「社内にITを分かる人がいない」という状態は、従業員50人以下の中小企業では珍しくない。総務や経理の片手間でIT対応をしている、経営者自身がパソコン担当になっているという状況は、多くの会社で起きている。
問題は「社内SEがいないこと」ではなく、「対処の方針が決まっていないこと」だ。
このまま場当たり的に対応し続ければ、ある日突然、業務の止まるITトラブルが起きる。逆に言えば、早めに方針を決めておくだけでリスクをかなり小さくできる。
この記事では、社内SEがいない中小企業が取れる3つの選択肢を、コストと向き不向きで整理する。
社内SEがいないと実際に何が起きるか
社内にITを専任で見られる人がいない状態では、具体的に次のような場面で困ることが多い。
PCやネットワークのトラブル対応が経営者の仕事になる
プリンターが繋がらない、社内ネットが切れた、Excelが開かない。こういったトラブルへの対応が、なぜか経営者や事務スタッフに集まってくる。1件あたり30分〜2時間かかることもあり、その間は本来の仕事が止まる。
ITベンダーの提案が妥当かどうか判断できない
「新しいシステムを入れましょう」「今のサーバーは老朽化しているので替えた方がいいです」「クラウドに移行した方がコストが下がります」という提案が来ても、社内に判断できる人がいない。言われるままに発注して、後から「必要なかった」となるパターンが多い。
セキュリティ対策が後回しになり続ける
ウイルス対策ソフトの期限切れ、パスワードの使い回し、共有フォルダのアクセス権限の不整備。「大事だと分かっているが、誰がやるか決まっていない」という状態が続く。情報漏洩が起きた場合、中小企業でも取引先への損害賠償責任が発生する。
3つの選択肢
社内SEがいない状態を解消する方法は大きく3つある。
選択肢1:社内SEを採用する
最も直接的な解決策。IT業務を専任で担当する社員を採用する。
コスト
社内SEの年収は500〜600万円程度が相場だ(求人ボックス2026年データでは平均510万円、厚生労働省の統計では38歳時点で574万円前後)。給与に加えて社会保険料・賞与・採用コストを含めると、実際の年間費用は650〜850万円前後になる。採用エージェントを使う場合は別途、年収の30〜35%程度の紹介料が発生する(1人あたり150〜200万円程度)。
メリット
- 社内トラブルへの対応が速い(オフィスにいれば即時対応できる)
- 自社のシステムへの理解が深まり、知見が社内に蓄積される
- ITベンダーとの交渉窓口を担えるようになる
デメリット
- 採用が難しい。IT人材は引き合いが多く、中小企業には流入しにくい
- 1人だと属人化が起きる。その人が休んだり辞めたりすると同じ問題が再発する
- 業務量が少なければコストパフォーマンスが合わない
向いている会社
IT関連の業務が毎日継続的に発生し、従業員50人以上の規模がある会社。ITが事業のコアに関わる場合は採用を検討する価値がある。それ以下の規模では採用・維持のコストが見合わないことが多い。
選択肢2:情シス代行サービス(アウトソーシング)を使う
社内にIT担当者がいなくても、外部の専門チームにIT管理を任せる方法。「情シスアウトソーシング」と呼ばれることもある。
コスト
月額10〜50万円程度が相場だ。業務範囲によって大きく変わる。ヘルプデスク中心のプランなら月5〜12万円程度から利用できる。サーバー管理・セキュリティ対応まで含めると月20〜50万円程度になる。
メリット
- IT運用を丸ごと任せられる(PC管理・ネットワーク保守・ヘルプデスク等)
- 採用・育成が不要。担当者が退職するリスクもない
- チームで対応するため、特定の知識に偏らない
デメリット
- 自社の業務理解が浅い段階では、的外れな提案が来ることもある
- 緊急対応(深夜・休日)は別途費用になるケースが多い
- IT課題が少ない時期も月額固定費がかかる
向いている会社
