業務効率化ガイド

人件費を削減する方法|採用を減らさずにコストを下げる中小企業の選択肢

「人件費が重い」と感じているのに、誰かを辞めさせるわけにはいかない——そういう経営者は多い。

人が増えたわけでもないのに、人件費の総額が年々少しずつ上がっている。原因を探ると、残業代の増加、社員が抱える業務量の増加、本来は外に出せた業務を社員がそのままやり続けていることなど、複数の要因が絡み合っているケースが多い。

この記事では、採用を減らさず、人を切らずに人件費を下げるための具体的な方法を整理する。

人件費が「じわじわ増える」構造

人を新しく雇っていないのに人件費が増えるパターンには、いくつかの共通した構造がある。

残業が常態化している

業務量が増えても人員が変わらなければ、社員の残業時間が増える。残業代は割増賃金(法定は1.25倍以上)のため、通常の時間に働いてもらうより単価が高くなる。

月末の請求書処理、決算前の経理作業、繁忙期の対応——特定の業務や時期に残業が集中している会社では、その残業代が毎月定常的なコストになっている。

「外に出せる業務」を社員がやっている

中小企業では「社員がやった方が早い」という判断が積み重なり、本来であれば外注できる業務を正社員の業務時間で処理していることが多い。

給与計算・年末調整・請求書発行・問い合わせ対応の一部——これらは専門のサービスやツールで代替できる業務だが、「そのうち整理しよう」のまま社員の仕事として残り続ける。

担当業務の整理が止まっている

「昔からそうやっている」という手順が残っていることがある。ツールが変わった、担当者が変わった、業務フローが変わった——そういう変化があっても、作業の手順だけが旧来のまま残っているケースだ。

二重入力、不要な確認フロー、廃止できる報告書——こうした無駄が積み重なると、社員の稼働時間を食いつぶす。

採用以外で人件費を下げる3つのアプローチ

アプローチ1:残業の構造を変える

残業を減らす最も確実な方法は、「残業が発生している業務を特定して、その業務量または手順を変える」ことだ。

「残業禁止」や「残業申請の管理強化」では構造は変わらない。仕事量が変わらないまま帰宅時間だけが制限されると、業務が翌日に繰り越されたり、サービス残業化したりするだけだ。

残業を構造で減らすための手順は以下のとおりだ。

1. どの業務でどれだけ残業が発生しているかを把握する

勤怠管理の記録を見て、残業が多い社員・多い時期・多い業務を確認する。「○○さんは月末に毎回残業している」という把握では不十分で、「月末の何の業務で何時間かかっているか」まで落とし込む。

2. 業務量を減らすか、手順を効率化するかを判断する

残業の原因が「業務量の絶対的な多さ」なのか、「非効率な手順」なのかで対策が変わる。

  • 業務量が多い場合:外注・ツール化・担当者の追加のどれが適切か判断する
  • 手順が非効率な場合:手順を整理し、自動化できる部分を自動化する

3. 繁忙期の業務を平準化する

月末・決算期・繁忙期など、特定のタイミングに集中する業務は、前倒しできる部分を分散させる。請求書の一部を月中から発行するだけでも、月末の集中を和らげられるケースがある。

アプローチ2:外注で「固定費」を「変動費」に変える

正社員に任せている業務を外注に切り替えると、人件費の一部を固定費から変動費に変えられる。

正社員は業務量に関係なく毎月給与・社会保険料・福利厚生費がかかる。外注であれば、業務が発生した分だけコストが発生する。業務量が一定ではない中小企業にとって、この構造の違いは大きい。

外注に向いている業務の特徴は次のとおりだ。

  • 手順が決まっていて、社内に専門知識がなくてもいい業務:給与計算、年末調整、記帳、請求書発行
  • 繁忙期と閑散期の差が大きい業務:採用事務、決算対応、補助金申請
  • 判断が必要なく、処理が中心の業務:データ入力、議事録作成、勤怠集計

一方で、外注に向いていない業務もある。顧客との直接対応、意思決定が必要な場面、自社の機密情報を扱う業務などは、内部で持つ方が管理しやすい。

外注先の種類と費用感の目安は以下のとおりだ。

外注の種類 向いている業務 費用の目安
オンラインアシスタント 事務処理全般、メール対応、調査 月3.5〜7万円〜
経理代行・記帳代行 記帳、経費精算、請求書処理 月2〜5万円〜
給与計算代行 給与計算、社会保険手続き 月4〜6万円〜
バックオフィスBPO 経理・総務・人事の複合対応 月10万円〜

