事務・バックオフィス効率化

勤怠管理を効率化したら何が変わるか|Before/Afterで見せる

「勤怠管理をもっと楽にしたい」と思いながら、今の仕組みを変えるコストや手間が気になって動けていない会社は多い。

月末になるたびにタイムカードを集め、Excelに転記し、給与計算ソフトに再入力する。修正依頼が割り込むたびに作業が止まる。これを毎月繰り返しながら「仕方ない」と思っている担当者に、僕はこれまで何度も会ってきた。

業務効率化に特化したエンジニアとして中小企業の実務を見てきた立場から言うと、勤怠管理は「手をつけやすくて、変化が目に見えやすい」領域のひとつだ。導入前に何が変わるかが分かっていれば、動き出しやすい。

この記事では、従業員15人規模の会社を想定して、勤怠管理を効率化した前後でどんな変化が起きるかを具体的な数字で示す。費用対効果の計算も含めて、「自分の会社に当てはめたらどうなるか」が分かる形にした。

前提:想定する会社のプロフィール

比較のベースとして、以下の会社を想定する。この規模の会社ではよく見るパターンだ。

会社のプロフィール

  • 従業員数:15名(正社員10名、パート5名)
  • 勤怠管理の担当:総務担当者1名が兼務
  • 現在の管理方法:紙のタイムカード+Excelで集計
  • 給与計算:弥生給与に手入力
  • 有給休暇の管理:Excelのシートで追跡

月末になると総務担当者がタイムカードを全員分回収し、残業・有給・遅刻を集計してExcelに転記し、そのデータを給与計算ソフトに再入力している。

「これが普通だ」と思っているうちに、担当者の月末の負荷が毎月積み重なっていく。「毎月同じ作業をやっている」という感覚がある担当者は、数字を見ると変化の実感が持ちやすい。

Before:効率化前の勤怠管理の現状

毎月の作業量

業務 担当 かかる時間
タイムカードの回収・目視確認(15名分) 総務担当 月3〜4時間
残業・遅刻・有給の集計・Excel入力 総務担当 月8〜10時間
給与計算ソフトへの転記 総務担当 月3〜4時間
打刻ミス・修正依頼の対応 総務担当 月2〜3時間
有給残日数の管理・問い合わせ対応 総務担当 月2〜3時間
合計 月18〜24時間

月末の2〜3日間に作業が集中するため、給与計算の締め切りと重なるこの時期だけ残業が増える構造になっている。

起きている問題

月末だけ作業が集中する

タイムカードの締め日になると、全員分の集計から始まる。15人分でも手作業でやると半日以上かかる。給与計算の締め切りと重なるため、この時期だけ残業が常態化している担当者も多い。

僕が実際に訪問した会社で、「毎月28日前後は絶対残業になります」と言っていた担当者がいた。年間で換算すると、月末残業だけで50時間以上になるケースも珍しくない。

転記ミスが起きやすい

タイムカードからExcelへ、ExcelからExcelへ、さらに給与計算ソフトへ——データを何度も転記するプロセスがある限り、入力ミスは構造的に発生する。ミスが見つかると修正・確認に追加の時間がかかる。給与計算の確定後にミスが発覚すると、差額の支払いや修正通知という追加作業も発生する。

担当者しか状況を把握できない

「自分の有給が残り何日あるか」が従業員からすぐに確認できない。都度、総務担当に問い合わせが来る。1人2分でも、15人が月に1回問い合わせてきたら月30分が消える。担当者が集中している時間帯に割り込まれると、作業の切り替えコストも発生する。

残業の状況をリアルタイムで把握できない

残業が多い従業員がいても、翌月の給与計算まで正確な数字が分からない。月中での残業抑制や業務調整が難しく、36協定の時間外労働の上限(原則として月45時間・年360時間)に近づいていても気づきにくい構造になっている。

After:クラウド勤怠システムに切り替えた後

「クラウド勤怠管理システムへの切り替え」「スマートフォンでの打刻導入」「給与計算ソフトとの自動連携」の3点を組み合わせた後の変化を示す。

毎月の作業量(変化後)

