「税理士に頼んでいるのに、帳簿の整理が自分に回ってくる」
「経理代行を使っているが、決算の時だけ別の業者が必要だと言われた」
こういった状況が起きるのは、経理代行と税理士の役割が根本的に異なるためだ。どちらかに任せれば全部解決するというものではない。
この記事では、経理代行と税理士の業務範囲・費用の違いを整理し、どちらに何を頼むべきかの判断基準を解説する。
そもそも何が違うのか
税理士とは
税理士は国家資格を持つ税務の専門家だ。税務申告・税務相談・税務書類の作成は、税理士にしか行えない独占業務と定められている(税理士法第2条・第52条)。
法人・個人事業主が確定申告や法人税申告を他者に依頼する場合、税理士または税理士法人との契約が必須となる。報酬をもらって税務申告を代行できるのは税理士だけだ。
経理代行とは
経理代行は、日々の経理事務作業を代わりに行うサービスだ。国家資格は不要で、会計事務所・BPO会社・オンラインアシスタントサービスなど様々な形態がある。
ただし経理代行業者は税務申告を行うことができない。帳簿の記帳や書類整理はできても、確定申告書の作成・提出は税理士の業務だ。
業務範囲の比較
| 業務 | 税理士 | 経理代行 |
|---|---|---|
| 確定申告・法人税申告 | ○(独占業務) | × |
| 税務相談・節税アドバイス | ○ | × |
| 決算書の作成 | ○ | △(補助のみ) |
| 税務調査の立ち会い | ○ | × |
| 日々の記帳(帳簿入力) | △(事務所による) | ○ |
| 請求書・領収書の管理 | × | ○ |
| 請求書の発行代行 | × | ○ |
| 月次試算表の作成 | △(事務所による) | ○ |
| 給与計算 | × | △(オプションが多い) |
税理士は「申告・税務相談」、経理代行は「日々の事務処理」 と整理できる。
費用の目安
税理士の費用
従業員5〜30人規模の中小企業が顧問税理士を依頼する場合の一般的な費用は以下の通りだ。
- 月額顧問料:2〜5万円(売上規模・訪問頻度による)
- 決算申告料:10〜30万円(別途)
- 記帳代行込みの場合:月額4〜8万円
記帳まで依頼するかどうかで月額が大きく変わる。「顧問税理士がいるから経理は全部お任せ」と思っていたら、記帳は自社でやる前提だったというケースは珍しくない。契約時に確認が必要だ。
経理代行の費用
- 月額1〜3万円(仕訳数100件以下、リモート対応)
- 月額3〜6万円(仕訳数200〜400件、月次レポートあり)
- 月額6万円以上(複数の会計ソフト対応、複数担当者対応)
経理代行は業務量(仕訳件数・書類枚数)で価格が変動するのが一般的だ。
どちらに頼むべきか
税理士だけで十分なケース
- 社内に経理担当者がいて、日々の帳簿入力は自力でできる
- 確定申告・決算書の作成・税務相談だけ外注したい
この場合は、税理士に申告関連をまとめて依頼するのが最も手間が少ない。記帳まで含めて依頼すれば、税理士一本で対応できる。
経理代行だけで完結するケースはほぼない
経理代行だけでは税務申告ができない。個人事業主・法人のどちらも年に一度の申告が法的に必要なため、経理代行のみで完結するケースはほぼない。
「経理代行を契約したら確定申告も頼めると思っていた」という誤解は多い。契約前に対応範囲を必ず確認することが必要だ。
両方組み合わせるケース(中小企業で最も多い)
多くの中小企業が当てはまるのは、税理士と経理代行を組み合わせるパターンだ。
- 税理士:申告・節税アドバイス・決算書作成を担当
- 経理代行:日々の記帳・請求書管理・月次試算表の作成を担当
税理士に記帳まで依頼するとコストが上がる。日々の経理処理は専門の代行サービスに任せ、税理士には申告・税務判断に集中してもらう形が費用対効果の高い分担だ。
バックオフィスの外注体制をまとめて見直したい場合は、お問い合わせからご相談ください。対応範囲と費用感をお伝えします。
よくある誤解
「税理士に任せているから経理は問題ない」
税理士との顧問契約に記帳代行が含まれていない場合、日々の帳簿入力は自社対応が前提となる。多くの税理士は月1回まとめてデータを受け取って申告するスタイルで、日々の処理まではカバーしていない。
契約時に「月次の記帳はどちらがやるか」を明確にしておくことが重要だ。
「経理代行があれば税理士は不要」
税務申告は税理士の独占業務だ。法人・個人事業主は年に一度の申告が法的に必要なため、税理士なしで済ませることはできない。
「税理士と経理代行、両方に払うのは無駄では?」
業務範囲が異なるため、重複ではない。むしろ、税理士に日々の記帳まで全て依頼するよりも、記帳を経理代行に任せた方が月額コストを抑えられるケースもある。
選ぶ際の確認ポイント
税理士を探す際に確認すること
- 月額顧問料に記帳代行が含まれるか(別料金か)
- freee・マネーフォワードなど、利用中の会計ソフトに対応しているか
- 月次での打ち合わせ・数字の共有はあるか
経理代行を探す際に確認すること
- 税務申告に対応していないことを理解した上で契約するか
- 仕訳件数・書類の種類に応じた料金体系か
- 利用中の会計ソフトと連携できるか
- 税理士との情報連携をサポートしてくれるか
まとめ
| 税理士 | 経理代行 | |
|---|---|---|
| 何をやるか | 申告・税務相談・決算書 | 記帳・書類管理・月次処理 |
| 国家資格 | 必要 | 不要 |
| 月額費用の目安 | 2〜5万円(記帳別途) | 1〜6万円(業務量による) |
| 申告業務 | ○ | × |
経理代行と税理士は、どちらかで全て解決できるものではない。多くの中小企業では両方を組み合わせ、業務範囲を分担するのが現実的な選択だ。
まず自社の状況(社内で記帳できるか、申告だけ外注したいか、全部任せたいか)を整理してから、何を誰に依頼するかを決めると判断しやすい。
経理・バックオフィスの外注をまとめて相談したい方へ
経理代行の選定から、税理士との連携体制の整備まで、バックオフィス全般の外注体制を相談したい場合はお問い合わせください。