事務代行・外注

給与計算の外注はいくらかかる?費用相場と選び方

「給与計算アウトソーシング 費用」で検索すると、比較記事がたくさん出てくる。どれを読んでも「1人あたり月500〜1,500円」という数字は出てくるが、「うちは従業員20人で、年末調整と社保手続きも含めると月いくらになるのか」という問いには答えてくれない。

費用が分かりにくい理由は単純だ。給与計算のアウトソーシングは、何を頼むかによって費用が大きく変わる。給与計算のみなのか、年末調整まで含むのか、社会保険の手続き代行まで含むのかで、月額料金が2〜5倍変わることがある。

この記事では、業務範囲別・従業員規模別に費用相場を整理した上で、外注先の3タイプ比較と、発注前に必ず確認すべきポイントを解説する。

まず「何を頼むか」を整理する

給与計算に関連する業務は大きく4つに分かれる。外注する範囲によって費用と依頼先が変わるため、先に整理しておく。

業務 主な内容 頻度 外注のしやすさ
給与計算(毎月) 勤怠データの集計・給与額の算出・明細作成 毎月 しやすい
賞与計算 賞与額の計算・明細作成 年1〜2回 しやすい
年末調整 源泉徴収票の作成・税額の精算 年1回 対応不可の業者も多い
社会保険・労働保険手続き 入退社手続き・算定基礎・月変処理 随時 社労士のみ対応

「給与計算の外注」と調べている人の多くが想定しているのは毎月の給与計算だけだが、実際に負担になっているのは年末調整や社保手続きの方だという会社も多い。

僕が以前関わった従業員15人規模の会社では、月次の給与計算はfreeeでほぼ自動化できていたが、入退社のたびに発生する社保手続きが担当者の大きな負担になっていた。給与計算だけ外注しても、社保手続きが残ると「楽になった感」は半分以下にしかならない。どこまで任せたいのかを先に整理してから費用を見た方が、契約後のギャップを防げる。

従業員規模別の費用相場

給与計算のみを依頼する場合

従業員数 月額の目安 1人あたり単価
10人以下 月8,000円〜1万5,000円 月800〜1,500円/人
20〜30人 月1万5,000円〜3万円 月500〜1,000円/人
50人 月3万5,000円〜7万円 月700〜1,400円/人
100人以上 月6万円〜 月600円〜/人

1人あたりの単価は月500〜1,500円が相場だ。従業員が少ない場合は最低基本料金(月5,000〜1万円程度)が設定されていることが多く、少人数ほど1人あたりのコストが割高になる傾向がある。

年末調整まで含む場合

年末調整は年1回のため、月割りにするとプラス数千円程度で済むケースが多い。ただし「年末調整は対応していない」サービスも少なくないため、契約前の確認は必須だ。年末調整を後から別途依頼すると、追加で2万〜5万円かかることもある。

社会保険・労働保険手続きまで含む場合

入退社手続き・算定基礎・月変処理などを含めると、毎月の給与計算のみと比べて月額が1.5〜3倍程度になることが多い。社労士事務所に依頼する場合、従業員10〜20人規模で月2万〜4万円が目安になる。

給与計算+年末調整+社保手続きをまとめて外注する場合

従業員20〜30人規模で、月4万〜7万円程度が現実的な目安だ。社労士事務所またはバックオフィスBPO会社への依頼をベースにしている。

バックオフィス全体の外注費用の全体像はバックオフィス代行費用|月3万円〜の外注で失敗しない選び方【2026年版】も参考にしてほしい。

外注先3タイプの比較

費用だけでなく、対応できる業務の範囲がタイプによって大きく異なる。

タイプ 月額目安(20〜30人) 給与計算 年末調整 社保手続き 労務相談
社労士事務所 月3万〜6万円
給与計算専門BPO 月1万5,000〜3万円 △(別料金多い) × ×
クラウド給与ソフト 月3,000〜9万円(人数次第) ○(自社処理) △(アシスト機能) △(アシスト機能) ×

