「kintoneが使えそうと聞いたが、自社規模で導入する価値があるか分からない」
こういう相談を受けることがある。従業員10〜30人規模の会社で、Excelや紙で管理している業務を何とかしたいが、システムを作るほどでもない、という状況だ。
kintoneはこの規模感にちょうど合うツールの一つだ。ただし「万能な業務改善ツール」ではなく、向き不向きがある。
この記事では、kintoneが中小企業のどういう業務に合うか、具体的な活用例、料金の実際、そして「最初の1アプリ」の選び方まで整理する。
kintoneとはなにか
kintoneはサイボウズが提供するクラウド型の業務アプリ作成プラットフォームだ。
一言で言うと、「プログラミングなしで業務管理アプリを作れるツール」だ。フォームを組み合わせてデータを入力・管理し、社内メンバーで情報を共有できる。
既製品のSaaSとは違い、自社の業務フローに合わせてアプリを作る。顧客管理なら顧客管理アプリを、社内申請なら申請管理アプリを、業務の実態に合わせて構築する。
エンジニアがいなくても、ドラッグ&ドロップでフォームの項目を設定できる。「Excelで管理しているが、複数人での同時編集や履歴管理が難しい」という用途に使われることが多い。
中小企業での具体的な活用例
活用例1:顧客・取引先の情報管理
営業担当者が顧客情報をExcelで管理しているが、担当者しか内容を知らない状態になっているケースがある。担当者が急に休んだり辞めたりすると、顧客とのやり取りの経緯が誰にも分からなくなる。
kintoneで顧客管理アプリを作ると、担当者が変わっても過去の対応履歴を全員が確認できる。商談メモ・提案内容・次回のアクション予定なども一か所にまとまる。
ポイントは「誰でも入力できる形」にすることだ。Excelと違い、スマートフォンからも入力できるため、訪問後にその場でメモを記録するという使い方もできる。
活用例2:プロジェクト・案件の進捗管理
「今どの案件がどの状態にあるか」が分からなくなる会社は少なくない。担当者に直接聞かないと状況が把握できない、という状態だ。
kintoneでプロジェクト管理アプリを作ると、担当者・ステータス・期限・対応メモをまとめて管理できる。案件の一覧が常に最新の状態で見えるため、経営者がいちいち担当者に聞かなくても状況を把握できる。
「○○案件はどうなってる?」という確認の手間が減る。
活用例3:社内申請・承認のワークフロー
備品購入申請や経費精算・休暇申請などを紙やメールで処理している会社では、誰が承認したか・まだ承認待ちかが分かりにくいことがある。申請が流れてしまったり、二重処理が起きたりする。
kintoneの「プロセス管理機能」を使うと、申請→承認→完了という流れをシステム上で管理できる。承認待ち件数が一覧で見え、承認者が変更を加えた時点で記録が残る。
紙の決裁ルートよりも状況が把握しやすくなる。
活用例4:在庫・発注の管理
在庫を担当者がExcelで管理しているが、複数人で更新するとデータが重複したり、最新版がどれか分からなくなる、という問題がある。
kintoneで在庫管理アプリを作ると、複数人が同時に更新しても最新の在庫数が確認できる。入庫・出庫のタイミングで記録するだけで、誰でも現在の在庫状況を把握できる。
kintoneの料金と費用感
kintoneには大きく2つのプランがある。
ライトコース|月額1,000円/ユーザー
基本的な情報管理・共有に使う場合はライトコースで十分だ。
- アプリ作成数:200個まで
- スペース:100個まで
- 外部サービスとのAPI連携:なし
- プラグイン追加:なし
社内の情報をkintone内で完結させるなら、ライトコースで多くの用途をカバーできる。
スタンダードコース|月額1,800円/ユーザー
外部サービスと連携したり、拡張機能を追加したりする場合はスタンダードコースが必要だ。
- アプリ作成数:1,000個まで
- API連携:可能
- プラグイン追加:可能
会計ソフトやCRMとのデータ連携を自動化したい、または機能を拡張したい場合はスタンダードコースを選ぶ。
実際の月額コスト
