「電子契約を導入したい」と思いながらも、何から手をつければいいか分からないまま先送りにしている会社は多い。
調べると「おすすめ20選」「全50製品比較」のような記事ばかりが出てきて、結局どれを選べばいいか分からない。費用感も「会社の規模や使い方による」としか書いておらず、判断の材料にならない。
この記事では、従業員5〜50人規模の中小企業が電子契約を導入する際の手順と、実際に候補になる主要サービスの費用・特徴を整理する。「うちの状況に合うのはどれか」を判断できるようにすることが目的だ。
電子契約が必要な会社・まだ必要ない会社
サービスの話に入る前に、電子契約の導入が本当に必要かどうかを確認する。
電子契約を導入すべき状況
- 取引先との契約書を月に5件以上やり取りしている
- 印刷・押印・郵送の手間が担当者の負担になっている
- 契約書の保管・検索に時間がかかっている(どの棚に入っているか分からない、締結日を調べるのに時間がかかる等)
- テレワーク中の社員が押印のためだけに出社している
- 取引先から「電子契約で対応してほしい」と求められている
まだ電子契約でなくてよい状況
- 月の契約件数が1〜2件程度で、現状の郵送フローで困っていない
- 取引先の大半が電子契約を受け付けていない(官公庁・医療・建設業の元請けが多い会社)
- 書面での原本保管を取引先が要求しているケースがほとんど
取引先によって電子契約を使えないケースがあっても、一部の契約だけ電子化することはできる。「全部か零かで考えない」のがポイントだ。
電子契約導入の手順
導入は3つのフェーズで進む。
Step 1: 社内の契約フローを整理する(1〜2日)
まず、現状どのような契約書を誰と何件やり取りしているかを書き出す。
確認すべき項目:
- 月あたりの契約件数(雇用契約・業務委託・取引基本契約など種別ごとに)
- 契約に関わる社内の人数(作成者・確認者・承認者)
- 契約相手のタイプ(個人・法人、国内・海外)
この整理をしないままサービスを選ぶと、機能が現場の運用に合わず使われなくなる。1〜2日の事前確認で、サービス選びの精度が大きく上がる。
Step 2: サービスを選んで無料トライアルを試す(1〜2週間)
主要サービスはいずれも14〜30日の無料トライアルを提供している。実際の社内の契約書を使ってテストするのが確実だ。
無料トライアルで確認すべきポイント:
- 相手方(取引先)がアカウントなしで署名できるか
- 承認フロー(作成 → 確認 → 承認 → 送付)を自社の運用に合わせて設定できるか
- 既存の会計ソフト(freee・マネーフォワード等)との連携が取れるか
Step 3: 社内展開と運用ルールを決める(1〜2週間)
トライアルで問題がなければ本契約に移行する。
同時に、社内の運用ルールを決める:
- どの種類の契約書を電子化するか(全部か、特定の種類だけか)
- 誰が送付操作を行うか(担当者限定か、全社員か)
- 既存の紙の契約書をどう扱うか(新規締結分だけ電子化し、過去分はそのまま保管するのが現実的)
主要サービス比較
中小企業が実際に導入を検討する3つのサービスを整理する。
1. GMOサイン
向いている規模: 10〜100人
料金(2026年現在):
- 月額8,800円(税別)の定額プラン
- 送信料: 立会人型110円/件(税込)、当事者型330円/件(税込)
- 初期費用: なし
特徴:
国内での導入実績が多く、操作がシンプルで現場に定着しやすい。取引先がGMOサインのアカウントを持っていなくても、メールで署名依頼を送る「立会人型」が使える。
月額定額のベースに送信料が加算される料金体系のため、月の契約件数が増えるほど1件あたりのコストが下がる。月10件を超えてくる会社にとっては費用対効果が取れやすい。
注意点:
月額8,800円(税別)の固定費に送信料が加わるため、月の契約が2〜3件程度の会社には割高になりやすい。送信量が少ない時期も固定費が発生する点は確認しておく。
2. クラウドサイン
向いている規模: 10〜500人
料金(2026年現在):
- Lightプラン: 月額10,000円(税別)
- 送信料: 立会人型220円/件(税込)
- 初期費用: なし
特徴:
