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人手不足を業務委託で解決する方法|派遣との違いも解説

担当者が辞めた、採用しても来ない、でも業務は止められない——こういう状況で「業務委託」という言葉が出てくる。

ただ、派遣と業務委託の違いが曖昧なまま進めると、後から「偽装請負」の問題が出るケースがある。何を頼めるのか、どう使うのかを整理しないままでは、コストをかけても機能しないこともある。

この記事では、業務委託を使って人手不足を解消する方法を、派遣との違い・委託できる業務の種類・費用感・注意点まで整理する。

業務委託と派遣、何が違うのか

まず、この2つは「外部の人に仕事をしてもらう」という点は共通しているが、契約の仕組みが根本的に異なる。

派遣は「人を借りる」仕組み

派遣は、派遣会社が雇用しているスタッフを自社に送り込んでもらう形だ。スタッフは自社の指揮命令のもとで動く。

  • 自社が直接、業務の指示・時間管理を行える
  • 報酬は「稼働時間 × 時間単価」で決まる
  • 向いている場面: 繁忙期の人員補強、即戦力が欲しい短期業務

業務委託は「仕事を任せる」仕組み

業務委託は、フリーランスや外部の会社に対して「この業務を完了してほしい」と依頼する契約だ。契約関係は対等で、相手は独立した事業者として動く。自社が細かく指示を出すことは原則できない。

  • 受託者が自分のやり方で業務を完遂する
  • 報酬は「業務内容・成果物」に対して支払う(月額固定・成果報酬など)
  • 向いている場面: 専門性が高い業務、継続的に外部に任せたい業務

この「指揮命令できるかどうか」の違いが、使い方を間違えると法的問題になる出発点になる。詳しくは後述する。

業務委託が中小企業の人手不足に向いている理由

採用で対応しようとすると、以下のコストと時間がかかる。

  • 求人広告費(Indeed・タウンワーク等): 1人あたり3〜8万円程度
  • 転職エージェント経由なら成功報酬で年収の30〜35%
  • 入社まで3〜6ヶ月かかることが多い
  • 入社後の育成期間中は戦力にならない
  • 短期離職すれば全て再発生する

業務委託なら、これらが省ける。社会保険料の会社負担分・賞与・退職金も不要だ。業務量が減れば契約を縮小できる柔軟性もある。

担当者が1人退職して業務が止まりそうな状況を例に取ると、採用では3〜6ヶ月待たなければならない。業務委託であれば、委託先が決まれば翌月から稼働を始めてもらえるケースも多い。「今すぐ誰かに業務を引き取ってほしい」という局面では、採用より現実的な選択肢になる。

業務委託に向いている業務の種類

業務委託がうまく機能するのは、「何を・いつまでに・どんな成果で納品してほしいか」を定義できる業務だ。曖昧な「何でもやってほしい」は業務委託には向かない。

バックオフィス系

業務 委託先の例
記帳・経理入力 税理士事務所、経理代行サービス
給与計算 社労士事務所、給与計算代行
請求書の発行・入金管理 オンラインアシスタント
データ入力・一般事務 オンラインアシスタント、クラウドソーシング

専門職系

業務 委託先の例
Webサイトの制作・保守 フリーランスエンジニア、Web制作会社
SEO・コンテンツ制作 フリーランスライター、SEO代行
採用業務の補助(求人作成・日程調整) HRコンサルタント、オンラインアシスタント
労務手続き(入退社手続き・社会保険等) 社労士事務所

「業務の境界が明確かどうか」が判断の基準になる。「毎月10日までに前月分の仕訳データを完了してほしい」という依頼は業務委託に向いている。「経理全般、よろしく」はトラブルのもとになる。

費用の目安

業務委託の費用は、業務の専門性・委託先の種類・稼働量によって大きく変わる。以下はおおまかな目安だ。

業務内容 費用の目安(月額)
記帳代行(月次・仕訳数が少ない場合) 1万〜5万円程度
給与計算代行(10〜30人規模) 1万〜3万円程度
オンラインアシスタント(月30時間) 9万〜15万円程度
フリーランスエンジニア(週1〜2日稼働) 20万〜60万円程度

オンラインアシスタントは複数のサービスがあり、フジ子さん・HELP YOU・i-STAFFなどが実績がある。月30時間で9万〜15万円程度が相場の目安になる。詳細な料金比較はバックオフィス代行の費用相場|業務別の料金目安と選び方に整理している。

