経理担当者が月に何十時間も費やしている作業のうち、かなりの部分はChatGPTで代替できる。仕訳の確認・請求書の文面作成・取引先への問い合わせ返信・月次レポートのサマリー生成——これらは「考える仕事」ではなく「フォーマットに沿った処理」に近い。
僕は業務効率化に特化したエンジニアとして、複数の中小企業の経理現場を見てきた。その経験から言うと、ChatGPT Plus(月3,000円)を経理に導入することで、月10〜15時間の作業削減は十分に実現可能だ。
この記事では、今日からコピペして使える経理向けプロンプトを15本、用途別にまとめた。
- 仕訳・帳簿整理 5本
- 請求書・支払い対応 4本
- 取引先・社内問い合わせ返信 4本
- 月次レポート・経営報告 2本
使う前に知っておくべきセキュリティ注意点と、よくある失敗パターンも後半でまとめている。
1. ChatGPTを経理業務に使う前に確認すること
セキュリティと機密情報の取り扱い
経理データには顧客名・金額・口座情報が含まれる。ChatGPTに渡す前に以下を確認する。
| 確認事項 | ChatGPT Plus(有料) | 無料版ChatGPT |
|---|---|---|
| 入力データの学習利用 | オフにできる(設定→データコントロール) | デフォルトで学習に使われる可能性あり |
| 機密情報を渡してよいか | 顧客名・口座番号は伏せ字にする | 経理業務には不適 |
| 推奨プラン | ChatGPT Plus(月3,000円)以上 | 経理用途には使わない |
実際に使う際のルール(僕が自社で決めているもの):
- 顧客名は「A社」「B社」と置き換える
- 口座番号は渡さない
- 金額は実数で渡してよい(それ自体に顧客識別情報は含まれないため)
- 会計ソフトのCSVデータをそのままコピペしない
AIを業務で使う際のセキュリティ全般については「AIを業務で使う前に知っておくべきセキュリティの話」にまとめているので、担当者に共有しておくことを勧める。
ChatGPTで「できること」と「できないこと」
| 経理業務 | ChatGPTで可能 | 備考 |
|---|---|---|
| 仕訳の確認・疑問解消 | ◎ | 勘定科目の判断補助に使える |
| 請求書の文面作成 | ◎ | ドラフト作成は5分で完了 |
| 取引先への問い合わせ返信 | ◎ | 下書き → 人が確認で十分 |
| 月次レポートのサマリー | ◎ | 数字を渡すだけで400字まとめが出る |
| 消費税の計算 | ◯ | 最終確認は人間が行う |
| 会計ソフトへの自動入力 | × | API連携が必要(別途構築) |
| 法的判断・税務判断 | × | 税理士に確認が必要 |
| 電子帳簿保存法の要件判断 | △ | 参考情報として使う程度 |
重要なのは「最終確認は人間が行う」という原則だ。ChatGPTはあくまでドラフトと確認補助を担当する。経理担当者が2時間かけていた作業を20分に短縮する、というのが現実的な使い方だ。
2. 仕訳・帳簿整理で使えるプロンプト5選
プロンプト1: 勘定科目の判断
以下の取引について、適切な勘定科目と消費税区分を教えてください。
【取引内容】
(例: コワーキングスペースの月額利用料 5,500円(税込))
回答形式:
- 借方勘定科目・金額
- 貸方勘定科目・金額
- 消費税区分(課税/非課税/不課税)
- 判断の根拠(1行で)
注意: 最終的な判断は担当税理士に確認すること前提で、まず一般的な処理を教えてください。
使い方: 勘定科目が迷う取引が月に10〜20件あるケースで使う。最終確認は税理士に委ねつつ、「最初の仮判断」をChatGPTに出させると処理速度が2〜3倍になる。
プロンプト2: 勘定科目の一括確認
以下の取引リストについて、各行の勘定科目案を提案してください。
【取引リスト】
(Excelからタブ区切りでコピペ: 日付・内容・金額)
出力形式:
