「社労士と顧問契約を結びたいが、月いくらかかるのか見当がつかない」という経営者は多い。社労士事務所のウェブサイトには料金表が掲載されていることも多いが、オプションが複雑で、最終的にいくらかかるか分かりにくい。
この記事では、従業員数別の月額相場・月額以外にかかるコスト・費用対効果が出るケースと出ないケース・社労士とオンラインサービスの使い分けを、中小企業の経営者が判断できる形で整理する。
社労士との顧問契約で何ができるか
まず「社労士に何を頼めるか」を押さえておかないと、費用が高いか安いかの判断ができない。
手続き代行
- 入退社時の社会保険・雇用保険の手続き
- 傷病手当金・育児休業給付金の申請
- 労働保険の年度更新・社会保険の算定基礎届
- 給与計算(別途契約のことが多い)
従業員の入退社が頻繁な会社や、育休・産休の手続きが多い会社は、この手続き代行だけでも月額料金に見合う効果が出やすい。
労務相談
- 就業規則の作成・変更
- 残業代・休日出勤の計算方法の確認
- 問題社員への対応(解雇・退職勧奨)
- ハラスメントが発生した場合の対処
労務トラブルは発生してから対応を誤ると、未払い賃金の請求や労働審判に発展することがある。「何かあった時に相談できる人がいる」という点が、顧問契約の最大の価値になる。
税理士との違い
よく混同されるが、役割はまったく異なる。
| 社労士 | 税理士 | |
|---|---|---|
| 担当領域 | 労務・人事・社会保険 | 税務・決算・申告 |
| 主な相談 | 採用・解雇・残業問題 | 節税・確定申告・資金繰り |
| 手続き代行 | 社会保険・雇用保険 | 法人税・消費税の申告 |
税理士が「お金の専門家」であるのに対して、社労士は「人と労務の専門家」。両方必要なケースが多い。
従業員数別・月額顧問料の相場
月額顧問料は、従業員数に応じて段階的に設定されているのが一般的だ。以下は全国平均の目安。
| 従業員数 | 月額顧問料の目安 |
|---|---|
| 5人以下 | 1.5万〜2.5万円 |
| 6〜10人 | 2.5万〜3.5万円 |
| 11〜20人 | 3.5万〜5万円 |
| 21〜30人 | 5万〜7万円 |
| 31〜50人 | 7万〜10万円 |
地域差について
都市部(東京・大阪・名古屋など)は地方より10〜20%程度高い傾向がある。また、同じ従業員数でも事務所の規模・実績・得意分野によって料金は変わる。
業種差について
飲食・介護・建設など、労務トラブルが発生しやすい業種や手続きが複雑な業種は、料金が高くなることがある。労働保険の計算が複雑な建設業や、シフト管理が多い飲食業はその代表例だ。
月額以外にかかるコスト
月額顧問料だけを見ていると、最終的な費用が想定外に膨らむことがある。契約前に確認しておくべき加算費用を整理する。
就業規則の作成・改定
就業規則の新規作成は10万〜20万円が相場。労働基準法第89条により、常時10人以上の労働者を使用する事業場は就業規則の作成と届出が義務付けられているため、未整備の会社は契約時に依頼することが多い(事業場単位での判断になるため、支店・店舗ごとに確認が必要)。既存規則の改定は5万〜10万円程度。
助成金申請の代行
雇用関係の助成金(キャリアアップ助成金など)の申請を代行する場合、成功報酬として助成金額の10〜20%を請求する事務所が多い。申請費用ゼロで着手できる代わりに、受給後に報酬が発生する仕組みだ。
年次業務の加算
- 労働保険の年度更新(6〜7月):1万〜2万円
- 社会保険の算定基礎届(7月):1万〜2万円
これらは毎年発生する手続きで、月額に含まれているか別途請求かは事務所によって異なる。契約前に確認しておく。
給与計算の追加費用
給与計算は顧問料とは別で月額1万〜3万円(従業員数による)が一般的。手続き代行の顧問契約に含まれないことが多いため、必要な場合は事前に確認する。
費用対効果が出るケース・出ないケース
月額2万〜5万円の顧問料が「高いか安いか」は、会社の状況によって変わる。
費用対効果が出やすい会社
採用・退職の頻度が高い会社
従業員の入退社が月1〜2件以上ある会社は、社会保険の手続きだけで顧問料に見合う効果が出る。手続きミスは後から修正が大変で、ペナルティのリスクもある。
労務リスクが高い業種
飲食・介護・運送・建設など、残業・休日出勤・シフト管理が複雑な業種は、知らないうちに法律違反になっていることがある。顧問社労士がいれば、問題が大きくなる前に気づける。
従業員とのトラブルが起きたことがある会社
一度でも残業代の未払い請求や解雇トラブルを経験した会社は、再発防止のために顧問契約を結ぶ価値がある。
育休・産休の手続きが年に複数回ある会社
育児休業給付金などの申請は手順が複雑で、ミスすると従業員に不利益をかける。手続きを代行してもらうだけで価値がある。
費用対効果が出にくい会社
従業員5人以下で動きがほぼない会社
