毎月末になると、社員から紙の領収書をかき集めて、Excelに打ち込んで、上司のハンコをもらって…という作業が繰り返されている会社は多い。
「どうにかしたい」と思いながらも、ネットで調べると「おすすめ10選」「全45製品比較」のような記事ばかりで、結局どれを選べばいいか分からずに先送りになる。
この記事では、従業員5〜50人規模の中小企業が経費精算のツールを選ぶときに使える判断基準と、実際に導入候補になる主要ツールを整理する。全部を比較することが目的ではない。「うちの状況ならこれ」と判断できるようにすることが目的だ。
Excelを使い続けていい会社・ツールが必要な会社
ツールの話に入る前に、「今のままでいいのか」の判断基準を確認する。
Excelで問題ない条件
- 従業員が5人以下で、経費申請が月に数十件程度
- 全員が同じオフィスにいて、紙の領収書の回収に困っていない
- 月次の経費処理に1〜2時間かかっていて、それを許容できている
ツールへの切り替えを検討すべき条件
- 経費処理に月3時間以上かかっている(経理担当者の工数)
- 申請漏れや計算ミスが月に複数回発生している
- テレワーク勤務の社員がいて、紙の領収書の回収が難しい
- メールで受け取るPDF請求書・領収書が増えてきた
- freeeやマネーフォワードで会計管理をしていて、Excelからの手入力転記が毎月発生している
特に2024年以降は、電子帳簿保存法の改正により、メールで受け取ったPDF形式の領収書・請求書を「紙に印刷して保存する」ことが原則できなくなった。電子取引の量が増えている会社にとっては、ツール導入が法令対応の手段にもなっている。
「うちは電子取引がある」「Excelからの転記が毎月発生している」という会社は、費用の問題より先にこの点を確認する必要がある。
中小企業向け経費精算ツール4選
よく比較記事に出てくる15〜20のツールをすべて紹介するより、実際に中小企業が導入候補として検討する4つに絞って整理する。
1. マネーフォワードクラウド経費
向いている規模: 5〜50人
料金(2026年現在):
- 50名以下: 月額2,980円(年払い)/ 月額3,980円(月払い)
- 初期費用: なし
特徴:
マネーフォワードの会計ソフト(マネーフォワードクラウド会計)を使っている会社にとっては、連携による自動仕訳が最大の強みになる。経費データが会計ソフトに自動で反映されるため、毎月の転記作業がなくなる。
スマートフォンで領収書を撮影するだけでデータが自動読み取りされ、交通費の自動計算(ICカード連携)にも対応している。操作が直感的で、経理担当者だけでなく申請する社員側の使い勝手もよい。
注意点:
マネーフォワードクラウド会計を使っていない会社でも導入できるが、連携の恩恵が薄れる。freeeを会計ソフトとして使っている場合は、後述のfreeeの機能かジョブカン経費精算を先に検討する。
2. ジョブカン経費精算
向いている規模: 5〜100人
料金(2026年現在):
- 1ユーザーあたり月額440円(税込)
- 最低利用料金: 月額5,500円(税込)
- 初期費用・サポート費用: なし
10人なら月5,500円(最低金額が適用)、30人なら月13,200円が目安になる。
特徴:
ユーザー数に応じた従量課金で、小規模から始めやすい。freee・マネーフォワード・弥生など複数の会計ソフトとの連携に対応しているため、既存の会計環境を変えずに導入できる会社が多い。
申請・承認フローのカスタマイズ自由度が高く、「申請者 → 直属の上司 → 経理部門」のような多段階の承認も設定できる。
注意点:
ジョブカンは勤怠管理・給与計算なども別製品として提供しており、まとめて導入するとコストが積み上がる。経費精算だけ使う場合は単体で契約できる。
3. 楽楽精算
向いている規模: 50人以上
料金(2026年現在):
- 初期費用: 100,000円(税別)
- 月額: 30,000円〜(税別、ユーザー数・オプションによって変動)
特徴:
国内導入実績が多い大手。申請フロー・承認ルート・ワークフローの設定項目が細かく、複数部署・複数拠点がある会社でも細かく制御できる。導入時のサポートが手厚く、設定支援も受けられる。
