著者:野原琉海(業務効率化に特化したエンジニア)
「GA4を設定してもらったが、ログインしても数字が多すぎて何を見ればいいか分からない」
これは、顧問先の中小企業の経営者から頻繁に聞く言葉だ。ホームページ制作会社に依頼した時に「一緒にGoogleアナリティクスも入れておきました」と言われたが、その後一度もログインしていない——というケースは珍しくない。
GA4(Googleアナリティクス4)は機能が多い。マーケティングの専門家向けに設計されているため、ログインした瞬間に数十種類の指標が並んでいる。おまけに2023年7月1日に旧バージョン(ユニバーサルアナリティクス)のサポートが終了したことで、「以前の画面とまったく違う」と困惑している人も多い。
でも正直に言う。中小企業の経営者がGA4で見るべき指標は3つだけだ。月1回・15分でチェックが終わる方法があって、それだけで「サイトが機能しているか・していないか」の判断は十分できる。
この記事では、その3つの指標の確認方法と、数字が動いた時の判断基準を具体的に解説する。
GA4に切り替わって「画面が変わった」と感じたら、まず読んでほしい話
2023年7月1日に、旧バージョンのGoogleアナリティクス(ユニバーサルアナリティクス)のサポートが完全に終了した。それ以降は、GA4が唯一の標準バージョンになっている。
「以前と画面が全然違う」「セッション数という言葉の意味が変わった気がする」——こういった混乱が中小企業の間で起きているのには、理由がある。GA4は指標の名称と計測の考え方が旧バージョンと根本的に変わっているからだ。
旧UAとGA4の主な違い
| 旧バージョン(UA) | GA4 | 何が変わったか |
|---|---|---|
| ページビュー中心 | イベントベース | 「見た」だけでなく「何をしたか」を計測 |
| セッションとページビューが基本 | ユーザーとイベントが基本 | 指標の数え方の概念が違う |
| 「直帰率」 | 「エンゲージメント率」 | 指標名が変更、定義も変更 |
| ゴール設定 | コンバージョン設定 | 設定方法・場所が変わった |
この変更を把握していないと、GA4を開いた時に「どこを見ればいいか」が分からなくなる。
僕自身も最初はGA4の画面に戸惑った。旧バージョンに慣れていたから、慣れるまでに数時間かかった。経営者がログインするたびに迷子になるのは当然だと思っている。
だから最初からすべてを理解しようとしないことを勧める。まず3つの指標だけを見る場所を覚える。それだけでいい。
「全部見ようとする」から分からなくなる|3つに絞る理由
GA4のサイドバーには「レポート」「探索」「広告」「設定」と4つの大カテゴリがある。さらにそれぞれの下に数十の項目がある。
中小企業のホームページ運営において、これを全部見る必要はない。理由を3つ話す。
1. SEOの効果は短期間では動かない
記事を公開してから検索上位に表示されるまで、一般的には2〜3ヶ月かかる。日次・週次で細かく確認しても、ノイズが多くて意味のある判断ができない。月単位の推移を見る方が判断しやすい。
2. 中小企業が管理できるチャネルは多くない
SEO記事、リスティング広告、SNS——運用しているチャネルが2〜3種類なら、すべての流入を詳細に分析する必要はない。「どのチャネルが多いか」「増えているか減っているか」の確認で十分だ。
3. 毎日ログインしない前提の方が続く
月1回でいい。15分でいい。そのくらいのハードルにしておかないと、3ヶ月後に誰もログインしなくなる。実際に顧問先を見ていると、「毎週チェックしましょう」と言うより「月初めに15分だけ」と言った方が継続率が高い。
僕が推奨する確認頻度と方法をまとめると、こうなる。
| 指標 | 確認頻度 | 所要時間 | 確認場所(GA4内) |
|---|---|---|---|
| セッション数 | 月1回 | 2分 | レポート → 集客 → トラフィック獲得 |
| 流入チャネル | 月1回 | 5分 | レポート → 集客 → トラフィック獲得 |
| コンバージョン数 | 月1回 | 5分 | レポート → エンゲージメント → コンバージョン |
