「仕込みが終わったら帳簿をつけて、閉店後にレジ締めして……」
個人で飲食店を経営しているオーナーと話すと、経理を自分でやっている人が多い。理由を聞くと「コストを抑えたいから」「そんなに難しくないと思っていた」というケースがほとんどだ。
でも実際に話を聞くと、月末になると帳簿の整理が追いつかず、確定申告の時期に1か月分まとめてレシートを整理している、という状況になっていることが多い。
この記事では、飲食店の経理を外注すべきかどうかを、具体的な判断基準と費用感で整理する。
飲食店の経理が一般的な業種より手間がかかる理由
飲食店の経理が特殊なのは、毎日現金が動くことだ。
一般的なBtoB企業であれば、請求書を出して翌月末に入金が来る、という流れが多い。日々のキャッシュの動きはシンプルになりやすい。
飲食店は違う。毎日レジで現金が入り、食材は現金で仕入れ、キャッシュレス決済の入金は数日後にずれる。これを日次で管理しないと、月末にまとめてやろうとしたときに収拾がつかなくなる。
具体的に飲食店の経理で発生する作業を挙げると、以下のようになる。
- 毎日のレジ締め・売上記録
- 食材・消耗品の仕入れ記録
- キャッシュレス決済(クレジット・PayPay等)の照合
- 給与計算(スタッフを雇っている場合)
- 月次の帳簿締め・損益確認
- 四半期・年次の税務処理
これを一人でやろうとすると、慣れた状態でも毎日1時間程度、月末は5〜6時間かかるとされている。開業したばかりで業務に慣れていない時期はさらに時間がかかる。
自分でやる vs 外注する 判断基準チェックリスト
次の項目に当てはまるほど、外注を検討する優先度が高い。
外注を真剣に考えるべきサイン
- 月末になると帳簿が1〜2週間分たまっている
- レシートを箱にまとめて入れている(分類できていない)
- 確定申告の時期に税務署から電話が来たことがある
- 消費税の処理(インボイス対応含む)が正しいか自信がない
- 複数のキャッシュレス決済を導入していて照合が面倒
- スタッフを2人以上雇っていて給与計算もある
- 売上が年間1,000万円を超えそう(または超えている)
自分でやってもまだ大丈夫なサイン
- 一人で経営していてスタッフがいない
- 現金のみで運営していて取引がシンプル
- クラウド会計ソフトに慣れていて毎日入力している
- 年間売上が500万円以下で取引量が少ない
あくまで目安だが、年間売上1,000万円を超えてきたあたりで外注の費用対効果が出てくるケースが多い。
外注先の3択と費用の目安
外注といっても、選択肢は大きく3つある。
1. 税理士との顧問契約
税務の専門家に丸ごと任せる形。記帳代行・確定申告・税務相談がセットになっていることが多い。
費用の目安
- 個人事業主(売上1,000万円以下):月1万〜2万円+決算料
- 法人(売上2,000万円前後):月3万〜5万円+決算料
- 決算料は月額顧問料の3〜6か月分が相場
たとえば年商2,000万円のフレンチレストランで、記帳代行込みで月4万円(顧問料2万円+記帳代行2万円)というケースが実際にある。
向いている人
- 税務調査のリスクに備えたい
- 融資や補助金申請で税理士のサポートが必要
- 帳簿から確定申告まで全部任せたい
2. 経理代行サービス(記帳代行)
税理士ではなく、記帳作業に特化した代行サービス。記帳だけを任せて、税務申告は自分でするか別途税理士に依頼する。
費用の目安
- 月額1万〜2万円が中心帯(取引量による)
- 飲食店特化の経理代行は月額16,800円程度のサービスもある
向いている人
- 税理士への費用は抑えたいが、記帳だけは任せたい
- freeeやマネーフォワードと連携できるサービスを使いたい
- 確定申告は自分でできる(または別途依頼する)
3. クラウド会計ソフト(自分で入力)
freee・マネーフォワード・弥生会計などのクラウドソフトを使って自分で経理する。外注ではないが、ソフトの補助で作業負荷を大きく下げることができる。
費用の目安
- 月額1,000〜3,000円程度
向いている人
- まだ開業したばかりで売上が少ない
- ITに慣れていて、入力作業が苦でない
- コストを極限まで抑えたい時期
外注するタイミングはいつがいいか
税理士や経理代行に依頼するなら、開業前か開業直後が一番いい。
なぜかというと、開業の準備段階から支出が発生していて、それを経費として処理するためには最初から記録が必要だからだ。後からさかのぼって整理するのは非常に手間がかかる。
「まず自分でやってみて、限界になったら外注する」という考え方は間違っていない。ただし、半年後に1日8時間かけてレシートを整理することになったら、その時間は確実に機会損失になる。
外注を決断するタイミングとして現実的なのは以下のいずれかだ。
- 開業と同時(もしくは開業準備中)
- スタッフを初めて雇うタイミング
- 月の売上が100万円を超えてきたタイミング
- 確定申告で税理士に「記録がなさすぎる」と言われたタイミング(これは手遅れに近い)
飲食店の経理を外注するときに押さえるべきこと
外注先を選ぶときに確認しておきたいポイントを整理する。
飲食業への対応経験があるか
飲食店は現金取引が多く、食材の棚卸し処理・インボイス対応など、業種特有の処理がある。一般企業向けの経理代行では対応が雑になることがある。飲食業の顧問実績を確認しておくと安心だ。
使っているPOSレジや会計ソフトと連携できるか
クラウド型のPOSレジ(Airレジ、スマレジ等)と連携できる会計ソフトを使っていると、売上データの入力が自動化できる。この連携ができる税理士・代行サービスかどうかを事前に確認する。
インボイス対応ができているか
2023年10月から始まったインボイス制度の影響で、取引先の適格請求書発行事業者の登録番号を管理する必要が生じている。この処理を含めて対応できる外注先かどうか確認する。
まとめ
飲食店の経理を外注すべきかどうかは、売上規模・スタッフ数・自分の経理への関与度によって変わる。
おおまかな目安としては、年商1,000万円を超えてきたら税理士か経理代行への依頼を真剣に検討する時期だ。それ以下であれば、クラウド会計ソフトを活用しながら自分でやることは十分可能だ。
ただし、開業直後は何かと業務が錯綜しやすい。「帳簿が追いつかない」「月末にまとめて整理」という状態になっているなら、早めに専門家に相談した方が後の手間が少ない。
「自分の店の場合、どこまで外注すべきか分からない」という方は、無料相談はこちらから気軽にご連絡ください。売上規模やスタッフ数に合わせた選択肢を一緒に整理します。
外注の費用相場や依頼できる業務の範囲については、以下の記事で詳しく解説している。