業種別ガイド

運送会社の事務を効率化する方法|配車管理・請求書処理の改善策

運送会社の事務は、他業種と比べて構造的に非効率になりやすい。

ドライバーは1日中現場に出ており、事務所との連絡は電話が中心だ。運転日報は紙で持ち帰り、翌朝まとめて事務担当が集計する。請求書は得意先ごとにフォーマットが異なり、毎月同じ内容を手作業で作り直している。

こうした状況が重なっている運送会社の事務担当は、1〜2名で朝から複数の業務を並走させている。繁忙期には残業が常態化し、担当者が辞めるとその業務が誰にも引き継げない状態になる。

この記事では、運送会社で特に負荷が高い事務業務を3つに絞り、それぞれの改善策を順を追って解説する。高価なシステムを導入しなくても着手できる方法から始めるので、「いきなり大きな投資はできない」という会社にも参考になるはずだ。

運送会社の事務が非効率になりやすい3つの理由

1. 事務とドライバーの働く場所が完全に分かれている

工場や小売店のように、事務と現場が同じ建物にある業種であれば、口頭でのやり取りが成立する。しかし運送会社は違う。ドライバーは配送先を回っており、事務担当との間には常に距離がある。

このため、確認事項が発生するたびに電話が必要になる。「荷物が出発したか」「何時に着く見込みか」「今日の追加配送に対応できるか」——これらが一件ずつ電話で処理されている会社は多い。

電話1本にかかる時間は短くても、1日に20〜30本になれば、事務担当の仕事時間のかなりの部分が電話対応で埋まる。

2. 紙の日報・FAX・電話が業務の中心にある

運送業の事務でよく出てくるのが、紙の運転日報だ。

ドライバーが1日の運行記録を紙の日報に記入し、翌朝持ち帰る。事務担当がそれを受け取り、労働時間や走行距離を手作業でExcelに転記する。転記ミスが起きても、翌朝まで気づかないこともある。

請求書のやり取りはFAXが主流の得意先も多い。電子メールへの切り替えを依頼しても断られるケースがあり、紙とデジタルが混在した状態が続く。

業界団体の調査でも、運送事業者の多くが受発注・配車・日報といった基幹業務でいまだに紙や電話を使い続けているという実態が報告されている。

3. 配車担当が1人しかいない(いわゆる「配車の神様」問題)

中小の運送会社では、配車業務を担う人間が固定化されていることが多い。長年の経験からルートや荷主の特性を把握し、判断の多くが頭の中に入っている。

この状態が続くと、担当者が休んだり退職したりした瞬間に配車業務が止まる。外部から引き継ぐことも難しく、会社全体のリスクになる。

最初に取り組むべき改善: 運転日報の電子化

運送会社の事務改善は、運転日報の電子化から着手するのが現実的だ。

理由は2つある。1つは、毎日発生する業務なので効果がすぐ実感できること。もう1つは、最近のスマホアプリを使えば初期コストをほぼかけずに始められること。

紙日報の何が問題か

  • 転記ミスが起きやすい: 紙からExcelへの転記は手作業のため、読み取りミスや入力ミスが発生する
  • 集計に時間がかかる: 10台分の日報を集計すると、1時間以上かかることがある
  • 保管コストがかかる: 道路運送法では運転日報の保管期間が1年以上と定められており、紙の保管スペースが必要になる
  • 後から確認できない: 「先月の○日、この荷主に何時着だったか」を紙で調べるのは手間がかかる

スマホアプリで電子化する方法

ドライバーがスマートフォンで日報を入力し、その情報が事務所のクラウドに自動で反映されるアプリを活用する。

主な選択肢として以下のようなサービスがある。

サービス名 主な特徴 月額費用の目安
運輸Digital(NX-Plus) 運送業に特化した日報・勤怠管理 要問い合わせ
ドライバーチェッカー 日報・アルコールチェック記録を一元管理 1アカウント500〜1,000円
Google Forms + スプレッドシート 無料で始められる簡易版 無料

まず費用をかけずに始めたいなら、Googleフォームを使う方法がある。ドライバーにスマートフォンからフォームを入力してもらうと、Googleスプレッドシートに自動で記録が蓄積される。集計もある程度自動化できる。

導入後の効果としては、日報の集計作業が1日30〜60分程度削減できる会社が多い。

電子日報に切り替える際の注意点

道路運送法では運転日報の保存義務があるが、電子データでの保存も認められている(電子帳簿保存法の要件を満たす必要がある)。システムを選ぶ際は、保存要件に対応しているか確認しておく。

また、ドライバーが高齢でスマホ操作に不慣れな場合は、簡単な入力フォーマットにすること、最初の数日は操作を一緒に確認することが定着の鍵になる。

配車管理の属人化を解消する

なぜ配車は属人化するのか

配車業務は判断の連続だ。「この荷主は時間厳守」「あのルートは朝に通ると渋滞する」「このドライバーは特定の荷主とトラブルになったことがある」——こうした経験則が積み重なった状態で配車が組まれている。

