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見積もり作成をAIで自動化する具体的な手順【中小企業向け】

先日、業務改善の相談をいただいた会社を訪問したとき、営業担当の方がExcelに向かいながら黙々と作業をしていた。何をしているか聞くと、「見積もりです」という返答。

1件の見積もりを作るのに40分ほどかかっているという。忙しい日には問い合わせが3〜4件来ることもあって、午後の半分が見積もり作業で潰れることもあると話してくれた。

「毎回ほぼ同じ内容なんですけどね」という一言が印象的だった。

毎回ほぼ同じ内容なら、AIを使えばほとんどの手間を省ける。この記事では、見積もり作成にAIを使う具体的な手順を説明する。

見積もり作業に時間がかかる本当の理由

「担当者の頭の中」が最大のボトルネック

見積もり作成に時間がかかる理由は、単純に「作業量が多いから」ではない。

多くの場合、ボトルネックは価格の根拠がベテラン担当者の頭の中にある点にある。「この条件ならこの価格」という判断基準がどこにも文書化されていない。だから本人でないと対応できず、本人がいない日は見積もりが止まる。

加えて、フォーマットが担当者ごとに微妙に違っていたり、価格改定があっても全員のテンプレートが更新されなかったりというケースも多い。「ほぼ同じ内容」なのに、毎回ゼロから作っている状態が続く。

見積もりが属人化すると何が困るか

担当者に依存した見積もり体制には、いくつかのリスクがある。

まず、担当者が休んだり辞めたりしたときに止まる。見積もりは受注の入口なので、ここが止まると売上に直結する。

次に、対応スピードが落ちる。他社より1日遅れて見積もりを出した結果、競合に取られるという話はよく聞く。

そして価格ブレのリスクがある。担当者によって条件の解釈が違い、同じ案件で違う金額が出てしまうことがある。

これらは全部、「見積もり業務の属人化」から来ている問題だ。AIを使う目的は時短だけでなく、この属人化を解消することにもある。

AIで自動化できる部分とできない部分

AIが得意なこと

  • フォーマットへの情報の流し込み(顧客名・品目・数量・金額・納期を定形テンプレートに入れる)
  • 条件から下書きテキストを生成すること(「A社向け、品目○○、数量○個」という情報から見積もり文を作る)
  • 過去の類似案件を参照して価格帯を提示すること
  • 備考欄・注意事項の定型文を補完すること

AIが苦手なこと

ただし、正直に言うと「AIに全部任せる」という方向性は勧めていない。

見積もりは取引の入口だ。ここに間違いがあると、受注後まで尾を引く。「AIが出した金額だから合ってるはず」という油断が一番危ない。

ChatGPTに見積もりを出させると、消費税の計算を間違えることがある。内税か外税かを指定しないと、どちらで計算したか分からない結果が出てくる。業種によっては税率が複数あることもある。こういう細部は人間が確認しないと事故になる。

僕がおすすめしている使い方は「AIに初稿を出させて、自分が確認担当になる」という役割分担だ。初稿を作るコストをほぼゼロにして、確認と送付だけ人間がやる。これが現実的で安全な自動化の形だと思っている。

今日からできる4つの手順

Step 1 — 自社情報をChatGPTのカスタム指示に登録する

ChatGPTには「カスタム指示」という機能がある。ここに自社の基本情報を登録しておくと、毎回説明しなくてよくなる。

登録しておくべき情報は以下の通り。

  • 会社名・屋号・担当者名
  • 主要商品・サービスの名称と標準単価
  • よく使う支払い条件(○日以内・銀行振込等)
  • 見積もり有効期限(「発行日から30日」など)
  • 備考欄に毎回入れる定型文

所要時間は5〜10分。カスタム指示機能は無料版でも利用でき、設定は会話をまたいで保持される。ただし無料版は使えるモデルの性能や利用回数に制限がある。本格的に使いたい場合はChatGPT Plus(月約3,000円、支払い方法・為替によって変動)が使いやすい。

セキュリティについても触れておく。ChatGPTではアカウント設定の「データコントロール」からデータ学習をオフにできる。デフォルトではオンになっているため、気になる場合は設定画面から確認・無効化しておく必要がある。ただし後述するが、設定にかかわらず顧客の個人情報はそのまま入力しないほうがいい。

