事務・バックオフィス効率化

採用業務を効率化したら何が変わるか|Before/Afterで見せる

著者:野原琉海(業務効率化に特化したエンジニア)

「採用に時間がかかっている」とは分かっていても、どこをどう変えれば工数が減るかが見えないまま、毎回同じ手順で動いている会社は多い。

求人票を一から書き直し、メールで面接日程を何往復もして、Excelで応募者を管理して、気づいたら1件の採用に月20〜30時間以上使っていた——これは珍しくないパターンだ。

この記事では、従業員15人規模の会社を想定して、採用業務を効率化した場合の前後の変化を数字で具体的に示す。ツール導入・採用代行・組み合わせの3パターンで何がどう変わるかを表で整理したので、自社の判断基準として使ってほしい。

前提:どんな会社を想定しているか

想定する会社像を最初に明示しておく。この記事のシミュレーションはすべて以下の前提条件に基づいている。

想定会社のプロフィール

項目 内容
従業員数 15名(正社員10名、パート5名)
採用担当 総務担当者1名が採用業務を兼務
採用頻度 年間2〜3名(退職補充+増員)
現在の管理方法 応募者はExcelで管理、求人媒体2〜3社に掲載中
面接 社長または部門長が実施、日程調整は総務担当が窓口

この規模の会社では、採用担当を専任で置けず、総務や経営者が兼務しているケースが典型的だ。採用活動が動いている期間(月10〜20件の応募がある状態)に、どれだけの工数が発生しているかを次のセクションで整理する。

Before:効率化前の採用業務の実態

採用活動中の月間作業量

採用活動が動いている期間の業務量の目安を表にした。

業務 担当 月間所要時間
求人票の作成・媒体への掲載・更新作業 総務担当 3〜5時間
応募者への受付返信・書類選考 総務担当 5〜8時間
面接日程の調整(候補日提示→返信待ち→確定の往復) 総務担当 4〜7時間
面接官(社長・部門長)との日程調整 総務担当 2〜3時間
面接後の合否通知・次選考への案内 総務担当 2〜3時間
内定者への条件提示・入社書類の準備・案内 総務担当 2〜3時間
採用状況のExcel管理・社長への進捗報告 総務担当 3〜4時間
合計 月21〜33時間

これが年間4〜5ヶ月続くとすると、採用業務だけで年間84〜165時間が費やされる計算になる。総務担当者が月160〜180時間働くとすれば、採用活動期間中は業務の10〜20%が採用業務に占有されている状態だ。

現場で起きている4つの問題

1. 応募者の管理が追いつかない

複数の媒体から応募が来るが、媒体ごとにExcelが別々になっていたり、メールの受信トレイで追っていたりして、どの応募者がどの選考段階にいるか把握しきれないことがある。採用が重なると、案内を出し忘れたり、対応が遅れたりするリスクが生まれる。

2. 面接日程調整に時間がとられすぎる

「○日または○日はいかがでしょうか」→「どちらも難しくて…」→「では△日はいかがですか」というやり取りが、1人あたり平均5〜7往復になることがある。応募者10人と同時に調整していると、それだけで週に数時間が消える。

3. 求人票を毎回ゼロから作り直す

前回の求人票が手元に残っていない、あるいは媒体ごとにフォーマットが違うため、毎回ほぼゼロから書き直している。内容も担当者の記憶をたどって書くため、ブレが出やすい。採用が年2〜3回しかないと、前回のやり方を覚えていないこともある。

4. 社長への進捗報告が口頭説明になる

Excelで管理していても見方がわかりにくく、「今どの人が何人いるの?」という確認が都度発生する。社長が自分で確認できる状態になっていないため、進捗報告という名の会議が定期的に入る。

After:3パターンの効率化シミュレーション

採用業務の効率化アプローチは大きく3パターンある。パターンごとに「月額コスト」「月間作業時間の変化」「向いているケース」を比較した。

3パターンの概要比較

項目 パターン1(ツールのみ) パターン2(採用代行のみ) パターン3(ツール+部分外注)
月額コスト目安 0〜2.2万円 10〜30万円(または成功報酬) 4〜7.2万円
月間作業時間 6〜10時間 3〜6時間 5〜8時間
初期設定の手間 中(2〜4週間) 小(引き渡しのみ) 中(2〜4週間)
採用の質の変化 ツール次第で変化なし 外部業者の目線が加わる ツール+外部目線の両方
向いている会社規模 採用担当が兼務で存在する 採用担当がほぼいない 事務は自動化しつつ質も上げたい

パターン1:ツール導入のみ

ツール 月額費用目安 主な効果
ATS(採用管理システム)無料〜スタンダードプラン 0〜2万円 応募者の一元管理、媒体連携、進捗のダッシュボード化
面接日程調整ツール(TimeRex、Spirなど) 0〜2,000円 日程調整メールの往復をゼロにする
合計 月0〜2.2万円

月間作業時間のBefore/After(パターン1)