電子帳簿保存法対応も含め、コンプライアンス要件を満たした運用ができる点が評価されている。
注意点:
初期費用10万円+月額3万円〜という費用構造のため、20〜30人規模の会社にはコストが見合わないケースが多い。機能が多い分、初期設定と社内運用ルールの整備に時間がかかる傾向がある。
4. freee(経費精算機能)
向いている規模: freee会計を使っている中小企業
料金(2026年現在):
- freee会計の契約内で利用可能(追加費用なし)
- freee会計の月額費用: スタータープラン2,380円〜(税抜)
特徴:
freeeを会計ソフトとして使っている会社は、経費精算を別途ツール導入せずにfreee内で完結できる。申請から仕訳まで一気通貫で処理でき、データが分散しない。コストをかけずに始められる点は大きい。
注意点:
freeeを使っていない会社には意味がない。専用の経費精算システムと比べると、申請フローの細かいカスタマイズには制限がある。社員数が多く複雑な承認ルートが必要な場合は、専用ツールを検討する。
状況別の選び方まとめ
整理すると次のようになる。
| 状況 | おすすめ |
|---|---|
| マネーフォワードで会計をしている | マネーフォワードクラウド経費 |
| freeeで会計をしている | freeeの経費機能(まず試す) |
| 従業員10〜30人規模、会計ソフトは問わない | ジョブカン経費精算 |
| 従業員50人以上、複数部署あり | 楽楽精算 |
| コストを最小限に抑えたい | ジョブカン経費精算(1ユーザー440円〜) |
| テレワーク対応が急務 | マネーフォワードクラウド経費 または ジョブカン経費精算 |
選ぶ際の最初の問いは「今使っている会計ソフトは何か」だ。経費データを会計ソフトへ自動で連携できるかどうかで、経理担当者の毎月の工数が大きく変わる。ここを確認するだけで、選択肢はほぼ2〜3つに絞れる。
電子帳簿保存法への対応を確認する
2024年1月以降、メールで受け取ったPDF請求書や電子領収書などの「電子取引データ」を紙に出力して保存することは原則禁止になった。改ざんできない状態で電子的に保管し、一定の検索要件を満たすことが法律上の義務となっている。
主要な経費精算ツールはいずれも「電子帳簿保存法対応」を謳っているが、対応の深さには差がある。ツールを選ぶ際に確認すべきポイントは次の2点だ。
タイムスタンプ付与への対応: 電子データの真正性を担保するため、タイムスタンプ機能があるか確認する。対応の有無だけでなく、対応方式(自社サーバー保存か外部認証機関を利用するか)も確認する。
検索要件への対応: 保存したデータが「日付」「金額」「取引先」の3項目で検索できる形式になっているか確認する。この要件を満たしていないと、税務調査の際に問題になりうる。
詳細な対応内容は、各ツールの公式ページまたは担当の税理士に確認することを勧める。ツールによって対応範囲の解釈が異なるケースがある。
導入前に整理すべきこと
ツールを選ぶ前に、現状の経費処理フローを一度書き出すことを勧める。「誰が申請して、誰が承認して、誰が集計しているか」の流れが整理されていないまま導入すると、ツールの設定が現場に合わず使われなくなる。
主要ツールはいずれも無料トライアルを提供している。比較検討する際は、実際の社内承認フローを入力して動作を確認するのが確実だ。
経費精算ツールの選定や導入後の定着に不安がある場合は、お問い合わせから状況を教えてほしい。現状の経費フローを聞いた上で、合うツールを一緒に整理できる。
まとめ
- マネーフォワードで会計をしているなら → マネーフォワードクラウド経費(自動仕訳連携が最大の強み)
- freeeで会計をしているなら → freeeの経費機能を先に試す
- 従業員10〜30人でコストを抑えたいなら → ジョブカン経費精算(1ユーザー440円〜、初期費用なし)
- 従業員50人以上、複数部署ありなら → 楽楽精算が選択肢に入る
「どのツールにするか」を考える前に、「今使っている会計ソフトは何か」「月の経費処理に何時間かかっているか」の2点を確認する。この2点が分かれば、選択肢は自然と絞れる。
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