業務 担当 かかる時間
打刻データの確認・異常チェック(システム上で自動集計) 総務担当(確認のみ) 月1〜2時間
修正依頼・承認処理(システム上で完結) 総務担当(承認のみ) 月0.5〜1時間
給与計算への連携確認(自動データ連携) 総務担当(確認のみ) 月0.5〜1時間
有給残日数の管理(システムが自動集計) 不要になる 0時間
合計 月2〜4時間

月の作業量が約1/6〜1/8に減少する。

何がどう変わるか

月末の集中作業がなくなる

クラウド勤怠システムはスマートフォンやICカードで打刻した瞬間にデータが登録される。月末に全員分をまとめて集計する必要がなく、締め日には「異常値がないか確認して承認するだけ」の状態になる。

「月末でも定時に帰れるようになった」という変化が、担当者が一番実感しやすい効果だ。僕が見てきた導入事例でも、この点を挙げる担当者が最も多かった。

転記ミスがなくなる

打刻データはシステム内で自動集計され、給与計算ソフトに直接連携できる。ExcelとExcelの間でデータを手でコピーするプロセスがなくなるため、転記ミスが構造的に発生しなくなる。給与計算後の「差額修正」という追加作業も基本的に発生しなくなる。

従業員が自分で確認できるようになる

有給残日数や自分の月間労働時間をシステム上で従業員が直接確認できる。「有給が何日残っているか教えてほしい」という問い合わせがゼロになる。

これは担当者の作業時間削減というより、「作業の途中で切り替えが発生しない」という集中への効果が大きい。問い合わせ対応の月2〜3時間が丸ごとなくなる。

残業の状況をリアルタイムで把握できる

今月の各従業員の残業時間がいつでも確認できるようになる。「今月残業が多い従業員がいる」と気づいて、月中に業務調整をするための情報が手に入る。36協定の上限管理もシステム上でアラート設定できるため、月末に「実は上限を超えていた」という事態を防ぎやすくなる。

内部リンク → 勤怠管理と給与計算を連携させる方法|中小企業が手作業をなくす仕組み

3パターンのコスト比較と費用対効果

勤怠管理の効率化アプローチは大きく3パターンある。

パターン1:クラウド勤怠システムの導入のみ

ツール 月額費用(15名の場合) 主な特徴
KING OF TIME 4,500円(300円×15名) 初期費用なし・全機能込み
ジョブカン勤怠管理 3,000〜6,000円(200〜400円×15名) 機能を選んでプランを調整可能
概算合計 月3,000〜6,000円程度 ツール料金のみ

KING OF TIMEは1名あたり月額300円(税抜)、ジョブカンは1機能月額200円〜が公式の料金だ(2026年6月時点)。初期費用が不要なサービスが主流で、無料トライアルも用意されているため試しやすい。

向いているケース: タイムカード集計の手間を今すぐなくしたい、まずスモールスタートで試したい場合。スマートフォンで打刻できるため、ハードウェアの追加費用も不要なことが多い。

注意点: 給与計算ソフトとの連携設定に最初の数日かかる。また、従業員のスマートフォンで打刻できる環境があるか、事前に確認が必要だ。

パターン2:勤怠管理の外注

内容 月額費用(従業員15名の場合)
勤怠集計・給与計算の代行(社労士事務所等) 月1万5,000〜3万円程度

社会保険労務士事務所への外注が主な選択肢。給与計算まで含めた代行の場合、従業員1名あたり月額1,000〜2,000円程度の相場感になる。

向いているケース: 担当者が全くいない、または担当者が退職した直後で引き継ぎができていない場合。法改正(最低賃金の改定・社会保険料率の変更等)への対応も任せられる点が外注の強みだ。

注意点: 外注先とのデータ受け渡し方法を整備しないと、毎月のやり取りで時間がかかる。「何を、何日までに、どの形式で送るか」のフローを事前に決めることが前提になる。

パターン3:ツール+給与計算ソフトとの連携(推奨)