Step 2 — プロンプトのテンプレートを1本作る

次に、見積もりを作るたびに使い回せるプロンプトを1本作る。

フォーマットの例はこうなる。


以下の案件情報をもとに、見積書の下書きを作ってください。

【顧客名】
【品目・内容】
【数量・単位】
【単価・金額】
【納期・対応期間】
【特記事項】

出力形式:見積書の文面として読める形で、品目一覧・合計金額・支払い条件を含めてください。
消費税の計算は外税(消費税10%)で行ってください。

このプロンプトをNotionやメモアプリに保存しておく。問い合わせが来たら、項目を埋めてChatGPTに貼り付けるだけで下書きが出てくる。

最初の1週間で僕がやらかしたのは、プロンプトを毎回一から書いていたことだ。これではほとんど時短にならない。プロンプトは1回作ったら使い回す前提で設計するのが正しい。

Step 3 — AIの出力を「初稿」として扱う確認フローを決める

AIが出した見積書の下書きを「そのまま送る」ことは絶対にしない。必ず確認のステップを入れる。

最低限チェックすべき項目は以下の通り。

  • 金額の計算が合っているか(単価×数量×消費税)
  • 顧客名・担当者名のスペルミスがないか
  • 納期・対応期間が実現可能な内容か
  • 自社として確約できない条件が含まれていないか

この確認作業自体は3〜5分もあれば終わる。「AIが出したから正しい」という前提で確認を省くのではなく、「AIが初稿を作り、自分が確認してから送る」という運用を明確に決めておく必要がある。

複数名で見積もりを出す会社なら、社内ルールとして確認者を決めておくといい。「ChatGPTの出力に最終判断を押す人間を置く」という設計が、ミスを防ぐ上で最も重要なポイントだ。

Step 4 — 過去の見積もりをGPTsに読み込ませる(応用編)

ここからは応用の話なので、まずはStep 1〜3を定着させてからでいい。

ChatGPTにはGPTsという機能があり、自社の書類やデータをAIのナレッジとして読み込ませることができる。無料版でも一部利用できるが、制限が少なく本格的に使うにはPlusが必要になる。過去の見積書PDFや価格表を登録しておくと、「この規模・条件の案件なら、過去の案件ではこの価格帯で出していた」という参照ができるようになる。

価格判断の根拠をAIに学習させることで、「担当者の頭の中にある価格ロジック」をAIで代替する仕組みになる。

ただし、顧客の会社名や個人情報が含まれたまま過去の見積書をアップロードするのは避けてほしい。顧客情報を案件番号や仮名に置き換えてからアップロードする運用にするべきだ。

やりがちな失敗と対処法

顧客情報をそのままChatGPTに貼り付ける

一番やってはいけないのはこれだ。

「株式会社○○の田中様から問い合わせがあり、条件は…」という形でそのまま貼り付けると、顧客の個人情報や取引情報をAIに送信することになる。ChatGPTのプライバシー設定でデータ学習をオフにしていても、「社内の機密情報を外部サービスに送信する」という事実自体が問題になるケースがある。

対処法は単純で、顧客名を「A社様」「案件001」のように置き換えてからプロンプトに入力する。見積もりの出力が出たら、最終的に正しい顧客名に差し替えればいい。

プロンプトを毎回一から書いている

「ChatGPTで見積もりを作ってみた」という段階の人がよくやるパターン。毎回ゼロからプロンプトを書いていると、作業時間がほとんど変わらない。

プロンプトは1本作って、NotionやメモアプリにStep 2のテンプレートとして保存する。後は案件情報の部分だけ書き換えて貼り付けるだけで動く。

AIの出力をそのまま送ってしまう

「AIが作ったから大丈夫」という思い込みで確認を省いたところ、消費税の計算が間違っていた、というケースを実際に聞いたことがある。

見積もりは取引の入口だ。ここでミスが出ると、後から修正するのが難しくなる。「AI初稿を確認してから送る」というフローを社内ルールとして明文化しておく必要がある。

導入後に変わること

正直に言うと、魔法のように全部解決するわけではない。

ただ、実際に使い始めると変わることがある。

一番変わるのは見積もりを出すまでの心理的コストだ。「また一から作るのか」という面倒な気持ちが減る。問い合わせが来たとき、「今日は忙しいから明日でいい」という判断が減り、その日のうちに返せることが増える。

競合より1日早く見積もりを出すと、受注確率が変わることがある。「早く動ける会社だ」という印象は、価格以外の信頼につながる。

また、担当者不在でも対応できるようになる。見積もりを出すための情報がプロンプトに整理されていれば、他のスタッフでも同じ品質の下書きが作れる。「自分しか対応できない」という状態からは抜け出せる。

「見積もりの自動化」というと大げさに聞こえるかもしれないが、実態はプロンプトを1本作るだけで始まる。

まず今日はStep 1だけやってみるといい。ChatGPTのカスタム指示に自社情報を登録するのに10分もかからない。そこから先は、使いながら少しずつ改善していくだけだ。

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