AI顧問サービスを調べると、月額5万円のサービスと月額20万円のサービスが並んで出てくる。
ホームページを見ると、どちらも「業務効率化を支援します」「ChatGPTを社内に定着させます」と書いてある。4倍の価格差があるのに、なぜ同じことを言っているのか。何が違うのか分からないまま、とりあえず安い方を選んで「期待していたことと違った」という結果になる会社を、業務効率化に特化したエンジニアとして実際に見てきた。
この記事では、月額5万・10万・20万円という3つの価格帯に分けて、それぞれ「何が含まれているか」「何が含まれていないか」「どういう会社に合うか」を整理する。
料金相場の全体像についてはAI顧問の費用相場|月額3万〜30万円の価格帯と内訳で別途まとめているので、大枠から確認したい場合はそちらを先に読んでほしい。
まず価格の差は何で決まるか
結論から言うと、価格は「関与の深さ」で決まる。
- アドバイスするだけなのか
- 実際にプロンプトや仕組みを作るのか
- 複数業務・複数部署に対応するのか
この3軸で価格が変わる。「会社の大きさ」「ブランド」では決まらない。小さな会社でも月20万円のサービスがあるし、大手でも月5万円のライトプランがある。
「月額10万円なら月5万円の2倍の成果が出る」という話でもない。月5万円で目的が達成できる会社もある。月20万円でも目的と合わなければ成果が出ない。
月額5万円台|相談・壁打ち型
含まれているもの
月額5万円前後のサービスは、現時点で公開されているAI顧問サービスの中で最もよく見かける価格帯だ。主に以下が提供される。
- 月1〜2回のオンライン面談(30〜60分程度)
- SlackやチャットでのAI活用に関する質問対応
- ChatGPTなどツールの使い方のアドバイス
- 業務への活用アイデアの提案
「AIをどう使えばいいか分からない」という段階の経営者が、壁打ち相手として使うイメージに近い。
含まれていないもの
実装は基本的にしてもらえない。「○○というプロンプトを使うと良いですよ」とアドバイスをもらっても、実際にプロンプトを作って業務フローに組み込む作業は自社でやる必要がある。
定着支援も含まれないことが多い。月1〜2回のミーティングで課題を確認するが、社員がAIを実際に使い続けるようになるまでの細かいフォローは対象外というサービスがほとんどだ。
こういう会社に合う
- すでにChatGPTを使っているが、活用の幅を広げたい
- 社内に手を動かせる人間がいて、方向性だけ外部に確認したい
- まずAIの活用方針を整理したい段階で、いきなり大きな投資をしたくない
逆に、「AIを使って業務を変えたいが、社内にやり方が分かる人間がいない」という状況には合わない。アドバイスをもらっても自社で実装できる人がいなければ、何も変わらないまま月額費用だけが続く。
月額10万円前後|伴走・実装型
含まれているもの
月額10万円前後のサービスは、アドバイス型と大きく異なる点が1つある。実装まで支援が入ることだ。
- 業務フローの分析と改善対象の特定
- プロンプトの設計・作成代行
- 使うツールの選定と導入支援
- 社員への使い方レクチャー
- 定着状況の確認と継続的な改善
「業務のどこをAIで効率化できるか」を一緒に分析して、実際に使えるプロンプトや仕組みを作るところまで関与するサービスが多い。月2〜4回程度のミーティングに加え、チャットでの質問対応もこの価格帯から充実してくる。
含まれていないもの
複数部署を同時に対応するのは難しいことが多い。「経理のAI化が終わったら次は営業事務」という順番での対応になる。
システム開発や本格的なRPA構築は対象外のことが多い。ChatGPTやZapierなど既存ツールの活用範囲での支援が中心だ。
こういう会社に合う
- AIを使いたいが、社内に実装できる人間がいない
- 「方針を決める」だけでなく、実際に使える状態になるところまで任せたい
- 従業員5〜30人規模で、まず1〜2つの業務からAI化を始めたい
中小企業でAI顧問を検討している会社のうち、このレンジが最もニーズに合っているケースが多い。「AI担当者を採用するより安く、かつ実務で成果が出る状態を作りたい」という判断でこの価格帯を選ぶ会社を、僕はこれまでいくつも見てきた。
AI担当者の採用と顧問のコスト比較についてはAI担当者を雇うvsAI顧問を依頼|コスト・成果・リスク比較で詳しく整理している。
月額20万円台|戦略+実装型
