要なことが多い。エンジニアに依頼する場合は仕組み作りに初期費用がかかる。ただ、一度仕組みができれば、追加のコストをほぼかけずに動き続ける。

ただし、いきなりレベル4を目指して失敗するケースは多い。「全部自動化しよう」と意気込んで着手したが、途中で動かなくなった、何が問題か分からなくなったというのがよくあるパターンだ。AI導入は小さく始めるが正解|中小企業が失敗しない最初の一歩でも詳しく書いたが、まず1業務だけで試して成果を確認してから広げるのが正解だ。

4つのレベルを一覧で比較する

ここまでの話を整理する。

レベル 状態 典型的な使い方 業務への影響 月のAI費用目安 自慢できる?
1 都度質問 毎回ゼロから質問 ほぼ変化なし 無料〜3,000円 まだ早い
2 プロンプト工夫 役割・条件を与えて質問 出力の質が上がる 3,000円程度 ちょっとできる
3 テンプレ化 専用プロンプト集で高速化 月数時間の削減が見える 3,000〜1万円 堂々とできる
4 ワークフロー化 人間の指示なしで動く 業務が自動化される 1〜5万円 圧倒的にできる

注意してほしいのは、費用が高いからといって効果が必ずしも高くなるわけではないという点だ。レベル3のプロンプトテンプレ化は月3,000円のChatGPT Plus代だけで実現できる。まずここを目指すのが費用対効果として最も高い。

業務別のビフォーアフター(レベル1 vs レベル3)

どの業務でどれくらいの変化があるのか、具体例で整理した。

業務 レベル1の状態 レベル3の状態 削減時間の目安
議事録作成 手で30〜60分かけてまとめる 文字起こし→プロンプトで5〜10分 25〜50分/回
メール下書き 考えながら1通10〜15分 テンプレプロンプトで2〜3分 8〜12分/通
月次報告書 データを見ながら1〜2時間 データを渡してプロンプトで15〜30分 45〜90分/回
求人票の作成 参考を見ながら1〜2時間 要件を箇条書き→プロンプトで15分 45〜90分/回
取引先への提案書 1〜3時間で構成から手書き 要点を渡して構成と下書きで30〜60分 30〜120分/件

これはあくまで目安で、業務の複雑さや習熟度によって変わる。ただ、プロンプトをテンプレ化するだけで作業時間が1/3〜1/5になることは珍しくない。

レベル1から抜け出すための具体的なステップ

「レベル4は自分には無理だ」と思ったかもしれない。確かにレベル4はエンジニアの力が必要になることもある。

ただ、レベル1からレベル2、レベル2からレベル3に上がるのは今日からできる。

レベル2に上がるには(今日できる)

コツは、いい質問の仕方をAIに聞くことだ。

例えば、取引先へのお詫びメールを書きたいとする。「お詫びメールを書いて」といきなり頼むのではなく、まず「取引先へのお詫びメールを書きたいんだけど、どういう情報を教えたら精度の高い回答が返ってくる?」とAIに聞く。するとAIが「状況の詳細・相手との関係性・謝罪の温度感、を教えてもらうと精度が上がります」と教えてくれる。

いいプロンプトを自分で考える必要はない。いい質問の仕方をAIに聞く。これだけでレベル2への入り口に立てる。

レベル3に上がるには(今週できる)

レベル2でAIが教えてくれた質問の仕方を「これいいな」と思ったら、メモアプリにコピペしておく。次に同じ業務をする時に、それを使い回す。それだけでレベル3の入り口だ。

最初は3本だけでいい。「議事録用」「提案書用」「お詫びメール用」の3本でも十分だ。使いながら磨いていけば、自然と増えていく。

業務効率化の最初の一手の考え方については業務効率化は何から始める?最初の一歩を具体的に解説でも整理しているので、あわせて参考にしてほしい。

自慢できるかどうかの境目

正直に言うと、自分の業務の何かが楽になっていなければ、AIを使っているとは言えないと思う。

ChatGPTと雑談しているだけでは、業務は変わらない。面白いけど、それは趣味だ。

「AIを使って、毎月の報告書作成が30分で終わるようになった」

「AIを使って、メールの下書きが1通2分でできるようになった」

「AIを使って、議事録をその日のうちに社内共有できるようになった」

こういう具体的な成果が1つでもあれば、それは堂々と自慢していい。

逆に言えば、そういう成果がまだないなら、まだ「AI使ってる」ではなく「AI触ってる」の段階だ。

「レベル4まで行かないと意味がない」と思っている人もいるが、それは違う。レベル3で月10〜20時間の削減ができている人の方が、レベル4を目指して動けていない人より「本当にAI使っている」状態だ。

AIを導入しても伸びない会社の特徴でも触れたが、AI活用で成果が出ない会社の共通点は「ツールを入れることが目的になっている」ことだ。使う業務を1つに絞って、そこで成果を出すことが先だ。ツールよりも使い方の設計が先に必要になる。

まとめ

レベル 状態 自慢できる?
1 ChatGPTに質問している まだ早い
2 プロンプトを工夫している ちょっと自慢できる
3 プロンプトをテンプレ化している 堂々と自慢していい
4 AIを業務フローに組み込んでいる 圧倒的に自慢していい

まずはレベル2を目指す。今日の仕事で1回だけ、「この作業、どういう情報をAIに渡したら精度の高い回答が返ってくる?」とAIに聞いてみてほしい。

自分の業務が楽になる瞬間を1つ体験したら、「AI使ってる」が本物の意味を持ち始める。

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