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中小企業の経営者が知っておくべき節税の基本|税理士に任せる前に理解する

「節税は税理士に任せている」という経営者は多い。

それ自体は間違いではないが、一つ問題がある。税理士は「申告する人」であって、「節税を提案する人」ではない場合が多い

節税の提案が顧問料に含まれていないケースもあるし、そもそも「経営者が何を求めているか」を伝えなければ、税理士も動きようがない。結果として、使えたはずの制度を使い損ねたまま、毎年同じ税金を払い続けている会社は珍しくない。

この記事では、中小企業の経営者が最低限知っておくべき節税の基本を整理する。「税理士に相談する前に、何を理解しておくべきか」という視点で書いた。

まず知る:法人税はどこにかかるか

節税の話をする前に、法人税の仕組みを一度整理しておく。

法人税は、会社の課税所得に対してかかる。


課税所得 = 益金(売上などの収益)- 損金(費用など)

つまり、損金として認められる支出を増やすほど課税所得が下がり、税金が減る

中小企業に適用される法人税率は以下の通り(租税特別措置法による軽減税率、令和9年3月末日までに開始する事業年度が対象)。

課税所得 法人税率
年間800万円以下の部分 15%
800万円超の部分 23.2%

これに法人住民税や法人事業税が加わるため、実際の税負担はおおよそ25〜30%前後になる。「今期の利益が500万円なら、税負担は130〜150万円程度」という感覚を持っておくと、節税の優先順位がつけやすくなる。

経営者が最初に確認すべき4つの節税

1. 役員報酬の設定(定期同額給与)

経営者が自分に支払う役員報酬は、法人の損金に算入できる。報酬を増やせば法人税が下がるが、同時に個人の所得税・住民税・社会保険料が増える。

ポイントは法人税と個人の所得税・社会保険料の合計が最小になる金額を探すこと。これは会社の利益水準と個人の状況によって変わるため、毎年税理士と確認すべき項目のひとつだ。

注意点は一つある。役員報酬は期首から3ヶ月以内に1回だけ変更できる(定期同額給与の原則)。期中に変更すると損金算入が認められなくなるため、期初の設定が重要になる。「今期は忙しくて後回しにした」では間に合わない。

2. 小規模企業共済(経営者個人の積立)

小規模企業共済は、中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)が運営する経営者向けの退職金積立制度だ。

月額1,000円〜70,000円(最大月7万円・年84万円)の掛金が、個人の所得から全額控除される

年収700万円の経営者が月7万円(年84万円)の掛金を支払うと、所得税と住民税の合計で年間20〜30万円程度の節税になるケースが多い。

ただし、これは法人税ではなく、個人の所得税・住民税を下げる制度だ。混同している経営者が多いため注意が必要。また加入条件があり、常時使用する従業員が20人以下(商業・サービス業は5人以下)の会社役員などが対象となる。

3. 経営セーフティ共済(倒産防止共済)

取引先が倒産した際に備えるための共済制度で、月最大20万円(年240万円)の掛金を全額法人の損金に算入できる。掛金の累計上限は800万円。

法人税を直接下げられる制度として、利益が出た期に広く活用されてきた。ただし、2024年10月以降に重要な制度改正があった

> 改正内容:解約後2年間は、再加入しても掛金を損金算入できない

>(2024年10月1日以降の解約分から適用)

それ以前は、解約して手当金を受け取り、すぐ再加入して再び損金算入するという繰り返しが広まっていた。この方法を封じるための改正だ。

節税目的だけで解約→再加入を繰り返す方法は使えなくなっている。既に加入している場合は、解約のタイミングに注意が必要だ。

4. 少額減価償却資産の特例(青色申告中小企業)

青色申告をしている中小企業は、40万円未満の備品・設備を購入した年度に一括で損金算入できる(少額減価償却資産の特例)。

なお、2026年4月1日以降に取得する資産から、上限が従来の30万円未満から40万円未満に引き上げられた(令和8年度税制改正)。年間の合計上限は引き続き300万円まで。

