事務代行・外注

経理代行と税理士の違い|どっちに頼むべきか判断基準を解説

著者:野原琉海(業務効率化に特化したエンジニア)

「税理士に頼んでいるのに、毎月の帳簿整理が結局自分に回ってくる」

「経理代行を使いはじめたのに、決算の時期だけ別の業者が必要だと言われた」

こういう状況に陥った経営者から、業務効率化のサポートに入る中でよく話を聞く。どちらも「頼んだ先が悪かった」わけではなく、「何を頼めるのかを理解しないまま契約した」のが原因だ。

経理代行と税理士は、役割が根本的に違う。どちらかに全て任せれば解決するわけではないし、何も考えずに両方使うと内容が重複して無駄な支出にもなる。

この記事では、経理代行と税理士の業務範囲・費用の違いを整理し、どちらに何を頼むべきかの判断基準を具体的に解説する。

経理代行と税理士、何が根本的に違うのか

まず前提として、経理代行と税理士は「守備範囲」が全く異なる。ここを理解せずに話を進めると、後から「そんなことは頼んでいない」というトラブルになる。

税理士とは何をする人か

税理士は国家資格を持つ税務の専門家だ。税務申告・税務相談・税務書類の作成は、税理士にしか行えない独占業務と法律で定められている(税理士法第2条・第52条)。

法人・個人事業主が確定申告や法人税申告を他者に代行してもらう場合、税理士または税理士法人との契約が必須だ。報酬をもらって税務申告を代行できるのは税理士だけであり、資格のない人間が報酬をもらって申告業務を行うことは違法になる。

税理士の仕事は「申告のために数字を整理して、税務署に正しく申告する」ことだ。あわせて、節税のアドバイスや税務調査への対応も税理士の業務になる。

経理代行とは何をするサービスか

経理代行は、日々の経理事務作業を代わりに行うサービスだ。国家資格は不要で、会計事務所・BPO(業務プロセスアウトソーシング)会社・オンラインアシスタントサービスなど、様々な形態のサービスがある。

ただし経理代行業者は税務申告を行うことができない。帳簿の記帳や書類の整理はできても、確定申告書の作成・提出は税理士の業務だ。

経理代行の仕事は「毎月の取引を帳簿に記録し、請求書・領収書を整理して、月次の数字をまとめる」ことだ。

一言で整理するとこうなる

税理士 経理代行
主な役割 税務申告・節税相談・税務対応 日々の記帳・書類管理・月次処理
必要な資格 国家資格(税理士法) 不要
申告業務(確定申告・法人税申告) 可(独占業務) 不可
記帳(日々の帳簿入力) 事務所による(別料金が多い)
月次試算表の作成 事務所による

税理士は「申告・税務判断」の専門家で、経理代行は「日々の事務処理」の担い手だ。どちらが上でも下でもなく、担当領域が違う。

業務範囲の詳細比較(何が頼めて、何が頼めないか)

「なんとなく違うのは分かったが、具体的に何ができて何ができないのか」という部分を整理する。

業務 税理士 経理代行
確定申告・法人税申告 ○(独占業務) ×
税務相談・節税アドバイス ×
決算書の作成 △(補助のみ、申告はできない)
税務調査の立ち会い ×
日々の記帳(帳簿入力) △(事務所による・別料金が多い)
請求書・領収書の管理 ×
請求書の発行代行 ×
月次試算表の作成 △(事務所による・別料金が多い)
給与計算 × △(オプション対応が多い)
支払い処理(振込代行) × △(対応範囲はサービスによる)

この表を見ると、経理業務には「日次・月次で発生する事務処理」と「年に1〜2回の税務申告」という2種類の仕事があることが分かる。前者は経理代行が担い、後者は税理士が担うのが自然な分担だ。

僕が現場でよく見るのは、「税理士に全部お任せ」のつもりだったのに、記帳(日々の帳簿入力)は最初から自社でやる前提だった、というケースだ。税理士のスタンスは「毎月まとめてデータを受け取って申告する」であり、日々の入力まで含む契約は、むしろ例外的な扱いになっている事務所の方が多い。

費用の比較(月額いくらかかるのか)

費用感の違いは把握しておく必要がある。どちらが高い・安いという単純な話ではなく、「何の費用か」を正確に理解することが重要だ。

税理士の費用

従業員5〜30人規模の中小企業が顧問税理士を依頼する場合の一般的な費用の目安は以下の通りだ。

内容 費用の目安
月額顧問料(訪問なし・申告相談のみ) 月2〜3万円
月額顧問料(月1回訪問・数字の共有あり) 月3〜5万円
決算申告料(年1回・別途) 10〜30万円
記帳代行込みの場合(記帳まで依頼) 月4〜8万円

