事務・バックオフィス効率化

業務効率化の効果をどう測るか|中小企業の成果指標の作り方

ツールを導入したり、外注に切り替えたりして数カ月が経ったとき、「なんとなく楽になった気がする」「残業が少し減ったような」という感覚で終わっていないだろうか。

感覚ではなく数字で語れるようにするのが効果測定の目的だが、中小企業では「そもそも導入前のデータを記録していなかった」というケースがほとんどだ。専任の情報システム部門がなく、日常業務の中でどの作業に何時間かけているかを計測していないのが普通だからだ。

この記事では、効率化前のデータがない状態でも使える指標の作り方と、今から始められる記録の仕組みを整理する。

なぜ中小企業は効果測定が難しいのか

効果測定が機能しない理由は3つある。

Before状態のデータがない

効果を測るには比較元が必要だ。「ツール導入後に月10時間削減できた」と言うためには、導入前に月何時間かけていたかが分かっていなければならない。しかし多くの場合、効率化に着手する前の業務時間は記録されていない。「なんとなく大変だった」という記憶しか残っていないことが多い。

担当者が変わると比較できない

「その仕事はAさんが担当していたが退職した」という状況になると、Aさんがかけていた時間を後から確認する術がない。担当者が変われば、同じ作業でも習熟度によってかかる時間は変わるため、純粋な効率化の効果を測れなくなる。

複数の要因が混在する

ツールを導入した時期に業務量が増えた、担当者が変わった、繁忙期と重なったといった要因が混在すると、効率化の効果だけを切り出せなくなる。「ツールを入れたのに残業が減らなかった」という現象が起きるが、その原因がツールにあるのか別要因にあるのかが分からなくなる。

これらの問題を全部解決してから始めようとすると、何も始まらない。まず「今から何を記録するか」を決めることが先決だ。

効果測定の3つの切り口

中小企業での実務では、以下の3つの軸で指標を考えると整理しやすい。

1. 時間の削減

特定の業務にかかる時間がどれだけ変わったかを見る。最もシンプルで使いやすい指標だ。

  • 月次の請求書作成にかかる時間
  • 採用1件あたりの面接日程調整にかかる時間
  • 経費精算の処理にかかる合計時間/月

厳密なタイムトラッキングツールは不要だ。担当者に「先月何時間かかったか」と月1回確認するだけでも継続できる。

2. コストの変化

外注費・残業代・ソフトウェア費用など、金額として把握できるものを比較する。

  • バックオフィス外注化の前後での月額費用の差
  • ツール導入前後での残業代の変化
  • 経理外注に切り替えた場合の月次コスト比較

金額ベースの指標は経営者が直感的に判断しやすく、投資対効果を説明しやすい。

3. 処理量の変化

同じ人数・同じ時間でこなせる業務量が増えているかどうかを見る。時間やコストの変化が見えにくい場合でも、処理量が増えていれば効率化の効果は出ている。

  • 月あたりの請求書発行件数
  • 問い合わせ担当1人が対応できる件数/月
  • 採用担当1人あたりの書類選考件数/日

業務カテゴリ別の指標例

業務の種類によって、測りやすい指標は異なる。以下を参考に自社の状況に合わせて選ぶといい。

経理・事務

指標 測り方
月次締め作業の完了までの日数 月末から何営業日で締まるか
経費精算の承認リードタイム 申請から承認完了までの平均日数
月次の記帳作業にかかる時間 担当者へのヒアリング

経理系では「月次締め作業が何日で終わるか」が最も分かりやすい指標だ。「以前は月末5営業日かかっていたが、今は2営業日で完了している」という変化は、数字として説明しやすい。

採用・労務

指標 測り方
求人票1件の作成にかかる時間 担当者へのヒアリング
面接日程調整のメール往復回数 選考管理表などから確認
入退社手続きのリードタイム 発生から完了までの日数

採用系では「どこに時間が詰まっているか」を先に特定した上で指標を設定すると効果的だ。全体を測ろうとすると記録が煩雑になる。

顧客対応・問い合わせ

指標 測り方
初回返答までの平均時間 問い合わせ受信から最初の返信まで
未対応・放置件数 週次でカウント
担当者1人あたりの対応件数/月 対応記録から集計

顧客対応では「放置件数がゼロになったか」が最初の目標として分かりやすい。件数が少ない段階では、スプレッドシートで手動管理で十分だ。

今からでも始められる記録の仕組み

複雑な仕組みは必要ない。以下の手順で今日から始められる。

手順1: 指標を1〜2個に絞る

欲張って10個の指標を設定すると記録が続かない。まず1つだけ決める。「月次の請求書処理が何時間かかるか」のように、具体的な業務を1つ特定する。

手順2: Googleスプレッドシートに記録表を作る

日付・担当者・数値(時間または件数)の3列だけのシンプルな表で十分だ。毎月1回、5分で更新できる粒度に設計する。フォーマットを凝りすぎない。

手順3: 3カ月分のデータが溜まったら比較する

1カ月では変動要因が多すぎて判断が難しい。3カ月分のデータが揃ってからトレンドを見る。「3カ月連続で改善している」という状態になれば、効率化の効果として説明できるようになる。

効果測定でよくある失敗

指標を設定しすぎる

最初から5つも10つも追いかけようとして、3カ月後に誰も更新しなくなる。最初は2つ以内で始める。

「感覚の記録」を軽視する

定量指標が取れない業務は必ずある。そういう場合でも、担当者のコメントをテキストで残すだけで価値がある。「以前は月末に毎回深夜残業があったが今はない」という記録は、後から見返したときに説得力のある根拠になる。

ベースラインを後から作れると思い込む

「後で遡ればいい」と考えて記録をつけないでいると、数カ月後には比較元のデータがない状態になる。着手すると決めた日から記録を始める。過去のデータが取れない場合は、現時点の状態を「現時点のベースライン」として記録することから始める。

まとめ

業務効率化の効果測定は、緻密なデータ管理よりも継続できる記録の仕組みの方が重要だ。

  • 指標は1〜2個から始める
  • Googleスプレッドシートで記録を続ける
  • 3カ月比較でトレンドを見る

完璧な指標設計を目指すより、今日から1つ記録を始めることの方が価値がある。指標の精度は、続けながら改善すればいい。

どこから効率化に着手するか迷っている場合は業務効率化は何から始める?最初の一歩を具体的に解説を参考にしてほしい。社外の専門家や相談先を探している場合は業務効率化の相談はどこにすればいい?中小企業向けの相談先まとめでまとめている。

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