業務 Before After
求人票の作成・更新 3〜5時間 1時間(テンプレートから修正)
応募者受付・書類選考 5〜8時間 2〜3時間(ATS上で確認)
面接日程調整 4〜7時間 0.5〜1時間(URLを送るだけ)
面接官との調整 2〜3時間 0.5〜1時間(ATS上で共有)
合否通知 2〜3時間 0.5〜1時間(テンプレートから送付)
入社書類対応 2〜3時間 1〜2時間
進捗管理・報告 3〜4時間 0.5時間(ダッシュボード自動集計)
合計 月21〜33時間 月6〜10時間

月の作業量が約1/3〜1/4に削減できる計算だ。

向いているケース: 採用担当者が兼務で存在し、事務作業の量を減らしたい場合。無料プランから始めて、応募者が増えてきたら有料プランに切り替えることもできる。

注意点: ATSの初期設定(求人情報の登録、媒体連携の設定)に最初の2〜4週間かかる。設定が終わるまでは現行フローと並行で動かす必要がある。

パターン2:採用代行(RPO)のみ

契約形態 費用目安
月額固定(スクリーニング〜面接調整まで) 月10〜30万円
成功報酬型(1名採用あたり) 5〜15万円/人

採用代行に任せると、担当者の作業は「面接に出席する」「最終判断をする」の2点に絞られる。社内の月間作業時間は3〜6時間まで削減できる。

向いているケース: 採用担当が社内に実質いない、または繁忙期だけ対応できない場合。採用人数が少ない年(年1〜2名)は成功報酬型の方がコストを抑えやすい。

注意点: 月額固定の代行は、採用活動が止まっている月もコストが発生する。年間2〜3人の採用であれば、成功報酬型(1人あたり5〜15万円)の方が割安になるケースが多い。

パターン3:ツール+部分的な採用代行(推奨)

ATSで応募者管理・面接調整を自動化しつつ、求人票の作成とスクリーニングの一部だけを外注するパターン。

内容 月額費用目安
ATS(スタンダードプラン) 1〜2万円
日程調整ツール 0〜2,000円
求人票作成・スクリーニング代行(部分外注) 3〜5万円
合計 月4〜7.2万円

向いているケース: 事務作業は自動化しつつ、採用の質(どんな人を通すか)も改善したい場合。ツールだけでは対応できない「書類の目利き」「求人票のコピーライティング」を代行に任せることで、応募の質が変わることがある。

ATS(採用管理システム)の費用と機能比較

パターン1・3でATSを使う場合、どのツールを選ぶかによってコストと機能が変わる。中小企業で実際に使われているATSの費用感を整理した。

ツール名 月額費用 向いている規模 特徴
Googleフォーム+スプレッドシート 無料 5人以下 設定に時間がかかるが費用ゼロ
ジョブカン採用管理(無料プラン) 無料 5〜20人 求人掲載・応募者管理の基本機能あり
Engage(エン転職提供) 無料 10〜50人 求人掲載と応募者管理が一体化、応募者ごとにメモ・評価を記録できる
HRMOS採用(スタンダード) 月3〜5万円 30〜100人 分析機能が充実、大手子会社向け
Talentio(スタンダード) 月2〜4万円 20〜100人 UIが使いやすく、Slack連携が可能

従業員15人規模の採用であれば、まず無料ツール(ジョブカン採用管理の無料プランやAirwork)から始めることをすすめる。有料ATSは「月10件以上の応募を継続的に受ける」「複数ポジションで同時に採用活動をする」段階になってから検討すれば十分だ。

なお、採用管理システムの費用相場については「採用管理システム費用比較【2026年版】|月額2〜4万円が中小の目安」で詳しく解説しているので、ツール選定の参考にしてほしい。

年間採用2〜3人の会社がATSを入れる意味はあるか

「年に2〜3人しか採用しないのに、ATSを入れるほどでもない」と思うかもしれない。

正直に言うと、その感覚は半分正しい。

採用管理システムを月額2〜4万円で使い続けるなら、採用活動がない月もコストが発生する。年間採用2〜3人で成功報酬型の採用代行を使うと、1人あたり5〜15万円で済む。採用頻度が低い会社では、「毎月払い続けるATS」よりも「使った時だけ払う成功報酬型」の方がコスト効率が高いことがある。

ただし、僕がATSを推す理由は「管理」ではなく「テンプレートの蓄積」だ。

採用のたびに求人票をゼロから書き直している会社は、毎回3〜5時間を使っている。無料のATSを1度だけセットアップして求人票とフローを登録しておけば、次回からは「前回の求人票を修正するだけ」になる。年に2〜3回しか採用しないからこそ、「前回何をしたか覚えていない」問題が起きやすい。その記録・再利用の仕組みとしてATSを使う価値はある。