タイプ1: 社労士事務所

向いているケース: 社保手続きも任せたい、入退社が多い、労務の相談もしたい

社会保険労務士は給与計算だけでなく、社会保険の手続き・年末調整・労務相談まで一括で対応できる。入退社のたびに手続きが発生する会社や、法的な問題が生じたときに相談したい会社に向いている。費用はBPO専門会社よりやや高めになる傾向があるが、窓口が1つで済む点が大きい。

社労士への依頼を検討する場合、費用相場の詳細は社労士の顧問料はいくら?中小企業向け費用相場と失敗しない選び方に整理している。

タイプ2: 給与計算専門BPO会社

向いているケース: 給与計算のみをとにかく安く外注したい

給与計算に特化したサービスは料金が低めに設定されていることが多い。ただし、社会保険の手続き対応は含まれないことがほとんどで、労務相談にも対応していない場合が多い。毎月の給与計算が完結していて、社保手続きは自社または顧問税理士が対応できる会社に向いている。

タイプ3: クラウド給与ソフト(SmartHR・freee人事労務など)

向いているケース: 外注コストを抑えつつ、担当者の負担を減らしたい

厳密にはアウトソーシングではなく「ツールを使って自社で処理する」形だが、勤怠データの自動連携や社保手続きのアシスト機能が充実しているため、担当者の工数を大幅に削減できる。月額は従業員1人あたり1,000〜3,000円程度が相場だ。

僕の意見を言うと、従業員数が10〜20人規模の会社であれば「クラウド給与ソフト+社労士(月1〜2万円の顧問契約)」の組み合わせが最もコスパが良い。クラウドソフトで日常の給与計算はほぼ自動化しつつ、社保手続きや年末調整の実務だけ社労士に依頼する形にすると、完全BPO依頼より月1万〜2万円程度安く済む場合がある。

勤怠管理と給与計算の自動連携については勤怠管理と給与計算を連携させる方法|中小企業が手作業をなくす仕組みが参考になる。

見落としがちな隠れコスト

比較記事に書いてある「月額○円〜」の数字は、あくまで基本料金だ。実際の総コストは以下の追加費用も含めて試算する必要がある。

初期費用・セットアップ費用

BPO会社や社労士事務所に依頼する場合、初月または契約時にセットアップ費用(業務引き継ぎ・システム設定・データ移行など)がかかることがある。目安は2万〜10万円程度。無料の業者もいるが、最初から確認しておく。

年末調整の追加費用

「給与計算対応」と書いてあるサービスでも、年末調整は別料金になるケースが多い。後から追加依頼すると割高になることがあるため、契約時に「年末調整込みの年額」を確認するのがベストだ。

入退社手続きのスポット費用

給与計算専門BPOは月額固定料金だが、入退社が発生するたびにスポット料金を請求するサービスがある。採用・離職が多い会社では、年間を通じた総コストが想定より大きくなることがある。

システム連携費用

既存の勤怠管理システムや会計ソフトとのAPI連携が有料オプションになっている場合がある。特にkintone・クラウド会計との連携を想定しているなら、事前に確認が必要だ。

僕がこれまで見てきた中で、「月額2万円と聞いていたのに、年間で計算すると30万円を超えた」というケースの大半は、年末調整・入退社スポット料金・セットアップ費用の積み上げが原因だった。初期見積もりには年間コストで合計を確認するよう伝えたい。

発注前に確認すべき5つのポイント

費用の見当がついた後、発注前に必ず確認しておくべき点がある。僕が外注コンサルで見てきた中でも、ここを確認せずに契約してから後悔する会社が多い。

1. 年末調整は含まれているか(料金に含む or 別料金)

毎月の給与計算は対応しているが、年末調整は「別料金」または「対応していない」サービスは少なくない。年末調整を後から別途依頼すると追加で数万円かかることがあるため、先に確認しておく。年末調整の外注費用について詳しく知りたい場合は年末調整を外注するといくらかかる?費用相場と依頼先の選び方も参照してほしい。

