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中小企業の就業規則の作り方|費用を抑えて整備する3つの方法

会社が成長して従業員が増えてきた頃に「そういえば就業規則をまだ作っていない」と気づく経営者は多い。あるいは、10年以上前に作ったまま一度も更新していないという会社も珍しくない。

就業規則は作って終わりではなく、法改正のたびに見直しが必要だ。社労士に頼むべきか、自分で作れるのか、費用はいくらかかるのか——この記事でまとめる。

就業規則の作成が義務になる条件

就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る義務が発生するのは、常時10人以上の従業員を雇用している事業所だ(労働基準法第89条)。

「常時10人以上」について、よく誤解されている点が2つある。

  • 正社員だけでなく、パート・アルバイトも含めてカウントする
  • 会社全体ではなく事業所単位でカウントする。本社と支店を別々に判断する

義務に違反した場合、30万円以下の罰金が課される可能性がある(労働基準法第120条)。

従業員10人未満でも就業規則を作るべき理由

法的義務はなくても、就業規則がない状態は会社側にリスクがある。

具体的には「遅刻・無断欠勤が続く従業員に対して何もできない」「解雇したいが根拠となる規定がない」「残業代の計算ルールが曖昧で後から請求されても反論できない」といった問題が起きやすい。

就業規則は罰則の道具ではなく、「労働条件のルールを明文化した契約書」だ。整備しておくことで、トラブルが起きた時に「会社のルールはこうなっている」と示せる根拠になる。

従業員が数人であっても、採用が進むタイミングで整備しておく方が後で楽だ。

就業規則に書かなければならないこと

就業規則には「必ず書かなければならない事項」と「制度がある場合だけ書かなければならない事項」の2種類がある。

絶対的必要記載事項(全会社共通)

以下3項目は、就業規則に必ず記載しなければならない。

  • 労働時間・休日・休暇に関する事項  始業・終業時刻、休憩時間、休日、有給休暇、交替勤務の場合の就業時転換など
  • 賃金に関する事項  賃金の決定・計算・支払方法、締切日・支払日、昇給の取り扱い
  • 退職に関する事項  自己都合退職の手続き、定年、解雇の事由

相対的必要記載事項(制度がある会社のみ)

退職金・賞与・表彰・懲戒(制裁)などの制度を設けている場合は、その内容を記載する必要がある。制度がない場合は記載不要だ。

就業規則の作成から届出までの流れ

作業の全体像は5ステップだ。

Step 1: 現状の労働条件を整理する

自社の始業・終業時刻、休日日数、休暇制度、残業の取り扱いなどを書き出す。就業規則は会社の実態と合っていなければ意味がない。

Step 2: 就業規則を作成する

厚生労働省のモデル就業規則を活用して自作するか、社労士に依頼して作成する。

Step 3: 従業員代表から意見を聴く

就業規則を届け出る際には、労働者の過半数を代表する者からの意見書が必要だ。同意が必要なわけではなく、「意見を聴いた」という記録が必要になる。

Step 4: 労働基準監督署に届け出る

「就業規則」「就業規則届」「意見書」の3点を2部ずつ用意して、所轄の労働基準監督署に提出する。1部は受付印をもらって会社保管用にする。郵送・窓口・電子申請のいずれでも対応できる。

Step 5: 従業員に周知する

作成した就業規則を従業員に周知する義務がある(労働基準法第106条)。社内掲示・冊子配布・社内共有フォルダへの格納など、いつでも確認できる状態にする。

就業規則を整備する3つの方法と費用相場

方法1: 厚生労働省のモデル就業規則を使って自作する

費用: ほぼ0円(担当者の作業時間のみ)

厚生労働省が「モデル就業規則」のWord版を無料で公開しており、ダウンロードして自社用に編集できる。14章構成で、採用・勤務・賃金・休暇・懲戒などの基本的な規定が揃っている。

ただし、テンプレートをそのまま使うのは危険だ。自社の実態と合わない箇所(勤務時間・賞与の有無・副業可否・試用期間の長さ等)を必ず見直し、自社の実情に合った内容に修正する必要がある。数字や条件が空欄のまま、あるいはデフォルトのまま届け出ても、実態と乖離した規則は労使トラブル時に会社側が不利になる。

