本音コラム

怪しいITコンサルに騙されないために知っておくこと

著者:野原琉海(業務効率化に特化したエンジニア)

「業務を改善したい」「ITをうまく使いたい」と思って外部のコンサルに相談する中小企業は多い。

でも、ITコンサルには玉石混交というか、正直ひどいものがかなりある。「いつまでたっても完成しない」「導入したけど誰も使っていない」「気づいたら数百万円消えていた」。こういう話を経営者から聞くたびに、「もう少し早く知っていればよかったのに」と思う。

業務効率化に特化したエンジニアとして、受注側として開発案件を扱った経験もあれば、今は中小企業のIT活用を支援する立場でもある。両方の目線を持っているから、怪しいITコンサルの構造が僕には分かる。

この記事では、よくある悪質な手口と、信頼できるコンサルを見分けるための具体的なチェックポイントを整理する。

怪しいITコンサルによくある5つのパターン

相談を受けた経営者の話や、受注側として見聞きしたケースをもとに整理した。

パターン1:「もうすぐ完成します」が半年以上続く

システム開発を依頼した。最初の見積もりは300万円。3ヶ月で完成すると言われた。3ヶ月後、「想定より複雑でした。追加で100万円と2ヶ月かかります」と言われる。2ヶ月後、「テスト工程で予想外の問題が出て、さらに追加費用が」という連絡が来る。

これが1年以上続いた末に、最終的に当初の2倍以上の費用を払って出来上がったものが使い物にならない——僕が相談を受ける中でこういうケースは珍しくない。

大規模なシステム開発でも同様のことが起きる。最初の見積もりが最終的に数倍になった事例は公的機関の記録にも残っている。

この問題が起きる構造はシンプルだ。受注側が「後から追加費用を請求できる」と分かっていたからこそ、最初の見積もりを低くして受注した。発注側にIT専門知識がないと、追加要求が妥当かどうか判断できない。

詳しくはシステム開発の外注で失敗するパターンと回避策でも整理しているので参考にしてほしい。

パターン2:導入したけど誰も使っていない

コンサルに言われるままにSaaSツールを導入した。初期費用200万円、月額保守費用20万円。年間で440万円のコストをかけた。

でも、現場にヒアリングしないまま選定したから実際の業務に合わない。操作が複雑で現場の社員が覚えられない。結局、みんなExcelに戻っている。毎月20万円の保守費用だけが引き落とされている。年間240万円が無駄になっている計算だ。

この問題の原因は、コンサルが「システムを売ること」を目的にしていたことだ。現場が使いやすいかどうかは二の次で、「導入すること」がゴールになっている。SaaSを導入しても現場で使われない理由と対策でも書いたが、導入と定着は全く別の話だ。

パターン3:「補助金で実質無料」という甘い誘い

「IT導入補助金を使えば実質無料で導入できますよ」と持ちかけてくるパターン。

IT導入補助金は中小企業庁が管轄する正当な制度だ。ただ、これを悪用して、必要以上に高額なシステムを補助金名目で売りつけるケースがある。実際に、IT導入補助金での1.5億円超の不正受給を指摘する調査報道が出ており、補助金申請を代行しながらキックバックを受け取っていた業者が問題になっている(出典:日経クロステック)。

「実質無料」と言われても、補助金は税金だ。そのコンサルが「実質無料だから多少高くても大丈夫」と思わせて、適正価格より高いサービスを売っているとしたら、得をするのはコンサルだけだ。

パターン4:長期契約で囲い込む

「まず3年の顧問契約を結びましょう。月額50万円です」と最初に言ってくるコンサル。

年間600万円。3年で1,800万円。最初の数ヶ月は手厚くサポートしてくれても、その後だんだん対応が雑になる。でも解約すると違約金が発生する契約になっているから、どうにもならない。

使えないコンサルに毎月50万円払い続けることになる。解約できないまま3年が経過したケースを僕は実際に見てきた。

パターン5:自社製品を課題に関係なく押し込む

「御社の課題はこのシステムで解決できます」と、課題を深く聞く前から特定のシステムや自社製品の話をしてくるコンサル。

本来、コンサルは課題を丁寧に聞いてから解決策を提案する。でも、自社システムの売上が目的なら、課題より先にシステムの話をする。「このシステム、月額15万円ですが6ヶ月のトライアルで試してみませんか」という話から入ってくるなら、そのコンサルはコンサルではなくシステム営業だ。

なぜ中小企業はITコンサルに騙されやすいのか

構造的な問題が2つある。

1つ目は、発注側にITの専門知識がないこと。

専門用語を並べられると、よく分からないまま「はい」と言ってしまう。見積もりが適正かどうか、追加費用が妥当かどうか、そもそも提案されているシステムが本当に必要なのかどうか——これを判断するには専門知識が要る。中小企業の経営者が持っていないのは当然だ。でも、コンサルはその状態を利用できる立場にある。

