「給与計算アウトソーシング 費用」で検索すると、比較記事がたくさん出てくる。どれを読んでも「1人あたり月500〜1,500円」という数字は出てくるが、「うちは従業員20人で、年末調整と社保手続きも含めると月いくらになるのか」という問いには答えてくれない。
費用が分かりにくい理由は単純だ。給与計算のアウトソーシングは、何を頼むかによって費用が大きく変わる。給与計算のみなのか、年末調整まで含むのか、社会保険の手続き代行まで含むのかで、月額料金が2〜5倍変わることがある。
この記事では、費用相場の数字を先に整理した上で、従業員規模別の目安と、発注前に確認すべきポイントを解説する。
まず「何を頼むか」を決めてから費用を見る
給与計算に関連する業務は大きく4つに分かれる。外注する範囲によって費用と依頼先が変わるため、先に整理しておく。
| 業務 | 主な内容 | 頻度 |
|---|---|---|
| 給与計算(毎月) | 勤怠データの集計・給与額の算出・明細作成 | 毎月 |
| 賞与計算 | 賞与額の計算・明細作成 | 年1〜2回 |
| 年末調整 | 源泉徴収票の作成・税額の精算 | 年1回 |
| 社会保険・労働保険手続き | 入退社手続き・算定基礎・月変処理 | 随時 |
「給与計算の外注」と調べている人の多くが想定しているのは毎月の給与計算だけだが、実際に負担になっているのは年末調整や社保手続きの方だという会社も多い。どこまで任せたいのかを先に整理してから見積もりを取った方が、想定外の費用を防げる。
費用相場(従業員規模別)
毎月の給与計算のみの場合
| 従業員数 | 月額の目安 |
|---|---|
| 10人以下 | 8,000円〜1万5,000円 |
| 20〜30人 | 1万5,000円〜3万円 |
| 50人 | 3万5,000円〜7万円 |
1人あたりの単価は月800〜1,500円程度が相場だ。従業員が少ない場合は最低基本料金(月5,000〜1万円程度)が設定されていることが多く、少人数ほど1人あたりのコストが割高になる傾向がある。
年末調整まで含む場合
年末調整は年1回のため、月割りにするとプラス数千円程度で済むケースが多い。ただし「年末調整は対応していない」サービスも少なくないため、契約前の確認は必須だ。年末調整を後から別途依頼すると、追加で数万円かかることもある。
社会保険・労働保険手続きまで含む場合
入退社手続き・算定基礎・月変処理などを含めると、毎月の給与計算のみと比べて月額が1.5〜3倍程度になることが多い。社労士事務所に依頼する場合、従業員10〜20人規模で月2万〜4万円が目安になる。
給与計算+年末調整+社保手続きをまとめて外注する場合
従業員20〜30人規模で、月4万〜7万円程度が現実的な目安だ。社労士事務所またはバックオフィスBPO会社への依頼をベースにしている。
外注先は3タイプある
費用だけでなく、対応できる業務の範囲がタイプによって異なる。
タイプ1: 社労士事務所
向いているケース: 社保手続きも任せたい、入退社が多い、労務の相談もしたい
社会保険労務士は給与計算だけでなく、社会保険の手続き・年末調整・労務相談まで一括で対応できる。入退社のたびに手続きが発生する会社や、法的な問題が生じたときに相談したい会社に向いている。
費用はBPO専門会社よりやや高めになる傾向があるが、「給与計算+社保手続き+年末調整」をまとめて依頼できるため、窓口が1つで済む。
タイプ2: 給与計算専門BPO会社
向いているケース: 給与計算のみをとにかく安く外注したい
給与計算に特化したサービスは料金が低めに設定されていることが多い。ただし、社会保険の手続き対応は含まれないことがほとんどで、労務相談にも対応していない場合が多い。
毎月の給与計算が完結していて、社保手続きは自社または顧問税理士が対応できる会社に向いている。
タイプ3: クラウド給与ソフト(SmartHR・freee人事労務など)
向いているケース: 外注コストを抑えつつ、担当者の負担を減らしたい
厳密にはアウトソーシングではなく「ツールを使って自社で処理する」形だが、勤怠データの自動連携や社保手続きのアシスト機能が充実しているため、担当者の工数を大幅に削減できる。
月額は従業員1人あたり1,000〜3,000円程度が相場だ。費用を抑えたい会社には現実的な選択肢だが、社内に担当者が必要なため、「完全に手放したい」という場合には向かない。
発注前に確認すべき4つのポイント
費用の見当がついた後、発注前に必ず確認しておくべき点がある。ここを確認せずに契約してから後悔する会社が多い。
1. 年末調整は含まれているか
毎月の給与計算は対応しているが、年末調整は「別料金」または「対応していない」サービスは少なくない。年末調整を後から別途依頼すると追加で数万円かかることがあるため、先に確認しておく。
2. 入退社時の社会保険手続きに対応しているか
採用や退職のたびに社保手続きが発生する。外注先がこれに対応するのか、自社で処理するのかは大きな違いだ。「給与計算はやってもらえるが、社保手続きは自社でやらなければならない」という状況になると、負担は思ったほど減らない。
3. 自社独自の給与ルールに対応できるか
特殊な手当体系(見込み残業・日給月給・複数の雇用形態が混在など)がある場合、標準化されたBPOサービスでは対応できないことがある。初回の打ち合わせで自社のルールを説明し、対応可能か確認する。
4. 情報セキュリティの体制
給与情報は従業員の個人情報の中でも機微性が高い。外注先のセキュリティ基準、データの送受信方法、情報漏洩時の対応方針を事前に確認する。Pマーク(プライバシーマーク)の取得有無が一つの目安になる。
どのケースで何を選ぶか
| 状況 | 向いている外注先 |
|---|---|
| 社保手続きも含めて全部任せたい | 社労士事務所 |
| 給与計算だけを安く外注したい | 給与計算専門BPO会社 |
| 外注はせず担当者の負担を減らしたい | クラウド給与ソフト |
| バックオフィス全体をまとめて外注したい | BPO会社または社労士法人 |
従業員が10〜30人規模の中小企業であれば、まずは社労士事務所に問い合わせるのが現実的だ。給与計算から社保手続き・年末調整まで一括で対応してもらえる場合が多く、毎月の作業ごとに別の窓口に連絡する手間がなくなる。
まとめ
給与計算のアウトソーシング費用は、依頼する範囲によって大きく変わる。
- 毎月の給与計算のみ(従業員20〜30人): 月1万5,000円〜3万円
- 年末調整・社保手続きまで含む(同規模): 月4万〜7万円
外注先の選び方は、社保手続きまで任せたいなら社労士事務所、給与計算のみならBPO専門会社、コストを抑えながら内製化したいならクラウドツールが基本の選択肢になる。
発注前に「何を頼むか」「年末調整・社保手続きは含まれるか」「自社の給与ルールに対応できるか」の3点を確認してから見積もりを取ると、契約後のギャップが防げる。
バックオフィス全体の外注費用の全体像を確認したい場合はバックオフィス代行の費用相場|業務別の料金目安と選び方も参考にしてほしい。
給与計算を含むバックオフィス全体の効率化について相談したい場合は、お気軽にご相談ください。