従業員20〜50人程度の会社で、IT関連の困りごとが月に複数発生しているが、専任を置くほどの業務量はない場合に向いている。「PCトラブルや外部ベンダーとのやりとりを誰かに任せたい」という状況に特に合う。
選択肢3:IT顧問(月次相談・スポット相談)を使う
外部のITコンサルタントやエンジニアを月次契約または単発で活用する方法。実務作業より「判断・相談」が中心になる。
コスト
月額3〜15万円程度が中小企業の現実的な範囲だ。単発のスポット相談(1〜2時間)なら1〜3万円程度から利用できる。
メリット
- 費用が安い
- 「このシステムを入れた方がいいか」「このベンダーの見積もりは妥当か」という判断を相談できる
- 特定のサービス会社に縛られていない人に頼めば中立的なアドバイスを得やすい
デメリット
- PC設定やネットワーク管理などの実務作業は基本的に対象外
- 「何かあればすぐ来てもらえる」という体制は作れない
- 依頼する人の当たり外れがある
向いている会社
従業員20人以下の会社で、日常的なITトラブルより「判断が分からない」「相談できる人がいない」という場面の方が多い場合に向いている。「ITベンダーから提案が来たが、必要かどうか判断したい」という需要に特に合う。
3択の比較
| 社内SE採用 | 情シス代行 | IT顧問 | |
|---|---|---|---|
| 月額コスト目安 | 55〜70万円 | 10〜50万円 | 3〜15万円 |
| 実務作業 | できる | できる | 基本的に対象外 |
| 継続的サポート | できる | できる | 月次が中心 |
| 緊急対応 | できる | 別途費用が多い | 難しい |
| 採用リスク | ある | なし | なし |
| 向いている規模の目安 | 50人以上 | 20〜50人 | 20人以下 |
状況別:どれを選ぶか
月に1〜2回、PCトラブルや操作の質問が来る程度
IT顧問のスポット相談で対応できる。月額固定より、困ったときに単発で相談する方がコストに見合う。
IT関連の対応が週に複数回発生し、経営者や事務スタッフが時間を取られている
情シス代行サービスが現実的な選択肢だ。ヘルプデスク中心のプランから始めて、必要に応じて業務範囲を広げやすい。
IT業務が毎日発生し、プロジェクト管理やベンダー管理まで任せたい
社内SE採用を検討する段階だ。ただし採用難は覚悟が必要で、最初はフリーランスエンジニアへの業務委託を挟む方法もある。
最初にやるべきこと
どれを選ぶにしても、まず「自社のIT課題を見える化する」ことが必要だ。
1ヶ月間、ITに関する問い合わせ・トラブル・作業を記録する。「誰が、何の対応を、何時間したか」が分かると、月にどれくらいのITリソースが使われているかが見える。
この記録がなければ、どの選択肢が費用対効果で合うか判断できない。記録を取ってみると「意外と少ない」「意外と多い」という結果になることがある。どちらにしても、それが正しい選択の出発点になる。
「うちの会社に合う選択肢がどれか分からない」という場合は、こちらからお問い合わせください。業務の現状を聞いた上で、費用と業務量のバランスからどれが合うかをお伝えします。
まとめ
社内SEがいない状態を解消する選択肢は3つある。
- IT顧問: 月3〜15万円。相談・判断が中心。従業員20人以下の会社に向く
- 情シス代行: 月10〜50万円。IT運用を丸ごと任せられる。従業員20〜50人に向く
- 社内SE採用: 月55〜70万円。実務から管理まで一手に担える。従業員50人以上が目安
まず1ヶ月間、社内のIT対応をメモしておく。それだけで選択肢が自然と絞られる。
外注コスト全般の費用感を確認したい場合はバックオフィス代行の費用相場|業務別の料金目安と選び方も参考にしてほしい。
業務効率化・IT活用の相談は、株式会社ラズリで受け付けている。「社内SEは必要か?」という入口の質問から対応しているので、お気軽にお問い合わせください。