事務・バックオフィス効率化

中小企業の電子契約導入方法|費用相場と主要サービスを比較

「電子契約を導入したい」と思いながら、何から手をつければいいか分からないまま先送りにしている会社は多い。

調べると「おすすめ20選」「全50製品比較」のような記事ばかりが出てきて、結局どれを選べばいいかが分からない。費用感も「会社の規模や使い方による」としか書いておらず、判断の材料にならない。

この記事では、従業員5〜50人規模の中小企業が電子契約を導入する際の手順と、実際に候補になる主要サービスの費用・特徴を整理する。「うちの状況に合うのはどれか」を判断できるようにすることが目的だ。

電子契約が必要な会社・まだ必要ない会社

サービスの話に入る前に、電子契約の導入が本当に必要かどうかを確認する。

電子契約を導入すべき状況

以下のうち2つ以上当てはまるなら、電子契約の導入を検討する価値がある。

  • 取引先との契約書を月に5件以上やり取りしている
  • 印刷・押印・郵送の手間が担当者の負担になっている
  • 契約書の保管・検索に時間がかかっている(どの棚に入っているか分からない、締結日を調べるのに時間がかかる等)
  • テレワーク中の社員が押印のためだけに出社している
  • 取引先から「電子契約で対応してほしい」と求められている

月に10件を超えてくると、郵送費(簡易書留で1通430〜545円、定形郵便で110円)と印紙代(契約金額によって200円〜60,000円)の合計が無視できない額になる。電子契約なら送信料のみで済む分、固定コストを圧縮できる。

まだ電子契約でなくてよい状況

  • 月の契約件数が1〜2件程度で、現状の郵送フローで困っていない
  • 取引先の大半が電子契約を受け付けていない(官公庁・医療・建設業の元請けが多い会社)
  • 書面での原本保管を取引先が要求しているケースがほとんど

取引先によって電子契約を使えないケースがあっても、一部の契約だけ電子化することはできる。「全部か零かで考えない」のがポイントだ。

雇用契約や業務委託契約は電子化しやすく、取引基本契約は相手の同意が必要なケースもある。用途を絞って始めると導入の障壁が大きく下がる。

月の送信件数と費用感の目安

月の契約送信件数 郵送コスト(概算) 電子契約コスト(概算) 判定
月1〜2件 1,000〜2,000円 月額3,000〜10,000円+送信料 まだ不要
月5〜10件 5,000〜15,000円(印紙代込み) 月額2,480〜11,000円+送信料1,000〜2,200円 検討段階
月10〜30件 20,000〜50,000円(印紙代込み) 月額8,800〜11,000円+送信料3,000〜6,600円 導入効果あり
月30件以上 50,000円〜 月額2,480円(送信料なし型) 早急に導入

印紙代は契約金額によって大きく変わる。実際の金額は自社の契約書を1か月分ピックアップして計算すると判断がつきやすい。

電子契約導入の3ステップ

導入は3つのフェーズで進む。全体の所要期間は1〜2か月を見込んでおけば余裕がある。

Step 1: 社内の契約フローを整理する(1〜2日)

まず、現状どのような契約書を誰と何件やり取りしているかを書き出す。

確認すべき項目:

  • 月あたりの契約件数(雇用契約・業務委託・取引基本契約などの種別ごとに)
  • 契約に関わる社内の人数(作成者・確認者・承認者)
  • 契約相手のタイプ(個人・法人、国内・海外)

業務効率化に特化したエンジニアとして複数の会社の業務改善に関わってきた経験から言うと、ここをスキップしてサービスを選んだ会社は高確率で「取引先への案内が想定より手間だった」「承認ルートがシステム上設定できなかった」という問題に後からぶつかる。最初の1〜2日がもっとも費用対効果の高い準備だ。

Step 2: サービスを選んで無料トライアルを試す(1〜2週間)

主要サービスはいずれも14〜30日の無料トライアルを提供している。実際の社内の契約書を使ってテストするのが確実だ。

無料トライアルで確認すべきポイント:

  • 相手方(取引先)がアカウントなしで署名できるか
  • 承認フロー(作成→確認→承認→送付)を自社の運用に合わせて設定できるか
  • 既存の会計ソフト(freee・マネーフォワード等)との連携が取れるか

「取引先がアカウント登録なしで署名できるか」は、外部との契約が多い会社にとって最重要ポイントだ。GMOサイン・クラウドサイン・マネーフォワードクラウド契約の3サービスはいずれもメールリンクで署名できる「立会人型」に対応しているため、この点はどれを選んでも問題ない。

Step 3: 社内展開と運用ルールを決める(1〜2週間)

トライアルで問題がなければ本契約に移行する。同時に、社内の運用ルールを決める:

