Google検索で何を調べても、上位に出てくるのは大手メディアの記事ばかりだ。
「経理 外注 やり方」で検索すれば、マネーフォワード・freee・弥生のオウンドメディアが並ぶ。「バックオフィス 効率化」で検索しても、大手SaaSのメディアや大手コンサル会社のコラムが埋め尽くす。「AI 中小企業 導入」で検索しても、どの記事も同じような構成だ。
業務効率化に特化したエンジニアとして自社でもこの問題を肌で感じてきた。検索してもほしい情報が出てこない。大手メディアが書いている情報は「正しいこと」は書いているが、「本当に知りたいこと」は書いていない。
この記事では、この現象の構造的な原因と、中小企業の経営者・担当者が本当に役立つ情報を手に入れるための代替手段を整理する。
1. 大手メディアに検索結果が独占されている現実
試しに「中小企業 経理 困った」で検索してみてほしい。上位に並ぶのは、大手SaaSのオウンドメディアか、SEO特化のアフィリエイトサイトだ。
10年以上前のインターネットでは、検索結果に個人ブログが多く混じっていた。「自社でやってみた結果」「外注してみたコストの実態」「失敗した話」を書いた個人記事が見つかった。2023年以降のGoogleのコアアップデートで、この傾向が大きく変わった。ドメインオーソリティ(サイトの信頼度指標)が高い大手メディアが優先され、個人サイトや小規模サイトは検索結果から遠のいた。
大手メディアが上位を独占するメカニズム
| 要素 | 大手メディアの強み | 個人・小規模サイトとの差 |
|---|---|---|
| ドメインオーソリティ | 高い(企業ドメインの信頼度が評価される) | 新しいサイトは低い |
| E-E-A-T評価 | 運営企業・著者の資格・専門性を表明しやすい | 個人の証明がしにくい |
| 更新頻度 | 編集チームで大量に更新できる | 1人では限界がある |
| 被リンク数 | 社会的知名度から自然に集まる | ゼロから積み上げ |
| 内部リンク構造 | 何十・何百記事で網羅的に構築 | 立ち上げ期は薄い |
この構造上、小さなサイトが立ち上げ初期に大手メディアと競合するのは不利だ。ただし「3トークン以上一致する特定キーワードの組み合わせ」や「大手メディアが書かない視点の記事」であれば、検索上位に入れる余地はある。
2. 大手メディアの記事がなぜどれも同じなのか
大手メディアの記事が似た内容になる理由は、SEOの基本戦略にある。
「既存の上位記事を参考にする」が標準戦略になっている
Googleで上位を取るために有効とされる手法の一つが、「検索上位の競合記事を分析して、同等以上の品質・網羅性で書く」というものだ。これは多くのSEO教本に書かれている。
結果として何が起きるかというと、上位記事を参考にして書かれた記事が上位に来て、その記事を参考にした記事がまた生まれる。コピーのコピーが増殖する。
記事の最終目的が「情報提供」ではなく「サービス誘導」
| メディアの種類 | 表面上の目的 | 実際の目的 |
|---|---|---|
| freeeのメディア | 経理・会計の情報提供 | freeeへの申し込み |
| マネーフォワードのメディア | 経営情報の提供 | マネーフォワード各サービスへの誘導 |
| 大手コンサルのコラム | 業務改善のノウハウ | 自社コンサルへの問い合わせ |
| SEOアフィリエイトサイト | 比較・まとめ情報の提供 | 紹介報酬(アフィリエイト) |
これは悪いことではない。企業がコンテンツマーケティングで集客することは正当なビジネスだ。ただし読み手の立場からすると、「情報を探しているつもりが、最終的には自社サービスの宣伝ページに辿り着く」という体験になる。
実際に僕が「経理代行 費用 相場」で検索した際、上位10件のうち8件が経理代行会社か会計ソフト会社のオウンドメディアだった。どの記事も「月3〜5万円が相場」と書きながら、最後は「まずは当社にご相談ください」で締めくくっていた。
3. 大手メディアと一次情報の質の違い
大手メディアの問題は「間違えている」ことよりも「具体性がない」ことだ。
情報の種類で分けると
| 情報の種類 | 定義 | 大手メディアの扱い | 個人・事業者の強み |
|---|---|---|---|
| 一次情報 | 自分で体験・検証した情報 | 書きにくい(特定サービスへの肩入れを避ける必要) | ここが最大の強み |
| 二次情報 | 他の情報源を参考に整理した情報 | 得意・大量に生産できる | 大手メディアに勝てない |
| 定量情報 | 数字・データ | 公式情報を引用できる | 自社実績の数字を持てる |
| 定性情報 | 感想・判断・意見 | 中立性を保とうとする | 本音を書ける |
中小企業の経営者・担当者が本当に知りたいのは一次情報だ。「この会社は実際に外注してみてどうだったのか」「コストはいくらかかったのか」「途中でどこに詰まったのか」。
大手メディアのライターは編集者やSEOディレクターであって、自分で中小企業のバックオフィスを回している人間ではない。書けるのは調べて整理した二次情報だけだ。
4. 本当に役立つ情報を手に入れるための5つの方法
Googleだけに頼らない情報収集の方法を整理する。
方法1: Google検索のキーワードを変える
「○○ やり方」ではなく「○○ 実例」「○○ 経験談」「○○ 失敗」で検索する。体験ベースのキーワードは大手メディアが積極的に作らないため、個人ブログや専門家の記事が出てくることがある。
方法2: Xで「本音ツイート」を探す
Xで「経理代行 失敗」「AI導入 後悔」のように検索すると、実際に経験した人のリアルな投稿が見つかる。情報の信頼性は玉石混交だが、一次情報に近い感想を得られる。
方法3: 専門家ブログやニッチなメディアを探す