| 人数 | ライトコース | スタンダードコース |
|---|---|---|
| 5人 | 5,000円/月 | 9,000円/月 |
| 10人 | 10,000円/月 | 18,000円/月 |
| 20人 | 20,000円/月 | 36,000円/月 |
| 30人 | 30,000円/月 | 54,000円/月 |
初期費用はかからない。月払いで試せるため、「まず3ヶ月使ってみる」という始め方もできる。
ただし、全員が使うわけではなく管理部門だけが使う場合は、実際のユーザー数で計算すればよい。経理・総務・営業管理の担当者3〜5人だけが使うなら、月5,000〜9,000円で収まる。
導入前に知っておきたい失敗パターン
kintoneを導入しても活用できず、しばらくしてから使われなくなるケースがある。原因は毎回ほぼ同じだ。
失敗パターン1:目的が曖昧なまま導入した
「業務をデジタル化したい」という理由でkintoneを導入した結果、何をどのアプリに入れるかが決まらず、結局Excelと並行して管理することになった、という話がある。
kintoneは「何の業務を、どう変えるか」が具体的に決まってから導入するものだ。「デジタル化」を目的にしてはいけない。「担当者だけが知っている顧客情報を全員が見られる状態にする」のように目的を具体化してから始める。
失敗パターン2:全社一気に導入しようとした
最初から全ての業務をkintoneに移そうとすると、構築作業が膨らんで完成する前に疲弊する。
最初は1業務・1アプリから始める。実際に使える状態を1つ作ってから、うまくいったら次に広げる。これが現実的なペースだ。
失敗パターン3:構築を1人に任せすぎた
アプリの構築作業が特定の担当者に集中し、その人が退職した後に誰もメンテナンスできなくなった、というケースがある。
kintoneはエンジニアでなくても触れるが、構築のノウハウが1人に偏ると運用が属人化する。最初から複数人が操作できる状態を作っておくことが重要だ。
失敗パターン4:現場が使わなかった
上から「kintoneを使え」と言っただけで現場が使わなかった、という話は多い。
kintoneを定着させるためには、「現場にとって、このアプリを使うとどう楽になるか」を説明した上で、実際に現場のメンバーが使える状態にする必要がある。入力項目が多すぎる・操作が分かりにくいといった課題は、現場の声を聞きながら早い段階で修正する。
最初の1アプリの選び方
kintoneを始めるにあたって、最初に作るアプリを1つ選ぶ必要がある。選ぶ基準はシンプルだ。
「今、紙やExcelで管理していて、複数人で共有できていない業務」を選ぶ
具体的には以下のような業務が最初のアプリとして向いている。
- 案件・顧客の一覧管理(営業担当者の頭の中にある情報)
- 社内申請(紙やメールで処理しているもの)
- 作業報告・日報(各自が別々に保存しているExcelファイル)
- 在庫・備品の管理台帳(最新版がどれか分からなくなっているExcel)
最初から完璧なアプリを作ろうとしない。「だいたい動く状態」を2週間以内に作り、実際に使いながら修正を重ねる方が定着しやすい。
まとめ
kintoneは中小企業の「情報がバラバラで、担当者しか状況が分からない」という問題に対して有効なツールだ。
ただし、導入すれば自動的に解決するものではない。「何を変えるか」を明確にし、1業務から始めて定着させていくことが重要だ。
| チェック項目 | 内容 |
|---|---|
| 目的を具体化する | 何の業務を、どう変えるか |
| 1アプリから始める | 全業務を一気に移行しない |
| 現場を巻き込む | 使う人に説明して意見を聞く |
| プランを選ぶ | API連携が不要ならライトコース |
費用面では、ライトコースで月1,000円/ユーザー。初期費用なしで試せるため、まず少人数で動かしてみる判断もできる。
kintone以外のツールも含めて業務効率化の方法を検討したい場合は、以下の記事も参考にしてほしい。
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