外から見ると結果だけが分かり、「なぜその配車にしたか」のロジックが残っていない。担当者の頭の中に全てある。

まずGoogleスプレッドシートで「配車の見える化」を始める

高額な配車システムを入れる前に、現状の配車情報を表形式で共有できる状態にすることが先決だ。

具体的には以下の情報を一枚のスプレッドシートに整理する。

  • ドライバーごとの担当エリア・荷主
  • 曜日・時間帯ごとの配送ルート
  • 荷主の注意事項(時間厳守、特殊な搬入条件など)
  • 車両の積載量・装備

この「配車マスター」を作るだけで、担当者が不在の日に他の人間が配車を組めるようになる可能性が高い。

作成は担当者本人に時間を取ってもらうことが必要だが、「辞める前に引き継ぎ資料を作る」より「今ある状態を記録しておく」という形で依頼する方が受け入れてもらいやすい。

配車システムの導入を検討するタイミング

スプレッドシートの管理でボトルネックが残る場合、専用の配車システムを検討する段階に入る。

主な選択肢として、ハコベル配車、トランストレックなどが中小規模向けに対応している。ただし初期費用と月額費用が発生するため、スプレッドシートで管理できる範囲を明確にしてから導入判断をするのがよい。

「システムを入れれば解決する」と先に入れてしまうと、運用が定着せず月額費用だけが発生し続けるケースがある。

請求書処理の標準化

得意先ごとにフォーマットが違う問題

運送会社の請求業務で時間を取られやすいのが、得意先ごとの請求書フォーマット対応だ。

A社はExcelの特定フォーマット、B社はPDF、C社はFAX——というように、取引先が増えるほど対応パターンが増える。毎月末の請求書作成で事務担当が数時間かけて対応しているケースは珍しくない。

請求書作成ツールを導入する

請求書作成ツールを入れると、テンプレートを複数登録できるため、得意先ごとの出力作業が一定程度効率化される。また2023年10月のインボイス制度(適格請求書等保存方式)対応が必要な場合、手作業での対応はミスが起きやすいため、ツールへの移行を兼ねて標準化を進める価値がある。

主なツールの比較を以下に示す。

ツール名 月額費用の目安 特徴
マネーフォワード クラウド 月額4,480円〜(スモールビジネスプラン、年払い) 会計・給与・請求書がセットで使える
freee請求書 無料〜 基本機能は無料。会計freeeと組み合わせると機能が広がる
Misoca(弥生) 無料〜(月10通まで無料。月15通以上は年額8,800円〜) シンプルで使いやすい。まず無料から試せる

得意先への統一交渉も並行で進める

ツール導入と合わせて、取引先に対して「請求書の受け取り方法をメールかWeb受領に統一させてほしい」と依頼することも検討する価値がある。

全社一度に切り替えるのは難しいが、新規取引先から順次電子化に統一していくだけでも、中長期的に作業量が減る。

事務とドライバーの連絡をスマホに移行する

電話での確認を減らすことは、事務担当の業務量に直接影響する。

すぐ始められる方法として、LINEグループやLINE WORKSを活用した連絡体制の整備がある。

  • 出発報告・到着報告をテキストで送ってもらう
  • 急ぎの追加配送依頼はグループチャットに投稿する
  • トラブル・遅延の報告も写真付きで送ってもらう

電話でしか報告できない仕組みを維持している限り、事務担当は電話が来るたびに手を止めなければならない。テキストで記録に残る方法に切り替えるだけで、業務の整流化が進む。

LINEは個人アカウントと混在するリスクがあるため、会社として使う場合はLINE WORKS(月額540円〜/1アカウント、年額契約なら450円〜。フリープランあり)か、Chatwork(フリープランあり)を選ぶ方が管理しやすい。

3つの改善を進める優先順位

以上を踏まえ、優先順位をつけると以下のようになる。

Step 1(今すぐ着手): 運転日報の電子化

  • 費用: Googleフォームなら無料
  • 効果が出るまでの期間: 1〜2週間
  • まず5台分でトライアルして、現場の反応を見る

Step 2(1〜2ヶ月後): 請求書作成ツールの導入

  • 費用: Misoca・freee請求書は無料プランから始められる
  • インボイス制度対応が未完了の会社は並行して対応を進める
  • 新規取引先から電子化に統一していく

Step 3(3ヶ月以降): 配車の見える化

  • まずはスプレッドシートで配車マスターを作成する
  • ボトルネックが残る場合のみ配車システムの導入を検討する

この順番で進める理由は、Step 1が「毎日発生する業務」で効果を最速で実感できるからだ。効率化の成功体験が1つあると、Step 2以降の取り組みへの社内抵抗が減る。

外注・ツール・採用をどう組み合わせるか

業務効率化の手段は、ツール導入だけではない。

事務担当が1人で手が回らない状態になっている場合、バックオフィス業務を外部委託する選択肢も検討する価値がある。請求書作成・データ入力・電話対応の一部を外注することで、残った事務担当が配車や荷主対応などコア業務に集中できる環境を作れる。

外注・ツール・採用の使い分けについては外注・ツール・採用、どれが正解?バックオフィスの人手不足を解消する3つの方法で整理している。

バックオフィス全体の外注費用の目安を知りたい場合はバックオフィス代行の費用相場|業務別の料金目安と選び方も参考にしてほしい。

業務効率化を何から手をつけるか迷っている場合は業務効率化は何から始める?最初の一歩を具体的に解説で判断基準を整理している。

-業種別ガイド