クラウド勤怠システムを導入しつつ、給与計算ソフト(freee人事労務やマネーフォワードクラウド給与など)と連携させるパターン。

内容 月額費用(15名)
クラウド勤怠管理システム 3,000〜6,000円
freee人事労務(15名の場合) 約13,200円(税抜)※
合計 月1万6,200〜1万9,200円程度

※ freee人事労務は5名までの基本料金5,200円+6名以降1名あたり800円の構造。15名の場合、5,200円+(800円×10名)=13,200円(税抜)になる。

向いているケース: 勤怠管理だけでなく、給与計算まで含めた一連の作業を自動化したい場合。勤怠→給与計算の転記ミスを完全になくせる。

費用対効果の試算

月額コストが約2万円として、担当者の作業時間が月18〜24時間から月2〜4時間に減ったとする。削減時間は月14〜22時間。担当者の時給を2,500円として換算すると、月3万5,000〜5万5,000円相当の人件費削減効果になる。

ツール代(月約2万円)を差し引いても、月1万5,000〜3万5,000円のプラスになる計算だ。

このシミュレーションは「担当者の時給を正確に計算している会社は少ない」という現実から、保守的に見ても十分にペイする水準だと思う。

実際に起こりやすい「つまずきポイント」と対策

ここはクラウド勤怠システムを紹介する記事がほとんど書いていない部分だ。僕が実際に中小企業の導入を見てきた中で、よく起きるパターンを整理する。

つまずき1:従業員の打刻漏れ問題(導入初月に必ず起きる)

スマートフォン打刻に切り替えた最初の1〜2ヶ月は、打刻漏れが必ず発生する。「タイムカードを毎日押す習慣」から「スマホでボタンを押す習慣」への切り替えには時間がかかる。

対策は2つ。1つ目は「打刻漏れがあるとシステムから本人に自動通知が届く設定」にすること。2つ目は「打刻漏れの修正申請もシステム上で完結させる」こと。後から紙で修正する仕組みに戻ると、自動化の意味が薄れる。

初期の1〜2ヶ月は「打刻漏れが多い従業員に声をかける」という手間が発生するが、3ヶ月もすれば習慣化して解消するケースがほとんどだ。

つまずき2:給与計算ソフトとの連携設定に時間がかかる

「クラウド勤怠システムと給与計算ソフトを繋ぐだけ」と思っていると、連携設定に予想以上の時間がかかることがある。

特に、既存の給与ソフト(弥生給与など)がクラウド型でない場合は、データを一旦CSVでエクスポートして取り込む運用になることがある。「完全自動連携」にならないケースを事前に確認しておくことが重要だ。

最初からfreeeやマネーフォワードなどのクラウド型給与ソフトと組み合わせる方が、長期的にはスムーズになる。

つまずき3:「導入したけど紙タイムカードも残している」パターン

クラウド勤怠システムを導入したのに、「念のため紙のタイムカードも残している」という会社に、僕はこれまで複数社で出会ってきた。

「システムが信用できない」「念のため」という気持ちで二重管理を続けると、担当者の作業が増えるだけで削減効果が出ない。

導入したら紙タイムカードは廃止する日程を決めて、切り替えのタイミングを明確にすることが定着のコツだ。「まずは1ヶ月だけシステムで試す」という期限を決めて始めると、廃止の判断がしやすくなる。

内部リンク → 中小企業の事務作業を自動化する方法|ツール不要の改善策も紹介

効果が出やすい導入ステップ(順番が大事)

全部を一度に変えようとすると動けなくなる。効果が出やすい順番を示す。

Step 1:クラウド勤怠管理システムを選んで試す(1〜2週間)

まずシステムを1つ選ぶ。KING OF TIMEやジョブカンは無料トライアルがあるため、月末の集計処理を一度システムで体験してから決めると、手作業との差がはっきり分かる。

選ぶときの基準は「給与計算ソフトと連携できるか」「スマートフォンで打刻できるか」「有給管理機能があるか」の3点が最低ラインだ。

ツール選びで迷うなら、比較記事が参考になる → クラウド勤怠管理比較5選|月末の集計作業に困ったら月2,980円〜で解決

Step 2:従業員に周知して打刻方法を変える(2〜4週間)