注意点は、月額顧問料に記帳代行が含まれているかどうかは事務所によって全く異なることだ。月額2〜3万円の顧問料で契約している場合、記帳は自社対応が前提になっていることが多い。「月3万円で経理全部お願いできると思っていた」という誤解は、顧問契約を結んだ中小企業の経営者に実際に多い。

年間コストで見ると、月額顧問料(月2万円×12ヶ月=年24万円)に決算申告料(15万円)を足すと年間39万円になる。これが「税理士に払っている費用」の実態だ。記帳まで含めると年間コストはさらに上がる。

経理代行の費用

経理代行は業務量(主に仕訳件数・書類の種類)によって料金が変わる。

業務量の目安 月額費用の目安
仕訳100件以下(小規模・リモート対応) 月1〜3万円
仕訳200〜400件(月次レポートあり) 月3〜6万円
複数の会計ソフト対応・複数担当者対応 月6万円以上
給与計算(追加オプション) 月8,000〜3万円

小規模な会社であれば、月1〜3万円の範囲で記帳・書類管理を外注できる。従業員10人以下で取引件数が少ない会社なら、月1万〜1万5千円程度でまかなえるサービスも存在する。

両方組み合わせると費用はどうなるか

「税理士 + 経理代行」を両方使うと高くなる、と思う経営者が多い。ただ、実際は逆のケースもある。

税理士に記帳まで含めて依頼すると月額が4〜8万円になる。一方、記帳を月2万円の経理代行に任せて、税理士への支払いを申告特化の月2〜3万円に絞れば、合計4〜5万円で収まることがある。業務を切り分けることで、月1〜3万円のコスト削減になるケースは実際に存在する。

「両方使う=コスト増」は、必ずしも正しくない。何をどちらに依頼するかによって、むしろ合計費用が下がることもある。

費用感の詳細については経理代行の費用を実例で公開|従業員規模別の月額料金まとめでさらに具体的な数字を確認できる。

中小企業でよく使われる3つのパターン

経理代行と税理士の組み合わせには、大きく3つのパターンがある。自社がどこに当てはまるかを確認してほしい。

パターン 内容 向いている会社 月額コスト感
税理士のみ(記帳込み) 税理士が記帳から申告まで一括対応 仕訳件数が少ない小規模会社・管理コストを一本化したい 月4〜8万円
経理代行 + 税理士(分担型) 日々の記帳は経理代行、申告は税理士が担当 仕訳件数が多い・月次の数字を毎月確認したい 月4〜8万円(内訳が違う)
社内担当者 + 税理士 社内で記帳し、税理士は申告のみ担当 経理担当者が社内にいる会社 月2〜5万円(税理士顧問料のみ)

パターン1と2は月額コストが似ているように見えるが、内訳が全く違う。パターン1は税理士に記帳も申告も全部お願いするので、税理士事務所への一本化になる。パターン2は記帳は安い経理代行に任せて、税理士はより専門性の高い申告・税務相談に集中してもらう形だ。

実際に現場でよく見るのはパターン2への移行だ。経理担当者が退職したタイミングや、毎月の記帳作業が負担になってきた状況を機に、「記帳を外注して税理士には申告に集中してもらう」という体制に切り替える会社が多い。

一方で、パターン3が崩れる(経理担当者が突然辞める)タイミングで急いで対応を迫られるケースもある。そうなる前に、何をどちらに頼むかを事前に整理しておく方が安全だ。経理担当者の退職が突発的に発生した場合の対応については、経理が突然辞めた!中小企業の経営者がまずやるべき5つのことに整理している。

「税理士に任せているから大丈夫」と思っていたら大丈夫じゃなかった話

業務効率化に特化したエンジニアとして中小企業のバックオフィスに入ることがあるが、経理周りで最も多い誤解がこれだ。

「顧問税理士がいるから、経理は問題ない」

この認識が半分正しくて半分間違いなのは、前述の通り税理士と経理代行の役割が違うからだ。ただ、具体的にどんな問題が起きているかを経営者と一緒に確認すると、同じパターンが繰り返し出てくる。

最も多いのが「月次の数字が見えていない」パターンだ。月1回、領収書と通帳のコピーをまとめて税理士事務所に持参する。データが帳簿として整理されるのは2〜3ヶ月後。月次の試算表が出るのは、早くて翌月末。結果として、今月の収益状況を数字で確認できない、という状態が続いている。

