事務・バックオフィス効率化

採用担当が1人でも回せる|採用業務効率化の方法

著者:野原琉海(業務効率化に特化したエンジニア)

「採用担当は総務の○○さん(兼務)です」という中小企業は多い。経理や労務や備品管理をこなしながら、求人票を書いて、面接日程を調整して、応募者にメールを送っている。

僕がこれまで関わってきた中小企業でも、採用専任者がいるケースはほとんどなかった。1〜2名の兼務が当たり前で、採用が集中する時期は他の業務が後回しになる。リクルートの調査によれば、採用担当者が1〜2名体制の中小企業は全体の55.4%に上る。半数以上の会社が同じ状況にある。

ただ、「少人数だから仕方ない」と放置するのはもったいない。採用業務の中には、ツールとテンプレートだけで時間を半分以下に縮められる作業が複数ある。この記事では、採用担当が1人あるいは兼務でも業務を回せるようにするための具体的な改善方法を解説する。

採用業務のどこに時間が消えているか

まず採用業務をフローに分解してみる。主な工程は7つだ。

  • 求人票の作成・更新
  • 求人媒体への掲載
  • 応募者対応(書類確認・合否連絡)
  • 面接日程の調整
  • 面接の実施
  • 選考結果の管理・連絡
  • 内定後のフォロー・入社手続き

このうち、担当者の時間を最も奪っているのは「4. 面接日程の調整」「3. 応募者対応」「6. 選考結果の連絡」の3つだ。特に日程調整は、候補者と面接官の双方のスケジュールを確認しながら調整する必要があり、1件あたり3〜5通のメール往復が発生することがある。

月に5件の採用選考を進めている会社なら、日程調整だけで25通以上のメールが飛び交う計算になる。

逆に「5. 面接の実施」と「7. 入社手続き」は自動化が難しい部分なので、その周辺の事務作業を仕組み化することで総時間を減らすアプローチが現実的だ。

僕が見てきた中小企業の採用担当者が一番消耗しているのは「面接前後のメール対応」だった。面接の準備よりも、連絡メールの往復に時間がかかっているケースが多い。ここを最初に改善するだけで、体感的な業務量がかなり変わる。

日程調整の自動化が最初の一手

採用業務の中で、最も「仕組み化のリターンが大きい」のが日程調整だ。

日程調整ツールを使うと、候補者に「このURLから都合の良い日時を選んでください」と1通送るだけで完結する。担当者はメールを待つ必要がなくなり、選択完了後にカレンダーへ自動で通知が入る。

日程調整ツール比較

ツール 月額費用 特徴
Googleカレンダー予約ページ 無料 Googleアカウントがあれば即使える。URLを送るだけで候補者が日時選択
Spir 無料〜 複数人の空き時間をまとめて候補者に提示できる
TimeRex 月825円〜 Google/Outlookカレンダー連携。複数担当者での利用に向く
Calendly 月1,500円〜(無料プランあり) 英語UIだが機能が豊富。外国籍採用がある場合に有効

まずGoogleカレンダーの予約ページから試してほしい。費用はゼロで、設定も10分以内に完了する。

Googleカレンダー予約ページの設定手順:

  • Googleカレンダーを開き、左メニューの「+」をクリック
  • 「予約スケジュールを作成」を選択
  • 面接の所要時間(例:30分)と受け付ける時間帯を設定
  • 生成されたURLをメールに貼り付けて候補者へ送る

これだけで「日程調整のメールを何往復もする」作業がなくなる。実際にこれを導入した会社では、採用担当者の「スケジュール確認のために電話をかける」作業がゼロになったという話を聞いている。

日程調整の自動化は「効果を感じるまでの時間が最も短い改善」だ。今日設定して、次の面接調整から効果が出る。

求人票を「型」にして時間を8割削る

求人票を毎回ゼロから書いているなら、まずテンプレートを整備することを最優先にしてほしい。

同じ会社が採用するポジションの構造は毎回変わらない。変わるのは業務内容・人数・スキル要件だけで、フォーマット自体は使い回せる。

求人票テンプレートの基本構成:

