「一人で経理をやっているが、これが普通なのか多すぎるのか分からない」
「経理担当が残業続きだが、追加採用が必要なのかどうか判断できない」
中小企業の経営者からよく聞く悩みだ。中小企業の58.2%は経理・財務担当者が1名という調査結果がある。一人経理は珍しくないが、業務量が適正かどうかの判断基準を持っている会社は少ない。
この記事では、従業員数別の一人経理の業務量目安と、限界サインのチェックリストを整理する。
従業員数別の一人経理の目安
「何人まで一人経理で対応できるか」は、業種や取引件数にもよるが、一般的な目安は以下のとおりだ。
| 従業員数 | 一人経理の適正性 | 月次の仕訳件数目安 |
|---|---|---|
| 5人以下 | 問題なし | 月50〜100件 |
| 6〜15人 | 概ね問題なし | 月100〜200件 |
| 16〜30人 | 限界に近づく可能性あり | 月200〜400件 |
| 31〜50人 | 一人では厳しい | 月400件超 |
従業員30人以下であれば、一人経理で回っている会社が多い。ただし「一人で回っている」と「適正な業務量で回っている」は別の話だ。担当者が無理をしている場合や、ミスが増えている場合は限界に近づいているサインになる。
業務量を増やす要因
従業員数だけで業務量は決まらない。以下の要因が加わると、同じ従業員規模でも経理の業務量が大きく変わる。
取引件数が多い業種
小売業・飲食業・EC事業者は、従業員数が少なくても日々の現金売上・返品・仕入れなど取引件数が多い。従業員5人でも仕訳件数が月300件を超えるケースがある。
現金取引が多い
クレジットカード・振込だけの取引と比べて、現金取引は都度の帳簿記録が必要になる。現金売上・現金仕入れが多い業種は経理の手間が増える。
給与体系が複雑
時給・日給・月給が混在していたり、残業計算・有給管理が複雑な場合、給与計算だけで月に相当な時間を取られる。
経費精算のルールが整っていない
精算申請のルールが曖昧だと、確認・修正の往復が発生しやすい。担当者の作業時間が増える。
限界サインのチェックリスト
以下の項目を確認してほしい。
業務の遅延・ミス
- [ ] 月次試算表の完成が月末から2週間以上遅れることがある
- [ ] 請求書の発行・送付が締め日に間に合わないことがある
- [ ] 過去に振込や支払いのミスが発生したことがある
- [ ] 税理士からの質問に対して経理担当者がすぐに答えられないことが増えた
担当者の状態
- [ ] 月末・決算前に恒常的な残業が発生している
- [ ] 経理担当者が「仕事量が多い」と口にするようになった
- [ ] 休暇取得率が下がっている
体制の脆弱性
- [ ] 経理担当者が1日休むと翌日の処理が詰まる
- [ ] 担当者が2〜3日休んだ場合、誰も代わりに対応できない
- [ ] 仕訳の根拠が担当者の頭の中にしかない
3〜5個以上: 業務量が限界に近い。追加採用か外注の検討を始める段階。
6個以上: 既に限界を超えている可能性が高い。今すぐ対応が必要。
一人経理が限界を超えたときの対処法
外注でカバーできる業務を切り出す
一人経理の業務を全て担当者が持ち続ける必要はない。記帳(仕訳入力)・給与計算・請求書処理は外注対応が可能だ。これらを外注に切り出すことで、担当者の作業時間を月10〜20時間削減できることが多い。
定型作業を外注に渡し、担当者は「確認・判断・税理士との連携」に集中する体制が一人経理の限界対策として現実的だ。
クラウド会計ソフトのAI機能を活用する
記帳にかかる時間の大半は「仕訳入力」だ。freee・マネーフォワードのAI自動仕訳機能を使うことで、銀行明細・クレジット明細が自動で仕訳候補として出てくる。担当者は確認・修正するだけでよく、入力時間が大幅に短縮される。
業務量が増え続けるなら採用を検討する
従業員が30人を超えてきた段階、または月次の仕訳件数が300件を超えた段階で、一人経理の体制を見直すことを検討する。外注で対応できる範囲を超えてきたら、採用が必要になる。
まとめ
一人経理が適正かどうかの判断基準をまとめると以下のとおりだ。
| 状況 | 判断 |
|---|---|
| 従業員30人以下・月次仕訳200件以下 | 一人経理で問題ない |
| 限界サインが3〜5個以上 | 定型業務の外注で対応できる |
| 限界サインが6個以上・従業員30人超 | 外注+採用の検討が必要 |
「担当者が頑張れば回る」状態を維持し続けると、ある日突然「退職」という形で問題が表面化する。限界サインが出ている場合は、今のうちに体制を見直すことが最善の対策だ。
経理業務の一部を外注する方法についてはこちらを参照してほしい。