日付 | 取引内容 | 金額 | 借方 | 貸方 | 消費税区分 | 備考(不明点)
使い方: 月次の仕訳確認で30件以上の未処理取引がある場合に使う。僕が実際に試した結果、15分かかっていた確認作業が5分に短縮された。
プロンプト3: 経費精算の疑義確認
以下の経費申請について、疑問点・確認すべき点を洗い出してください。
【申請内容】
(申請書のテキストをコピペ)
確認ポイント:
1. 社内規程上の問題になりそな点
2. 消費税処理で注意が必要な点
3. 追加で証憑が必要そうな点
注意: 社内規程の内容を踏まえた場合は別途確認が必要なので、一般的な観点での確認事項を出してください。
プロンプト4: 振替仕訳のチェック
以下の振替仕訳について、借貸が合っているか、勘定科目に問題がないか確認してください。
【仕訳】
(仕訳データを貼り付け)
確認してほしいこと:
- 借方・貸方の合計金額が一致しているか
- 勘定科目が一般的に使われるものか
- 修正が必要な場合は修正案も出してください
プロンプト5: 月次残高のチェックリスト生成
以下の勘定科目残高から、月次決算のチェックリストを作成してください。
【残高一覧】
(主要科目と残高をコピペ)
チェックリストの形式:
□ 確認事項
- 確認方法・ポイント
異常値や「この数字はあり得ない」という点があれば優先的に指摘してください。
3. 請求書・支払い対応で使えるプロンプト4選
プロンプト6: 請求書の督促メール作成
以下の条件で、取引先への支払い督促メールの下書きを作成してください。
【条件】
- 取引先名: ○○社(担当: ○○様)
- 請求金額: ○○円
- 支払期日: ○○月○○日(○○日経過)
- 取引歴: (継続取引○年 or 新規取引)
- 前回の督促有無: (あり/なし)
メールの要件:
- 丁寧かつ明確に
- 言い訳の余地を与えない書き方で
- 返信を促す一文を入れる
- 200字以内
使い方: 1件5〜10分かかっていた督促メールが2分に短縮できる。月5〜10件の未払いがある会社では効果が出やすい。
プロンプト7: 請求書の送付メール作成
以下の条件で、請求書送付メールの文面を作成してください。
【条件】
- 取引先名・担当者名: ○○
- 請求金額: ○○円(税込)
- 請求内容: ○○の提供(対象期間: ○月)
- 支払期日: ○○月末日
- 振込先: 貼り付け不要、末尾に記載と伝える
要件:
- BtoB向け、ビジネス敬語
- 簡潔に(150字程度)
- 確認依頼の一文を入れる
プロンプト8: 支払い条件の交渉メール
以下の状況で、取引先に支払い条件の変更(月末締め翌月末払い → 月末締め当月末払い)をお願いするメールの下書きを作成してください。
【状況】
- 取引先: ○○社(製品・サービスの仕入先)
- 現在の条件: ○○
- 変更したい条件: ○○
- 理由: 資金繰り改善のため(相手に詳細は伝えなくてよい)
要件:
- 相手に不快感を与えないトーン
- 断られた場合の代替案(支払い方法の変更等)も一文添える
- 250字以内
プロンプト9: 支払い遅延の謝罪・報告メール
以下の条件で、自社側の支払い遅延について仕入先への謝罪・報告メールの下書きを作成してください。
【条件】
- 遅延の原因: ○○(例: 担当者の病欠)
- 予定支払日: ○月○日
- 取引先との関係: ○年取引継続
要件:
- 誠実に、言い訳をせずに謝罪
- 確実な支払い日を明記
- 今後の対応策を一文入れる
- 200字以内
4. 取引先・社内問い合わせ返信で使えるプロンプト4選
プロンプト10: 取引先からの請求内容の問い合わせ返信
以下の取引先からの問い合わせに対する返信メールの下書きを作成してください。
【問い合わせ内容】
(受信メールのテキストをコピペ)
【回答すべき内容】
- ○○の根拠は○○
- ○○については○○で対応できる
- 追加資料: ○○を添付予定
要件:
- 丁寧かつ明確に
- 追加質問が生まれないよう、回答は完結に
- 250字以内