  • 仕事内容(具体的な業務内容と1日の流れ)
  • 必須条件・歓迎条件
  • 雇用形態・勤務時間・給与
  • 職場環境(チーム人数・働き方・雰囲気)
  • 求める人物像(スキルより価値観・性格を書く)

GoogleドキュメントかNotionでテンプレートを作り、募集ポジションが変わったら該当部分だけ書き換える形にする。テンプレートがあれば、求人票の作成時間は初回の1/3以下になる。

差別化ポイントは「職場環境」に集中させる:

条件(給与・勤務時間)は他社と比較される部分だが、「どんな現場か」「どんなチームか」は自社にしか書けない情報だ。「月2回の1on1あり」「入社後3ヶ月は週1で先輩が同席」「午後はリモート可」といった具体的な記述を入れると、採用媒体の中で差別化される。

また、過去に使った求人票はそのままアーカイブとして保存しておく。似たポジションの採用時に参照できるため、次回の作成時間がさらに短くなる。

僕が自社のコンテンツ制作スタッフを採用する時も、求人票のテンプレートを1回作ってからは更新に使う時間が15分程度で済むようになった。最初だけ1〜2時間かけてテンプレートを作る価値がある。

選考管理:件数で使うツールを変える

応募者の管理方法は、年間採用件数によって使い分けるのが合理的だ。

件数別の選考管理方法

年間採用件数 推奨ツール 費用目安 特徴
5件以下 Googleスプレッドシート 無料 選考ステータス列を設定すれば十分
6〜15件 Googleフォーム+スプレッドシート 無料 応募情報の自動記録が可能
16件以上 ATS(採用管理システム) 月8,500円〜 複数人での情報共有に対応

年間5件以下であれば、スプレッドシートで十分回せる。「選考ステータス」列(書類審査中・面接調整中・1次合格・不採用等)をプルダウンで設定すれば、無料でシンプルな選考管理ができる。

件数が6件以上になってくるなら、Googleフォームで応募受付を作ることを薦める。フォームに回答が入ると自動でスプレッドシートに記録されるので、転記の手間が消える。設定は30分程度でできる。

年間16件以上になったらATS(採用管理システム)の導入を検討するタイミングだ。複数人で選考に関わるようになった段階でも同様。

中小企業向けATS:ジョブカン採用管理の概要:

月額8,500円〜(採用人数・機能による)で、求人管理・候補者管理・カレンダー連携が揃っている。操作がシンプルなため、採用専任者がいない会社でも使いやすい。30日間の無料トライアルがある。

費用を気にする経営者の方からよく「ATSにお金をかけるのが惜しい」という声を聞くが、僕の答えは「年間採用が15件を超えたら投資する価値がある」だ。それ以下の規模なら、まず無料のツールで仕組みを整えてから判断してほしい。

定型メールをテンプレート化する

採用担当者が見落としがちな非効率が「定型メール」だ。

  • 書類選考通過の連絡
  • 不採用の連絡
  • 面接前の確認メール(場所・持ち物等)
  • 内定通知
  • 辞退者への返信

これらは毎回ほぼ同じ文面になる。1通を書くのに5〜10分かけていると、採用件数が増えるにつれてその時間が積み上がる。Gmailの「定型文」機能を使えば、テンプレートを呼び出して内容を確認し、送信まで1〜2分で完了する。

Gmailの定型文を設定する手順:

  • Gmail設定(歯車アイコン)→「すべての設定を表示」
  • 「詳細」タブ→「定型文」→「有効にする」→保存
  • 新しいメールを作成し、テンプレートの文章を入力
  • 作成画面の右下メニュー(三点)→「定型文」→「現在の定型文を保存」

設定後は、メール作成画面から1クリックで呼び出せる。

テンプレートを作る優先順位:

  • 不採用通知(件数が多く、文面を毎回考えるのが大変なため)
  • 書類選考通過の連絡(面接日程調整ツールのURLを入れる)
  • 面接前の確認メール(場所・時間・持ち物等)