大手メディアに埋もれているが、特定業種・特定業務に詳しい専門家が書いたメディアは存在する。Googleの2〜3ページ目まで見るか、「○○ ブログ」「○○ 専門家 実例」で検索する。
方法4: 業界コミュニティ・知人からのリアル情報を取る
オンラインサロン・業界勉強会・経営者交流会で得られる情報は、検索では絶対に出てこない生の話だ。「AI顧問を実際に使った経営者の感想」「経理代行を切り替えた理由」といった一次情報が直接手に入る。
業種特化の経営者コミュニティや、同規模の会社の知人ネットワークは、検索に代わる強力な情報源だ。特にAI導入・業務効率化のような「やってみた感想」が重要な分野では、知人ネットワークからの情報が最も使える。
方法5: 実際に試してみる・見積もりを取る
「月3〜5万円が相場」と書いてあっても、自社の状況に合ったコストは自分で確かめないと分からない。3〜5社に見積もりを依頼すれば、実際の価格感が分かる。これも一次情報収集だ。
月3,000円のChatGPT Plusなら、読んで検討するより先に1ヶ月試してみる方が早い。「試した上での判断」は「検索した上での判断」より信頼できる。
5. 「一次情報を持つ人間が書く」ことの価値
業務効率化エンジニアとして実感していることがある。大手メディアに書いてある情報は読んでも「だから何?」という感覚になりやすい。
「AIを使えば業務効率化できる」と書いてあっても、「具体的にどの業務で、どのツールで、どのくらいのコストで、どのくらい変わったのか」が書いていない。一般論は分かっている。知りたいのは固有の話だ。
例えば、ジムフリでは中小企業のAI導入に関する記事を月30本ほど公開している。1記事あたりの生産コストは数百円で、これはAIを活用した仕組みがある。このような「自社でやっている数字」は、大手メディアには書けない。
自社でAI活用を実際に試行錯誤した上で書いた記事と、調べて整理した記事は、読んでいると違いが分かる。前者には「なぜうまくいかなかったのか」「どこで詰まったのか」「次に何をしたのか」という経緯がある。中小企業のAI導入の実態については「中小企業のAI導入|最初の3ヶ月で何をすべきか」にまとめているので、参考にしてほしい。
6. 検索結果の問題を知った上で、どう情報を使うか
大手メディアの記事が「役に立たない」と言いたいわけではない。制度・法律・基本的な仕組みを理解するための入門記事としては有用だ。
ただし、それを「意思決定の根拠」にするのは危険だ。
情報の使い方を使い分ける
| 目的 | 適した情報源 | 注意点 |
|---|---|---|
| 基礎知識を得る | 大手メディア・公式サイト | 一般論であることを理解して読む |
| 相場感を掴む | 大手メディア + 実際の見積もり | メディアの数字は目安、実態は見積もりで確認 |
| 失敗を学ぶ | 経験者の一次情報・X・業界コミュニティ | 信頼性の評価が必要 |
| 意思決定をする | 実際に試す・複数の専門家に相談 | 検索結果だけで決めない |
AI導入の失敗パターンについては「AI導入の失敗事例から見る経営者の判断ミス5パターン」でも整理しているが、検索して出てくる情報を鵜呑みにすることがその一つだ。「他社の成功事例」と書かれていても、自社の状況・規模・業種によって全く異なる結果になる。
AI顧問やコンサルを選ぶ際も同じだ。検索で出てくる比較記事は、アフィリエイト報酬や業界のしがらみで作られていることが多い。実際の評価は「AI顧問とは?中小企業が知るべきサービスの全体像と費用相場」を読んだ上で、複数社と話してみることで分かる。
7. なぜジムフリがこういう記事を書くのか
このブログを始めた理由は、ここにある。
「検索しても欲しい情報が出てこない。だったら自分で書く。」
業務効率化エンジニアとして、自社でもバックオフィス効率化やAI活用を試してきた。AIで業務を自動化した経験、外注してうまくいったこと・失敗したこと、ツール選びで後悔したこと。こういう一次情報を書く場所がないから作った。
数字を隠さない方針で書いている。自社のコスト・工数・失敗例も含めて書く。大手メディアが「月3〜5万円が相場」と書く横で、「うちの会社では月2万円でこのツールを使っていて、これができる・これができない」と書く。その方が読んだ人の役に立つと思っているからだ。
「役に立つかもしれないけど、中小企業の全員に当てはまるわけじゃない」という話でも書く。「自分の会社には当てはまるか当てはまらないかを自分で判断してほしい」というスタンスで情報を出す。大手メディアが「皆さんにおすすめです」と書く一方、僕は「向いている会社・向いていない会社がある」と書く。その方が誠実だと思う。
まとめ
Google検索で大手メディアばかり出てくる問題の本質は、「一次情報を持っている人間が書いていない」ことにある。
大手メディアは二次情報を整理するのは得意だが、「実際にやってみてどうだったか」は書けない。個人ブログは2023年以降のアルゴリズム変更で検索結果から遠のいた。
検索をうまく使うポイント:
- 大手メディアの記事は「基礎知識」として読む
- 「失敗」「経験談」「実例」のキーワードで一次情報を探す
- 意思決定は実際に試す・複数の専門家に相談する
- 特定のサービスを推奨しているメディアの背景(誘導先)を意識する
AI顧問の選び方・活用事例については「AI顧問とは?中小企業が知るべきサービスの全体像と費用相場」が参考になる。具体的な活用の始め方は「中小企業のAI導入|最初の3ヶ月で何をすべきか」を先に読んでほしい。
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この記事を書いた人: 野原琉海(株式会社ラズリ代表)。業務効率化に特化したエンジニアとして、自社でAI顧問サービスを運営。