プロンプト11: 社内からの経費精算ルール確認への回答
以下の社内からの質問に対する回答メール(または返信コメント)の下書きを作成してください。
【質問】
(社内のチャット・メールをコピペ)
【回答内容】
- 正しい取り扱いは: ○○
- 証憑として必要なもの: ○○
- 期限: ○○
要件:
- 分かりやすく
- ルール違反の場合は角が立たないトーンで修正を促す
- 箇条書きで150字程度
プロンプト12: 税理士・顧問向けの決算データ説明文
以下の決算データの概要を、税理士・顧問向けの説明文(打ち合わせ前のメモ)として整理してください。
【データ】
(主要な科目残高・前期比の変化をコピペ)
整理してほしいこと:
1. 前期からの主な変化点(±10%以上の科目)
2. 確認・説明が必要な事項(3点以内)
3. 今期の特記事項(あれば)
形式: 箇条書き・500字以内
プロンプト13: 社内向け経費精算の締め切りリマインダー
以下の条件で、社内向けの経費精算締め切りリマインダーの文面を作成してください。
【条件】
- 締め切り: ○月○日(○)○時
- 提出方法: ○○(システム名 or メール添付)
- 今月の注意事項: ○○(例: 領収書は5万円以上は原本提出)
要件:
- 親しみやすく、かつ締め切りを強調
- 提出漏れが多い場合は催促感を少し強めに
- 200字以内
5. 月次レポート・経営報告で使えるプロンプト2選
プロンプト14: 月次P/Lの経営者向けサマリー
以下の月次P/Lデータを見て、経営者向けのサマリーを作成してください。
【データ】
(科目・金額・前月比・前年同月比をコピペ)
出力形式:
1. 今月の全体状況(1文)
2. 好調な点(2点)
3. 注意が必要な点(2点)
4. 来月のアクション提案(2点)
5. 全体400字以内・経営者目線(数字の解説より判断を優先)
使い方: 月次決算後に経営会議用資料を作る際、このプロンプトで5分でドラフトが出る。僕が実際に見てきた中では、このサマリー作成で月3〜4時間かかっていた担当者が、1時間以内に完了できるようになった事例がある。
プロンプト15: 経費の異常値レポート
以下の科目別経費データを見て、前月比・前年同月比と比較した異常値(±20%以上の変化)を抽出してください。
【データ】
(科目・今月・先月・前年同月の金額をコピペ)
出力形式:
- 科目名
- 変化率(%)
- 推察される原因(可能な範囲で)
- 要確認フラグ(高/中/低)
想定しない変化があれば、確認すべき質問も添えてください。
6. ChatGPTで経理効率化するコツ
プロンプトは社内でテンプレ化する
上記のプロンプト15本をそのまま使うのではなく、自社のフォーマット・用語に合わせて修正した上で、社内共有ドライブやNotionに保存する。「使うたびに考える」のをやめるだけで、月5〜10時間は削減できる。
「下書き → 確認」のフローで定着させる
ChatGPTの出力をそのまま送らない。必ず1名が確認してから送付・使用するルールを作る。最初から完璧を求めると担当者が疲弊するので、「70点の下書きを30秒で作ってもらい、確認で仕上げる」感覚が丁度いい。
ChatGPT単体で足りない業務(複数システムとの連携・自動化)については「AI-OCRで請求書を自動読み取り|手入力をなくす導入手順とツール比較」も参考になる。
月3,000円で始められるChatGPT Plusの費用対効果
| 構成 | 月コスト | 削減時間/月 | 削減工数換算(時給2,000円) |
|---|---|---|---|
| ChatGPT Plus のみ | 3,000円 | 8〜12時間 | 16,000〜24,000円分 |
| ChatGPT Plus + Claude Pro | 6,000円 | 12〜18時間 | 24,000〜36,000円分 |
| 上記 + AI-OCR(請求書読取) | 15,000〜30,000円 | 20〜30時間 | 40,000〜60,000円分 |