事務パートを採用した場合、時給1,300〜1,500円 × 月30時間で約4〜5万円になるが、採用費・教育コスト・社会保険の会社負担分などを含めると、月30時間のオンラインアシスタントと同程度か、それ以上になることが多い。

失敗しないための注意点

偽装請負に気をつける

業務委託で最もよくある失敗が「偽装請負」だ。

業務委託として契約しているにもかかわらず、実態として派遣のように指揮命令している状態を指す。これは労働者派遣法違反となり、1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象になる。

具体的に問題になる行為:

  • 「明日の9時から17時で対応してください」と勤務時間を指定する
  • 「今日はこの業務を優先して」「次はこれをやって」と作業順序を細かく指示する
  • 委託先スタッフの出退勤を自社が管理する
  • 自社の社員と同じ場所・時間で一緒に仕事をさせ、同じように指示を出す

業務委託では「何を・いつまでに・どんな形式で納品するか」を定め、やり方は委託先に任せるのが基本だ。「いつどこでどう作業するか」まで指示すると偽装請負のリスクが高まる。

フリーランス新法(2024年11月施行)の義務

2024年11月に施行されたフリーランス新法により、個人のフリーランスに業務を委託する場合、以下の義務が発生している。

  • 取引条件の明示義務: 業務内容・納品日・報酬・支払期日を書面または電磁的方法で明示する必要がある
  • 報酬の支払期限: 役務の受領日から60日以内に支払うことが義務付けられた
  • 禁止行為: 正当な理由のない報酬減額・受領拒否・中途解除の禁止

「口頭で決めていた」「基本契約を結んでいるから大丈夫」というケースでも、案件ごとに条件を明示していなければ対象になる。個人のフリーランスに発注を始める際は、まず契約書・発注書の整備を優先してほしい。

業務の範囲と成果物を最初に明確にする

「経理をお願いします」だけでは曖昧すぎる。「毎月10日までに前月分の仕訳を完了し、試算表をPDFで送る」という形で、何を・いつまでに・どの形式でという定義が必要だ。

最初に曖昧なまま進めると、「思っていたものと違う」というトラブルになりやすい。委託先が優秀でも、依頼の定義が甘ければ成果が合わない。

社内にノウハウが残らないことを前提で設計する

業務委託の弱点は、依存度が高まると社内にノウハウが蓄積されない点だ。長期的にみると、委託先が変わった時に引き継ぎが難しくなる場面もある。

「すべてを外に出す」のではなく、「この業務は外注、この部分は社内で把握する」というメリハリを持って設計することが重要だ。経理でいえば、記帳の入力は外注しても、月次の数字を経営者自身が確認するフローを維持しておくといった形だ。

業務委託先の探し方

探し方 向いている業務
クラウドソーシング(ランサーズ・クラウドワークス) 単発の作業、データ入力、ライティング
フリーランスマッチング(Workship・Findy Freelance等) エンジニア・マーケター・デザイナー
オンラインアシスタントサービス 継続的な事務作業、バックオフィス全般
士業事務所(税理士・社労士) 経理・労務の専門業務

初めて業務委託を使う場合は、オンラインアシスタントから始めるのがハードルが低い。月額制で、依頼できる業務の種類も幅広く、トライアルを設けているサービスも多いからだ。

派遣か業務委託か、どちらを使うべきか

両者の使い分けは、以下を基準にするとシンプルだ。

状況 向いている選択肢
社内で指揮して動いてほしい、勤務時間を管理したい 派遣
専門的な業務を成果ベースで任せたい 業務委託
繁忙期だけ人を増やしたい(短期) 派遣
経理・給与計算など定型業務を継続的に外に出したい 業務委託
エンジニア・ライターなど専門職に仕事を依頼したい 業務委託

「社内で細かく指示を出して動いてもらいたい」という場合は、派遣を使うべきだ。業務委託で同じことをやろうとすると偽装請負になる。

逆に、「専門性のある業務を、やり方も含めて任せたい」という場合は業務委託が向いている。

まとめ

業務委託は、採用が難しい業務や、採用するほどではない業務に対して、即戦力を確保できる手段だ。

派遣との最大の違いは「指揮命令できない」こと。成果ベースで仕事を任せるという発想に切り替えることが、業務委託をうまく使うための前提になる。

まず「この業務だけ外に出せる」と思えるものを1つ特定することから始めてほしい。全部を一気に外注する必要はない。一部を委託してみて、うまく機能すれば範囲を広げる。その繰り返しで、今の人員では回せない仕事を少しずつ解消していける。

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