本音コラム

僕が役に立てる会社と、役に立てない会社

著者: 野原琉海(業務効率化に特化したエンジニア)

業務効率化をどこに相談すればいいか分からない——これが中小企業の経営者から最もよく聞く悩みの一つだ。

商工会議所、民間コンサル、ツールベンダー、フリーランスのエンジニア——選択肢は意外と多い。でも「うちの会社の課題」に合っている相談先が誰なのか判断できないまま放置されていることが多い。

この記事では、業務効率化に特化したエンジニアとして複数の中小企業を支援してきた経験から、「僕が本当に役に立てる会社」と「役に立てない会社」を正直に書く。誇張なし。遠慮なし。合わない会社に入っても双方のメリットがない、という考え方でやっているからだ。

業務効率化の相談先として、僕がどういう立場にいるか

最初に立ち位置を整理しておく。業務効率化の相談先には大きく5種類ある。

相談先 主な強み 費用の目安 向いているケース
よろず支援拠点 無料・全国47都道府県に拠点 無料(公的機関) とりあえず相談したい、方向性を掴みたい
民間コンサル会社 戦略・組織変革 月30〜100万円 経営全般を変えたい、大規模な改革
ツールベンダー 自社ツールの導入支援 初期費用+月額 特定のツールを入れると決まっている
税理士・会計士 経理・税務・申告 月2〜10万円 経理・財務・申告の課題に限定
業務効率化エンジニア(僕) ツール選定+仕組み設計+実装 月5〜15万円 ITに詳しい人が社内にいない、幅広く相談したい

僕の立場を端的に言うと「ITに詳しい人がいない会社の、社外IT担当」だ。ツールを入れるだけでなく、業務フローの再設計から、既存システム同士をつなぐ仕組みの実装まで幅広く担当する。

民間コンサルとの違いは、戦略書を作って終わりではなく実際に手を動かすこと。ツールベンダーとの違いは、特定のツールを売るのが目的ではなく、課題に合ったツールを中立的に選ぶこと。税理士との違いは、経理・税務に限定せず業務全体を対象にすること。

「それぞれの選択肢をもっと詳しく比較したい」という方は業務効率化の相談はどこにすればいい?中小企業向けの相談先まとめを読んでほしい。各相談先の費用・強み・使い分けを整理した。

役に立てる会社のパターンを具体的に書く

経験上、次のどれかに当てはまる会社には実際に動ける。

社内に「IT担当兼務の人」がいる会社

これが最も多い相談パターンだ。「総務の○○さんが、パソコンが得意というだけでIT担当も兼ねている」。こういう状況で、その人の業務負担がどんどん増えていく。本業の総務・事務に加えて、Wi-Fiの不具合対応、ツール選定の相談、社員からの操作質問——全部が1人に集中する。

実際に支援した事例では、総務兼IT担当の社員が週に8〜10時間を「IT対応」に使っていたことが、棚卸しをして初めて分かった。本人も「こんなに使っていたとは思わなかった」と言っていた。

こういう会社に外部のIT相談相手が入ると、兼務担当者を本業に戻せる。月10〜20時間分の「本業外業務」が解消されるケースがある。社員1人の生産性を取り戻すだけで、月5〜10万円の外部費用は十分ペイする計算になる。

事務作業の量が増えているのに、スタッフを増やせない会社

請求書の処理、受注データの入力、月次レポートの作成、問い合わせメールへの返信——こういう作業の量が事業の拡大とともに増えているのに、スタッフを増やせない会社。

スタッフを1人採用すると、採用費・社会保険・設備費を合わせると年間400〜600万円かかる。これを避けるために既存スタッフに無理をさせているか、経営者本人がやっているか、どちらかになる。

実際に支援した事例では、受注から請求書発行までのフローをツールで自動化して月15時間かかっていた作業を月2時間に短縮したケースがある。導入したツールの費用は月8,000円。採用なしで問題が解消した。

このようなツール活用の具体的な事例と選び方については中小企業の業務効率化ツール10選|目的別の選び方ガイドで整理している。

ツールを入れたいが何を選べばいいか分からない会社

「freeeとマネーフォワードのどちらが合っているか」「タスク管理ツールはどれがいいか」「チャットツールは入れた方がいいか」——こういう質問が毎月のように入ってくる。

ツール選定は業務フローを理解していないと正確な判断ができない。ツールベンダーに聞くと当然自社ツールを勧める。独立した立場でアドバイスできる人間が必要になる場面だ。