まずこの3種類を作るだけで、採用業務のメール時間が大きく短縮できる。

不採用通知の文面は特に難しい。丁寧に書きたいが毎回ゼロから書くのも辛い、というジレンマがある。テンプレートを1つ丁寧に作ることで、毎回の送信が楽になる上、文面の品質も安定する。採用応募者への対応は企業の印象を左右するので、ここはテンプレートを丁寧に作っておく価値がある。

採用代行(RPO)は年間何件から使うべきか

上記の改善を実施しても「そもそも採用に割く時間がない」という状況なら、採用代行(RPO)を検討する価値がある。

採用代行は、求人票の作成から応募者対応・日程調整・選考管理まで、採用業務の一部または全部を外部に委託するサービスだ。

採用代行(RPO)費用比較

依頼範囲 費用目安 向いているケース
日程調整・応募者対応のみ 月3〜8万円 年間採用10件以上で繁忙時期に集中する会社
求人票作成まで含む 月5〜15万円 採用活動に慣れていない担当者がいる場合
採用全体委託(成果報酬型) 採用1名あたり20〜50万円 特定職種の採用を急ぎたい場合

RPOが費用対効果を発揮しやすい条件:

年間採用件数が10件を超え、かつ繁忙時期に集中するタイプの会社だ。年間2〜3名の採用なら、まず仕組み改善(ツールとテンプレート)で対応できることが多い。

逆に、年間5件以下の採用でRPOを導入すると、固定費の方が高くつく可能性がある。採用代行に月3〜8万円払うなら、まずGoogleカレンダーの設定とメールテンプレートの整備で対応してほしい。それだけでも担当者の体感負担は大きく変わる。

RPOを検討する場合は、最初から全体委託にするよりも「日程調整・応募者対応のみ月3〜8万円」から始めて効果を確認するのが現実的な進め方だ。一気に予算を投入するより、段階的に外注範囲を広げる方がリスクが少ない。

採用と外注・採用の使い分けを判断する

採用業務の効率化を進めていく中で、「そもそもこの仕事は採用で解決すべきか、外注で解決すべきか」という問いも出てくる。

中小企業の場合、事務・バックオフィス系の業務は採用よりも外注やツール導入で解決できるケースが多い。以下の判断基準で考えると整理しやすい。

外注 vs 採用の判断基準

条件 判断
業務量が月20時間以下 外注を優先(正社員採用コストが合わない)
特定スキルが必要で継続的に使う 採用を検討
繁忙期のみ業務が集中する 外注(繁忙期だけ対応可能)
業務の内容が固定されている ツール導入 or 外注
マネジメントや意思決定が伴う 採用が必要

採用で人を増やすことは固定費の増加を意味する。業務の実態に合わせて「ツール・外注・採用」の3択から選ぶ視点を持っておくと、採用業務の効率化以前に、そもそも採用が必要かどうかの判断がしやすくなる。

優先順位と実施ロードマップ

コストと効果の観点から、実施する順番を整理する。

採用業務効率化ロードマップ

時期 やること 費用 期待効果
今日 Googleカレンダー予約ページを設定し、次の面接から使う 無料 日程調整メールが不要になる
今日 よく送る定型メール3種類をGmailに登録 無料 1通あたりの送信時間が10分→2分
今週 求人票テンプレートをGoogleドキュメントで作成 無料 次回の求人票作成時間が1/3以下に
今週 Googleフォームで応募受付を設置、スプレッドシートに自動記録 無料 応募情報の転記がゼロになる
採用が増えてきたら ジョブカン採用管理等のATSを導入 月8,500円〜 複数人での情報共有が可能に
繁忙期のみ 採用代行(日程調整のみ)の活用を検討 月3万円〜 担当者の対応時間を削減

採用担当が1人でも、仕組みが整っていれば採用の品質を落とさずに運用できる。最初の3つ(Googleカレンダー、定型メール、求人票テンプレ)はいずれも無料でできる。

「採用作業に追われて面接の準備ができない」という状態が最も避けたいパターンだ。事務作業を仕組み化することで、候補者と向き合う時間を確保できる。採用で大事なのは候補者との対話であって、日程調整メールの往復ではない。

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