バックオフィスが回らなくなっている。でも採用できない——中小企業でよく聞く状況だ。
求人を出しても応募が来ない。採用できても半年以内に辞める。コストと時間をかけてもまた欠員が出る。このループを繰り返すうちに、経営者自身が事務作業を引き受けている会社は多い。
ただ、バックオフィスの人手不足は「採用でしか解決できない問題」ではない。採用以外の手段で業務を回せる状態をつくるアプローチが3つある。
この記事では、その3つを整理し、自社の状況に合った選択肢を判断できるよう解説する。
なぜ採用は「バックオフィスの人手不足対策」として機能しにくいのか
解決策に入る前に、採用が機能しにくい理由を整理しておく。
入社まで時間がかかりすぎる
求人を出してから実際に入社するまで、平均で3〜6ヶ月かかる。バックオフィスが今まさに回らなくなっているタイミングで、それだけ待てる会社は少ない。その間、経営者かほかのスタッフが穴を埋め続けることになる。
中小企業では定着しにくい
採用費用をかけて採用しても、数年以内に辞めるケースが中小企業では珍しくない。離職のたびに採用コストが再発生し、引き継ぎ対応も発生する。「採用→育成→退職→再採用」のループになっている会社は多い。
コストが思った以上にかかる
求人広告(Indeed、タウンワーク等)経由で採用する場合、1人あたり数十万円かかることが多い。転職エージェント経由では年収の30〜35%が手数料の目安になる。月給25万円の人材なら手数料だけで90〜100万円前後になる。
採用で解決しようとすると、コスト・時間・定着リスクの三重の問題がある。それが「採用以外の方法」を検討する理由だ。
採用しないで解決する3つの方法
方法1: オンラインアシスタント(外注)で業務を引き取ってもらう
オンラインアシスタントとは、記帳・請求書管理・データ入力・採用事務・総務雑務などをリモートで引き受けるサービスだ。フジ子さん・HELP YOU・キャスターなどが知られている。
通常の採用と違い、雇用契約を結ばずに業務だけを依頼できる。採用・教育・退職リスクを負わずに、今月から業務を任せられる点が最大のメリットだ。
向いているケース
- 担当者が退職・休職して、今すぐ誰かに業務を引き取ってほしい
- 専任担当者を雇う余裕はないが、事務作業の量だけを減らしたい
- 業務が経理・総務・採用事務など複数にまたがっていて、1人採用しても対応しきれない
費用の目安
月3万〜10万円(利用時間・業務の種類による)。月20時間プランで3〜5万円から利用できるサービスが多い。正社員を雇う場合の月額人件費(社会保険・賞与込みで月30〜40万円)と比べると、コストは大幅に下がる。
注意点
税務申告・社会保険の専門手続きなど、資格が必要な業務はカバーされないことが多い。その場合は税理士・社労士と組み合わせる必要がある。
方法2: ツールで定型作業を自動化する
バックオフィスには「毎月必ず発生するが、やり方は変わらない」定型作業が多い。請求書の発行、入金の消込、給与計算、勤怠集計——これらはツールを入れることで大幅に工数が削れる業務だ。
| 業務 | ツール例 | 効果の目安 |
|---|---|---|
| 請求書発行・受取 | freee請求書、マネーフォワード請求書 | 発行・管理の工数が半分以下になることが多い |
| 給与計算 | マネーフォワードクラウド給与、freee給与 | 手計算から月1〜2時間以内に短縮 |
| 勤怠管理 | KING OF TIME、ジョブカン勤怠管理 | 集計・申請のやり取りがほぼなくなる |
| 経費精算 | マネーフォワード経費、楽楽精算 | 領収書の手入力・転記作業が不要になる |
向いているケース
- 今も手入力・紙作業・Excelでの管理が残っている
- 担当者が辞めるたびに「あの人しかやり方を知らない」業務が出てくる
- 同じ作業を毎月繰り返しているが、ツールを入れるほどでもないと放置している
注意点