正社員1人を雇用した場合の月額コスト(給与・社会保険料・各種手当の合計)と比較すると、外注の方がコストを抑えられるケースは多い。ただし、業務の説明・マニュアル化・引き継ぎに初期コストがかかる点は考慮する必要がある。

各種外注サービスの費用相場の詳細はバックオフィス代行の費用相場|業務別の料金目安と選び方でまとめている。

アプローチ3:ツールで作業時間を削減する

人件費を下げるとは、給与を下げることではなく「同じ人員で処理できる業務量を増やす」ことでもある。

ツールを導入して1人あたりの処理時間を短縮できれば、追加で人を雇わなくても業務量の増加に対応できるようになる。また、残業が発生していた業務の手順を自動化することで、残業代を直接削減することにもつながる。

給与計算・勤怠管理の自動化

Excel・手作業で行っている給与計算や勤怠管理をクラウドツールに移行すると、入力・計算・確認の工数を大幅に削減できる。特に勤怠管理のシステム化は、集計ミスによる修正コストや確認作業の削減効果が大きい。

freee人事労務、マネーフォワードクラウド給与、SmartHRなどが中小企業でも導入しやすいサービスとして挙げられる。

経費精算の電子化

紙の領収書・手書きの申請書・Excelの集計——この流れをそのまま続けている会社では、申請者・経理担当者の双方に作業負担がかかっている。

経費精算ツール(マネーフォワードクラウド経費、楽楽精算など)に切り替えると、申請から承認、仕訳までの工数が減る。特に従業員が多い会社ほど効果が出やすい。

定型業務の自動化

毎月同じ手順で繰り返す業務——受注データの転記、請求書の発行、特定の通知送信など——はツールや簡易的な自動化(Zapier、Makeなど)で対応できることがある。

「自動化するにはエンジニアが必要」というイメージがあるが、ノーコードの自動化ツールを使えばエンジニアなしでも対応できる業務は多い。

よくある間違いと注意点

「残業代を払わない」は問題を悪化させる

残業代の未払い(サービス残業)は労働基準法違反であり、発覚した場合の未払い賃金の遡及請求リスクもある。残業代を削減するなら、残業そのものを減らす方向で対処する。

外注費と社員の人件費を単純比較しない

「外注の方が安い」と判断する前に、以下を確認する。

  • 外注先への業務説明・引き継ぎのコストは考慮しているか
  • 外注先の品質が自社基準を満たすか確認しているか
  • 外注先と社員の役割分担は明確になっているか

外注はコスト削減の手段だが、管理コストが増える可能性もある。業務の性質に応じて、外注が適切かどうかを判断する。

ツール導入だけでは業務量は減らない

ツールを導入しても、それまでの業務フローをそのまま移行するだけでは、期待していた工数削減にならないことがある。ツール導入は業務フローの見直しとセットで行う方が効果が出やすい。

何から始めるか

人件費削減に取り組む順番は次のとおりだ。

  • 現状把握:どの業務で残業が発生しているかを勤怠記録から確認する
  • 業務の仕分け:社員がやっている業務を「社員がやるべき業務」と「外注・ツール化できる業務」に分ける
  • 優先順位の決定:コストインパクトが大きく、かつ手をつけやすいものから着手する
  • 試行:いきなり全社展開せず、1業務・1部門で試して結果を確認する

最初から全部を変えようとすると、調整コストが大きくなり止まる。「残業が多い業務を1つ特定して、そこの手順を変える」という小さいスタートが継続しやすい。

今週やること

まず、過去1〜3ヶ月の勤怠記録を確認して、「残業が多い社員」と「残業が集中している時期や業務」を書き出す。

次に、その業務の手順を担当者に聞いて、「外注できるか」「ツール化できるか」「廃止できる手順はないか」の3点で確認する。

「人を減らさずに人件費を下げる」ための選択肢は複数ある。どこから手をつけるかは会社の状況によって変わるが、まず現状を把握せずに施策を打っても効果は出ない。

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