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Microsoft 365×Copilotで業務を自動化する方法|部署別活用例

Microsoft 365にCopilotが乗った。

この一文を聞いて「自分の会社でも使えそう」とすぐにイメージできた人は少ないと思う。WordやExcelは使っているが、Copilotを追加することで何が変わるのか、具体的にどの業務に使えるのか、まだ整理されていない会社が多い。

この記事では、Microsoft 365を既に使っている中小企業がCopilot Businessを追加した場合に何が変わるかを、部署別の具体的な使い方と合わせて整理する。料金・導入条件・「使われない問題」の対処法も含めて、導入前に知っておくべきことを一通りカバーする。

Microsoft 365 Copilotには3つのプランがある ー 中小企業が選ぶべきはどれか

Copilotには現時点で3つのプランが存在する。混同しやすいので最初に整理しておく。

Copilot Chat・Copilot Business・Copilot Enterpriseの違い

プラン 料金 対象 特徴
Copilot Chat 無料 M365対象サブスクリプション保有者 ブラウザ経由のAIチャット。社内データへのアクセスは限定的
Copilot Business アドオン追加(後述) 300ユーザー以下の組織 Word・Excel・Teams・Outlook等に直接統合
Copilot Enterprise アドオン追加(後述) 大企業・高度管理が必要な組織 Businessの上位版。テナント内ユーザーが301名以上の場合など

Copilot Chatは追加費用なしで利用できるが、Teams・Outlook・Wordに統合されておらず、各アプリ内での自動化やデータ参照は使えない。日常業務の中にAIを組み込むには、Copilot BusinessかEnterpriseが必要になる。

従業員5〜50人規模の中小企業であれば、ほぼ全ての場合でCopilot Businessが対象になる。

Copilot Businessが中小企業に向いている理由

Copilot Businessは2025年12月に新設されたプランで、情報がまだ古いメディアも多い。中小企業に向いている理由は3つある。

1. 最小1ユーザーから契約できる

全社一括でなく、特定の担当者だけ先に導入して効果を確かめることができる。IT投資のリスクを小さく抑えられる。

2. Enterpriseと機能的にほぼ同等

Word・Excel・PowerPoint・Teams・Outlookへの統合、社内データへの横断参照、Copilot Studioによるカスタムエージェント構築も含まれる。

3. 300ユーザー以下なら追加のライセンス管理が不要

Enterpriseでは必要になる高度なIT管理機能を必要としない。専任IT担当者がいない中小企業でも運用しやすい。

料金と前提条件 ー 導入前に確認する3点

Copilot Businessの料金(2026年時点)

Microsoft公式サイト(2026年5月時点)の情報をそのまま記載する。

契約形態 料金(1ユーザー/月)
年払い(通常価格) ¥3,148
年払い(プロモ価格・2026年6月30日まで) ¥2,698
月払い ¥3,778

プロモ価格は2025年12月1日〜2026年6月30日の期間限定で、新規・既存のMicrosoft 365商用ユーザーどちらも対象になる。ただし適用は初年度のみで、翌年からは通常価格(¥3,148/月)に戻る。導入を検討しているなら期限と初年度後の価格変動も合わせて確認してほしい。

ベースプランとのセット価格も用意されており、例えばMicrosoft 365 Business Standard(¥1,874/月、年払い・Teams含む)にCopilot Businessを追加する場合、セット価格はプロモ適用で¥3,298/ユーザー/月になる(年払い)。

前提として必要なMicrosoft 365プラン

Copilot BusinessはMicrosoft 365単体では動かない。以下のいずれかのベースプランが必要だ。

  • Microsoft 365 Business Basic
  • Microsoft 365 Business Standard
  • Microsoft 365 Business Premium

Copilotだけを契約することはできない。既にこれらのプランを使っていれば、そこにアドオンとして追加する形になる。

Google Workspaceのみで運用している会社は、まずMicrosoft 365に移行するか、両方並行して使う状況になる。その場合のコスト感は別途検討が必要だ。

最大300ユーザーという上限の意味

「300ユーザー以下」というのは、会社の従業員数ではなく、Microsoft 365テナント内でライセンスを割り当てているユーザー数のことだ。

従業員が500人いても、Microsoft 365を使っているのが200人であればCopilot Businessの対象になる。逆に、従業員が50人でも社外パートナーなども含めてテナント内に301人以上のユーザーがいればEnterpriseへの移行が必要になる。自社の状況を確認する際は「ライセンス数」を基準にしてほしい。

部署別 ー Copilotでできる具体的な作業

「Word・Excel・Teamsで使える」という説明では、実際の業務に落とし込みにくい。総務・営業・経理という部署別に整理する。

総務 ー 社内文書・規程・議事録

総務担当者が1人で抱えていることが多い作業に、Copilotは特に効く。

社内文書の叩き台作成(Word)