通常、設備投資は耐用年数に応じて何年もかけて減価償却していくが、この特例を使えば買った年度に全額経費にできる。「今期利益が出そうだから備品を買う」という判断で使われやすいが、不要なものを購入するのは本末転倒だ。必要なものを、必要なタイミングで購入する際に、この特例を意識する、という順番が正しい。

決算前に確認すべきこと(3つ)

年度末が近い場合に確認すべき事項をまとめる。新しく何かを始めるというより、「計上できているか確認する」作業に近い。

未払費用の計上

決算日までに発生している費用は、まだ支払っていなくても損金に計上できる(発生主義の原則)。

  • 社員への給与(翌月払いの場合、月末発生分)
  • 事務所の地代・家賃
  • 顧問税理士・社労士への報酬

「支払い済みのものしか経費にならない」と思っている経営者がいるが、それは誤りだ。発生主義で計上できるものが漏れていないか、決算前に確認してほしい。

不良資産・回収不能債権の整理

  • 不良在庫の評価損:商品・材料の価値が実態として下落している場合、評価損を計上できる場合がある
  • 回収見込みのない売掛金:法律上の回収不能が証明できる場合は貸倒損失として損金計上できる

この処理は要件が細かいため、税理士と確認しながら進めること。

決算賞与

決算前に従業員への賞与を支給する、または支給を書面で通知し、翌月末までに支払えば損金として算入できる

ただし、特定の従業員だけに支給する場合は認められないため注意。また、会社の資金繰りを圧迫しないかを先に確認することが前提だ。

「節税のやりすぎ」で起きること

節税の話をすると「利益が出たら何でも経費にしたい」という方向に走る経営者がいる。これには注意が必要だ。

節税の目的は「税金を減らすこと」ではなく、「手元に残る現金を最大化すること」だ。

よくある失敗のパターン:

  • 利益を圧縮しようと、使わない設備・備品を期末に駆け込みで購入する
  • 旅費規程や交際費を過剰に使い、後から指摘される
  • 資金繰りが厳しいのに共済の掛金を増やして、手元現金を圧迫する

特に「現金が外に出ていく節税」は注意が必要だ。税金を30万円減らすために40万円の不要な設備を買っては意味がない。節税によって実際に手元に残る現金が増えるかどうかを軸に判断する。

利益が出た年は「税金を払える状態」でもある。税金を払うこと自体は、会社が稼いでいることの証拠だ。過度に税金を嫌がらず、必要な節税を適正に行うことが重要だ。

税理士に相談する前に準備しておくこと

節税の話を税理士と生産的に進めるために、経営者側で以下を把握しておくと話が早い。

  • 今期の利益の見込み(粗くていいので、売上・費用のざっくりした数字)
  • 来期以降に予定している大きな支出(設備投資、採用、移転など)
  • 役員報酬の現在の設定と、来期変えたい方向感
  • 小規模企業共済・経営セーフティ共済の加入状況

「先生におまかせ」では、税理士も提案しにくい。「今期の利益が○○円出そうだが、何かできることはあるか」という形で話を持ちかけると、具体的な提案が返ってきやすくなる。

まとめ

この記事で紹介した内容を表で整理する。

やること タイミング 対象
役員報酬の最適化 期首3ヶ月以内に設定 法人税+個人税のバランス調整
小規模企業共済への加入・増額 随時 個人の所得税・住民税
経営セーフティ共済への加入 随時(解約タイミングに注意) 法人税
少額減価償却特例の活用 40万円未満の備品を購入時 法人税
未払費用の確認 決算前 法人税
決算賞与 決算前(翌月末までに支払う) 法人税

節税は、年間を通じて計画的に動くものだ。決算前に慌てて対策するより、年初に税理士と「今期の節税方針」を話しておくほうが、確実に手元に残る現金が増える。

制度改正も毎年あるため、去年の情報が今年は使えない、というケースもある。経営者として基本的な仕組みを理解した上で、税理士に適切な質問ができる状態を保っておくことが、長期的には大きな差になる。

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