月3,000円で16,000〜24,000円分の工数削減は、費用対効果として十分ペイする。ChatGPT PlusとClaude Proの使い分けについては「ChatGPT・Claude・Geminiの違いと中小企業での使い分け」で詳しく整理している。
7. よくある失敗パターン3選
失敗1: AIの回答をそのまま確定仕訳にする
ChatGPTは一般的な勘定科目の知識は持っているが、自社の会計方針・税務処理の個別事情は反映できない。特に「非課税・不課税・免税の判断」「特殊な業界会計」「法人税や消費税の申告処理」は、税理士の確認が必須だ。
「下書き・確認補助に使う」前提を崩さないことが、唯一の回避策だ。
失敗2: 無料版ChatGPTで経理データを入力する
無料版ChatGPTはデフォルトで入力データが学習に使われる可能性がある。経理データには機密情報が含まれるため、有料版(ChatGPT Plus月3,000円以上)を使い、必ず設定でデータ学習をオフにする。
実際に見てきた中では、「無料で試したが怖くなって使わなくなった」という話が複数ある。最初から有料版で始めることで、セキュリティ面の不安を解消した上で定着させやすくなる。
失敗3: プロンプトを毎回ゼロから書く
「プロンプトを毎回考える」状態では、作業時間の削減効果が出ない。上記15本のテンプレを社内に保存し、コピペして使う運用を最初から設計する。
中小企業のAI導入で失敗するパターン全般については「AI導入の失敗事例から見る経営者の判断ミス5パターン」でまとめているので、経理以外の部門にも横展開する場合は合わせて読んでほしい。
8. FAQ
Q1. ChatGPT Plusは会社のクレジットカードで契約できる?
A. できる。法人名義での契約も可能で、経費計上できる。月3,000円($20相当)で、複数担当者で共有して使う場合はTeamプラン(月2,500円/ユーザー〜)も検討する。
Q2. freeeやマネーフォワードと連携できる?
A. 直接連携はできない(2026年6月時点)。会計ソフトのCSVエクスポート → ChatGPTに貼り付け → 分析・確認の流れが現実的な使い方だ。
Q3. 経理担当が1人しかいない場合、どの業務から始めるのが効果的?
A. 問い合わせ返信と月次レポートサマリーから始めると効果が出やすい。この2業務で月5〜8時間削減できるケースが多い。慣れてきたら仕訳確認補助に広げる。
Q4. 消費税の判断をChatGPTに聞いてもいい?
A. 参考情報として聞くのは問題ない。ただし、最終的な消費税の処理は税理士に確認する。ChatGPTの回答に誤りがあっても、申告の責任は事業者側にある。
Q5. ChatGPT PlusとTeamプランの違いは?
A. 1ユーザーで使うならPlus(月3,000円)で十分。社内で複数人が使う場合はTeamプラン(月2,500円/ユーザー〜)の方が管理しやすい。選び方の詳細は「ChatGPT Teamで足りる会社、AI顧問が必要な会社の違い」を参照。
9. まとめ
経理業務にChatGPTを使うポイントをまとめる。
- ChatGPT Plus(月3,000円)を使う(無料版は経理用途に不適)
- 顧客名・口座情報は伏せ字にする
- 「下書き → 確認」のフローを崩さない
- プロンプトは社内でテンプレ化して保存する
プロンプト15本を用途別に使い分けることで、月10〜15時間の削減が見込める。経理担当者が「作業」に使っている時間を減らし、「判断・確認」に集中できる状態を作るのが目的だ。
経理をもっと大きく変えたい(外注化・AI自動化含め)場合は、「中小企業の経理を外注する手順|準備から導入まで完全ガイド」も参考にしてほしい。
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この記事を書いた人: 野原琉海(株式会社ラズリ代表)。業務効率化に特化したエンジニアとして、自社でAI顧問サービスを運営。