| 詳細分析 | 必要な時のみ | 30分〜 | 探索レポートなど |
指標1「セッション数」で集客の全体像をつかむ
セッション数とは、サイトへの訪問回数のことだ。同じ人が日を分けて2回訪問した場合は2セッションとしてカウントされる。「何回サイトを見てもらったか」の最もシンプルな指標だ。
確認の手順
- GA4にログインして、左サイドバーの「レポート」をクリック
- 「集客」→「トラフィック獲得」を開く
- 画面右上の期間を「今月」または「先月」に設定する
- 右上の「比較を追加」→「前の期間」を選択すると先月との差が並んで表示される
何を判断するか
前月比で10%以上変動した場合は、その理由を把握しておくといい。
- 増えている: 施策が機能している。記事を増やしている場合はその成果が出始めている
- 大きく変化なし: 現状維持。新しい施策を検討するタイミングかを判断する
- 10%以上減っている: 原因を確認する(後述)
中小企業の目安
| 月間セッション数 | 状態 |
|---|---|
| 〜299 | 検索からほぼ来ていない。SEO対策が機能していない可能性 |
| 300〜999 | 少しずつ流入が取れてきている段階 |
| 1,000〜4,999 | SEO・広告の成果が実感できるレベル |
| 5,000〜 | 安定した集客基盤がある状態 |
これはあくまで目安で、業種・対象エリア・サービスの性質によって大きく異なる。地域密着型のサービス業であれば、月300セッションでも十分な問い合わせが来ることがある。
僕が運営しているこのメディアでも、月1,000セッションを超えたあたりから問い合わせが入り始めた感覚がある。ただし記事のテーマと検索者のニーズが合っていることが前提で、セッション数だけが指標ではない。
SEO対策の具体的なやり方については中小企業がSEO対策を自分でやる方法|外注なしで始める5つのステップにまとめているので、集客の仕組みをこれから作りたい場合はそちらを先に読むといい。
指標2「流入チャネル」でどこから来ているかを把握する
セッション数と同じ「トラフィック獲得」画面の下に、チャネル別の内訳テーブルが表示されている。「どこから人が来ているか」を確認する指標だ。
チャネルの種類と意味
| チャネル名 | 意味 | 意味するもの |
|---|---|---|
| Organic Search | Googleなどの検索経由 | SEO対策の成果が出ている |
| Direct | URLを直接入力、ブックマーク | 知名度・リピーター |
| Referral | 他サイトのリンク経由 | 他メディアやポータルサイト |
| Paid Search | リスティング広告経由 | 広告の効果 |
| Organic Social | SNSの投稿から | SNS集客の成果 |
| メール内のリンクから | メルマガ・メール施策 |
何を判断するか
最も重要なのはOrganic Search(検索エンジン経由)の動向だ。
SEO対策としてブログ記事を書いていたり、キーワードを意識したコンテンツを更新したりしている場合、Organic Searchの月次セッション数が増えていれば成果が出ている。これが伸びていないなら、コンテンツが検索に機能していない可能性がある。
注意すべきパターンは以下の2つだ。
- Directばかりで、Organic Searchがほぼゼロ: 新規集客ができていない。既存のつながりしかサイトを見ていない状態
- Paid Searchのみが多い: 広告費をかけないと集客できない状態。広告を止めると途端に集客がゼロになるリスクがある
チャネル比率よりも「Organic Searchが月ごとに増えているかどうか」のトレンドを見ることを優先する。比率は業種や会社の知名度によって大きく変わるため、他社と比べても意味がない。
SEO対策の外注を検討している場合は中小企業のSEO対策を外注する場合の費用相場と依頼先の選び方も参考にしてほしい。
指標3「コンバージョン数」で成果につながっているかを見る