  • どの種類の契約書を電子化するか(全部か、特定の種類だけか)
  • 誰が送付操作を行うか(担当者限定か、全社員か)
  • 既存の紙の契約書をどう扱うか(新規締結分だけ電子化し、過去分はそのまま保管するのが現実的)

電子化する種類を「雇用契約・業務委託契約だけ」と絞って始めると、取引先への説明コストを最小化できる。全面移行は3〜6か月かけて段階的に進めるのが現実的だ。

主要3サービスの費用・機能比較

中小企業が実際に導入を検討する3つのサービスを整理する。

3サービスの費用比較(2026年現在)

サービス 月額(税別) 送信料 初期費用 無料プラン
GMOサイン 8,800円〜 立会人型100円/件・当事者型300円/件 なし あり(月5件まで無料)
クラウドサイン 11,000円〜(税別) 立会人型220円/件 なし なし(14日トライアル)
マネーフォワードクラウド契約 2,480円〜(税込、年額プラン) なし(無制限) なし 30日トライアル

GMOサイン

向いている規模: 10〜100人

GMOサインはシンプルな操作性が強みで、ITに不慣れなスタッフが多い会社でも定着しやすい。月額8,800円(税別)の定額プランに、送信のたびに立会人型100円/件か当事者型300円/件が加算される料金体系だ。

「立会人型」と「当事者型」の違いは法的効力の差にある。立会人型はGMOサインが電子署名を付与する方式(費用が安い)、当事者型は各自が自分の電子署名を付与する方式(証明力が高い)となる。通常の業務委託契約・雇用契約なら立会人型で十分なケースが多い。

無料プランで月5件まで送信できるため、まず無料で試してから本格導入を判断できる点も選びやすい。

注意点:月の契約が2〜3件程度の会社には、月額8,800円の固定費が割高になりやすい。無料プランで試しながら件数が5件を超えた時点で有料プランに切り替えるのが現実的だ。

クラウドサイン

向いている規模: 10〜500人

弁護士ドットコムが提供するサービスで、法的証拠力とセキュリティへの対応が手厚い。月額11,000円(税別、2026年4月改定後)の固定費に、立会人型220円/件の送信料が加算される。

大手取引先や法律リスクが高い契約(秘密保持契約・投資契約等)を多く扱う会社に向いている。「電子契約の有効性について取引先が不安を感じている」場面では、弁護士ドットコムが運営しているという背景が安心材料として機能することがある。

注意点:月額11,000円(税別)はGMOサインより2,200円高く、送信料も220円/件とGMOより高め。月に20件以上送る会社は費用の積み上がりを事前に試算しておくことを勧める。

マネーフォワードクラウド契約

向いている規模: 5〜50人

最大の特徴は送信料が無制限(月額固定のみ)であること。月額2,480円〜(税込、年額プラン)で件数を気にせず使える。すでにマネーフォワードクラウド会計・経費精算を使っている会社は、ダッシュボードを一元管理できる点がメリットになる。

月の送信件数が読めない会社や、コストを抑えて始めたい小規模の会社(従業員5〜20人)に向いている。

注意点:機能の幅はGMOサインやクラウドサインに比べてシンプルな部分がある。複雑な承認ワークフローや複数拠点管理には向いていない。「契約書の電子送付と保管ができれば十分」という会社に最も適している。

状況別の向き・不向き比較

判断軸 GMOサイン クラウドサイン マネーフォワードクラウド契約
月の送信件数が多い・読めない ◎(送信料なし)
法的証拠力・セキュリティ重視
操作のシンプルさ
既存ツールとの連携(MF系)
コストを抑えたい ○(無料プランあり) ◎(月額3,278円〜)
大手・官公庁との取引が多い

電子帳簿保存法と電子契約の関係

電子契約を導入する際に、あわせて確認が必要なのが電子帳簿保存法への対応だ。

2024年1月から、メールやWebシステムで受け取った請求書・契約書などの「電子取引データ」を紙に印刷して保存することは原則できなくなった。電子データのまま、改ざんできない形で保管し、日付・金額・取引先で検索できる状態にしておくことが義務となっている。

電子契約サービスを導入すると、締結済みの契約書はサービス内でタイムスタンプ付きで自動保管される。この点では、電子帳簿保存法が求める要件を満たしやすい。ただし以下の2点は確認が必要だ。

タイムスタンプの付与方式

付与方式 特徴 GMOサイン クラウドサイン MFクラウド契約
認定タイムスタンプ 法的証拠力が高い・第三者機関が証明 当事者型で付与 標準付与 プランによる
サービス独自記録 コストが安い・内部的な証明 立会人型で利用 基本プランで利用

