事務・バックオフィス効率化

中小企業の配送業務を効率化する方法|仕分け・追跡・請求を仕組み化する

配送を本業にしていない中小企業ほど、配送まわりが後回しになりやすい。

製造業なら「営業と製造は仕組み化したけど、出荷まわりはまだ担当者まかせ」。食品卸なら「売上管理は整っているけど、デリバリーはいまだに口頭と記憶で動いている」。こういった状況は珍しくない。

問題が表面化するのは、担当者が急に休んだときか、顧客からクレームが来たときだ。「荷物がまだ届かない」「今月の請求書の件数が実際の配送回数と合わない」——こういったトラブルが起きて初めて、配送まわりが属人化していることに気づく会社は多い。

この記事では、配送が副次的な業務になっている中小企業を対象に、仕分け・ルート管理・追跡・請求の4つを仕組み化するための具体的な方法を整理する。高価なシステムを入れなくても着手できる方法から始めるので、「予算をかけずに改善したい」という会社にも参考になるはずだ。

中小企業の配送現場でよく起きていること

仕組みがない配送業務は、こういった状況になりやすい。

担当者の頭の中に全部ある

配送先リスト、ルートの経験則、得意先との取り決め——これらが担当者の記憶と個人の携帯に保存されている。その担当者が休むと、誰もルートが分からない。有給が取れない、というより「取れる状況じゃない」という職場になっていく。

「今日届きますか?」の電話が来る

顧客から配送状況を確認する電話がかかってくる。担当者は配送中のドライバーに電話して確認し、また折り返す。この3往復が1日に何度も起きている。本来やるべき仕事が止まる。

月末に配送記録と請求書が合わない

納品書は紙で書いてドライバーが持参する。そのコピーが事務所に戻ってきたり来なかったりする。月末に経理が請求書を作ろうとすると、「この顧客、今月何回配送した?」という話になる。

問題の原因は3つの「抜け穴」にある

上記の問題が起きているのは、配送業務に3つの抜け穴があるからだ。

抜け穴1: 注文から配送計画への変換が手作業になっている

注文が入る → 誰がいつ届けるか決める → ルートを組む。このプロセスが全部担当者の頭の中で処理されている。

抜け穴2: 配送中の状況を誰も把握できない

配送が始まったら、ドライバーと連絡が取れない限り状況が分からない。完了したかどうかも、ドライバーが戻るか電話するまで不明だ。

抜け穴3: 配送完了が請求に自動で反映されない

紙の納品書が事務所に戻ってくることを前提にした請求フローになっているため、紙が遅れると請求が遅れる。記録が不正確であれば、そのまま不正確な請求書ができあがる。

4つの業務別:仕組み化の具体策

1. 配送計画の仕組み化

現状の問題: 配送順序を毎回手で考えている。担当者が変わるとルートの品質が下がる。

#### ステップ1: まず配送先をリスト化する

担当者の頭の中にある配送先情報を、Googleスプレッドシートに落とし込む。列は「顧客名・住所・配送頻度・特記事項(時間指定・搬入場所など)」で十分だ。

このリスト自体がすでに「属人化解消の第一歩」になる。担当者が急に休んでも、別の人間が配送に行けるようになる。

#### ステップ2: ルート最適化の選択肢を知っておく

配送件数が増えてきたら、ツールでルートを組む方法も検討する。

  • Googleマップ(無料): スマートフォンで9〜10地点まで経路を組める。マイマップ機能を使えばさらに多くの地点を管理できる。件数が少ない場合はこれで十分。
  • 配送管理クラウドサービス(月額1〜数万円): hacobu(hacobu.jp)などのサービスでは、配送計画・実績管理・ドライバーへの指示出しを一元管理できる。配送件数が週20〜30件を超えてきたら検討の余地がある。

ツールを入れる前に、まずスプレッドシートでリスト化する段階を踏むことを勧める。リストがないと、ツールに何を入力すればいいかも分からない状態になる。

2. 配送追跡の仕組み化

現状の問題: 配送中の状況が分からず、顧客から問い合わせが来るたびに担当者が手を止めている。

#### ステップ1: 配送完了の報告方法を決める

まずドライバーがどうやって「完了」を報告するかを決める。ここが整っていないと、事務所側は常に「たぶんもう届いているはず」という状態になる。

最も手軽な方法は、LINEグループやSlackのチャンネルを使って、配送完了後に写真付きで報告してもらうことだ。「到着写真を投稿する → 完了スタンプを押す」のルールを決めるだけで、事務所側がリアルタイムで状況を把握できるようになる。導入コストはゼロだ。

#### ステップ2: 顧客への通知を仕組み化する

配送完了を毎回手動で連絡している場合、これを整備できる。

  • Googleフォーム+スプレッドシート: ドライバーがフォームから完了報告 → スプレッドシートに自動記録。顧客への連絡は別途必要だが、記録の手入力は不要になる。
  • LINEビジネスアカウント: 配送完了のメッセージを顧客に送る際の標準的な手段として活用できる。
  • 配送管理サービス: hacobuなどでは、配送完了をトリガーにして顧客通知を送る機能を持つものもある。