「今の会社の収益状況をリアルタイムで確認できますか?」という質問を経営者にすると、「先月分はまだ出ていない」という回答が返ってくることがある。これは税理士への依頼が「申告特化」になっていて、月次管理の機能を持っていないからだ。

税理士は年に1〜2回の申告に向けてデータを整理することが主業務だ。毎月の試算表を出すことは、契約内容によっては含まれていない。月次で数字を把握して経営判断に使いたいなら、経理代行(記帳 + 月次試算表)を追加するか、税理士に月次レポートを出してもらう契約内容に変更する必要がある。

「経理は大丈夫だと思っていたのに、実は月次の数字が半期に1回しか見られていなかった」という状況は、珍しくない。税理士との顧問契約の内容を一度確認することを勧めている。

よくある3つの誤解とその正解

誤解1:「税理士と契約しているから経理は全部カバーされている」

税理士との顧問契約に記帳代行が含まれていない場合、日々の帳簿入力は自社対応が前提になっている。月額顧問料が2〜3万円の場合、ほぼ確実に記帳は自社でやる前提だ。

契約時に「月次の記帳はどちらがやるのか」「月次試算表はいつ出るのか」を明確にしておくことが重要だ。

誤解2:「経理代行を入れれば税理士は不要になる」

税務申告は税理士の独占業務だ。法人・個人事業主のいずれも、年に一度の申告が法的に必要なため、経理代行だけでは申告業務を完結できない。

個人事業主が自ら青色申告を行う場合は税理士なしでも可能だ。法人の場合も法的には自社申告が認められているが、税務リスクの観点から現実的ではないため、大多数の会社が税理士と契約している。

「経理代行を契約したら確定申告も一緒に頼めると思っていた」という誤解は実際に多い。契約前に「税務申告への対応はどうなるか」を必ず確認することが必要だ。

誤解3:「税理士と経理代行の両方に払うのは無駄では?」

業務範囲が異なるため、支払い先が2社になっても重複にはならない。むしろ、税理士に記帳まで全て依頼するよりも、記帳を経理代行に任せた方が月額コストが下がるケースも実際にある。

記帳を月2万円の経理代行に任せる代わりに、税理士顧問料を申告特化の月2万円に絞れば、合計月4万円に収まる。税理士一本で記帳込みで頼むと月6万円になる場合、分担した方が月2万円のコスト削減になる。

選ぶときに確認すべきポイント

税理士を選ぶ際の確認事項

  • 月額顧問料に記帳代行が含まれるか(別料金か)
  • freee・マネーフォワードなど、使用中の会計ソフトに対応しているか
  • 月次試算表はいつ出るか(月末締め翌月中旬など)
  • 決算申告料は月額とは別にいくらか(年間総コストで判断する)
  • 税務調査対応の費用はどうなるか

経理代行を選ぶ際の確認事項

  • 税務申告に対応していないことを理解した上で契約するか
  • 仕訳件数・書類の種類に応じた料金体系になっているか
  • 使用中の会計ソフト(freee・マネーフォワードなど)と連携できるか
  • 税理士との情報連携(データの受け渡し方法)をサポートしてくれるか
  • 担当者が変わった場合の引き継ぎ体制はどうなっているか

経理代行の選び方や費用感について詳しくは経理代行の費用を実例で公開|従業員規模別の月額料金まとめでまとめている。

経理代行の導入で失敗するパターンについては経理代行で失敗する中小企業の共通パターン5選が参考になる。

経理を外注する手順について、準備から導入までの流れを知りたい場合は中小企業の経理を外注する手順|準備から導入まで完全ガイドを参考にしてほしい。

まとめ

税理士 経理代行
何をやるか 申告・税務相談・決算書作成・節税アドバイス 記帳・書類管理・月次試算表・給与計算
必要な資格 税理士国家資格(必須) 不要
申告業務 ○(独占業務) ×
記帳業務 事務所による
月額費用の目安 月2〜5万円(記帳別途) 月1〜6万円(仕訳量による)
決算申告料 年10〜30万円(別途) 対応不可

経理代行と税理士は、役割が全く違う。どちらかだけで全て解決できるものではなく、多くの中小企業では組み合わせて使うことになる。

「今の顧問税理士との契約に記帳が含まれているか」をまず確認することをおすすめする。含まれていないなら、月々の記帳をどうするかを決める必要がある。社内担当者が対応できるなら現状維持でいい。手が回らないなら、経理代行の導入を検討するという順番で考えると判断しやすい。

一人経理の担当者がいる会社は、その人が辞めた時のリスクも考えておくことが重要だ。一人経理が退職する前に会社がやるべきリスク対策でそのリスクと対策をまとめている。

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