月額費用がかかるサービスを使わなくても、Notionや無料のジョブカンで十分だ。まず「ゼロから作り直さない仕組み」を作ることを優先してほしい。

業務委託先で見てきた採用業務の現場

業務効率化に特化したエンジニアとして関わってきた会社で、採用業務の現場を複数見てきた。

よく見るパターンは2つある。

パターンA:求人票が会社のどこにも残っていない

以前支援した建設業の会社では、求人票の「マスターデータ」がなく、社長が都度ハローワークの窓口で口頭説明し、担当者が新しいWordファイルを作っていた。3年前の求人票と現在の求人票で、給与条件の表記が微妙に違っていた。それを統一するだけで、次の採用にかかる時間が半分以下になった。

パターンB:面接日程調整を経営者が直接やっている

社員5名規模の会社では、社長が直接応募者とLINEで日程を調整していた。「候補日5つ送って→返信待って→2往復で確定」というフローで、1人あたり平均40分かかっていた。Googleカレンダーの予約リンクを案内するだけで、これが5分以内に収まった。設定時間は30分、コストはゼロだった。

採用業務で「大掛かりなシステム導入」が必要なケースは、実は少ない。日程調整ツールと求人票のテンプレート化だけで解決できる問題が、現場には多く残っている。

Before/Afterをまとめると

3パターンの変化を数字で並べると、次のようになる。

項目 Before パターン1(ツール) パターン2(代行) パターン3(ツール+代行)
月間作業時間 21〜33時間 6〜10時間 3〜6時間 5〜8時間
面接日程調整(1人あたり) 30〜45分 3〜5分 代行が対応 3〜5分
求人票作成時間 3〜5時間(毎回ゼロから) 1時間(テンプレートから) 代行が対応 1時間(テンプレートから)
月額コスト 0円(工数のみ) 0〜2.2万円 10〜30万円 4〜7.2万円
採用担当の負担 大(全工程) 中(確認中心) 小(面接・判断のみ) 中(確認中心)

どのパターンでも月間作業時間は大きく削減できる。ポイントは「何にお金をかけるか」ではなく「何を仕組み化するか」だ。

なお、採用業務を外注する場合の費用感は「事務パート採用vs外注コスト比較|月9〜10万円の実態と判断基準【2026年版】」でも整理しているので、外注を検討する際の参考にしてほしい。

どこから手をつけるか:優先順位の付け方

全部を一度に変えようとすると動けなくなる。効果が出やすい順番は次のとおりだ。

Step 1:求人票をテンプレート化する(コスト:0円、時間:2〜3時間)

まず既存の求人票を1本整理して「テンプレートとして使える状態」にする。費用はゼロで、次回からの作成時間が3〜5時間から1時間以下になる。WordやGoogleドキュメントで構わない。やるべきことは「次の採用の自分が、前回何をしたか分かる状態を作る」ことだ。

Step 2:面接日程調整ツールを導入する(コスト:0〜825円/月、時間:30分で設定完了)

TimeRexやGoogleカレンダーの予約リンクなど、無料〜月825円で使えるサービスが複数ある。導入翌日から効果が出る。応募者側も「URLから好きな時間を選ぶだけ」になるため、選考体験の改善にもつながる。設定時間は30分程度だ。

Step 3:ATSを導入して応募者管理を一元化する(コスト:無料から)

無料プランから始められるサービス(ジョブカン採用管理、Airworkなど)がある。まず複数媒体の応募を1つの画面で見られる状態にするだけでも、管理の手間と見落としが大幅に減る。設定に2〜4週間かかるが、2回目以降の採用から効果が出る。

Step 4:採用業務の一部を外注する(必要であれば)

ツールを入れた後に「それでもこの部分は時間がかかる」という箇所が残ったら、そこだけ外注を検討する。「求人票のコピーライティングが苦手」「書類選考の判断基準を決めてほしい」といった特定の課題を外注するのが費用対効果が高い。最初から全部外注するより、ツールで自動化できる部分を先に整理してから判断した方がコストを抑えやすい。

採用面接そのものの効率化については「採用面接を効率化する方法|中小企業が採用コストと時間を削減する手順」に詳しくまとめている。

まとめ

採用業務を効率化した場合の変化を整理する。

  • 採用活動中の総務担当の月間作業が21〜33時間から6〜10時間に削減できる
  • 面接日程調整が1人あたり30〜45分から3〜5分になる
  • 無料の日程調整ツールと求人票テンプレートだけで、コストゼロで即効性のある改善ができる
  • ATS(無料プラン)を入れれば複数媒体からの応募者を一元管理できる
  • ツール+部分代行の組み合わせで月4〜7万円程度から始められる
  • 年間採用2〜3人の会社は、成功報酬型の採用代行か、無料ATSでのテンプレート化が費用対効果が高い

「採用のたびに同じ手間がかかっている」という場合、まず面接日程調整ツールの導入と求人票テンプレート化から始めると、コストゼロで翌日から効果が出る。採用代行やATSは、その後に必要と判断した時点で検討すれば十分だ。

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