ここは「完璧な仕組みを最初から作ろうとしない」ことが大切だ。LINEグループで完了報告するだけでも、現状より格段に把握しやすくなる。

3. 仕分け・出荷前管理の仕組み化

現状の問題: 誰に何を出荷するかの確認が口頭や記憶に頼っている。出荷ミス(誤品・数量違い)が発生している。

#### ステップ1: 出荷チェックリストを作る

出荷前に確認するものをチェックリスト化する。「顧客名・商品名・数量・納品書の有無・ドライバー名・出発時刻」の6項目で最低限カバーできる。

紙でもスプレッドシートでもよい。重要なのは、「誰かが確認した記録を残してから荷物が出発する」状態を作ることだ。

#### ステップ2: バーコード確認の導入を検討する(月20件以上の場合)

出荷件数が増えてくると、手書きチェックリストでは限界が出てくる。Zaico(zaico.co.jp)などの在庫・出荷管理ツールでバーコードスキャンによる確認を導入すると、誤出荷を減らせる。zaicoは月額4,000〜10,000円程度のプランから使えるので、出荷ミスが月1件でも発生している会社は費用対効果を計算してみてほしい。

4. 請求と配送の紐付け

現状の問題: 配送完了の記録と請求書作成が連動していないため、請求漏れや金額ミスが発生する。

#### ステップ1: 納品書のデジタル化

紙の納品書をドライバーが持参してサインをもらう方式は、コピーの紛失・記入漏れ・戻りの遅延が起きやすい。

最も手軽な代替はGoogleフォームだ。ドライバーが配送後にフォームから「顧客名・配送日・数量・完了フラグ」を入力する。これだけで事務所側のスプレッドシートに自動的に記録が溜まっていく。電子サインが必要な場合はCloudSign(cloudsign.jp)のような電子契約サービスを使うと、顧客のスマートフォンでサインをもらいデータとして保存できる。

#### ステップ2: 配送記録から請求書を作るフローを決める

配送記録が整ったら、それを請求書に変換するフローを決める。

  • freee・マネーフォワードクラウド(会計ソフト): 配送実績を売上として登録 → 請求書に変換する流れを作る。手動ではあるが、記録さえ整えば漏れがなくなる。
  • スプレッドシートの集計テンプレート: 配送記録を月ごとに集計して請求書に転記するテンプレートを作ればよい。件数が少ない場合はこれで十分だ。

自社配送 vs 外注の判断基準

仕組み化と並行して、「そもそも自社で配送し続けるべきか」を見直すタイミングがある。

2024年4月からトラックドライバーの年間時間外労働の上限規制(年960時間)が適用されており、大手物流会社の配送キャパシティが変化している。外注先が変わったり単価が上がったりしている会社もあるので、配送コストを今一度見直してみることを勧める。

外注を検討すべきサイン

以下に当てはまるものが2つ以上あれば、外注の検討価値がある。

  • ドライバーの採用・管理にコストと手間がかかっている
  • 配送件数が繁閑で大きく変動し、繁忙期に車両が足りなくなる
  • 配送エリアが広域で、自社ドライバーだけでカバーしきれない
  • 担当者が配送以外の業務を兼務しており、配送に十分な時間を使えていない
  • 事故・破損時のリスク管理ができていない

外注先の種類と選び方

外注する場合の選択肢は主に3つある。

軽貨物(個人・スポット向け)

軽バン1台で動く個人事業主ドライバーに依頼する形。1配送あたり数百〜1,500円程度が目安で、スポット対応に向いている。PickGo(pickgo.town)などの配送マッチングサービスを使うと、単発で手配しやすい。

宅配会社(法人契約)

ヤマト運輸・佐川急便・日本郵便の法人契約を結ぶと、単価を抑えられる。重量・サイズ規格に収まる荷物で、追跡・時間指定が必要な場合に向いている。

3PL(物流代行)

在庫保管から出荷・配送までをまとめて代行する形。オープンロジ(openlogi.com)のようなサービスでは、初期費用を抑えて始められる。自社に倉庫を持ちたくない場合や、EC出荷の量が増えてきた場合に選択肢になる。

コスト比較のやり方

自社配送のコストを把握するには、「車両維持費・保険・ドライバー人件費・燃料費」を合計して月の配送件数で割る。この1件あたりのコストを外注の単価と比較することで、どちらが合理的かが見えてくる。コストだけでなく、配送品質(時間指定・丁寧さ・顧客応対)も含めて判断する必要があることは忘れずに。

段階的な進め方(優先順位)

全部を一度に整えようとすると動けなくなる。以下の順番で着手することを勧める。

フェーズ1(今週中): 配送先リストをスプレッドシートで作る

担当者に頼んで、配送先・住所・頻度・注意事項を書き出してもらう。1〜2時間で完成する。これだけで担当者しか知らない状態を脱せる。

フェーズ2(今月中): 配送完了報告の方法を決める

LINEグループでの完了報告でいい。ドライバーと事務所担当者で合意して始めればよい。

フェーズ3(来月以降): 配送記録を請求書作成に活用する

記録が溜まってきたら、それを使って月次請求書を作るフローを決める。freeeやスプレッドシートで対応できる。

フェーズ4(安定してきたら): ツール導入の検討

件数が増えてきたり、ミスが続くようであれば、配送管理クラウドサービスの導入を検討する。

まとめ

配送業務の非効率は、配送を「本業ではない業務」として後回しにしてきた結果だ。大きな問題になる前に、担当者の頭の中にある情報を外に出すことから始めてほしい。

  • まず配送先リストをスプレッドシートでデジタル化する
  • 配送完了の報告方法をLINEで決める
  • 記録と請求を連動させる

この3つだけでも、現状よりずっと安定した配送体制になる。

業務効率化をどこから手をつけていいか迷っている場合は業務効率化は何から始める?最初の一歩を具体的に解説で整理している。外注・ツール・採用の使い分けを整理したい場合は外注・ツール・採用、どれが正解?バックオフィスの人手不足を解消する3つの方法も参考にしてほしい。

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