よくある失敗は「高機能なツールを入れたが現場が使いこなせない」パターン。機能の多さと使いやすさはトレードオフになることが多い。月額が高いから良いツールとは限らない。自社の規模と課題に合ったツールを選ぶことが、導入後の定着率に直結する。

ツール導入で失敗するパターンを具体的に知りたい方はデジタルツール導入で失敗する4つのパターンと対策も参考にしてほしい。現場が使わなくなる理由と対策を整理してある。

業務の全体像が誰にも分かっていない会社

「誰が何をやっているか、社長の自分も全体像を把握できていない」「担当者が辞めたら業務が止まる可能性がある」——こういう状況は中小企業にかなり多い。

属人化の問題は、担当者が辞めてから初めて深刻さに気づくことが多い。辞める前に動いておけば、引き継ぎ期間の混乱を大幅に減らせる。引き継ぎに失敗すると外部から人を呼んで対応することになり、費用と時間が余計にかかる。

業務の棚卸しから始めて、マニュアル化して、仕組みに落とし込む。このプロセスを外から入って一緒にやるのが得意な領域の一つだ。

開発会社に外注したいが、何を頼めばいいか分からない会社

「システムを作りたいが、開発会社にどう説明すればいいか分からない」「見積もりが500万円と言われたが、これは適正なのか判断できない」——このパターンも多い。

開発費用は要件の曖昧さに比例して高くなる傾向がある。「何を作るか」が明確でないまま発注すると、後から追加費用が発生しやすい。発注側が要件を事前に整理しておくだけで、見積もりが3〜4割下がることがある。

こういう場合は、開発会社との間に入って要件を整理したり、見積もりのセカンドオピニオンを出したりできる。

役に立てない会社のパターンと、代わりに向いている手段

「誰でも助けられる」と言うのは嘘だ。合わない会社と仕事をしても双方にデメリットしかない。

状況 僕が向かない理由 代わりに向いている選択肢
社内にエンジニアチームがいる 僕が入る意味がない 社内チームに任せる
事務作業がほぼない 効率化する対象がない 税理士・会計士に依頼
大規模な組織変革がしたい 僕は実行型。戦略コンサルではない 民間コンサルティング会社
大量の開発案件を継続的に作りたい スポット・顧問対応であり、開発専業ではない 開発会社に発注
「業務効率化したい」だけで課題が明確でない 課題を一緒に特定するところから始まる まず自分で業務棚卸しから

エンジニアチームがある会社

CTOとエンジニアチームがいて、技術的な判断が自分たちでできる会社に僕が入っても情報が増えるだけで意思決定が遅くなる可能性がある。僕の価値は「ITに詳しい人がいない環境での社外IT担当」だ。既に詳しい人がいるなら必要ない。

事務作業がほぼない会社

フリーランスが1人でやっている会社で、事務作業といえば年1回の確定申告だけ——こういう場合は税理士に依頼した方が安く、確実だ。「効率化できる対象がそもそもない」状態で相談されても困る。僕がやれることは何もない。

「とりあえず効率化したい」だけの会社

「業務を効率化したい」という意欲は理解できる。ただ「自社の業務で一番時間がかかっている作業は何ですか」という質問に答えられない状態での相談は、課題の特定から始まる。それ自体を否定はしないが、相談に来る前に少し考えてきてもらえるとスムーズだ。

業務効率化は「なんとなく良くなる」ではなく「特定の作業が月○時間減る」という形で初めて成果として見えてくる。具体的な課題がなければ、何も動かせない。

「うちは当てはまるか?」を判断する3つの質問

相談すべきかどうかを自己判断するための質問を3つ挙げる。

質問1: 月に10時間以上かかっている「定型作業」を1つ名前で言えるか

経理処理、レポート作成、問い合わせ対応——月に何時間かかっているか数字で言えるなら、効率化の余地がある。「特に思いつかない」という回答が多いが、本当に「ない」会社はほとんどない。気づいていないだけのケースが大半だ。

業務棚卸しを自分でやるには業務効率化は何から始める?最初の一歩を具体的に解説が参考になる。最初の1時間でできる棚卸し手順を具体的にまとめた。

質問2: 担当者が急に辞めたら1週間止まる業務があるか

あるなら、属人化の問題が存在する。これは効率化以前のリスク管理の問題だ。業務が止まった後の復旧にかかるコストを考えると、事前に対処しておく方が圧倒的に安上がりだ。

