事務代行・外注

補助金申請を自社でやる vs 外注|判断基準と費用比較

補助金を申請しようとすると、最初に迷う問題がある。「自分でやるべきか、専門家に頼むべきか」だ。

自社でやれば代行費用はかからない。ただ、公募要領は長文で、事業計画書の書き方も分からない。外注すれば質は上がるかもしれないが、「採択額の10〜20%」という成功報酬は思っていたより大きい数字になる。

結論から言うと、この問いへの答えは「補助金の種類による」だ。一律に「代行が有利」や「自社で書け」と言える話ではない。

この記事では、補助金の種類ごとに「自社でやる vs 外注」の現実的な判断基準を整理する。費用の相場と無料で使える支援機関についても合わせてまとめた。

補助金申請で実際に何をするか

「補助金に申し込む」という作業のイメージで始めると、実際の作業量に驚くことが多い。主な工程を確認しておく。

公募要領の読み込み

補助金ごとに「公募要領」が公開される。対象事業者・対象経費・審査基準・提出書類・スケジュールが記載されており、ものによっては数十ページに及ぶ。

読み飛ばすと「この経費は補助対象外だった」「この書類を添付していなかった」という事態が起きる。不備があると審査に進めないケースもある。最低でも1〜2時間、慣れていなければ半日以上かかると思っておいた方がいい。

事業計画書(経営計画書)の作成

補助金申請の核心部分。採択率に最も直結する書類だ。

「現状の課題」「補助金を使って何をするか」「なぜその取り組みが必要か」「数値目標」を体系的に記載する。審査員が採点するため、「読んで伝わる文章」を書く必要がある。事業内容が良くても、書き方が曖昧だと点数が伸びない。

初めて書く経営者が、方向性が定まらず何度も書き直すというケースはよく起きる。これが、申請において最も時間がかかる工程だ。

添付書類の収集と整理

直近の確定申告書・決算書・登記簿謄本・見積書(複数業者分)などが求められる。補助金の種類によっては追加書類の指定もある。

書類自体は揃っていても、「最新のものか」「必要なページが含まれているか」など細かい確認が必要になる。

外注(申請代行)の費用と種類

補助金申請を外部に頼む場合、選択肢は大きく3つある。

商工会議所・商工会(無料)

小規模事業者持続化補助金の場合、商工会議所・商工会が申請サポートを無料で提供している。経営指導員が事業計画書の書き方を確認・指導してくれる。

完全に書いてもらうわけではなく、「方向性の確認」「添削」のようなサポートが基本だ。ただし、それだけでも初回申請のハードルはかなり下がる。

持続化補助金以外のサポートは商工会議所によって対応が異なるため、事前に確認が必要だ。

よろず支援拠点(無料)

中小企業庁が各都道府県に設置している無料相談窓口。補助金に限らず、経営全般の相談が可能だ。

書類の作成代行は行わないが、申請の方向性や計画書の相談はできる。活用したい補助金の選定段階から相談できるのが利点だ。

民間の申請代行サービス・専門家(有料)

行政書士・中小企業診断士・民間の補助金代行サービスが該当する。費用体系は2パターンある。

成功報酬型

採択された時点で費用が発生する。採択されなければ費用はかからない。相場は採択額の5〜20%程度で、補助金の規模・業者によって幅がある。

ものづくり補助金で1,000万円採択された場合、報酬は100〜200万円になる。補助金の恩恵を受けながら費用が発生するため、払う側の心理的な負担は少ない。ただし、採択額が大きければ金額も大きくなる。

着手金あり型

着手金(数万〜40万円程度)と成功報酬の組み合わせ。事業計画書の作成に時間がかかる補助金(ものづくり補助金など)では、着手金が設定されているケースが多い。

不採択になった場合の着手金の扱いは業者によって異なるため、契約前に確認する必要がある。

補助金の種類別・推奨アプローチ

「自社か外注か」は、申請する補助金の種類で大半が決まる。

小規模事業者持続化補助金

自社でやることを推奨。商工会議所のサポートを活用する。

中小企業・小規模事業者の販路開拓や業務効率化を支援する補助金で、補助上限額は比較的小さい。事業計画書の要求レベルも、ものづくり補助金と比べると書きやすい部類に入る。

商工会議所の無料サポートを使えば、初回申請でも対応できる可能性が十分ある。有料代行を使う場合、成功報酬が採択額に対して相対的に高くなりやすい(採択額が少額のため)。

まず商工会議所に相談するところから始めることを勧める。

ものづくり補助金

初回は有料代行の活用を検討する価値がある。

中小企業が行う革新的な設備投資・サービス開発を支援する補助金で、補助上限は数百万円〜数千万円(類型による)。事業計画書の要求レベルが高く、審査員が複数の採点項目に沿って評価する。