向いている会社

  • 従業員が10〜15人程度で、雇用形態がシンプルな会社(正社員のみ等)
  • 経営者か担当者が労務の基礎知識を持っている
  • 就業規則を初めて整備する段階で、まず形を作りたい

方法2: 社労士に新規作成を依頼する

費用: 10万〜30万円程度

社会保険労務士(社労士)は、就業規則の作成・届出を業として行える国家資格者だ。自社の労働条件や雇用形態をヒアリングした上で、法令に準拠した内容を作成してもらえる。

費用は事務所の規模や依頼内容によって異なる。

規模・内容 費用の目安
従業員10〜20人・正社員のみのシンプルな構成 10万〜15万円
従業員20〜50人・複数の雇用形態がある 15万〜30万円
懲戒規程・副業規程等を別途整備する場合 30万円以上になることも

向いている会社

  • 就業規則が全くない状態から整備したい
  • 残業代トラブル・解雇問題など、労務上のリスクが現実に起きている
  • パート・契約社員・正社員など複数の雇用形態が混在している
  • テンプレートを自分でカスタマイズする自信がない

方法3: 既存規則のスポット改定を依頼する

費用: 3万〜10万円程度

既に何らかの就業規則がある会社が、内容の見直しや法改正対応をスポットで依頼する場合だ。新規作成よりも費用が抑えられることが多い。

近年は育児介護休業法・パワハラ防止法・フレックスタイム制に関する法改正が続いており、5年以上前の就業規則をそのまま使っている会社は要注意だ。スポット対応に特化した社労士事務所や、オンラインで対応するサービスが増えている。

向いている会社

  • 以前作成した就業規則が5年以上更新されていない
  • 最低限のレビューと届出だけ外注したい
  • 法改正への対応が直近で必要になった

どの方法を選ぶか——判断の基準

状況 推奨する方法
就業規則が一切なく、従業員10人以下 自作(モデル就業規則を活用)
就業規則がなく、従業員が10人を超えた 社労士への依頼を優先
5年以上更新していない規則がある スポット改定(社労士か格安サービス)
残業・解雇等のトラブルが現実に起きている 社労士(相談対応も含めて依頼)
今すぐ費用をかけられない モデル就業規則で自作→後で社労士に確認

判断の軸は「従業員規模」と「労務リスクの大きさ」の2つだ。

小規模でリスクが低い段階では自作で形を作り、従業員が増えたり複雑な雇用形態が出てきた段階で社労士に整理してもらうという順番も現実的だ。

社労士に依頼する際の注意点

顧問契約とスポット依頼を区別する

就業規則の作成だけを依頼する「スポット依頼」と、毎月の社保手続き・相談も含めた「顧問契約」では費用体系が異なる。就業規則の作成だけを依頼したい場合は、スポット対応の見積もりを明示的に取る。顧問契約への加入を前提として費用が提示される場合もあるので、事前に確認する。

届出後に従業員へ説明する責任は経営者にある

社労士が作成した就業規則でも、従業員に対して内容を説明する責任は経営者にある。「なぜこのルールが必要か」を従業員が理解できる形で周知する。届出して終わりではなく、実態に沿って運用することが重要だ。

まとめ

就業規則の整備は、後回しにするほどリスクが大きくなる。

  • 従業員が常時10人以上いる事業所では法的義務が発生する(違反は30万円以下の罰金)
  • 10人未満でも整備していないと、労務トラブル時に会社側が不利になりやすい
  • 費用を抑えたい場合は厚生労働省の無料テンプレートが使えるが、そのまま流用は危険
  • 社労士への新規作成依頼の相場は10万〜30万円

整備のタイミングは「問題が起きてから」ではなく「問題が起きる前」だ。従業員が10人前後になってきたら、まず厚生労働省のモデル就業規則をダウンロードして現状の労働条件と見比べてみることを勧める。

就業規則を含む労務管理全般を外部に任せる場合の選択肢については、まずは相談してほしい。

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