事務代行・外注

中小企業の採用動画制作費用|外注と自作どちらがいい?

採用動画を作れば応募が増える、という話をよく聞く。

確かにそういうケースもある。ただ、「採用動画を作った」という事実だけでは採用は改善されない。動画を採用サイトに貼っても応募者数が変わらなかった、という会社も実際にたくさん見てきた。

この記事では、採用動画の制作費用の実態と、外注・自作の判断基準を整理する。費用だけでなく、「採用動画で本当に採用が変わるのか」という本質的な問いにも正直に答えていく。業務効率化に特化したエンジニアとして、採用コスト全体を見てきた立場から書く。

採用動画の外注費用の相場

外注で採用動画を作る場合、費用はコンテンツの規模・内容によって大きく変わる。

タイプ 費用の目安 主な内容 向いている会社
シンプル型 10万〜30万円 社員インタビュー1名。固定カメラで撮影 予算が限られており、まず試したい会社
標準型 30万〜80万円 インタビュー複数名+社内環境の紹介。複数シーン撮影 新卒・中途問わず採用を強化したい会社
本格型 80万〜200万円 複数部署への密着取材。演出・ナレーションあり 毎年一定数の採用があり、採用ブランドを作りたい会社
ハイエンド型 200万円〜 ドラマ仕立て、プロ俳優・ナレーター使用 大企業向け。中小企業には不要

中小企業が現実的に検討できるのは、シンプル型か標準型だ。社員インタビューを主体とした動画であれば、30万円前後が一つの目安になる。

ただしこの「30万円」という数字も、制作会社によってかなり差がある。同じ「標準型」でも、都市部の制作会社と地方の制作会社では20万円以上の価格差が出ることも珍しくない。また、「チームやポートフォリオを持つ個人クリエイター」へ依頼する場合は、制作会社の半額以下になるケースもある。クラウドワークスやランサーズでは、採用動画の依頼が5万〜15万円の価格帯で成立していることも多い。

外注費用に影響する主な要素

外注費用が変わる要素は、主に4つだ。

  • 撮影日数: 1日撮影と2日撮影では費用が1.5〜2倍変わることが多い
  • 出演者・撮影場所の数: 3部署・5名が登場する動画は1部署・2名の動画の2〜3倍のコストになる
  • ナレーションの有無: プロのナレーターを使う場合、別途3万〜10万円かかる
  • 動画の尺と編集の複雑さ: 5分を超えると編集費が跳ね上がる。3分以内が費用を抑えやすい

見積もりを取る前に、「何のための動画か」「誰に見せるか」「動画の尺はどのくらいか」の3点を決めておくと、見積もりの精度が上がり比較もしやすくなる。

自作(内製)した場合の費用と時間コスト

スマートフォンのカメラ性能は近年大幅に向上しており、短い採用動画であれば自社で作ることは現実的な選択肢になっている。

方法 機材・ツール費用 社内の時間コスト(目安)
スマホ撮影+無料編集アプリ(CapCut等) 0円 担当者20〜40時間
スマホ撮影+有料編集ソフト(Adobe Premiere等) 月額3,000〜6,000円 担当者20〜40時間
ミラーレスカメラ購入+編集環境整備 初期費用10万〜30万円 担当者30〜60時間
動画制作ツール(Canva動画機能・VEED等) 月額1,500〜3,000円 担当者15〜30時間

自作で気をつけるべきは、費用よりも時間コストだ。

企画・台本作成・撮影セッティング・実際の撮影・編集・修正という工程を全部社内でやると、担当者に20〜60時間の工数がかかる。経験がない場合はさらに時間がかかることもある。

外注のように「まとまった費用が一度に発生する」のではなく、「社内の工数が少しずつ奪われ続ける」という構造になる。この点を理解した上で選ぶ必要がある。

僕が中小企業の採用担当者から聞いた話では、初めて自作した担当者が企画から完成まで「4週間かかった」というケースが複数あった。その担当者の時給換算コストを計算すると、外注30万円の方が安く上がった、という話も実際にある。時間が有限な中小企業では、「費用がかからない」という理由だけで自作を選ぶと、かえってコスト高になる場合がある。

