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ChatGPTを中小企業の業務でどう使うか|部署別の実用例10選

著者:野原琉海(業務効率化に特化したエンジニア)

「試してみたけど、使い方がよく分からなくて今は開いていない」——こういう話を中小企業の経営者からよく聞く。

ChatGPTを個人で試す分には直感的に使える。ところが「会社の業務」となった途端に「何から手をつければいいか」が見えなくなる。使えそうな気はするが、どの業務に、どういう形で組み込めばいいのか分からない。

この記事では、中小企業の部署別にChatGPTの実用例を10個まとめた。経理・総務・営業・採用、そして経営者本人の使い方まで整理する。全部一気にやる必要はない。自社に当てはまる部署から1つ試すだけでいい。

まず「どのプランを使うか」を決める

ChatGPTには複数のプランがある。「全員に展開しよう」と言っても、プランが違えばできることが違う。最初に整理しておく。

プラン 月額費用(1人あたり) 主な制限・特徴 中小企業での使い方
無料版 0円 GPT-4oが使えるが回数制限あり。会話の学習に使われる 個人で試すだけなら十分。業務データは入力しない
Plus 約3,000円(20ドル程度) GPT-4oが無制限。アップロード・画像分析・コード実行が使える 経営者1人が使うなら最初はここ
Team(Business) 約3,800円〜/人(年払い・2人以上から) 会話データがOpenAIの学習に使われない。管理コンソール付き 複数人で使い始めるタイミングで移行
Enterprise 要見積もり SSO・API統合・カスタム設定 50人以上の大企業向け

※料金はドル建てのため為替により変動する。最新の正確な料金はOpenAI公式サイトで確認すること。

従業員5〜20人の中小企業であれば、最初はPlusを1アカウント契約して経営者か事務担当が使い始めるのが現実的だ。月3,000円程度で始められる。「全社展開」は一旦置いておいて、1人が日常的に使える状態を作ることが先決だ。

業務データを扱う場合、無料版はOpenAIの学習データに使われる可能性があるため避けた方が良い。顧客情報・売上データ・採用情報などを入力するなら、TeamプランかEnterpriseを使うこと。

経理部門の活用例(3選)

経理は「文章を書く・確認する」業務が多く、ChatGPTとの相性が最も良い部署の1つだ。

1. 仕訳の勘定科目を確認する

会計ソフトに入力する前の「これ何費で落とすんだっけ?」という確認作業は、意外と時間がかかる。調べてもどの本にも明確に書いていないケースもある。ChatGPTにその場で聞けば、候補の勘定科目と根拠を即座に返してくれる。

プロンプト例


先月、社員の出張先ホテルの駐車場代を会社のカードで払いました。
勘定科目は何費になりますか?根拠も教えてください。

ただし、ChatGPTの回答はあくまで参考情報として扱うこと。最終的な判断は経理担当者または税理士が行うのが前提だ。「調べるのが速くなるツール」として使う位置づけが正しい。

2. 月次報告のコメント文を生成する

月次の数字をまとめた後、「経営者向けのコメント文」を書くのが面倒だという経理担当者は多い。「前月比5%増」という数字はあるが、それをどう文章にすればいいかで手が止まる。

プロンプト例


今月の売上が前月比5%増、経費は前月並み、利益率が0.5ポイント上昇しました。
経営者に報告するための月次コメント文を3行で作ってください。

叩き台ができれば、実際の修正作業は数分で終わる。ゼロから書き始めるより格段に速い。月次報告を1件仕上げる時間が30分から5分に短縮できる感覚がある。

3. 支払い明細・社外文書の文言チェック

取引先に送る請求書や支払い依頼メールの文章を、ChatGPTに読ませてチェックさせる使い方がある。誤字・金額の表記ゆれ・不自然な日本語を指摘させるだけで、確認ミスが減る。特に慣れていないスタッフが文書を作る場合に、最終確認の補助として使いやすい。

経理業務での具体的なプロンプトをもっと知りたい場合は、経理業務で使えるChatGPTプロンプト集15選|仕訳・請求・問い合わせ対応にまとめている。

総務部門の活用例(2選)

総務は「既存の文章を整える・案内文を作る」業務が多い。ChatGPTが最も力を発揮する使い方だ。

4. 社内規程・マニュアルの文章整備

規程類は「以前の担当者が書いたまま放置されている」ことが多い。日本語が分かりにくい、箇条書きが混在している、改訂前の情報が残っている——そういった文書はどの会社にも必ずある。

プロンプト例


以下は当社の有給休暇に関する社内規程です。
箇条書きと見出しを使って、新入社員でも理解できる形に整理してください。
(元の規程テキストをここに貼り付ける)