2026年1月発表の第21次公募で採択率は34.1%だった。倍率が高い競争の中で、計画書の質が採否を分ける。

初めて申請する場合、中小企業診断士や専門の代行サービスに依頼することで、計画書の構成・表現が整う可能性がある。

ただし、重要な点がある。補助金申請において「事業の中身」を外注することはできない。

何をやるか、なぜやるか、何に使うか——これは経営者が自分で考えるしかない。代行業者ができるのは、「経営者が持っている考えを、審査員に伝わる形に整える」ことだ。

「自社の事業内容をヒアリングしながら計画書を作る」プロセスがあるかどうかが、良い代行業者かどうかの判断基準になる。

IT導入補助金

ITベンダー経由が前提のため、個別に代行業者を探す必要はない。

IT導入補助金は、IT導入支援事業者(認定を受けたITベンダー)が申請をサポートする仕組みになっている。自社単独で申請するのではなく、導入するソフトウェア・SaaSのベンダーと共同で進める形だ。

補助金を使いたい場合は、「IT導入補助金に対応していますか?」とベンダーに確認するところから始まる。対応ベンダーであれば、申請手続きを一緒に進めてもらえる。

詳細はIT導入補助金2026|中小企業が使える補助金と申請の流れにまとめた。

省力化補助金(中小企業省力化投資補助金)

省力化・自動化を目的とした機器・ロボット導入に使える補助金で、カタログに掲載されている製品が対象になる。製品メーカー・販売店が申請をサポートするケースが多い。

ものづくり補助金とは対象経費・申請方法が異なる。詳細は中小企業省力化投資補助金2026|バックオフィスの効率化に使う方法を参照してほしい。

自社でやる場合に気をつけること

記入ミス・書類不備

補助金申請は書類の不備があると審査に進めない。記入漏れ・添付漏れは初回申請でとくに起きやすい。提出前に公募要領の「提出書類一覧」と照らし合わせてダブルチェックする作業を省かないことが重要だ。

採択後の手続きが続く

採択通知が来た後も、交付申請・事業実施・実績報告・確認検査の手続きが続く。補助事業期間中にやるべきことを事前に把握しておかないと、後から「これも対応が必要だったのか」という状況になる。

申請の段階で、採択後の流れも合わせて確認しておくことを勧める。

加点項目の取りこぼし

多くの補助金では、特定の要件を満たすと加点される「加点項目」がある。これは申請者が自分で申告する必要があるため、読み飛ばすと取れたはずの点数を落とす。公募要領の加点項目は必ず確認する。

外注先を選ぶ際の確認事項

有料の代行サービスに依頼する場合、以下を事前に確認してほしい。

採択実績の内訳を確認する

「採択率○○%」という数字を提示されることがあるが、「どの補助金を何件対応しての数字か」を確認しないと意味がない。難易度の低い補助金で件数を積み上げているケースもあるため、自社が申請する補助金に絞った実績を聞く。

事業計画書の作成プロセスを確認する

初回のヒアリングで何を聞かれるか、担当者が誰かを確認する。経営者との会話なしに計画書を書くような業者では、事業の実態とずれた書類になりやすい。

不採択時の費用ルールを確認する

成功報酬型であれば不採択時は無料になることが多いが、着手金が発生する場合は返金条件を事前に確認する。

2回目以降は自社対応に切り替えられる

1回目の申請が最も難しい。公募要領の読み方が分からない、計画書の書き方が分からない、書類の収集も初めて——という状態から始まるためだ。

1回目を経験すると、以下が変わる。

  • 公募要領の構造が分かる(どこを読めばいいか分かる)
  • 前回の事業計画書が次回の骨格になる
  • 商工会議所・よろず支援拠点との接点ができる

初回は外注を使って採択を確実にし、2回目以降は自社でやるという選択肢も現実的だ。補助金を継続的に活用したい場合、1回目の外注費用は「仕組みを覚えるための投資」として捉えることができる。

まとめ:補助金の種類で判断が変わる

補助金の種類 推奨アプローチ
小規模事業者持続化補助金 商工会議所の無料サポートを使って自社対応
ものづくり補助金 初回は有料代行を検討。計画の中身は自社で用意
IT導入補助金 ITベンダー経由が前提。個別に代行業者を探す必要なし
省力化補助金 対象機器のメーカー・販売店と連携

「外注すれば採択される」という話ではない。計画書の品質は外注で上げられるが、「何をやるか」という事業の中身は経営者が持っていなければならない。外注するかどうかに関わらず、まず自社の投資計画を明確にすることが先決だ。

外注を検討する場合は、複数の業者に相談し、費用体系と作成プロセスを比較してから決めることを勧める。焦って契約すると、「期待と違った」という結果になりやすい。外注を使う際の失敗パターンは外注で失敗する中小企業の共通パターンと防ぎ方でもまとめているので参考にしてほしい。

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