外注と自作の判断基準(比較表)

「外注すべきか、自作でいいか」は、次の5つの観点で判断できる。

判断の観点 外注が有利 自作が有利
採用ターゲット 新卒採用がメイン(動画品質に敏感) 中途採用・地元採用(本物感を重視)
制作頻度 年1〜2本、長期間使う SNS採用用に複数本を継続的に作る
社内スキル 動画編集の経験者がいない 編集できる社員がいる、または育てたい
予算 30万円以上確保できる 10万円以下に抑えたい
スケジュール 公開日が決まっており、品質優先 まず試してみて反応を見てから判断したい

外注が向いているのは「初めて採用動画を作る」「新卒採用で使う」「社内に制作経験者がいない」という状況だ。

自作が向いているのは「SNS採用で量を作りたい」「本物感を出したい」「まず効果を確認してから本格投資したい」というケースだ。

個人的には、中小企業の採用動画で外注が必要になる場面はかなり限定的だと思っている。理由は後の項目で詳しく書く。

採用動画を作る前に決めておくべき3つのこと

採用動画で失敗する会社に共通しているのは、「作ること」が目的になってしまっていることだ。動画が完成した後、採用ページに貼られたまま誰にも見られていないケースを何度も見てきた。

作り始める前に決めておくべきことは次の3つだ。

1. 誰に見せるのか(ターゲットの明確化)

新卒採用なのか、中途採用なのか。どの職種・部署向けか。これによって動画の内容が根本的に変わる。新卒向けなら「会社の雰囲気・先輩との関係性・入社後の変化」が重要だが、中途採用向けなら「具体的な仕事内容・キャリアパス・前職との違い」が重要になる。

「全員向けの動画を1本」作ろうとすると、どのターゲットにも刺さらない動画になりやすい。まずターゲットを1つに絞ることが先決だ。

2. どこで見せるのか(掲載先の確定)

採用サイト、求人媒体、SNS(Instagram・TikTok)、面接前の事前送付など、掲載先によって動画の最適な尺・縦横比が変わる。

YouTubeとInstagramリールでは最適なフォーマットが全く異なる(YouTubeは横型・3分以上が基本、リールは縦型・90秒以内)。作り終わってから「どこに載せよう」と考えるのは最悪のパターンだ。掲載先と動画フォーマットを最初に決めておく。

3. 何を伝えることが最優先か(メッセージの絞り込み)

求職者が採用動画で知りたいのは、「自分がそこで働いている様子が想像できるか」だ。会社紹介・事業説明・製品の強みは求職者が見たいものではない。

「この会社を選んだ理由」「入社前と後でイメージが変わったこと」「仕事で一番きつかった経験と、それを乗り越えた話」のような、人間的なリアリティがある内容が採用動画を最後まで見てもらえるコンテンツになる。台本を読み上げる形式では、見ている側に「作られた感」が伝わってしまう。

この3点が決まっていない状態で外注先に発注すると、制作会社が「よくある採用動画のテンプレ」を提供してくる。結果として、他社と同じような動画が30万円かけて出来上がることになる。

採用動画が効果を出す会社と出ない会社の違い

採用動画を作ったからといって必ず採用が改善されるわけではない。動画を作って応募数が上がった会社には共通点がある。

効果が出る会社の特徴

採用ページ・求人票の文字情報が整っている: 採用動画は「仕上げ」であって、土台ではない。採用ページの文字情報(仕事内容・給与・職場の雰囲気・入社後のキャリア)が整っていないまま動画を作っても、求職者に「この会社の採用動画面白いけど、詳しいことはよく分からない」で終わる。中小企業の採用に強い求人ページの作り方|応募が増える7つのポイントで土台を先に整えることを強くすすめる。