2つ目は、紹介・知人経由を過信すること。

「経営者仲間から紹介してもらったから大丈夫だろう」と思って、ヒアリングや比較をせずに契約してしまう。紹介があるとどうしても確認が甘くなる。でも、紹介してくれた人がITを深く理解しているとは限らないし、その人自身が騙されていることもある。

正直に言うと、コンサルタントという仕事には資格がない。今日から「ITコンサルタント」と名乗れば誰でもなれる仕事だ。資格がないからこそ、「怪しいかどうか」を見分ける目を自分で持つしかない。

怪しいITコンサルを見分ける6つのチェックポイント

チェックポイント 怪しいコンサル 信頼できるコンサル
初回提案のタイミング 課題を聞く前にシステムを出す 課題を丁寧に聞いてから提案する
契約形態 最初から長期・大型契約を求める 小さな仕事から始めさせてくれる
成果の定義 「導入すること」がゴール 「業務が何時間・何円改善されること」がゴール
費用の透明性 後から追加費用が来る 全体費用を最初に提示する
他社情報の扱い 他社の実名を気軽に話す 守秘義務を守り、他社の話をしない
実績の見せ方 具体性がない実績リスト 何がどう改善されたかを数字で示せる

チェック1:課題より先にシステムの話をする

「御社の業務には○○システムが向いていると思います」と初回から言ってくるなら警戒すべきだ。

本来の流れは「どんな課題がありますか」→「その課題の原因は何ですか」→「解決策にはこういう選択肢があります」の順番だ。最初からシステムありきで話を進めるコンサルは、課題より製品の売上を優先している。

チェック2:「今だけ」「補助金で無料」という言葉を使う

急かすのは、じっくり考えさせると断られると分かっているからだ。信頼できるコンサルは急かさない。「一旦持ち帰って検討してください」と言える関係でないなら、そのコンサルとの関係は対等ではない。

チェック3:いきなり3ヶ月以上の契約を求める

最初の打ち合わせで3ヶ月、6ヶ月、1年の契約を求めてきたら、立ち止まる必要がある。

「まず1回の相談でいくらですか」と聞いてみてほしい。1回の相談で方向性を示せないコンサルは、3ヶ月かけても大した答えは出さない。僕も相談を受ける立場だが、最初のミーティングで「どんな課題があって、どう解決できそうか」の大枠は必ず示している。それができないなら、長期契約を結ぶ理由がない。

チェック4:他社の情報や顧客の実名を気軽に話す

「○○株式会社では、こうやって解決しました」と実名で話してくれるコンサルを「実績があって信頼できる」と思うかもしれない。でも逆だ。そのコンサルは、あなたの会社の情報も同じように他社に話す可能性があるということだ。守秘義務を守らないコンサルとは、機密情報を含む業務の話はできない。

チェック5:成果が「分析レポートを作りました」で終わる

コンサルに払ったお金に対して、何が変わったのか。業務時間が何時間減ったのか。コストが何円下がったのか。

「分析レポートを作りました」「現状整理をしました」は成果ではない。「請求書処理の時間が月10時間減りました」「人件費換算で年間120万円の削減になりました」が成果だ。成果を数字で示せないコンサルとは、成果の定義を契約前に必ず合意しておく必要がある。

チェック6:提案が抽象的で自社固有の話に聞こえない

「業務効率化が必要です」「デジタル活用を推進しましょう」という提案は、どの会社にも当てはまる話だ。あなたの会社固有の課題に対して、具体的な解決策を提示できないなら、そのコンサルはあなたの会社の業務を理解していない。

良いコンサル・悪いコンサルの対比

提案フェーズの対比

項目 信頼できるコンサル 警戒すべきコンサル
初回打ち合わせの目的 課題を深く理解すること 提案書を見せて契約を取ること
見積もりの出し方 全体費用と内訳を最初に提示 「追加でかかる場合あり」で逃げる
選択肢の提示 複数の方法と比較を示す 自社製品・提携先しか出さない
「うちには向かない」と言えるか 合わないケースははっきり断る どんな案件も受けようとする
初回だけ相談できるか 単発対応に応じる 最初から長期契約を求める

実行フェーズの対比

項目 信頼できるコンサル 警戒すべきコンサル
進捗報告の中身 何がいつ完成するか具体的に報告 「順調です」だけで詳細なし
問題が起きた時 早めに報告して解決策を提示 隠して後から追加費用の理由にする
現場との向き合い方 現場の社員にもヒアリングする 経営者とだけ話して現場は放置
成果の報告 数字で効果を報告する 「改善されたはず」で曖昧に終わる
費用追加の発生 事前に全体費用を提示済み 後から都度追加費用を請求する