「構造はChatGPTが整える、内容の正確性は担当者が確認する」という分担で使うのが現実的だ。全部書き直すのではなく、読みやすさの改善に絞ってChatGPTを使う。

適した用途

  • 社内規程の平易化・構造見直し
  • 業務マニュアルの再整理
  • 社内FAQの文章整備

5. 社内アナウンス・案内文の作成

オフィス移転・人事異動・規程変更・勤怠システムの切り替えなど、社内向けの案内文を毎回ゼロから書く必要はない。伝えたい内容の箇条書きを入力するだけで、丁寧な案内文の形に仕上げてくれる。

プロンプト例


以下の情報を元に、全社員向けの案内メールを作ってください。
・来月1日からクラウド勤怠システムに切り替えます
・紙の出勤簿は廃止になります
・操作説明会を今月25日に実施します
・不明点は総務まで連絡

案内文を書くのが苦手なスタッフでも、伝えるべき情報を箇条書きにできれば文章化できる。社内コミュニケーションの品質が担当者の文章力に左右されなくなる。

営業・販売部門の活用例(2選)

営業は「文章量が多い・繰り返し作業が多い」部署だ。提案書・メール・返信文のどれも、ChatGPTで時間を大幅に削減できる。

6. 提案書の初稿を短時間で作る

営業担当が顧客訪問後に提案書を作るとき、最初の構成案を出させる使い方が効果的だ。顧客の課題と自社サービスの情報を入力すると、提案書の骨格を作ってくれる。

プロンプト例


顧客情報: 従業員30人の製造業。課題は経理の属人化と月次決算の遅れ。
自社サービス: 経理代行と業務フロー整備の支援。
この顧客向けの提案書アウトラインを作ってください。

ゼロから構成を考える作業が省けるため、提案書1本あたりの作成時間が短縮できる。慣れると、構成案を考えるのに使っていた30〜60分が5〜10分に縮まる。完成した提案書を自動生成するのではなく、「構成を考える時間を省く」という使い方が現実的だ。

営業で使えるプロンプト例をまとめた記事は、営業で使えるChatGPTプロンプト集12選|メール・提案・ロープレで読める。

7. 問い合わせへの返信文案を作る

新規問い合わせや既存顧客からの質問への返信も、叩き台を作らせると速い。「丁寧に断る」「追加情報を求める」「商談のアポを取る」など、目的別にテンプレを用意させておくと、担当者が文章力に関係なく一定品質の返信ができる。

採用・人事部門の活用例(2選)

採用業務は「求人票・評価メモ・連絡文書」と文章仕事が集中している。手間のかかる部分をChatGPTに任せることで、本来の「人を見る」仕事に集中できる。

8. 求人票の改善案を出させる

「なぜかうちの求人に応募が来ない」という悩みを持つ中小企業は多い。採用コンサルに相談する前に、まず自社の求人文をChatGPTに見せてみるだけで十分な場合もある。

プロンプト例


以下は当社の求人票です。
求職者目線で読みにくい部分と、具体的な改善案を5点教えてください。
(求人票をそのまま貼り付ける)

読んでみると「確かにここは分かりにくい」という気づきがあることが多い。費用をかけずに求人票の質を上げるための最初のステップとして使えるツールだ。

9. 面接後のメモを構造化する

面接終了後に「気になった点」「確認したこと」「印象」をそのまま箇条書きで入力すると、構造化された評価メモに整えてくれる。

プロンプト例


以下は面接後のメモです。
「スキル面」「コミュニケーション」「懸念点」「総合印象」の4項目に分けて
整理してください。
(面接メモをそのまま貼り付ける)

面接ごとにメモの形式がバラバラだと後で候補者を比較しにくい。ChatGPTを使うことでフォーマットが統一され、3人以上の候補者を横並びで比較する際の判断がしやすくなる。面接担当が変わったときの引き継ぎにも使える。

経営者本人が使う活用例(1選)

10. 会議メモ・報告書を要約・整理する

経営者が参加した会議のメモや、部下から受け取った報告書を要約・整理させる使い方は、時間対効果が高い。

プロンプト例


この会議メモから、以下の3項目を箇条書きで整理してください。
①今日決まったこと
②誰かの宿題になったこと(誰が・何を・いつまで)
③次回に持ち越す懸案事項
(メモをそのまま貼り付ける)

散らかったメモが1〜2分で構造化された議事録になる。経営者が毎回これをやると、「あのときの決定は何だったっけ」という確認連絡が減り、チーム全体の情報共有コストが下がる。月に数回の経営会議で習慣化すると、3ヶ月後には「誰が何を決めたか」のログが自然に蓄積される。