動画の掲載場所と媒体が整っている: Indeed等の求人媒体に動画を埋め込める設定になっていること、SNSのアカウントが整っていることが前提になる。動画があっても、見てもらえる場所がなければ意味がない。

採用動画の活用方法を事前に設計している: 面接前の事前送付、SNSでの投稿スケジュール、採用イベントでの使用など、「作った後の使い方」まで決まっている会社だけが費用対効果を回収できる。

効果が出ない会社のパターン

  • 「他社もやっているから」という理由で作り始める
  • 動画の尺が7〜10分あり、最後まで見る求職者がほとんどいない
  • 台本を読み上げる形式で、社員の本音が伝わらない
  • 完成後の掲載場所・活用方法が決まっていない
  • 採用ページや求人票の文字情報が整っていない状態で動画だけ作る

採用動画は「採用力を底上げするツール」ではなく、「すでにある採用力を増幅させるツール」だ。採用の土台が整っていない状態では、30万円かけた動画でも効果が出ない。

採用動画について、僕が正直に思うこと

業務効率化に特化したエンジニアとして、中小企業の採用まわりのコストと課題に向き合ってきた。採用動画については、正直に言えることがある。

採用動画に30万円かける前にやることがあると思っている。

中小企業で採用がうまくいかない理由を見ると、採用動画の有無が原因になっているケースはほとんどない。問題の大半は次の3点に集約される。

  • 求人票に「何の仕事をするのか」が具体的に書かれていない
  • 採用ページが会社紹介になっており、「応募者の視点」で設計されていない
  • 応募が来ても面接の準備が整っておらず、優秀な候補者を落としている

これらを解決せずに採用動画を作っても、動画はほとんど見られないまま終わる。採用動画が役立つのは、上記の土台が整った後の段階だ。

自作で十分かどうかの判断基準も正直に伝える。

社員1〜2名が自然に話している3分以内のインタビュー動画であれば、スマホ撮影で十分な品質が出せる。iPhoneやAndroidの最新機種のカメラ品質は、5年前のプロ用機材を超えている。編集も現在のアプリは操作が簡単で、初めてでも1〜2日で仕上げられるレベルになっている。

外注が必要になるのは「複数部署に密着した本格的な動画を採用ページの中心コンテンツとして作りたい」「毎年の新卒採用で長期間使う資産にしたい」という場合だけだと思っている。

採用コスト全体を見直したいなら、動画の前に中小企業の採用コストを半分にする方法を確認してほしい。また、動画を見て来た候補者を正しく選ぶ仕組みがなければ意味がない。採用ミスを防ぐ面接の質問リスト|中小企業が繰り返さないための採用基準も並行して整えることをすすめる。

予算別の現実的な選択肢まとめ

まとめとして、予算別に取るべき行動を整理する。

予算 推奨の選択肢 具体的な進め方
0〜10万円 まず自作で試す スマホ+無料アプリで社員インタビュー3分動画を1本作る。採用ページに掲載して反応を確認する
10万〜30万円 自作 or 個人クリエイターへの依頼 自作で複数本作るか、クラウドワークスで個人クリエイターに5万〜15万円で依頼する
30万〜80万円 標準型外注 制作会社2〜3社から見積もりを取り、過去の採用動画の実績を確認してから発注する
80万円以上 本格外注(新卒採用がある場合のみ) 毎年一定数の採用があり、採用ブランドの構築を本格化させるフェーズで検討する

どの予算帯でも共通してすすめるのは、「まず小さく始める」ことだ。採用動画で効果が出るかどうかは実際にやってみないと分からない部分がある。最初から大きな投資をするより、スマホで1本試作して反応を見てから外注に進むかどうかを判断した方がリスクが少ない。

採用活動全体を効率化したい場合は採用業務を効率化したら何が変わるか|Before/Afterで見せるも参考にしてほしい。採用以外の手段で人手不足を補いたい場合は中小企業が副業人材を活用する方法|メリット・デメリットと契約のコツも選択肢の一つになる。

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