既存の紙の契約書の扱い

過去に締結した紙の契約書は電子帳簿保存法の対象外。新規の電子取引データが対象になるため、過去分を無理にスキャンして電子化する必要はない。新規締結分から順次電子化すればいい。

電子帳簿保存法の対応が未整理のまま電子契約を始めると、税務調査の際に指摘を受けるリスクがある。導入前に顧問税理士に一度確認しておくことを強くすすめる。ペーパーレス化全体のロードマップは中小企業のペーパーレス化で困る3つの失敗パターン|低コストで始める手順で整理しているので参考にしてほしい。

電子契約でよく出る3つの疑問

「取引先が電子契約に対応していなかったらどうするか」

電子契約に対応していない取引先があっても、全体の導入を止める必要はない。対応できる取引先から順次切り替える方法が現実的だ。

立会人型であれば、相手方はアカウント登録不要でメールに届いたリンクから署名できる。「電子契約は難しそう」と感じている取引先でも、実際に試してもらうと1〜2分で署名が完了するため、受け入れてもらいやすい。

官公庁・医療機関・建設業の元請けが相手の場合は書面を求められることが多い。その場合は「この取引先だけ紙を継続する」と例外ルールをあらかじめ決めておけばいい。全て電子化する必要はなく、「できる取引先から電子化を進める」という段階的な方針で十分だ。

「印鑑証明や実印と同じ法的効力はあるか」

電子契約の当事者型(認定電子署名)と印鑑証明書付きの実印は、電子署名法上で同等の効力を持つとされている。ただし「実印でなければ認めない」と社内規程や取引先が要求している場合は、社内手続きの変更が必要になる。

雇用契約・業務委託契約は立会人型でも実務上十分なケースが多い。不動産の売買契約・金融機関との契約は当事者型や書面が求められることがあるため、事前に確認しておく。

「電子契約のデータはどのくらい保管されるか」

電子帳簿保存法上、電子取引データの保管期間は法人税申告に合わせて最長10年が目安となる。主要3サービスはいずれも10年以上の保管に対応しているが、プランによって異なるため契約前に確認しておく。

失敗しやすい導入パターン3つ

業務効率化に特化したエンジニアとして複数の会社の業務改善に関わった経験から、電子契約の導入でつまずくケースが3つある。

比較に時間をかけすぎて何もしない

電子契約ツールの比較に2〜3週間かけて、結局「もう少し様子を見よう」で終わるケースが一番多い。GMOサイン・クラウドサイン・マネーフォワードの3つのうちどれを選んでも、中小企業の日常的な契約業務なら機能的な差は小さい。

選ぶことではなく「今月から使い始めること」に価値がある。無料プランやトライアルがあるので、まず1つ触れば判断が格段に速くなる。

全契約を一度に電子化しようとする

最初から「全ての契約書を電子化する」と決めると、取引先への説明コストが大きくなり、現場が混乱しやすい。「まず雇用契約から始める」「次に業務委託契約」と種類を絞って順番に進める方がうまくいく。

最初の1か月は雇用契約だけ電子化して慣れてから、翌月以降に業務委託・取引基本契約と広げる段階的なアプローチを勧める。

電帳法対応を後回しにしたまま始める

電子契約を始めると自動的に電子取引データが発生する。電子帳簿保存法の保存要件(検索機能・改ざん防止)を確認していないと、税務調査の際に指摘を受けるリスクがある。導入前に顧問税理士に一度確認しておくのが確実だ。

電子契約と電帳法対応をセットで整理すると、作業が1回で済む。請求書の電子化も合わせて検討する場合は請求書の電子化を中小企業で進める方法|ツール選びから運用までが参考になる。

状況別の選び方まとめ

状況 おすすめサービス 理由
月の送信件数が多い・読めない マネーフォワードクラウド契約 送信料なし・固定費2,480円〜
法的信頼性・実績重視 クラウドサイン 弁護士ドットコム運営・国内大手
コストと機能のバランス GMOサイン 無料プランあり・操作シンプル
マネーフォワードで会計・経費を管理中 マネーフォワードクラウド契約 一元管理できる
まず無料で試したい GMOサイン 無料プランで月5件送信可
大手取引先・高リスクな契約が多い クラウドサイン 法的証拠力が高い

最初の判断基準は「月の契約送信件数はどれくらいか」だ。件数が少なければGMOサインの無料プランから試す。件数が多い、または月によって変動する場合は、送信料なし・月額2,480円〜のマネーフォワードクラウド契約が費用管理しやすい。

「どれにするか」の前に、「月に何件の契約書を送るか」を先に確認する。それだけで選択肢は1〜2つに絞れる。

バックオフィス全体のツール選定を検討している場合は中小企業の業務効率化ツール10選|目的別の選び方ガイドも参考にしてほしい。

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