システムが決まったら、従業員への説明と打刻方法の切り替えを行う。このフェーズが最も重要で、ここを丁寧にやらないと打刻漏れが長期化する。

「なぜシステムを変えるのか」「打刻方法はどう変わるか」「不明点はどこに聞けばいいか」の3点を伝えれば、大抵の従業員はスムーズに切り替えられる。説明会を30分開くだけで、後の問い合わせが大幅に減る。

Step 3:給与計算ソフトとの連携を設定する(1〜2日)

勤怠データが正確に取得できるようになったら、給与計算ソフトとの連携を設定する。最初の1〜2回は確認しながら進めるが、問題がなければ翌月以降はほぼ確認作業のみになる。

使っている給与ソフトがCSV連携しか対応していない場合は、このタイミングでfreeeやマネーフォワードへの切り替えも検討する価値がある。

Step 4:有給管理のアラートを設定する(数時間)

クラウド勤怠システムは有給残日数の自動計算・管理機能を持っているものが多い。設定しておけば従業員からの問い合わせが自然に減る。

あわせて「月間残業時間が一定ラインを超えたら管理者に自動通知」の設定もしておくと、36協定の上限(月45時間・年360時間)の管理がしやすくなる。月中に気づいて対処できる体制が整う。

Before/Afterをまとめると

項目 Before After
総務担当の月間作業時間 18〜24時間 2〜4時間
月末の集中作業 半日以上かかる 承認のみ(数十分)
転記ミスのリスク 毎月発生しうる 構造的に発生しない
従業員からの有給残確認 都度問い合わせが来る 従業員が自分で確認
残業状況の把握 翌月の給与計算まで不明 リアルタイムで確認可能
システム月額費用 0円(弥生給与のみ) 3,000〜19,200円
費用対効果 月1万5,000〜3万5,000円の人件費削減効果

月額費用は増えるが、担当者の作業時間が月14〜22時間分減る。この時間を別の業務に充てられるようになる。転記ミスによる修正作業も発生しなくなるため、給与確定後のやり直しが起きにくくなる。

勤怠管理は「導入の難しさが低く、効果が早く出る」領域だ。バックオフィス全体の改善を考えているなら、最初のひとつとして取り組みやすい。給与計算まで含めた外注を検討する場合は → バックオフィス代行費用|月3万円〜の外注で失敗しない選び方

まとめ

勤怠管理を効率化した場合の変化を整理する。

  • 総務担当の月間作業時間が18〜24時間から2〜4時間に減る
  • タイムカード集計→Excel転記→給与ソフト入力という手入力の連鎖がなくなる
  • 転記ミスが構造的に発生しなくなり、修正対応が不要になる
  • 従業員が有給残日数を自分で確認できるようになり、問い合わせが来なくなる
  • KING OF TIMEで月額300円/名(15名で4,500円)から始められる
  • ツール+freee人事労務の組み合わせで月約1万9,200円(税抜)で給与計算まで自動化できる
  • 費用対効果は月1万5,000〜3万5,000円相当のプラスになる試算

「毎月同じ作業に時間を使っている」という状況なら、まずクラウド勤怠システムを1ヶ月試してみることを勧める。月末の集計処理を一度体験すると、手作業との差がはっきり分かる。

関連記事

読んで欲しい記事

1

AI顧問とは月額契約で業務にAIを組み込む伴走サービス。AI研修・AIコンサルとの違い、仕事内容の月次フロー、費用感、向いている企業・向いていない企業を業務効率化エンジニアが解説。

「AI顧問って怪しい?」中小企業が騙されないための見分け方 2

「AI顧問が怪しい」と感じた中小企業経営者向け。詐欺・グレーゾーン・信頼できるの3段階を整理し、国税庁法人番号確認から事例ヒアリング・契約書チェックまで月3万〜30万円の費用帯ごとに判別する実践手順を解説する。

3

「AI顧問の費用対効果、どう判断すればいいか?」請求書処理が4時間から1時間に短縮できた場合など業務別の計算方法と、freeeなどへの入力時間をROIに換算する事前記録の整え方を解説する。

-事務・バックオフィス効率化