「ツールを入れたのに業務が楽にならない」という状態が起きやすい。エイトレッドのDX実態調査によると、システム化を行っても8割以上のバックオフィス担当者が「業務負担が軽減されていない」と回答しており、その最大の原因は「システム間の連携ができていない」とされている。
ツール導入前に、既存の会計ソフトや他のサービスとの連携が可能かを確認することが重要だ。
方法3: 「やらなくていい業務」を仕分けして削る
3つ目は外注でもツールでもなく、業務そのものを削るアプローチだ。
バックオフィスの業務を洗い出すと、「誰かがずっとやっているが、実は必要ない作業」が一定数出てくることが多い。
よくある例:
- 毎週集計しているが、月次でも十分な数値レポート
- 承認フローが4段階あるが、実態は1段階で判断が完結する書類
- 「念のため」保存しているが法的義務のない書類のコピー管理
- 社内のだれも確認していないExcelの集計ファイル
これらを仕分けして削るだけで、担当者の業務量が2〜3割減ることは珍しくない。採用もツールも不要で、今いる人員で回せるようになるケースがある。
向いているケース
- 「何となく忙しい」が、どの業務に時間がかかっているか把握できていない
- 担当者を増やせない状況で、まずできることから始めたい
- ツール導入や外注の前に、業務の全体像を整理したい
自社に合う方法の選び方
3つの方法は状況によって使い分ける。以下を判断の目安にしてほしい。
「今すぐ誰かに作業を代わってほしい」→ オンラインアシスタント
担当者が退職して穴が空いている、今月の請求書がまだ出ていない、という緊急の状況であれば、まず外注で業務を引き取ってもらうことが優先だ。ツール選定をしている時間はない。
「毎月同じ作業に時間がかかっている」→ ツール導入
業務は何とか回っているが、特定の作業(給与計算・請求書処理など)に毎月何時間も使われている場合は、ツール投資が早く元を取りやすい。月数千円〜1万円のツールでその業務の工数を大幅に削れるなら、導入は早いほど効果が出る。
「担当者に余裕がなく、理由が分からない」→ 業務の仕分けから
何が忙しいのか、どの業務に時間が取られているのかが見えていない場合は、まず業務の棚卸しから始める。何をやっているかが分かってから、外注かツールかを判断する順番が正しい。
まず何から始めるか
「3つを比較して最適なものを選んでから動こう」と考えると、動き出すまでに時間がかかりやすい。
最初の一歩として取り組みやすい行動を3つ挙げる。
オンラインアシスタントを検討する場合
フジ子さん・HELP YOU・キャスターなどのサービスページで、無料の相談・見積もりを申し込む。依頼できる業務と費用感を把握するだけでも方針が見えてくる。
ツール導入を検討する場合
すでに使っている会計ソフト(freee・マネーフォワード等)のサービス一覧を確認し、自社が使っていない機能を洗い出す。多くのクラウド会計ソフトは、請求書・経費精算・給与計算をまとめてカバーできる。
業務の仕分けから始める場合
担当者に「この1週間にやった業務を全部書き出してもらう」を依頼する。一覧化するだけで、不要な業務が見えてくることが多い。
どれか1つを今週の行動に入れるだけで、先が見え始める。
自社のバックオフィスで何から着手すべきか、現状をヒアリングした上で具体的な方針をお伝えできる。
まとめ
バックオフィスの人手不足を採用で解決しようとすると、コスト・時間・定着リスクの三重の問題がある。解決策は3つある。
- 外注(オンラインアシスタント): 今すぐ作業を任せたい場合に有効。月3〜10万円。採用・育成のリスクを負わずに即稼働できる。
- ツール自動化: 毎月繰り返す定型作業に効く。月数千円〜1万円から。ツール間の連携を事前に確認することが重要。
- 業務の仕分け: 不要な業務を削ることで工数を減らす。ゼロコストで着手できる。
3つを組み合わせて使うことで、採用なしでも業務が回る状態をつくることができる。
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