コンバージョンとは、サイトのゴールに対する達成数だ。問い合わせフォームの送信、電話ボタンのクリック、採用エントリーの完了など、サイトの目的によって何をコンバージョンとして計測するかが変わる。
まず設定が必要
GA4は最初からコンバージョンを自動計測してくれるわけではない。「このアクションをコンバージョンとして計測する」と自分で設定する必要がある。
問い合わせフォームがある場合の設定手順:
- GA4の管理画面を開く(左下の歯車アイコン)
- 「イベント」をクリック
- フォーム送信に関連するイベント(「generate_lead」「form_submit」など)を探す
- 右側のトグルを有効にして「コンバージョンとしてマーク」する
この設定が済んでいない場合、コンバージョンの数字は常に0のままだ。「サイトから問い合わせが来ているかどうか」がGA4で分からない状態になっている。
確認の手順
GA4の「レポート」→「エンゲージメント」→「コンバージョン」から確認できる。前月との比較を見る。
セッション数とコンバージョン数の関係で判断する
| セッション数 | コンバージョン数 | 状態と対応 |
|---|---|---|
| 増加 | 増加 | 順調。施策継続 |
| 増加 | 横ばい or 減少 | サイトの導線・コンテンツに問題がある可能性。CTAボタンの位置や問い合わせフォームの使いやすさを確認 |
| 横ばい | 増加 | コンバージョン率改善が機能している |
| 減少 | 減少 | 集客施策全体を見直す |
| 横ばい | 0 | コンバージョン設定ができていないか、ページの導線に問題がある |
問い合わせ対応の仕組み化や自動化については問い合わせフォームからSlack通知・自動返信メールまでを構築した実例に実際の構築事例を書いているので参考にしてほしい。
GA4とGoogleサーチコンソールの使い分け
GA4と混同されやすいのが「Googleサーチコンソール」だ。両方を入れているが、どちらで何を確認すれば良いかわからない——という声を顧問先からよく聞く。
2つは役割が全く異なる補完関係にある。
GA4 vs Googleサーチコンソール比較
| 確認したいこと | GA4 | Googleサーチコンソール |
|---|---|---|
| サイトに何人来たか | ○(セッション数) | ×(計測しない) |
| どのキーワードで検索されたか | △(限定的) | ○(主要機能) |
| 検索結果で何回表示されたか | × | ○(インプレッション) |
| 問い合わせにつながったか | ○(コンバージョン) | × |
| どこから来たか | ○(チャネル別) | ×(SEOのみ) |
| どのページが見られているか | ○ | ○(クリック元ページ) |
| サイトのエラー・クロール問題 | × | ○(主要機能) |
使い分けのルール
- 集客全体の状況を見たい → GA4
- 検索でどのキーワードから来ているかを知りたい → Googleサーチコンソール
- SEOの記事がどのキーワードで評価されているかを確認したい → Googleサーチコンソール
- 問い合わせ数の月次推移を見たい → GA4
SEO対策に本気で取り組む場合は、この2つを毎月セットで確認する習慣をつけるといい。GA4でセッション数とコンバージョン数を確認 → サーチコンソールでどのキーワードが伸びているかを確認、という順番がわかりやすい。
数字が落ちていた時にすること|3ステップの確認手順
セッション数や流入が前月より大きく下がっていた場合、焦る前に以下の3ステップで確認する。
ステップ1:Googleのアルゴリズム更新がなかったか確認する
Googleは年に複数回、検索順位に大きな変動を引き起こすコアアップデートを実施する。「Google コアアップデート 2026年」で検索すると、最近の更新時期と影響が確認できる。業界全体でSEO流入が落ちているタイミングであれば、自社サイトだけの問題ではない。
ステップ2:競合が新しいコンテンツを出していないか見る
自社が上位表示されていたキーワードで、競合に抜かれた可能性がある。実際に自社の主要キーワードをGoogleで検索して、上位に何が表示されているかを確認する。新しい記事や品質の高いコンテンツが上位に入っていれば、それが原因の可能性が高い。