質問3: 「あのツール使ってみようかな」と思ったことが過去1年に3回以上あるか

あるなら、ツール選定の判断基準が持てていない可能性が高い。「とりあえず試してみる→使わなくなる」のサイクルを繰り返すより、1回きちんと整理した方が時間もお金も節約できる。

この3つのうち1つでも「ある」が当てはまるなら、外部のサポートを入れると何かが変わる可能性が高い。

相談前に準備しておくと話が速くなること

相談する前に情報を整理しておくと、初回の対話が無駄なく進む。準備してきてくれた会社は初回から具体的な話ができる。逆に、何も整理していない状態だと最初の1時間を「状況を把握するための質問」に使うことになる。

準備項目 なぜ必要か
月に10時間以上かかっている作業を3つ書き出す 課題の優先順位が決まる
現在使っているツール一覧(無料・有料含む)を出す ツールの重複や抜けが一目で分かる
「直近で一番困った場面」を1つだけ具体的に書く 何を最初に動かすかが決まる
社員が何人いて、誰が何の作業をしているかを大まかに書く 全体像を最初から把握できる
月額で払っているサービスの費用合計を出す コスト削減余地が見えてくる

5つ全部揃っていなくても構わない。ただ、1〜3番目の3つだけでも用意してもらえると、初回で「次に何をするか」まで話が進む。

外注かツールか内製かを迷っている場合の判断基準についてはバックオフィスを丸投げしたい中小企業へ|依頼範囲と費用の目安も参考にしてほしい。

実際に支援した事例(3パターン)

抽象論だけでは伝わりにくいので、実際に支援してきた事例を3つ紹介する。

ケース1: 従業員12人の製造業

課題: 月次の売上・原価レポートをExcelで手作業でまとめるのに毎月8時間かかっていた。集計ミスも月に1〜2回発生していた。

対応: 基幹システムのデータをBIツールに自動取り込みする仕組みを構築した。ツールの月額費用は6,000円。8時間かかっていた作業が30分に短縮された。集計ミスもゼロになった。

ポイント: 「レポートを速くしたい」という課題が最初から明確だったため、方針がブレなかった。何を解決するかが具体的なほど、解決策も具体的になる。

ケース2: 従業員7人のサービス業

課題: 問い合わせフォームへの返信を担当者が手動でやっており、1日平均2時間かかっていた。返信漏れも月3〜4件発生していた。

対応: よくある問い合わせのパターンを15種類に分類し、ChatGPTを使った返信下書きの自動生成を実装した。担当者が内容を確認して送信する形にした。作業時間が1日30分に短縮、返信漏れはゼロになった。

ポイント: 「完全自動化」ではなく「担当者が確認して送る」にとどめたことで、品質を担保しながら時間を削減できた。完全自動化を目指すより、人が確認するステップを残した方が現場に受け入れられやすい。

ケース3: 従業員3人の小売業

課題: 受注→在庫確認→請求書発行を3つの別システムでそれぞれ手動でやっていた。月30件の受注で毎月4時間かかっていた。

対応: 3つのシステムをZapierで連携させ、受注が入ったら自動で在庫確認と請求書発行が走る仕組みを構築した。Zapierの費用は月4,000円。4時間かかっていた作業が15分になった。

ポイント: 新しいシステムは一切導入せず、既存の3つをつなぐだけで解決した。新しいツールを入れるより、既存のものをつなぐ方がコストも学習コストも低く済むケースがある。

まとめ

改めて整理する。

役に立てる 役に立てない
社内にITに詳しい人がいない(or 兼務で負担が大きい) 社内にエンジニアチームがいる
月10時間以上の定型事務作業がある 事務作業がほぼない
ツール選定で3ヶ月以上迷っている 技術的な判断が自分たちでできる
担当者に業務が集中している(属人化がある) 大規模な組織変革・戦略策定がしたい
開発外注の要件整理で困っている 大量の継続開発案件がある
月5〜15万円で相談できる外部の視点がほしい 無料で相談したい(よろず支援拠点が向いている)

合わない会社に無理に入っても意味がない。「自社に向いているか、向いていないか」を先に正直に判断する方が双方のためになる。

「役に立てる側に当てはまりそう」と思ったなら、まず自社の業務で一番時間のかかっている作業を1つだけ具体的に書き出してみてほしい。そこから始めると話が速い。

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