契約前に確認すべき5つの質問

実際にコンサルと打ち合わせをする前に、これを聞いてみてほしい。返答の仕方でコンサルの質が分かる。

質問1:「まず1回だけの相談はできますか?いくらかかりますか?」

長期契約を求めるコンサルへの最初の試し方だ。1回の相談に応じるか、その費用を明確に答えられるかを確認する。「最初から長期でないと意味がない」と言われたら、その時点で判断材料になる。

質問2:「この提案で、何が数字でどう変わりますか?」

「業務が改善されます」ではなく「月に何時間、どの業務が削減されますか」と聞く。3ヶ月後に何が具体的にどう変わっているかを問う。答えられないなら、その提案には根拠がない。

質問3:「途中で解約したい場合、どうなりますか?」

契約書を締結する前に必ず聞く。解約条件が厳しいほど、そのコンサルは「続けさせることで収益を得ようとしている」と見ることができる。解約条件が明確でない契約には、原則サインしない。

質問4:「類似した課題の会社に、具体的に何をやって何が改善されましたか?」

「実績があります」というだけでなく、具体的に何をやって何が変わったかを聞く。守秘義務があって詳細は言えないとしても、「請求書処理の時間を月15時間削減しました」「在庫管理のミスが月5件から0件になりました」のように、内容の概要は答えられるはずだ。

質問5:「なぜ他の方法ではなく、この方法を提案しているのですか?」

提案された方法以外の選択肢を、なぜ選ばなかったかを聞く。「競合ツールと比べてこちらが良いと判断した理由」を説明できないコンサルは、比較検討をしていない。自社の製品・提携先ありきで動いている可能性がある。

信頼できるITパートナーを見つける3つの方法

方法1:小さな仕事から始める

最初から大きな契約を結ばず、「スポット相談」「1業務の小さな改善から」始めさせてくれるパートナーを選ぶ。

「まず請求書処理だけ改善しましょう」という提案と、「まずバックオフィス全体の改革をしましょう」という提案では、前者の方が信頼できる。大きな契約は、小さな実績を積んでから考える。

方法2:社外のエンジニアにセカンドオピニオンをもらう

コンサルから提案を受けたら、別のエンジニアや技術者に「この提案は妥当ですか」と聞いてみる。

数万円の相談費用で、数百万円の失敗を防げることがある。見積もりが適正かどうか、提案されているシステムが本当に必要かどうか、技術的な部分で騙されるリスクを大幅に下げられる。

どこに相談すればいいか分からない場合は、業務効率化の相談はどこにすればいい?中小企業向けの相談先まとめも参考にしてほしい。

方法3:成果の定義を契約前に合意する

コンサルと契約する前に「何が達成されたら成功か」を数字で合意する。「3ヶ月後にこの業務が月10時間削減されていなければ契約を見直す」といった形で、数字で評価できる状態にする。

成果を数字で約束できないコンサルは、それ自体が判断材料だ。

自分が「騙されやすい状態」になっていないか確認する

怪しいコンサルにつけ込まれやすいのは、こういう状態の時だ。

  • 「何とかしなければ」と焦っている
  • 他に頼れる人がいない、比較できない
  • 紹介されたから断りにくい
  • 技術的なことは全く分からない
  • 一度断ると縁が切れると思っている

焦っている時ほど、いったん立ち止まる必要がある。「まず1週間、持ち帰って考えます」と言える状況なら、そのコンサルはまともだ。「今決めないと補助金が使えなくなる」「今月中に動かないと間に合わない」と急かすなら、それ自体が判断材料になる。

デジタルツールの導入で失敗するケースについては、デジタルツール導入で失敗する4つのパターンと対策でも整理しているので参考にしてほしい。

まとめ

怪しいITコンサルに共通するのは、「自分の売上を最優先にしている」ということだ。顧客の課題を解決することより、システムを売ること、長期契約を結ぶこと、追加費用を積み上げることが目的になっている。

見分け方はシンプルだ。「このコンサルは、うちの課題に向き合っているか、それとも自分の売上に向き合っているか」を判断するだけでいい。

課題を深く聞いてくれる。成果を数字で定義できる。小さな仕事から始めさせてくれる。これができるパートナーなら、少なくとも最初のステップとして付き合う価値がある。

コンサルに頼む前に、自分で業務の課題を1つ言葉にしてみてほしい。「毎月の請求書処理に5時間かかっている。これを2時間以内にしたい」。こういう具体的な課題を持って相談すると、コンサルが本物かどうかが分かる。課題に正面から向き合うかどうかで、その人の仕事の質が分かる。

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