会議・議事録に特化したプロンプト集は、議事録作成のChatGPTプロンプト集|コピペで使える8パターンでまとめている。

どの部署から始めるかの優先順位

「全部署に展開しよう」と言うと誰も動かなくなる。まず1つの部署、1つの業務に絞るのが正解だ。優先順位の判断基準を整理した。

部署 効果が出やすい業務 難易度 最初に試すべきか
経理 勘定科目確認・月次コメント文 低い 最初の候補
総務 案内文作成・マニュアル整理 低い 最初の候補
営業 返信文案・提案書アウトライン 中程度 経理・総務の次
採用 求人票改善・面接メモ整理 中程度 採用課題がある会社は早めでも良い
経営者 会議メモ要約・報告書要約 低い 経営者が試したいなら最初でもOK

従業員5〜30人規模の中小企業であれば、経理か総務から始めるのが現実的だ。この2部署は「文章を書く・整理する・確認する」仕事の密度が高く、ChatGPTの効果が出やすい。

「どの業務から効率化するか判断できない」という段階なら、業務効率化は何から始める?最初の一歩を具体的に解説も参考にしてほしい。

定着しない会社に共通する3つのパターンと対策

ChatGPTを導入しても「結局使われなくなった」という話は珍しくない。3つの失敗パターンとその対策を整理した。

パターン 起きやすい状況 具体的な対策
用途が「とりあえず試す」から先に進まない 「何かに使えるはず」という状態で社内展開する 「○○部署の△△業務に使う」と業務単位で限定してから始める
使う人が固定されていない 「ITが得意な人だけが使っている」状態 1つの業務フローに組み込んで全担当者が使う仕組みを作る
期待値がズレている 「完璧な答えを出してくれるはず」という前提で使い始める 「叩き台を作るツール」と位置づける。完成品ではなく素材として使う
セキュリティへの不安で止まる 「個人情報を入れても大丈夫か分からない」 業務データを扱う場合はTeamプランを使う。無料版は社外秘情報を入れない

特に多いのが「用途が具体的でないまま全社展開しようとするパターン」だ。デジタルツール導入で失敗する4つのパターンと対策でも書いたが、ツール選定や方針だけ決めて現場の業務が変わらないまま費用だけかさむ事態は頻繁に起きている。

もう1つ、僕が現場で見てきた中で地味に多いのが「ChatGPTは完成品を出してくれるもの」という期待値のズレだ。返ってきた文章が少し違うだけで「使えない」と判断して使わなくなる人がいる。ChatGPTは「下書きを5分で作るツール」であって「完成品を作るツール」ではない。この認識のズレを最初に修正しておくかどうかで、定着率が大きく変わる。

実際にジムフリで使っている話

業務効率化に特化したエンジニアとして、自社でもChatGPTを日常的に使っている。

月間30本のSEO記事を制作しているが、記事の構成案づくりにChatGPTを使っている。記事全文を書かせるのではなく、「この記事で伝えるべき内容の骨格」を短時間で出させるのが目的だ。構成案だけを出させて実際の文章は自分で書くスタイルにしてから、1本あたりの制作時間が大幅に短縮された。

あと、顧問先の会社で「メール返信の速度」が課題になっていた事例がある。1日に来るメールが40〜50件あり、返信に2〜3時間かかっていた。返信パターンを10種類用意して、それをChatGPTに叩き台として生成させる運用に変えた結果、返信にかかる時間が1時間以内に縮んだ。ツールを入れたのではなく「ChatGPTを使う返信フローを設計した」のがポイントだ。

一般論として「中小企業はとにかくChatGPTを全社員に使わせましょう」という記事をよく見る。僕の意見は少し違う。従業員5〜15人規模の会社なら、全員に使わせるよりも経営者・事務担当の2〜3人が日常的に使える状態を作る方が、費用対効果は高い。全員への展開は、その2〜3人が「これは便利だ」と実感した後で考えれば十分だ。「全社展開」という言葉が先行すると、ハードルが上がってかえって誰も使わなくなる。小さく始めて、効果が出た業務を周囲に広げていく順番が現実的だ。

まとめ:1部署1業務から始める

ChatGPTを中小企業で使うなら、部署別に優先順位をつけて始めるのが現実的だ。

  • 最初に試すなら経理か総務(文章を扱う業務が多いため効果が出やすい)
  • プランはPlusから始める(月2,000円、1人が試すには十分)
  • 期待値は「叩き台を作るツール」に設定する。完成品ではない
  • 全社展開は後回し。まず2〜3人が日常的に使える状態を作る

この順番で試すと、「使い方が分からない」から「日常的に使っている」への移行がスムーズになる。

ChatGPT以外のAIツールとの使い分けは、ChatGPT・Claude・Geminiの違いと中小企業での使い分けにまとめている。「ChatGPTで十分かどうか」を判断する際に役立つはずだ。

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