固定費を見直したいが、どこから手をつければいいか分からない。そういう経営者は多い。
「通信費を削れ」「SaaSを整理しろ」という一般論は目にするが、実際に何をチェックすればいいのかが書かれていない。この記事では、チェックリスト形式で具体的に確認すべき項目を整理した。
固定費の見直しは「把握→リスト化→優先順位付け」の順で進める。削減策を考える前に、まず自社の固定費が全部見えている状態を作ることが先決だ。
このチェックリストの使い方
以下の5つのカテゴリに分けて整理している。
- SaaS・サブスク:今すぐ着手できる。クレジットカード明細を見るだけで始まる
- 通信費:現状確認の後、乗り換えを検討。翌月から反映できるものもある
- 光熱費:見積もり依頼から始まる。切り替えまで1〜2ヶ月かかることが多い
- リース・レンタル:契約更新のタイミングに合わせて動く
- バックオフィス業務:外注化を検討する場合は準備期間が必要。早めに動く
それぞれ「今すぐできること」と「タイミングを見て動くこと」が混在しているため、項目ごとに着手時期の目安も入れている。
1. SaaS・サブスクの棚卸し(今すぐ)
月額課金のサービスは、担当者が変わったり、導入目的が変わった後も「止め忘れ」のまま課金が続くことが多い。棚卸しで最初に確認するのはここだ。
確認する手順
- 会計ソフトまたはクレジットカード明細から、月次・年次請求のサービスを全てリストアップする
- それぞれのツールに「誰が・何の目的で・週何回使っているか」を追記する
- 使われていないもの、重複しているもの、無料プランで代替できるものを解約候補に分類する
チェック項目
- [ ] プロジェクト管理ツール(Asana・Notion・Backlogなど)の利用実態を確認した
- [ ] コミュニケーションツール(Slack・Teamsなど)の有料プランが実態に合っているか確認した
- [ ] クラウドストレージの契約容量と実使用量の乖離を確認した
- [ ] 年払いで契約していて使われていないサービスがないか確認した
- [ ] 担当者の退職後に引き継がれないまま課金が続いているサービスがないか確認した
月額3,000〜5,000円のツールが5〜6本あれば、それだけで月1.5〜3万円。年間にすると18〜36万円になる。棚卸しで不要なものを3本止められれば、年間10万円超の削減になることも珍しくない。
2. 通信費の見直し(来月から着手)
法人向けの携帯電話プランや固定電話は、数年前に契約したままの内容が続いていることが多い。市場の価格は変わっているのに、見直しタイミングを逃している状態だ。
チェック項目
- [ ] 社用スマートフォンの台数と月額プランを一覧化した
- [ ] 各端末の月間データ通信量が契約プランに合っているか確認した
- [ ] 大手キャリアから法人向けMVNOへの切り替え見積もりを取った
- [ ] 固定電話(NTT回線)の利用頻度を確認し、IP電話または転送サービスで代替できないか検討した
- [ ] 社内のインターネット回線プランが現在の使用規模に対して過大でないか確認した
大手キャリアのスマートフォン法人プランは1台あたり月5,000〜7,000円程度になることが多いが、法人向けMVNOでは同程度の通信品質で2,000〜3,000円台に抑えられるケースがある。10台あれば、年間で24〜60万円の差になる。
固定電話についても、NTT回線を1回線維持するだけで月2,500〜3,000円かかる。IP電話や転送サービスに切り替えると、初期費用なしで半額以下になるケースが多い。
3. 光熱費の見直し(見積もりから着手)
2016年の電力小売完全自由化以降、電力会社の選択肢は広がっている。それでも、「最初から変えていない」という会社は少なくない。
チェック項目
- [ ] 現在の電力会社と契約プランを確認した
- [ ] 月間の電力使用量(kWh)を直近3ヶ月分の明細で確認した
- [ ] 電力比較サイトで2〜3社の見積もりを取った
- [ ] ガスについても同様に比較した
- [ ] 休日・夜間の不要な電力消費(スタンバイ状態の機器、照明の消し忘れ)を確認した
- [ ] LED照明への切り替えが未対応の箇所をリストアップした
電力会社の切り替えはサービス品質が変わらないため、純粋にコスト比較で判断できる。規模にもよるが、月0.5〜2万円程度の削減になるケースがある。
