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中小企業の社内規程整備|最低限必要なものと作成費用の目安

「就業規則は作ったけど、他の規程は何が必要か分からない」「規程の内容が10年前のままになっている」という会社は多い。社内規程の整備は後回しにしがちだが、人が増えたタイミングや労務トラブルが起きてから慌てて対応すると、手間と費用が余分にかかる。

この記事では、従業員5〜50人規模の中小企業が最低限整備すべき規程の種類と、整備の方法・費用相場を解説する。

社内規程と就業規則の違い

まず基礎的な整理をしておく。

就業規則は、労働時間・賃金・休暇・服務規律などの労働条件を定めたもの。常時10人以上の社員を雇用している会社は、就業規則を作成して労働基準監督署に届け出る法的義務がある。

社内規程は、就業規則を含む会社内のルール全体を指す。就業規則以外にも経費精算の手順・情報管理のルール・ハラスメント対応のフローなど、会社運営に必要な様々なルールを文書化したものだ。

就業規則は「作っていないと法律違反になる可能性がある」ものだが、他の社内規程は法的義務より業務上の必要性から整備するものが多い。「何が義務で、何は任意か」を区別してから着手すると、優先順位が付けやすい。

中小企業が最低限整備すべき規程の優先順位

全部を一度に整備しようとすると動けなくなる。優先順位を決めてから着手する。

第1グループ:法的義務または法的リスクが高いもの

規程名 必要になるタイミング
就業規則 常時10人以上の従業員がいる場合は届出義務
賃金規程(就業規則の別規程) 給与・手当の計算根拠を明確にする
育児・介護休業規程 全規模の会社で整備が求められる。2025年に法改正あり
ハラスメント防止規程 会社に防止措置義務がある

就業規則を作成する際、賃金規程・育児介護休業規程は別規程として同時に整備するのが一般的だ。社労士に依頼する場合はセットで作成することが多い。

育児・介護休業法は2025年4月と10月に改正が施行されており、既存の規程がある場合でも法改正への対応が済んでいるか確認が必要だ。

第2グループ:会社を守るために早めに整備したいもの

規程名 必要になるタイミング
個人情報管理規程 顧客・社員の個人情報を扱う場合
情報セキュリティ規程 テレワーク導入・クラウドサービス利用時
秘密保持・競業避止に関するルール 社員の退職時にトラブルを防ぐ
文書管理規程 契約書・帳簿などの保管・廃棄ルール

個人情報漏洩が起きてから「規程がありませんでした」では通らない。特に顧客データを扱う会社は早めに整備しておく。秘密保持については就業規則の服務規律に盛り込むケースもある。

第3グループ:業務効率のために整備するもの

規程名 目的
出張旅費規程 交通費・宿泊費の精算ルールを統一する
慶弔見舞金規程 慶弔時の対応を迷わないようにする
稟議・決裁規程 承認が必要な金額と手順を明確にする
テレワーク規程 在宅勤務の条件・費用負担ルールを定める

これらは法的義務ではないが、「ケースごとに経営者が判断する」状態が続くと判断コストが積み上がる。ルールを文書化することで意思決定を仕組みに置き換えられる。

3つの整備方法と費用相場

方法1:テンプレートを使って自分で作る

コストを抑えたい場合、テンプレートを使って自社で作成する方法がある。

厚生労働省・社労士事務所・クラウドサービス企業(マネーフォワード・bizocean等)がWordやExcelの無料テンプレートを公開している。テンプレートを自社の実態に合わせて編集し、内容を確認してから運用開始する。

費用:ほぼ0円(自社担当者の時間コストのみ)

ただし自作には注意点がある。

  • テンプレートを無編集のまま使うと、自社の実態と乖離した規程になる
  • 法令改正への対応は自分で調べる必要がある
  • 規程の内容が他の規程と矛盾していても気づきにくい