就業規則の改訂、社内通知、取引先向けの案内文など。「以下の条件を含めた就業規則の改訂版(育児・介護休業法改正対応)の叩き台を作って」というプロンプトで素案を生成できる。法務確認は必ず人間がするが、ゼロから書き起こす時間は大幅に短縮できる。

会議議事録の自動生成(Teams)

Teamsで開催した会議はCopilotが自動で議事録を生成し、アクションアイテムも抽出する。「誰が何をいつまでにやるか」が会議直後に整理された状態でメンバーに共有できる。対面会議には使えないため、Teamsを使っているかどうかがポイントになる。

社内Q&Aへの対応(Copilot Chat / Work IQ)

SharePointや社内ドキュメントに蓄積された情報を参照し、社員からの質問に答える。「この規程はどこに書いてありますか」「入社手続きの書類チェックリストは?」といった繰り返しの質問対応が減る。

営業 ー 提案書・メール・商談メモ

提案書の素案生成(PowerPoint・Word)

過去に作った提案書のデータがSharePoint上にある場合、それを参照しながら新しいプロジェクト向けの提案書の素案を作れる。「A社向けの提案書と同じ構成で、B社向けに変えて」という指示が通る。

メール要約・優先度付け(Outlook)

受信トレイに溜まったメールをCopilotが要約し、返信が必要なものを優先度順に並べる。長い返信スレッドを最初から読まなくても「この会話の要点と、次に必要なアクション」を把握できる。

商談後の議事録・次のアクション整理(Teams)

Web商談をTeamsで行っていれば、議事録と次のアクションが自動で生成される。営業担当者がCRMに入力する情報をそのままCopilotが抽出してくれるイメージだ。

ユーザーサイド株式会社(Microsoft公式の導入事例)では、社員100名規模でCopilot Businessを導入し、「スモールスタートで始めて段階的に展開した」ことが成功要因として挙げられている。

経理・管理部門 ー Excelのデータ処理

データ集計・グラフ生成(Excel)

「この表をもとに月別の売上推移グラフを作って」「この条件でデータをフィルタリングして集計して」という操作をCopilotに指示できる。Excel関数の知識がなくても、やりたいことを日本語で伝えれば実行してくれる。

マクロ・数式の生成(Excel)

定型処理を自動化したい場合、「〇〇の処理をするマクロを作って」と指示するとVBAコードを生成する。エンジニアでなくても定型業務の自動化に踏み込みやすくなる。

重要な注意点: Copilotは会計ソフト(freee・マネーフォワード)との直接連携はできない。Excelに書き出したデータを処理するのがCopilotの守備範囲であり、会計ソフト内の仕訳を自動で処理するといった用途には対応していない。会計ソフトのAI機能とは別物として理解してほしい。

「導入したが使われない」を防ぐ ー 中小企業での定着失敗パターン

Copilotに限らず、AIツールの導入で最も多い失敗は「ライセンスを買ったが誰も使っていない」という状態だ。中小企業では特にこのパターンが起きやすい。

よくある3つの失敗パターン

1. プロンプトが抽象的すぎて期待した出力が出ない

「提案書を作って」では使えない。「A社向け、5ページ、課題→提案→費用の流れで、先月のB社提案書と同じ構成で」という形で指示しないと、一般的すぎる文書が出てくる。Copilotは指示の質に出力の質が直結する。これを知らないまま全社配布すると「使えない」という評判だけが広まる。

2. 用途を決めないまま全社に展開する

「とりあえず全員に使ってみてください」という展開は機能しない。最初から「Teamsの議事録はCopilotで生成する」「Outlookのメール要約はCopilotを使う」という具体的な用途を決めた上で、使い方をセットで伝えないと定着しない。

3. 社内に教えられる人間がいない

CopilotはMicrosoftの製品だが、社員が使いこなすには最初に使い方を教えるフェーズが必要だ。IT担当者が不在の中小企業でよく起きるのが、「ライセンスを渡して終わり」という状態。製品は入ったが活用が始まらない。

スモールスタートで始める手順

  • 1つの部署・1つの用途から始める

例えば「総務担当がTeamsの会議議事録に使う」という用途に限定して試す。効果が出れば横展開する。

  • 使い方をセットで渡す

「この業務でCopilotを使う場合はこのプロンプトを入れてください」という形でプロンプト例を用意して渡す。プロンプトの整備については業務でそのまま使えるプロンプトテンプレート10選が参考になる。

  • 2〜4週間で効果を確認する

定着したかどうかを確認し、「使っていない」場合は理由を把握する。ツールの問題なのか、使い方の問題なのか、そもそも用途が合っていないのかを切り分ける。

  • 横展開は効果が出てから

1つの用途でうまくいってから別の部署・別の用途に広げる。複数の用途を同時に展開すると管理できなくなる。

Copilotが参照できるデータの範囲とセキュリティ

「社内のデータをAIに渡して大丈夫か」という懸念は当然だ。整理しておく。

社内データをどこまで参照するか

Copilotは以下の場所に保存されたデータを横断的に参照できる。

  • Microsoft Teams(チャット・チャンネル・会議録)
  • SharePoint(ファイルサーバー代わりに使っているドキュメント)
  • Outlook(メール・カレンダー)
  • OneDrive(個人ファイル)