年に数回の手続きと、特に相談もない状態なら、月額2万円の顧問契約はコストが見合わないことがある。スポット依頼(1件いくら)や、後述するオンラインサービスで十分なケースも多い。
採用・退職がほぼゼロの安定した構成の会社
ほぼ同じメンバーで何年も動いていて、労務的な変化がない会社は、顧問契約よりもスポット対応の方が合理的なことがある。
判断基準
「月1回以上、手続きか相談が発生しているか」を基準にするとよい。それ以下の頻度であれば、まずスポット依頼で試して、頻度が増えてきたら顧問契約に移行する判断もある。
社労士・オンラインサービス・BPOの三択比較
社労士への顧問契約だけが選択肢ではない。会社の状況に応じて、以下の三択から選ぶのが現実的だ。
| 社労士(顧問契約) | オンライン手続き代行 | バックオフィスBPO | |
|---|---|---|---|
| 月額費用 | 2万〜7万円 | 1万〜3万円 | 3万〜10万円 |
| 労務相談 | ◎(専門家が対応) | △(チャット・メール中心) | △(担当者による) |
| 手続き代行 | ○ | ○ | ○ |
| 労務トラブル対応 | ◎ | × | △ |
| 給与計算 | △(別途費用) | ○(セットが多い) | ○ |
| 対面・電話相談 | ○ | × | △ |
| 柔軟なカスタマイズ | ○ | × | ○ |
オンライン手続き代行が合うケース
社会保険・雇用保険の手続きだけ外注したい、相談はそれほど頻繁にしない、コストをできるだけ抑えたい、というケースではオンラインサービスで十分なことがある。クラウドを使って手続きを代行するサービスは、月1万円台から使えるものもある。
ただし、労務トラブルが発生した時の対応力は社労士に劣る。「問題が起きてから相談しようとしたら、対応範囲外だった」というケースには注意が必要だ。
バックオフィスBPOが合うケース
経理・総務・労務をまとめて外注したい場合はBPOが選択肢になる。ただし、労務専門の深さは社労士に及ばないことが多い。労務リスクが高い業種には向かない。
バックオフィス業務をまとめて整理したい場合は、ジムフリへご相談ください。労務に限らず、自社に合った外注・ツール・仕組みの組み合わせを一緒に考えます。
社労士を選ぶ前のチェックリスト
複数の事務所を比較する際に確認しておくべき項目をまとめた。
業種経験の確認
- 自社と同業種の顧問先がいるか
- 同業種特有の労務問題(例:飲食の深夜手当、建設の工事台帳)に精通しているか
担当者の体制確認
- 担当者1人が何社を担当しているか(30社以上は手が回らないことがある)
- 担当者が変わる場合の引き継ぎ体制はどうか
トラブル対応実績の確認
- 未払い賃金請求・労働審判の対応経験はあるか
- 労働基準監督署の調査に同行・代理できるか
レスポンス速度の確認
- 問い合わせから返答まで何営業日かかるか
- 試しにメールで問い合わせて、実際のレスポンス速度を測ることを勧める
費用の透明性
- 月額に何が含まれていて、何が別途請求か
- 年次業務(年度更新・算定基礎届)は月額に含まれるか
面談で必ず聞く質問5つ
面談(無料相談)に行く前に、この5つを質問リストとして準備しておく。
1. 同業種の顧問先は何社ありますか
業種経験があるかを間接的に確認できる。同業種が多ければ、業種特有の問題に対応できる可能性が高い。
2. 月の相談回数に上限はありますか
「相談し放題」と書いてあっても、実質的に応答が遅くなるケースがある。上限設定の有無と、上限を超えた場合の対応を確認する。
3. 労働基準監督署の調査対応はできますか
調査が入った時に同行・対応してもらえるかどうかは、事務所によって大きく異なる。できない場合は別途弁護士費用が発生することがある。
4. 担当者が変わる場合の連絡はありますか
大きな事務所では担当者の異動・退職がある。引き継ぎ体制と事前連絡の有無を確認する。
5. 契約解除の手続きと期間はどうなっていますか
解約時の手順と最短契約期間を事前に確認しておく。合わないと判断した時にスムーズに切り替えられるかどうかの確認でもある。
まとめ:社労士への投資判断の考え方
社労士の顧問料は従業員数によって異なるが、従業員10〜30人の中小企業であれば月額3万〜7万円が相場の目安になる。
費用対効果を判断する際は「月に何回、手続きか相談が発生しているか」を基準にするとよい。採用・退職が頻繁な会社、労務リスクが高い業種(飲食・介護・建設)は、顧問契約を結ぶ価値がある。逆に、従業員の動きがほぼなく手続きも年に数回程度であれば、オンラインサービスやスポット依頼の方がコスト効率がよい。
選ぶ際は、月額だけでなく月額外のコスト(就業規則作成・助成金報酬・年次業務)を含めたトータルコストで比較する。また、業種経験・レスポンス速度・トラブル対応力の3点を面談で確認してから決めるのが現実的だ。
バックオフィス全体を効率化したい、社労士以外の外注・ツール選びも含めて相談したい、という場合はジムフリにお問い合わせください。業務の棚卸しから始めて、自社に合った仕組みを一緒に設計します。