弁護士ドットコムが提供する、国内で広く使われているサービス。法的証拠力・セキュリティへの対応が手厚く、「本当に有効な電子契約か」を重視する会社に向いている。
相手方の操作がシンプルで、取引先が「電子契約は初めて」という場合でもスムーズに受け取ってもらいやすい。
注意点:
月額10,000円(税別)はGMOサインより高め。送信料も220円/件かかるため、毎月多数の契約を送る会社は費用が積み上がる。月の送信量が多い場合は、より上位のプランへのアップグレードが必要になることがある。
3. マネーフォワードクラウド契約
向いている規模: 5〜50人
料金(2026年現在):
- 月額3,278円〜(税込、年額プラン)
- 送信料: なし(無制限)
- 初期費用: なし
特徴:
月額が低く、送信料が無制限のため費用の予測が立てやすい。すでにマネーフォワードクラウド会計や経費精算を使っている会社は、ダッシュボードを一元管理できる点がメリットになる。
月の送信件数が読めない会社や、コストを抑えて始めたい小規模の会社(従業員5〜20人)に向いている。
注意点:
機能の幅はGMOサインやクラウドサインに比べてシンプルな部分がある。複雑な承認ワークフローや複数拠点管理には向いていない。「契約書の電子送付と保管ができれば十分」という会社に適している。
状況別の選び方まとめ
| 状況 | おすすめ |
|---|---|
| 月の送信件数が多い、または読めない | マネーフォワードクラウド契約(送信料なし) |
| 法的信頼性・実績重視 | クラウドサイン |
| 機能とコストのバランスを取りたい | GMOサイン |
| マネーフォワードで会計・経費を管理している | マネーフォワードクラウド契約 |
| 月の送信が10件を超える | GMOサインまたはクラウドサイン |
最初の判断基準は「月の契約送信件数はどれくらいか」だ。件数が少なければ送信料型(GMOサイン・クラウドサイン)でも費用を抑えられる。件数が多い、または月によって変動する場合は、送信料なしの固定費型(マネーフォワードクラウド契約)が費用管理しやすい。
「どれにするか」の前に、「月に何件の契約書を送るか」を先に確認する。それだけで選択肢は2〜3つに絞れる。
電子契約のサービス選定や、自社の契約フローへの組み込み方に迷っている場合は、お問い合わせから状況を教えてほしい。現状の契約フローを聞いた上で、合う選択肢を一緒に整理できる。
電子帳簿保存法との関係
電子契約を導入する際に、あわせて確認が必要なのが電子帳簿保存法への対応だ。
2024年1月から、メールやWebシステムで受け取った請求書・契約書などの「電子取引データ」を紙に印刷して保存することは原則できなくなった。電子データのまま、改ざんできない形で保管し、日付・金額・取引先で検索できる状態にしておくことが義務となっている。
電子契約サービスを導入すると、締結済みの契約書はサービス内でタイムスタンプ付きで自動保管される。この点では、電子帳簿保存法が求める要件を満たしやすい。
ただし以下の点は確認が必要だ。
タイムスタンプの付与方式: サービスによって認定タイムスタンプを使う方式と、サービス内での記録方式がある。認定タイムスタンプ方式のほうが法的証拠力が高い。
既存の紙の契約書の扱い: 過去に締結した紙の契約書は電子帳簿保存法の対象外。新規の電子取引データが対象になるため、過去分を無理にスキャンして電子化する必要はない。
詳細は導入予定のサービスの担当者か、顧問税理士に確認することを勧める。
まとめ
- 月の契約件数が5件以上あり、印刷・押印・郵送の手間が積み重なっている会社は、電子契約の導入を検討する価値がある
- 取引先が電子契約を受け付けない場合が多い(官公庁・建設業の元請けが多い等)は、無理に全面移行しない。部分的な電子化から始めることもできる
- サービス選びの最初の問いは「月の送信件数はいくつか」。多い・読めない場合は固定費型(マネーフォワードクラウド契約)、少ない場合は従量課金型(GMOサイン・クラウドサイン)が向いている
- 主要サービスはいずれも無料トライアルあり。実際の契約書で動作確認してから本契約に移行する
- 電子帳簿保存法への基本的な対応は、主要サービスであれば満たせる。詳細は税理士に確認する
バックオフィス全体の効率化を検討している場合は、お問い合わせから状況を教えてください。