含まれているもの
月額20万円を超えるサービスは、対応する業務の範囲か、関与の深さが変わる。
- AI活用の戦略立案とロードマップ作成
- 複数業務・複数部署の同時対応
- より高頻度のミーティングとサポート(週1回程度)
- 社内にAI活用を根付かせるための組織設計の支援
- 効果測定と改善のサイクル設計
「まず1つの業務」ではなく、「会社全体としてAIをどう活用するか」を設計する段階のサービスだ。外部の顧問が組織に入り込んで、複数の業務改善を並行して進めるイメージに近い。
含まれていないもの
月額20万円でもシステム開発は基本的に別途見積もりになる。スクラッチのシステム開発や大規模な自動化ツールの構築は、コンサル費用とは別に開発費が発生することが多い。
こういう会社に合う
- 従業員30〜50人規模で、複数部署のAI化を同時進行したい
- 社内にAI担当者を育てたい(外部と内製の橋渡しをしてほしい)
- AIを1〜2個試したが成果が出ず、体制から見直したい
ただし、注意点がある。月額20万円でも「月2回のオンライン面談のみ」というサービスが存在する。高い価格帯だからといって必ずしも実装支援が含まれるわけではない。価格より先に「具体的に何をアウトプットしてもらえるか」を確認することが必要だ。
価格帯別の適合状況(まとめ表)
| 月額5万円台 | 月額10万円前後 | 月額20万円台 | |
|---|---|---|---|
| 主なサポート内容 | アドバイス・壁打ち | 実装支援・伴走 | 戦略立案+実装 |
| 面談頻度 | 月1〜2回 | 月2〜4回 | 週1回程度 |
| プロンプト作成代行 | なし(提案のみ) | あり | あり |
| 複数業務の同時対応 | なし | 1業務ずつ | あり |
| 定着支援 | 薄い | あり | 厚い |
| 適した会社規模感 | 5〜15人 | 10〜30人 | 20〜50人 |
| こんな状況に合う | 方向性を確認したい | 業務に組み込みたい | 複数部署でAI化したい |
価格で選ぶ前に確認すること
ここまで価格帯別の解説をしたが、正直なところ「どの価格帯か」より先に確認することがある。
「何をやってもらいたいか」が先だ。
月額5万円でも、自社に実装できる人間がいて方向性だけ欲しいなら十分機能する。月額20万円でも、「毎月面談で話を聞いてもらうだけ」という形になれば費用対効果は低い。
価格を見て決める前に、担当者に聞くべき3点がある。
1. 実装まで含むか、アドバイスのみか
「プロンプトを作って渡してもらえますか?」と直接聞く。「アドバイスします」という回答なら相談型、「作ります」という回答なら実装型だ。
2. 月に何をアウトプットしてもらえるか
「先月の成果として何を渡しましたか」「3ヶ月後に何が完成していますか」という具体的な形で確認する。「伴走します」「サポートします」だけでは何も分からない。
3. 解約の条件はどうなっているか
成果が出ない時に継続するリスクを確認する。3ヶ月縛り、6ヶ月縛りのサービスは珍しくない。契約前に解約条件を確認しておくことで、成果が出なかった時の損失を限定できる。
AI顧問を契約する前にメリットとデメリットを整理しておきたい場合はAI顧問サービスのメリットとデメリット|契約前の判断軸を参考にしてほしい。
内製化との比較
「月額10万円を払い続けるより、AI担当者を育てた方が安いのでは」という考え方もある。長期的にはそれが正しいケースもある。
ただし、「育てるための人材がいない」「育てる時間がない」「育てている間も業務は回さなければいけない」という状況が多い。内製と外注のどちらが有利かは一概には言えない。
AI活用の内製化と外注の判断基準についてはAI活用を内製する vs AI顧問に外注する|中小企業向け判断基準で比較しているので参考にしてほしい。
まとめ
AI顧問の月額料金は、何を買っているかによって変わる。
- 5万円台: 「方向性のアドバイス」を買っている。実装は自社でやる前提
- 10万円前後: 「実装まで含む伴走」を買っている。業務にAIを組み込むところまで関与してもらう
- 20万円台: 「複数業務を対象にした戦略+実装」を買っている。複数部署・担当者育成まで含む
自社の状況に合った選び方の順番は、まず「AI化したい業務とゴール」を明確にして、その実現に必要なサポートの厚みから価格帯を選ぶ、という順序だ。予算から逆算するより先に、何が必要かを整理してほしい。