ただし、Copilotが参照できるのは「そのユーザーがアクセス権限を持っているデータ」に限られる。Copilotを導入したからといって、見られないはずのデータが見えるようになるわけではない。

裏を返せば、SharePointの権限設計がきちんとされていないと「本来は見せたくない情報がCopilotを経由して見えてしまう」というリスクが発生しうる。これはCopilotの問題ではなく、元々の権限設計の問題がCopilot導入によって顕在化するケースだ。

導入前にやるべき権限整理の手順

Copilotを入れる前に以下の3点を確認してほしい。

1. SharePointのフォルダ権限を部署単位で確認する

「全員がアクセスできるフォルダ」に経理・人事・役員関係の書類が混在していないか確認する。Copilotはそのユーザーが見られるファイルを横断参照するため、アクセス権の設計が甘いとCopilotを通じて意図しない情報が参照される可能性がある。SharePointの管理センターで各フォルダの権限を確認し、不要なアクセスを外しておく。

2. ゲストユーザー(社外パートナー)の扱いを整理する

社外のパートナーやフリーランスをTeamsゲストとして招待している場合、そのゲストのOneDriveはCopilotが参照しないが、共有SharePointサイトは権限次第で参照される。外部とのコラボレーションで使っているフォルダに社内限定情報が混在していないか確認する。

3. OneDriveの個人ファイルを整理する

Copilotは本人のOneDriveも参照できる。個人的なメモや下書き段階の文書が社内横断検索で出てくることがある。「まだ誰にも見せていない状態のファイル」は別フォルダに分けておくと余計な混乱を防げる。

入力データが学習に使われないか

Microsoft公式の表明として、「ユーザーの入力および組織内データは、外部のAIモデルのトレーニングには使用されない」と明記されている。つまり、自社のCopilotに入力した内容が他社のCopilotに影響を与えることはない。

社内の機密情報を扱う業種(医療・法律・金融など)では、追加の規制対応が必要になるケースもある。その場合はMicrosoft Learnのドキュメントや自社の法務・セキュリティ担当と確認してほしい。

AIツールの社内利用ポリシーをまだ整備していない場合は、生成AIの社内利用ポリシーの作り方|情報漏洩を防ぐ社内ルールを先に読んでもらえると、Copilot導入前の整備事項が整理できる。

導入の判断基準 ー 今すぐ始めるべき会社・待つべき会社

全ての中小企業にCopilotが必要かというと、そうではない。判断軸を整理する。

今すぐ始めると効果が出やすい条件

  • TeamsとOutlookを日常業務で使っている

会議・メールのどちらかがTeams/Outlookに集約されていれば、議事録自動生成・メール要約だけでも元が取れる可能性がある。

  • 提案書・報告書・議事録の作成に週3時間以上かかっている担当者がいる

資料作成に時間を取られている担当者がいるなら、最初にその1人に試してもらうのが最も効果を実感しやすい。

  • 社内に使い方を広めてくれる人間が1人いる

全員が一斉に使いこなせるようになる必要はない。1人「Copilotの使い方に詳しい人」を作ることができれば、横展開は後からできる。

  • SharePointやTeamsで社内ドキュメントを管理している

Copilotは社内データを参照してこそ効果を発揮する。ファイルが個人PCのローカルに分散している状態では参照できるデータが限られる。

現時点で見送っていい条件

  • Microsoft 365をほとんど使っていない(Google WorkspaceやBox中心)

Copilot BusinessはMicrosoft 365環境でしか動かない。基盤がないところにCopilotだけ入れても使えない。

  • Teams会議をしていない・Outlookを使っていない

Copilotの最もわかりやすい価値は議事録自動生成とメール要約だ。これらを使っていない環境では効果が出にくい。

  • 社内データがWord/Excel/SharePointに整備されていない

ドキュメントが個人PCのローカルに分散している、Excelの使い方がバラバラといった状態では、Copilotに参照させるデータが整っていない。Copilotを入れる前にデータの整備が必要になる。

まとめ

Microsoft 365 Copilot Businessは、既にTeams・Outlook・Word・Excelを使っている中小企業に対して、それらのアプリの中に直接AIを組み込む追加ライセンスだ。

部署別に整理すると:

  • 総務: 社内文書の叩き台作成・議事録自動生成・Q&A対応
  • 営業: 提案書の素案・メール要約・商談後の整理
  • 経理: Excelのデータ集計・グラフ生成・マクロ作成(会計ソフト連携は対象外)

「全社一斉導入」より「1部署・1用途のスモールスタート」が定着しやすい。まずTeamsの会議議事録に使ってみるだけでも、ゼロから書き起こす時間が減ることを実感できる。

AIツールの社内利用に関するルールや他のツールとの使い分けについては、以下の記事も参考にしてほしい。

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