2. 入退社時の社会保険手続きに対応しているか

採用や退職のたびに社保手続きが発生する。外注先がこれに対応するのか、自社で処理するのかは大きな違いだ。「給与計算はやってもらえるが、社保手続きは自社でやらなければならない」という状況になると、負担は思ったほど減らない。入退社手続きの詳細は中小企業の経理を外注する手順|準備から導入まで完全ガイドが参考になる。

3. 自社独自の給与ルールに対応できるか

特殊な手当体系(見込み残業・日給月給・複数の雇用形態が混在など)がある場合、標準化されたBPOサービスでは対応できないことがある。初回の打ち合わせで自社のルールを説明し、対応可能か確認する。

4. 担当者が変わったときの引き継ぎ体制

BPO会社やフリーランス社労士に依頼する場合、担当者が変わったときの引き継ぎがどこまで保証されているかを確認する。属人化が解消されるはずの外注で、新たな属人化リスクを生み出してしまうケースがある。

5. 情報セキュリティの体制

給与情報は従業員の個人情報の中でも機微性が高い。外注先のセキュリティ基準、データの送受信方法、情報漏洩時の対応方針を事前に確認する。Pマーク(プライバシーマーク)の取得有無が一つの目安になる。

大手メディアが書かない本音

給与計算アウトソーシングを比較するメディアの多くは「どのサービスも対応範囲が広く、安心して任せられる」という論調で書く。

ただ僕の率直な感想を言うと、月1万5,000円以下の給与計算代行は「毎月の給与明細作成まで」のことが多く、社保手続きや年末調整は別途費用になることが大半だ。価格だけを見て「安い!」と契約し、入退社が重なった月に想定外の追加費用が発生するケースを複数見てきた。

もう一点。クラウドツール(freee・SmartHR)の費用は「安い」と言われるが、操作できる担当者が1人しかいない状態で導入しても、結局その人が辞めたり休んだりした時点でリスクが顕在化する。ツールを入れることよりも「誰でも操作できる仕組みを作ること」の方が重要で、そこに社労士やBPOのサポートを組み合わせる価値がある。

費用対効果を最大化するなら、クラウド給与ソフトで日常の処理を自動化しつつ、社労士に月1〜2万円程度の軽い顧問契約を結んで年末調整・社保手続きのみ対応してもらう形が、中小企業にとって現実的な落とし所だと思っている。

どのケースで何を選ぶか

状況 向いている外注先 費用目安(20〜30人)
社保手続きも含めて全部任せたい 社労士事務所 月4万〜7万円
給与計算だけを安く外注したい 給与計算専門BPO会社 月1万5,000〜3万円
外注せず担当者の負担を減らしたい クラウド給与ソフト 月3,000〜9,000円
バックオフィス全体をまとめたい BPO会社または社労士法人 月5万〜10万円
コスト削減しながら安心感も欲しい クラウドソフト+社労士軽顧問 月2万〜4万円

従業員が10〜30人規模の中小企業であれば、まずは社労士事務所に問い合わせるのが現実的だ。給与計算から社保手続き・年末調整まで一括で対応してもらえる場合が多く、毎月の作業ごとに別の窓口に連絡する手間がなくなる。

まとめ

給与計算のアウトソーシング費用は、依頼する範囲によって大きく変わる。

  • 毎月の給与計算のみ(従業員20〜30人): 月1万5,000〜3万円
  • 年末調整・社保手続きまで含む(同規模): 月4万〜7万円

外注先の選び方は、社保手続きまで任せたいなら社労士事務所、給与計算のみならBPO専門会社、コストを抑えながら内製化したいならクラウドツールが基本の選択肢になる。

発注前に「何を頼むか」「年末調整・社保手続きは含まれるか」「自社の給与ルールに対応できるか」「年間コストの合計はいくらか」の4点を確認してから見積もりを取ると、契約後のギャップが防げる。

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