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経理代行で失敗する中小企業の共通パターン5選

「頼んだのに、毎月自分が確認しないと進まない」「最初の見積もりより費用が倍になった」「担当者が変わるたびに、同じ説明を繰り返している」

経理代行を導入した中小企業から、こういった声を聞くことがある。

失敗した後、多くの経営者は「委託先が悪かった」という結論に至る。確かに依頼先の質が原因のこともある。ただ、実際の経緯を整理すると、問題の大半は契約前の確認不足や、依頼の仕方にある。

この記事では、中小企業が経理代行で繰り返しがちな失敗パターンを5つ整理し、それぞれの対策を具体的に書く。

パターン1: 月額は安く見えたが、追加請求で想定の倍になる

経理代行の料金は「月額○万円〜」という表記になっていることが多い。この「〜」の部分に落とし穴がある。

月額料金に含まれるのは、多くの場合「記帳代行(仕訳入力)」のみだ。給与計算、年末調整、決算書の作成、各種税務申告は別途費用になる。

追加費用が発生しやすい業務の目安

業務 別途費用の目安
給与計算(5名) 月額8,000〜15,000円
年末調整(5名) 年間15,000〜30,000円
決算書の作成 年間50,000〜150,000円
補助金・助成金の申請サポート 件数ごと

月額20,000円と聞いて契約したのに、年間で集計したら50万円超えていた、というケースは珍しくない。

対策: 見積もりの段階で「この料金に何が含まれて、何が含まれないか」を一覧で確認する。「年間でかかる全費用の概算を出してほしい」と依頼すると、認識ズレを防げる。

パターン2: 「丸投げ」のつもりが、毎月の情報提供で工数がかかり続ける

「経理代行に頼めば、もう経理の手間はゼロになる」という期待で導入するケースがある。実際はそうならないことが多い。

経理代行が仕事をするには、こちらから毎月データを渡す必要がある。具体的には、通帳の入出金データ、領収書・請求書のデータ、給与情報などだ。これらを揃えて提出するのは経営者や担当者の役割になる。

紙の領収書が多い会社、現金取引が多い業種(飲食、小売など)では、データを整形して渡す手間が思った以上にかかる。「頼んだのに、毎月自分が一番大変」という状況になる。

対策: 契約前に「どのデータをどの形式で、いつまでに提出するか」のフローを具体的に確認する。freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ツールと連携している業者であれば、データ提出の手間を大幅に減らせる可能性がある。

パターン3: 担当者が変わるたびに業務理解がリセットされる

中小企業の経理は、業種によって特殊な処理が必要なことが多い。建設業であれば工事台帳との照合、飲食業であればレジ締めのデータ処理、医療系であれば保険診療の仕訳など。

担当者にこういった業種特有の知識が定着するまでに数ヶ月かかる。そのタイミングで担当者が変わると、また最初から説明が必要になる。

大手の経理代行・記帳代行では、担当者のローテーションが定期的に行われることがある。「また変わった」と感じるたびに、確認や説明のやりとりが増え、経営者の手間が増える。

対策: 契約前に「担当者変更の頻度と、変更時の引継ぎ手順」を確認する。業種特化の経理代行や、担当者固定を前提にしているサービスを選ぶことも有効だ。

パターン4: 税理士との連携で経営者が調整役になる

経理代行と税理士が別会社の場合、両者のやりとりの橋渡しが経営者になることがある。

月次の試算表を税理士に渡す、税理士からの指摘事項を経理代行に伝える、決算前に双方の認識を合わせる——こういった調整が発生する。「外注したのに、なぜ自分が連絡係をやっているのか」という状態だ。

特に決算前後は調整作業が集中する。「経理代行が作ったデータ」と「税理士が求める形式」が合わず、修正に時間がかかるケースもある。

対策: 経理代行と税理士がどのように情報連携するかを、契約前に確認する。「税理士との連携はどのように行うか」「どちらが何の責任を持つか」を明確にする。税理士と提携している経理代行を選ぶか、同じグループ内でサービスが完結している業者を選ぶと、連携コストを減らしやすい。

パターン5: 業務範囲の認識ズレで「それは対応外です」の連発

「経理を全部お願いします」という言葉は、依頼者と受注者で解釈が異なる。

依頼者が思う「全部」: 通帳管理、請求書発行、支払い処理、給与計算、税務申告、補助金のサポートまで

受注者が想定する「全部」: 月次の記帳代行と試算表の作成

この認識ズレが表面化するのは、必要な業務が発生した時だ。「これをお願いしたい」と頼むと「それは対応外です」「追加費用になります」と返ってくる。

業務範囲が曖昧なまま契約すると、発生するたびにこのやりとりが繰り返される。

対策: 契約書または業務定義書に「対応する業務の一覧」を明記してもらう。「何が含まれるか」より「何が含まれないか」の確認が重要だ。自社で発生する可能性がある経理関連業務を事前にリストアップして、それを持参した上で相談すると認識ズレを防ぎやすい。

経理代行の失敗を防ぐ、契約前の確認チェックリスト

5つのパターンに共通しているのは、契約前の確認不足だ。「とりあえず月額が安いところ」で選ぶと、後から認識ズレが表面化する。

以下を契約前に確認する。

費用関連

  • 月額料金に含まれる業務の一覧を書面で確認したか
  • 給与計算・年末調整・決算書作成の費用を確認したか
  • 年間の総費用概算を出してもらったか

業務フロー関連

  • データ提出のフロー(何を、どの形式で、いつまでに)を確認したか
  • クラウド会計ツールとの連携に対応しているか

担当者・引継ぎ関連

  • 担当者変更の頻度と引継ぎ手順を確認したか
  • 業種特有の処理について対応経験があるか

連携関連

  • 税理士との連携方法(誰が何を担当するか)を確認したか
  • 対応範囲外の業務が発生した場合の対処を確認したか

経理代行の費用相場や料金体系については、以下の記事で詳しく解説している。

経理代行の費用を実例で公開|従業員規模別の月額料金まとめ

経理代行と税理士の違いについては、こちらも参考にしてほしい。

経理代行と税理士の違い|どっちに頼むべきか判断基準を解説

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