採用のたびに「また高くついた」と思っていないか
採用活動を終えて振り返ると、1人採用するのに100万円以上かかっていた——こういう話は中小企業でも珍しくない。
求人媒体への掲載料、面接に使った時間、採用担当者の工数、入社後の研修コスト。これらを合算すると、感覚より大きな数字になる。
採用コストが高くなる主な原因は2つだ。
1つ目は人材紹介会社への依存。人材紹介サービスを通じて採用すると、採用成立時に内定者の想定年収の25〜35%を紹介手数料として支払う。年収500万円の人材なら125〜175万円が一度の採用で飛ぶ。採用1件ごとにこの金額が積み上がる。
2つ目は採用が決まらない期間のコスト。採用が長引くほど、その業務を他の社員がカバーする負担が続く。採用活動そのものの費用だけでなく、採用できない期間のロスも実態としては大きい。
この記事では、中小企業が実際に採用コストを抑えている方法を3つに絞って解説する。大きな投資や採用専任者がいなくても、今の体制で実践できるものだけを選んだ。
採用コストの内訳を把握する
「採用コスト」と一言で言っても、何が含まれているか整理されていない会社が多い。
外部コスト(外に払うお金)
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 求人媒体への掲載料 | 無料〜数十万円(媒体・掲載期間によって異なる) |
| 人材紹介手数料 | 採用者の年収の25〜35%(成果報酬) |
| 採用代行サービス | 月10〜30万円 |
内部コスト(社内で消費するリソース)
- 採用担当者が求人票を書く・面接をする・連絡対応をする時間
- 複数の面接官が時間を割く回数
- 入社後の研修・受け入れ対応にかかる工数
中小企業で採用コストが膨らむのは、ほぼ「外部コストのコントロールができていないから」に集約される。特に人材紹介手数料は成功報酬型なので、採用が成立した瞬間に大きな費用が確定する。
採用コストを抑える3つの方法
方法1: 人材紹介への依存度を下げ、直接応募ルートを整備する
採用コスト削減の最大のレバレッジは、人材紹介会社を使う前に直接応募ルートを育てることだ。
直接応募を集めるための基本的な3つのルートを整理する。
ハローワーク(無料)
公共職業安定所への求人登録は無料で行える。税金で運営されているサービスのため、掲載料は一切発生しない。求人票の書き方や採用計画の相談も窓口で受け付けている。
大企業の求人には応募が集中しやすいが、地場の中小企業への応募においては、大手求人媒体よりもハローワーク経由の方が合う人材が集まりやすいケースもある。採用活動の出発点として機能させられる。
Indeed(無料・有料の両方がある)
Indeedには無料掲載と有料(クリック課金)の2種類の掲載方法がある。まず無料での掲載から試し、応募の反応を見ながら有料への移行を判断するのが現実的だ。有料のクリック課金に移行した場合でも、クリック単価の設定次第でコストをコントロールできる。
自社採用ページ
会社のウェブサイトに「採用情報」ページを作るだけで、求人媒体を通さない直接応募のルートができる。広告費は発生しない。求職者が「この会社に直接応募したい」と思ったときの受け皿になる。
求人票の精度と更新頻度が応募数に直結するため、設置して放置ではなく、定期的な見直しが必要になる。
方法2: リファラル採用を仕組み化する
リファラル採用は、社員が知人・友人を紹介して採用につなげる手法だ。
人材紹介会社と違い、外部コストはほぼ発生しない。紹介者へのインセンティブ(数万円程度)を設ける場合も、人材紹介手数料と比べれば大幅に安い。
さらに、自社の職場環境を実際に知っている社員からの紹介のため、入社後のカルチャーフィットが高くなりやすく、早期離職率にも好影響が出やすい手法だ。採用コストを下げながら定着率も上がるという点で、費用対効果は高い。
ただし、「制度を作ったが誰も紹介してくれない」という失敗パターンが多い。うまく機能しない主な理由は2つある。
- 社員が職場環境に自信を持てていない
- 制度の存在を社員が知らない、または面倒くさいと感じている
制度として機能させるためのポイントは以下の通り。
- 制度を定期的に伝える: 年1回の周知では定着しない。社内チャットや朝礼など、定期的に触れる機会を作る
- インセンティブを明文化する: 「採用が決まったら○万円払う」と金額を明確にする。曖昧な制度は行動を引き出さない
- 紹介しやすい状態を作る: 紹介者が「この会社に来てほしい」と思える職場であることが前提になる
方法3: 内定辞退を減らして、無駄な再採用を防ぐ
採用コストが見えにくい形で積み上がる要因の一つが、内定辞退後の再採用だ。
書類選考・面接・内定を経て辞退された場合、そこまでに使ったすべての費用と時間が無駄になり、また最初から採用活動をやり直す。中小企業で内定辞退が起きやすいのは、次の2つが多い。
選考が遅い
書類選考から内定提示まで1ヶ月以上かかると、その間に他社から先に内定が出て比較検討が始まる。選考スピードが遅いほど辞退リスクは上がる。
書類を受け取ってから内定まで2〜3週間を目標にする。面接の回数を絞り、意思決定のプロセスを短くすることが先決だ。
会社の実態が伝わっていない
求人票に都合のいいことしか書かない会社は、入社後のギャップから早期離職が起きやすい。残業時間の実態、チームの人数と年齢層、業務の難易度と習熟に必要な期間など、正直に伝えた方が結果的にフィット感の高い人材が残る。
内定辞退と早期離職を減らすことは、採用コストを直接的に下げることにつながる。
やりがちなコスト増のパターン
毎回エージェントに頼む
人材紹介会社を活用すること自体は問題ない。ただ、採用が発生するたびに反射的にエージェントに連絡する習慣がついていると、コストは下がらない。まずハローワーク・自社ページ・リファラルを試して、それでも埋まらないポジションにエージェントを使うという優先順位に変える。
急いで複数媒体に同時掲載する
採用を急いで複数の求人媒体に同時掲載すると、費用が膨らむ一方で応募の管理が追いつかなくなる。まずコストがかからないルートを整備し、反応を見てから有料媒体への追加投資を検討する。
採用要件を絞りすぎて長期化させる
「○○経験3年以上」「○○資格必須」と要件を絞りすぎると、応募がそもそも来ない。掲載期間が長くなるほど有料媒体への費用が増え、採用担当者の工数も積み上がる。入社後に教育で補える部分は要件から外し、採用母集団を広げることがコスト削減に直結する。
まとめ
採用コストを下げるために必要なのは、採用専任者を置くことでも、高額なシステムを導入することでもない。
まず着手すべきは「人材紹介への依存を意識的に減らすこと」だ。ハローワーク・Indeed・自社採用ページの3つを整備するだけで、直接応募のルートができる。
並行してリファラル採用の制度を作り、選考スピードを上げ、内定辞退を減らす。これを一通りやれば、採用1人あたりのコストは大幅に変わる。
採用コストが高い中小企業の多くは、コストが高い手法だけを使い続けている。手法の優先順位を変えるだけで、結果は変わる。
採用そのものを減らす方向性として、業務の外注や仕組み化で人手不足を解消する方法もある。