作成した規程は就業規則と同様に社員に周知することが必要だ。

方法2:社労士に依頼する

就業規則・賃金規程・育児介護休業規程など労務関連規程は、社労士に依頼するのが実務的に確実だ。

費用相場(ゼロから新規作成の場合)

  • 従業員10名未満:10〜30万円
  • 従業員10〜50名:20〜50万円

費用相場(既存の規程を確認・改定のみの場合)

  • 5〜20万円

顧問契約を結んでいる社労士がいる場合は、顧問料の範囲内で対応してもらえるケースもある。まず現在の契約内容を確認する。

社労士に依頼するメリットは、法令改正の反映・労基署への届出代行・社員説明時のフォローまで対応してもらえること。一度作ったら終わりではなく、定期的な見直しが必要なため、継続的な関係を作っておくと運用が楽になる。

方法3:行政書士またはコンサルに依頼する

個人情報管理規程・情報セキュリティ規程・契約関連規程など、労務以外の規程は行政書士やコンサルが対応する。

費用は内容と規程数によって異なり、単体の規程作成で5〜20万円程度、複数の規程をパッケージで依頼する場合は30万円以上になるケースもある。

ただし中小企業で全ての規程をコンサルに頼む必要はない。個人情報管理規程・情報セキュリティ規程の多くはテンプレートで自社作成できる。「法的義務のあるもの(労務系)は社労士」「その他はテンプレートで自作」という切り分けが費用対効果上は合理的だ。

費用を抑えるための考え方

社内規程整備のコストを下げるには、「何を外注して何を自作するか」の切り分けが重要だ。

外注した方がいいもの

  • 就業規則・賃金規程・育児介護休業規程など、法的な正確性が必要なもの
  • 労基署への届出が伴うもの

自作で十分なもの

  • 出張旅費規程・慶弔見舞金規程など、自社のルールをそのまま文書化するだけのもの
  • 情報セキュリティ規程(IPA(情報処理推進機構)が中小企業向けのひな形を無料公開している)

整備の進め方

ステップ1:今の状態を把握する

どんな規程が存在し、いつ作成されたか一覧にする。規程名・最終更新日・届出の有無を確認する。「そもそも規程があるか分からない」という場合は、過去の書類を探す棚卸しから始める。

ステップ2:優先順位を決める

常時10人以上の従業員がいて就業規則が未作成、または10年以上更新していない場合は、まずここから。それ以外は第2グループから着手する。

ステップ3:第1グループを社労士に依頼する

就業規則・賃金規程・育児介護休業規程は社労士に一括で依頼するのが確実で、費用面でも効率的だ。

ステップ4:第2・第3グループはテンプレートで自作する

厚生労働省・IPAなどが無料で公開しているひな形を活用し、自社の実態に合わせて編集する。作成した規程は社員が確認できる場所(共有フォルダ・Notionなど)に保存する。

ステップ5:定期的に見直す

社内規程は「一度作れば終わり」ではない。法令改正・社員数の増減・働き方の変化に合わせて、年1回程度見直す習慣を作る。育児介護休業法のように毎年改正が入る分野は、社労士に確認しながら更新していく。

まとめ

中小企業が最低限整備すべき社内規程の全体像をまとめる。

優先度 規程の種類 整備方法
就業規則・賃金規程・育児介護休業規程・ハラスメント防止規程 社労士に依頼
個人情報管理規程・情報セキュリティ規程・秘密保持ルール テンプレート自作
出張旅費規程・慶弔見舞金規程・稟議規程 テンプレート自作

費用の目安は、社労士に一括依頼(就業規則セット)で20〜50万円。自作できるものを自作すれば、トータルコストを10〜20万円以下に抑えられる。

まず「今ある規程の棚卸し → 優先順位を決める → 社労士に連絡する」の3ステップで動き始める。整備する規程の数や内容は、動きながら絞り込んでいけば十分だ。

労務管理の外注について全体像を整理したい場合は、労務管理を丸ごと外注する方法|社労士・BPO・オンラインアシスタントを比較もあわせて読んでほしい。

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