4. リース・レンタルの見直し(更新タイミングで対応)
複合機、社用車、業務機器などのリース契約は、更新を重ねるうちに実際の使用実態とズレが生じやすい。「以前は必要だったが今は使っていない」機器がそのまま残っているケースもある。
チェック項目
- [ ] 現在のリース・レンタル契約を全てリストアップし、月額・残存期間・更新日を確認した
- [ ] 各機器の直近1ヶ月の実際の使用頻度を確認した
- [ ] コピー機のリースプランが印刷枚数の実態に合っているか確認した(カラー印刷量の見直しも含む)
- [ ] 社用車の台数が実際の利用頻度と合っているか確認した(カーシェアリングへの切り替えも検討)
- [ ] 各契約の更新日をカレンダーに登録し、「更新前に見直す」タスクを設定した
リース契約中は解約しにくいため、見直しタイミングを逃さないことが重要だ。「気づいたら更新されていた」が一番コストのかかるパターンになる。更新日の管理だけでも、今日からできる。
5. バックオフィス業務の見直し(外注化の検討)
経理・給与計算・労務手続き・総務の一部を正社員が担っている場合、外注に切り替えることで固定コストを変動費に転換できる。
チェック項目
- [ ] 正社員が担っているバックオフィス業務を業務別にリストアップした
- [ ] 各業務の月間工数(時間)を確認した
- [ ] 月10時間を超えている業務について、外注した場合の費用と現状のコストを比較した
- [ ] 記帳・給与計算・社会保険手続きなど、専門性が高く外注しやすい業務を確認した
- [ ] 繰り返し発生する定型業務(請求書発行・問い合わせ対応など)の自動化または外注化を検討した
外注化は「削減」ではなく「固定を変動に変える」という整理が正確だ。月10〜15時間の記帳作業を経理代行に出すと月2〜4万円程度が相場だが、正社員の時間を本業に戻せる効果の方が実質的には大きいことが多い。
詳しい費用の目安はバックオフィス代行の費用相場|業務別の料金目安と選び方でまとめている。
削ってはいけない固定費
見直しを進める際に、同時に「削らないと決めるリスト」を作っておくことが重要だ。闇雲に削減すると、後から取り戻せないコストとして返ってくる。
削らない方がいい固定費
- 集客・マーケティング費:流入に直接つながっている施策を止めると、数ヶ月後に売上が落ちる。費用対効果が出ているものは削らない
- 専門家への顧問料(税理士・社労士・弁護士):対応が遅れると罰則・損害のリスクが高まる
- セキュリティ関連:情報漏洩・不正アクセスへの対応コストと比較すると、月額数千〜数万円の維持費は安い保険になる
- 採用・研修費:削ると人材の質が落ち、離職率が上がる。採用コストとして後から倍以上になって戻ってくることが多い
「何を削るか」を決める前に「何を削らないか」を先に決めておく。これが固定費見直しを失敗しないための前提になる。
年間でどのくらい削れるか
固定費の見直しは、「1項目で劇的に削る」より「複数の小さな見直しを積み上げる」構造だ。以下は典型的なパターンの目安。
| 見直し項目 | 月間削減の目安 | 年間換算 |
|---|---|---|
| SaaS棚卸し(3本解約) | 1〜2万円 | 12〜24万円 |
| 携帯プランをMVNOへ(5台) | 1.5〜2.5万円 | 18〜30万円 |
| 電力会社の切り替え | 0.5〜2万円 | 6〜24万円 |
| コピー機リースの適正化 | 0.5〜1万円 | 6〜12万円 |
全部同時にやる必要はないが、着手しやすいものから順番に進めると、半年で30〜50万円の削減が現実的な水準になってくる。
まとめ
固定費の見直しを進める順番を整理する。
- まずSaaS・サブスクの棚卸し:クレジットカード明細を見るだけで始まる。今日からできる
- 通信費の確認と見積もり依頼:利用実態を把握してから、乗り換えの選択肢を確認する
- 光熱費の見積もり取得:電力比較サイトで複数社の見積もりを取る。品質は変わらない
- リース契約の更新日管理:今すぐ動かなくていいが、更新日を把握しておくだけで数年後のコストが変わる
- バックオフィス業務の外注化検討:月10時間を超えている業務から検討する
固定費の削減は「今日から動ける項目を一つ選んで着手する」だけで始まる。全部一度にやろうとすると止まるので、まずSaaS棚卸しから動く。
バックオフィス業務の外注化を検討している場合は、以下の記事も参考にしてほしい。