ステップ3:自社サイトに変更がなかったか確認する
リニューアル、ページの削除・URL変更、Wordpressプラグインの更新——こうした変更のタイミングと流入の下落が重なっていないかを確認する。URLを変更した場合は旧URLから新URLへのリダイレクト設定が必要で、設定漏れがあると検索エンジンの評価がリセットされる。
対応の判断基準は、1ヶ月の下落では即座に大きな対策を打つ必要はない。2〜3ヶ月連続して下落が続いている場合に、原因を掘り下げて対策を判断すればよい。
月1回15分のGA4チェックテンプレート
月初めに15分だけ使うルーティンとして、以下の順番で確認する方法を紹介する。
チェックの手順(目安時間付き)
1. セッション数の確認(2分)
- トラフィック獲得を開いて先月と比較
- 前月比で10%以上変動していた場合は理由を確認
- 結果を手元のメモやスプレッドシートに記録
2. 流入チャネルの確認(3分)
- Organic Searchのセッション数を記録
- 3ヶ月分のトレンドを確認(増加傾向にあるか)
- 記録を残す
3. コンバージョン数の確認(5分)
- 月間コンバージョン数を記録
- セッション数とコンバージョン数の関係を確認
- 「セッション増えてるのにコンバージョンが減っている」場合は次月のアクションを決める
4. 異常値の確認(5分)
- 特定の日に急増・急減していないか確認
- 急変動があれば、その日前後に何があったかメモする
記録のテンプレート例
| 月 | セッション数 | 前月比 | Organic Search | コンバージョン数 | メモ |
|---|---|---|---|---|---|
| 2026年1月 | 823 | +12% | 612 | 3 | 記事3本公開 |
| 2026年2月 | 901 | +9% | 689 | 4 | — |
| 2026年3月 | 1,082 | +20% | 845 | 6 | コアアップデート有 |
このような記録を3〜6ヶ月積み上げると、「施策の前後でどう変わったか」「何が効いたか」が後から振り返れる。日次でGA4を眺めるより、このシンプルな記録の積み上げの方が実用的だ。
僕自身もジムフリのメディアでこの方法を使っている。月初めに前月データをスプレッドシートに記録するだけだが、半年後に振り返ると「この月に記事を増やした効果が翌月から出始めた」といったことが明確に見える。
よくある質問
GA4はどうやって設定するのか
Googleアカウントがあれば、analytics.google.comからGA4アカウントを作成できる。Googleから発行される測定IDをサイトに設置する形になる。WordPressであれば「Site Kit by Google」プラグインを使うとコードの設置なしで連携できる。制作会社に依頼している場合は設定代行をお願いできることが多い。
ユーザー数とセッション数の違いは何か
ユーザー数は「何人来たか」、セッション数は「何回訪問されたか」だ。同じ人が3回来た場合、ユーザー数は1、セッション数は3になる。サイトの集客力を大まかに把握するにはセッション数を基準にすると動きが見えやすい。
小さなサイトでもGA4は必要か
ホームページが1枚だけの会社でも、GA4を入れておくことを勧める。アクセスが少なくても「どこから来ているか」「何回見られているか」が数値で分かることで、施策の効果を判断できる。入れずにいると、後から「いつからアクセスがあったか」を遡ることができなくなる。
まとめ
GA4で中小企業の経営者が月1回15分でチェックすべき数字は3つだ。
- セッション数: 先月比でサイトへの訪問が増えているか
- 流入チャネル: Organic Search(検索経由)が増えているか
- コンバージョン数: 問い合わせや成果につながっているか
この3つを毎月記録していくと、半年後には施策の効果が数値で見えるようになる。
GA4の細かい機能や高度な分析は、この3つが安定して確認できるようになってから考えればいい。まずシンプルに始めて、必要に応じて深掘りする方が長続きする。